財務諸表論

損益計算論
Ⅰ 工事契約1
工事契約に係る認識基準
工事進行基準と工事完成基準とがあり、これらは工事契
工事契約に係る認識基準には、
約に関して工事収益及び工事原価を認識するための基準である。
① 工事進行基準
工事進行基準とは、工事契約に関して、工事収益総額、工事原価総額及び決算日に
おける工事進捗度を合理的に見積り、これに応じて当期の工事収益及び工事原価を認
識する方法をいう。
② 工事完成基準
工事完成基準とは、工事契約に関して、工事が完成し、目的物の引渡しを行った時
点で、工事収益及び工事原価を認識する方法をいう。
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従来の認識基準
① 工事完成基準と工事進行基準の選択適用
収益の認識に関しては、一般に、商品等の販売又は役務の給付によって実現したもの
を対象とすることとされている。
しかし、従来、長期の請負工事に関する収益の計上については、工事完成基準又は工
事進行基準のいずれかを選択適用することができるとされていた(注解・注7 )
。
② 工事進行基準が認められてきた根拠
企業会計原則において従来から工事進行基準が認められてきたのは、
請負工事におけ
契約によって引渡しの相手方及び請負金額が確定
る特殊性をなす受注生産、つまり、
収益の獲得が保証されており、完成・引渡しまで収益の認識を繰延べ
していることで
る理由がないと考えられてきたためである。
また、工事完成基準は実現主義を工事契約に適用したものである。ただし、複数の会
計期間にわたり工事を遂行している場合にはその事実に反し、収益は工事完成・引渡し
期間収益が著し
く変動するという不都合が生じてしまう。すなわち、期間業績判定の観点(利益の業
の日の属する会計期間だけに集中して計上されてしまう。その結果、
績指標性)
からは完成引渡しの期まで利益を計上しない工事完成基準には問題があると
いえるためである。
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③ 従来の認識基準における問題点
これまで我が国では、長期請負工事に関する収益の計上については、工事進行基準又
選択適用することができるとされてきた。このため、同
は工事完成基準のいずれかを
じような請負工事契約であっても、
企業の選択により異なる収益等の認識基準が適用さ
財務諸表間の比較可能性が損なわれる場合があるとの指摘がなされていた。
れる結果、
したがって、工事契約会計基準では、同様の請負工事契約に関して適用される収益の
認識基準が企業の選択により異なる可能性を排除して、
工事契約ごとに会社が適用すべ
き認識基準を明らかにしている。
(
「工事契約会計基準」結論の背景)
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Ⅱ 投資のリスクからの解放
討議資料「財務会計の概念フレームワーク」では、収益や費用の認識について「投資のリ
スクからの解放」という概念を用いて整理している。
従来の問題点
金融商品や請負工事契約など様々な実態や本質を有する投資について実現という概念
で全体を説明することが困難なことから、これらを包摂的に説明する用語として「投資の
リスクからの解放」という概念がある。
投資のリスクからの解放の定義
投資のリスクとは、投資の成果の不確定性(将来得られるキャッシュフローが不確実で
投資のリスクからの解放とは、投資にあたって期待された
成果が事実として確定することで投資の成果の不確定性から免れることをいう。
あるというリスク)である。
一般的にはキャッシュが獲得されることで投資のリスクから解放される。
キャッシュと
は現金及びその同等物をいうが、
投資の成果がリスクから解放されるという判断において
は、実質的にキャッシュの獲得とみなされる事態も含まれる。
投資のリスクからの解放時点の分類
収益及び費用は、投下した資金が投資のリスクから解放されたときに把握される。そし
て、企業の投資のリスクから解放される時点は企業の投資の目的により異なる。なお、リ
スクから解放した時点で収益や費用を計上した結果計上される利益は、
投資の成果を表す
純利益である。
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① 事業活動を通じたキャッシュの獲得
企業が事業活動を通じてキャッシュを獲得することを目的として投資(事業投資)し
た場合、投資のリスクとは、事業活動を通じてキャッシュが獲得できるか否かであり、
事業活動を達成(販売)し、その結果、得られるキャッシュの獲得を待って投資のリス
クから解放され成果(収益・費用及び純利益)を把握する。
② 時価の変動による利益の獲得
企業が時価の変動により利益を獲得することを目的として投資
(金融投資)
した場合、
投資のリスクとは、時価の変動リスクであり、時価の変動が実質的にキャッシュの獲得
とみなされるため、時価の変動によって投資のリスクから解放され成果(収益・費用及
び純利益)を把握する。
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Ⅲ 工事契約 2
成果の確実性
企業会計原則で規定される実現主義では、事業内容の多様化について、収益をいつ認識
すべきかを判断することが容易ではないとの意見がある。
このことから、工事契約会計基準では、成果の確実性という考え方により収益認識する
こととなる。成果の確実性とは、収益の獲得に関する不確実性が解消されることであり、
一般に商品等を販売した時点では、
収益の獲得に関する不確実性が大きく減少されること
となるため実現主義の趣旨と相違はないと考えられる。
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(2) 工事契約における収益獲得の考え方
範囲は、請負契約であり、対価の額があらかじめ定められていることが多いこ
程度解消されていると考えられる。従って、基本
的な作業内容を顧客の指図に基づいて行う工事を進捗させることにより、
成果の確実性が高
工事契約の
とから、対価に関する不確実性はかなりの
まり、収益を獲得できると考えられる。
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3
( ) 投資のリスクからの解放と成果の確実性
収益や費用は、投資がリスクから解放された時点で把握される。この場合、投資のリスク
味
ば
とは、投資の成果の不確定性を意 し、投資にあたって期待された成果が事実となれ 、そ
常
れはリスクから解放されることとされている。
投資のリスクから解放された場合には、
通 、
成果の確実性が認められる。なお、投資のリスクからの解放という概念によると、
「工事契
約による事業活動は、
工事の遂行を通じて成果に結び付けることが期待されている投資であ
り、そのような事業活動を通じて、投資のリスクから解放されることになる。
」と説明され
ることとなる。
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捗部分について成果の確実性が認められるための一定の条件
( ) 工事の進
捗部分について成果の確実性が認められるためには、決算日までの工事の進捗が
最終的な対価に結びつき、(イ)工事収益総額、(ロ)工事原価総額、(ハ)決算日における工事
進捗度の各要素について、信頼性をもって見積ることができなければならない。この場合に
工事の進
は工事進行基準を適用する。
5
( ) 工事完成基準における収益認識の考え方
供 者側が工事を完成させ、目的物の引渡しを行うことで、契約上の義
務をすべて履行しているため、通常、成果の確実性が認められる。このことから工事の進行
途上において成果の確実性が認められない場合には工事完成基準を適用する。
工事完成基準は、 給
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( ) 工事契約会計基準における収益認識基準
段階で認識すべきであるとの考え方に基づき、工事の進行
収益は成果の確実性が得られた
途上においても、その進捗部分について成果の確実性が認められる場合には工事進行基準を
適用し、この要件を満たさない場合には工事完成基準を適用する。
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直前答練 本試験
1月~4月
基礎期
計算項目の理解
理論の暗記・理解
講義内容の確認
精度・スピードの強化
5月
応用期
基礎の定着
応用理論
1月~4月期の定着
問題集(総合)
理テキ・要点チェック
過去問
実判・直前理テキ
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経験者完全合格コース
6月
完成期
合格答案の
作成練習
未学習項目を含めた
対応力の強化
7月
実践期
仮想本試験
本試験を想定した実践
プレ・直前対策
直前答練
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