プロジェクト「元素分離・分析研究」の横顔 物質 を 量子ビーム で叩く!

(一般向け資料)
量子科学技術研究開発機構
プロジェクト「元素分離・分析研究」の横顔
量子ビームは使い方次第で私たちに
役に立つ成果を生み出してくれる
量子ビームは
大事なパートナー
貴金属を集めたり
分析したり
ナノチューブ創ったり
[ 研究の内容 ]
一言でいうと、
パラジウム
微粒子
レーザーを使って混合酸性溶液から
貴金属を微粒子にして集めてみた
[ プロジェクトメンバー ]
固体
物質
液体
を
気体
レーザー
量子ビーム
イオン
で叩く!
電子線
ガンマ線
そ
う
す
る
と
元素が分かれる
組成が分かる
構造が観える
構造が変化する
新しい知見
が得られる
そして、
様々な事象の機構を解明して基礎科学から
応用研究・技術開発への展開を図る
わたしたちは、量子ビームを使っ
て「物質の状態を制御する」という
テーマに取り組んでいます。その結
果得られる様々な事象を捉え、基礎
から応用への橋渡しをすることを目
指しています。特に困難とされてい
る過酷環境下での元素分離やその場
分析、さらに新奇ナノ材料創製の実
現のために、理論と実験の両面から
研究を進めています。
リーダー 大場弘則
左図は、使用済み核燃料から発生する高レベル放射性廃液を模擬した溶解液です。核
燃料は原子炉で燃焼されると貴金属を含む多くの核分裂生成物を生じますが、その中
で比較的高濃度の元素(Rb, Sr, Zr, Mo, Ru, Rh, Pd, Cs, Ba, La, Ce, Pr, Nd, Sm )を
選んで調製しました。各溶存元素イオンは様々な波長域に吸収帯を持っていて混合系
では(実液も)黒褐色となります。この溶解液は光を透過しませんが、レーザーを上
手に利用すると、特定元素を分離回収したり、元素を定性・定量することが可能です。
(一般向け資料)
―
レーザー・イオンビームを利用した研究例
―
○ レーザーを使って廃液から貴金属を集める
貴金属が溶けた酸性水溶液に溶存
する貴金属イオンは電子の受渡しが
可能な光吸収帯(CT band)を持って
いて、紫外波長レーザーを照射する
と、その単色性が有効に作用して還
元剤から電子が供給されて貴金属イ
オンだけを選択的に光還元・微粒子
化できます。この原理を利用し、工
場廃液などから安全かつ迅速に貴金
属を回収する技術を開発しています。
レーザー誘起微粒子化法による白金族元素分離の概念図
○ 新しいナノチューブでこんなこと考えてます
多結晶・アモルファス複合構造SiC
ナノチューブの電子顕微鏡写真
炭化ケイ素は、半導体材料として重要な材料です。物質を極
小ナノメーター(nm)サイズに小さくし、さらにチューブ状にす
ると、同じ物質でも異なった特性を持つ可能性があることが知
られています。また、同じ物質でも原子が規則正しく並んでい
る結晶状態と原子が不規則に配列しているアモルファス状態と
では、様々な特性が異なることも知られています。そこで、イ
オンビームを用いて結晶領域とアモルファス領域が混ざった
100nm程度の小さな炭化ケイ素チューブを創製しました。今
後、どのような光学・電気的特性が現れるのか、新しいナノ材
料の開発を目指して調べていきます。
○ 福島の復興に貢献する技術の開発
東日本大震災で被災した東京電力福島第一原子力発電所廃炉措置
に向けて、溶け落ちた核燃料物質(燃料デブリといいます)のレー
ザー遠隔その場分析方法を、日本原子力研究開発機構と連携して開
発しています。長さ50mを超える光ファイバーでパルスレーザー光
を伝送し、分析対象物表面に集光照射することによってプラズマ光
を生成させます。発光は対象物を構成している元素特有の波長を
持っているので、それを観測するとその場で組成が分かります。
レーザー
プラズマ
発光
対象物
レーザー誘起プラズマ発光の様子
また、除染除去物一時保管場所から滲出した水の成分変化の監視等を目的とした、水中の溶存
元素の無人・連続計測が可能なレーザーモニタリング装置の開発も進めています。
(一般向け資料)
ー私たちの実験の様子をちょっと紹介しますー
おや?
なぬっ!!
鏡の角度次第で見たいものが現れる
立ち仕事は腰にきつい、、、
レーザーは工夫で面白くなる、うふふ
実験を体系化するために理論が大事だね
私にとって電子顕微鏡は、身
体の一部です
(一般向け資料)
最近のトピック
「物質の挙動を制御するレーザー光を理論的に設計する」
物質に光を当てると物質は様々な応答を示します。例えば、電子レンジによる
食品の温度上昇や太陽光による肌の日焼けなどは、光に対する物質応答の身近な
例です。実は、光に対する物質の挙動については古くから物理や化学の分野で活
発に研究が行われ、現在ではその仕組みが詳細に明らかにされています。近年で
はこうした過去の研究成果を踏まえ、光を積極的に活用し原子や分子の動きを巧
みに操り、効率的に物質の合成や分離あるいは除去等を実現する研究開発に広く
関心が持たれています。
私たちの研究グループでは、原子や分子の動きを自在に操るためのレーザー光
を理論的に設計し、より効率的に望みのプロセスを進行させる新たな方法の構築
を目指して日々研究に取り組んでいます。ここでは、最近行ったレーザー光によ
る混合物の分離に関する理論研究について簡単に紹介します。
私たちは原子や分子を量子力学的な波として記述し、それとレーザー光が相互
作用することでその波が時間的に変化する様子をコンピュータで模擬しました。
100%
その結果下図に示すように、質量の異なる二種類の分子の混合物中の一方の分子
だけを100%近い確率で選択的に振動させるレーザー光を理論的に設計するこ
とができました。この選択的振動は分離プロセスのほんの初期段階に過ぎません
が、これ以降のプロセスを極めてスムーズに進行させる大きなきっかけとなりま
す。実験的な検証は今後の課題ですが、ここでの研究結果は従来法とは異なる新
しい実験手法の構築に向けて重要なヒントを与えてくれます。(黒崎)
質量の異なる二種類の分子の混合物
一方の種類の分子だけが激しく振動
今後は、量子ビーム利用を物質の三状態のみならず生体科学分野に展開し、例えばタンパ
ク質機能における様々な状態を対象とした現象解明等にチャレンジしたいと考えています。
また、福島復興についてはポテンシャルを惜しみなく出して支援していきます。
問い合わせ先:国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構
量子ビーム科学研究部門 研究企画室
住所:〒370-1292 群馬県高崎市綿貫町1233
℡:027-346-9447 Eメール:[email protected]
研究成果は子供を育
てるのと同じだね。