「大学における発達障害学生への支援対応とコンプライアンス」

平成28年度 全国障害学生支援セミナー「専門テーマ別セミナー【3】」
大学における発達障害学生への修学支援とコンプライアンスについて考える
「大学における発達障害学生への支援対応とコンプライアンス」
平成28年12月1日(木)於・大阪
弁護士法人筑波アカデミア法律事務所
代表弁護士
1
山
口
卓
男
はじめに
学術の府である大学は「トラブル多発地帯」と化したか?
2
大学の役割・位置づけの変化
大学は、地域・社会に開かれた学術・文化の拠点。生涯学習、国際化、多様性・・・。
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4つの段階とポリシー
① 入学時:多様性の確保。修学機会の拡大。
② 在学中:自己実現(能力の発見・開発)のための行き届いた支援。
③ 卒業・修了時:厳格な卒業・修了認定。支援を尽くした上で、水準の確保。
④ 就職・就業支援:様々な可能性の開発。社会との連携の一場面。
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対応を要する学生の増加
学生の問題行動が増えている?その背景は?
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問題発生時の視点
まず、単純な二分法が有効。その行動は病的なものか、そうでないものか。厳密
に医学的な判断ではなく、以後の対応方針を決めるための大きな振り分け。この
区別を踏まえずに、前者に対する対応を誤る例は多い。
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大学における対応窓口
学生相談室、保健管理センター、ハラスメント・コンプライアンス相談窓口、学
1
部事務局、担当教員、法人本部・・・。つまり、ほとんど全てのセクションで対
応を迫られている。
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弁護士が関与する意味
弁護士は、この問題に対し有益な貢献ができるか?
8
弁護士による関与パターン
代理人として、法人のアドバイザーとして、現場のアドバイザーとして、委員会
の委員等として。
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対応方針の例
学内各部門の内部と相互間の組織的連携が重要。必要に応じ、医療機関、警察等
とも連携。
「親切」が仇になる例は少なくない。相手の病的兆候を見て取ったとき
は、無用の議論は避け、一定の距離を置いて淡々と対応する。修学上の問題では、
相手の(特異な見解に基づく、執拗な)要求に屈して、無原則な「特別扱い」をしな
いこと。ルールを曲げずに、厳正に対応するのが基本。その結果、休学、除籍、
退学などの展開になるのであれば、これも規則どおりに運用する。このような対
応を「不親切」と非難すべきではなく、
「よき社会人」を育成することは大学の使
命であることから、そのプロセスの一環と捉えるべき。差別解消のための「ポジ
ティブ・アクション」が求められる局面とは質的に異なること。ただし、常に寛
容さと根気強さが必要なことは当然。
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ひとまずのまとめ
問題がいかに複雑で解決困難でも、これが大学の直面する現実である以上、その
解決に取り組む主体は大学人以外にはない。ただし、専門家や外部機関の力を借
りるのに躊躇は要らない。その中で、弁護士との効果的な連携にはまだ課題が多
い。大きな目的は、大学の社会的使命を全うするうえでの基盤形成、つまり大学
自身の体質強化である。
以
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上