明石市「子どもに伝えたい『本』感動大賞」表彰式に寄せて 公益財団法人東京子ども図書館 名誉理事長 松岡享子 今年も、 「子どもに伝えたい『本』感動大賞」に数多くの応募作品が寄せられた ことを知ってうれしく思いました。読書は、能動的、積極的な行動です。本を前 にしてただ座っているだけでは、何も起こりません。自分で活字を読みとり、そ こに書かれていることを理解しなければなりませんし、さらには想像力を働かせ て主人公の体験を追体験したり、自分のなかに本のなかの世界を創りあげたりし なければなりません。読者の側から、働きかけてこそ、本は、意味のある体験を 松岡 享子 氏 与えてくれるのです。 財団法人東京子ども図書館 名誉理事長 明石市「本のまち推進アドバイザー」 考えて見ると、人間は、どうも楽をしよう、楽をしようという方向に進んできているように思えます。だ んだん怠け者になってきているのでしょうか? そうなると、自分から努力しなければ得るもののない読 書は、だんだん敬遠されていくのでしょうか? そうなってはたいへんです。なぜなら、本を読まない人 の心のなかの世界は、奥行きの浅い、幅の狭い、安定しない、面白味に欠けるものになるおそれがあるか らです。 「感動大賞」の試みは、これから育って、未来の明石を創っていく若い人たち、幼い子どもたちに、本に親し み、心のうちに豊かな世界をもつ大人になってほしいという願いをこめて、読書へのひとつのきっかけをつくる ものです。これを機会に、多くの子どもたちが、あるいは感想画を書くために、あるいは本の帯をつくるために、 一冊の本としっかり向き合い、じっくり読んで、そのうえで、本の世界を自分の力で表現する――そのことは、 すばらしいことです。ですから、受賞された方ばかりでなく、応募してくれたみなさんひとりひとりに、 「ありが とう!」、「おめでとう!」と、申し上げたいと思います。 いつものことですが、保育園、幼稚園の子どもたちの絵は、明るく、エネルギーにあふれていて、すばらしい と思いました。こののびやかさ、この元気、この色彩感覚を大事にして、大きくなっても創造的な活動から遠ざ からないように願います。 小学生、中学生、高校生以上のみなさんの帯は、力作揃いです。本と一所懸命取り組んだあとがよくわかりま した。ただ、帯は、表紙と一体となって読者の前に差し出されるものですから、帯として独立してよくできてい ても、本にかけられたとき、全体としてよいデザインになっているかどうか? それが大きなポイントになると 思います。本は、内容だけでなく、眺めたり、さわったりするたのしみも大きいので、帯をふくめたデザイン― ―物としての美しさ――に、さらに心を配ってほしいと思います。 みなさんの作品を眺めながら、帯をデザインするということを通して、読む側でなく、本をつくる側の世界に も、一歩足を踏み入れたみなさんのなかから、将来、本作りを仕事にする人が育ってくれればいいなあと、思っ たことでした。 受賞者のみなさん、ご苦労さま。そして、おめでとうございました!
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