大豆「すずかれん」の豆腐加工適性 ○高橋将一・大木信彦・河野雄飛1)・高橋 幹2) (九州沖縄農研・1)中央農研・2)次世代作物研) 【目的】 (FUDOH)で豆腐の最大破断強度(かたさ)を測定 2010 年に九州沖縄農研で育成された小粒大豆 1) した。測定条件はφ15mm の粘弾性用プランジャー は,葉焼病に強く,ハスモンヨト を用い,移動速度 6cm/分である。1 サンプルから ウ抵抗性を有する多収品種で,現在,福岡県,熊 は 6 個の測定値が得られるが,原則として最大値 本県で主に栽培され,葉焼病に弱い納豆用小粒品 と最小値を除いた平均値をそのサンプルの最大破 「すずかれん」 2) 種「すずおとめ」 の後継品種として期待されて いる。 断強度とした。 【結果および考察】 「すずかれん」は百粒重が 11~15g 前後と「す 豆乳・豆腐加工適性試験の結果を表 1 に示した。 ずおとめ」より粒がやや大きいこと,粗タンパク 「すずかれん」は三重県,熊本県など 7 県で, 「フ 含有率も「すずおとめ」,「フクユタカ」よりも高 クユタカは 6 県, 「すずおとめ」は 2 県の奨励品種 いことから,納豆以外の用途にも利用が期待され 決定調査等のサンプルであり,生産地と評価点数 ている。 が大きく異なる「すずおとめ」は参考データとし そこで本研究では,国産大豆の主要な用途先で て記載した。 ある豆腐について,ラボレベルで「すずかれん」 豆腐のかたさと相関が高い子実中の蛋白含量は の加工適性を評価し, 「フクユタカ」, 「すずおとめ」 「すずかれん」が 46.5%で「フクユタカ」の 44.6% と比較した。 に比べ高かった。また,豆乳抽出効率や,凝固剤 【材料および方法】 の添加時の操作性に影響する豆乳粘度は, 「すずか 豆腐加工試験には九州沖縄農研普通畑での生産 れん」が 37.4mPas で「フクユタカ」に比べやや高 種子と,各県の奨励品種決定調査および現地試験 かった。豆腐のかたさでは「すずかれん」のサン で得られたサンプルを用いた。生産年次は 2010 プル間の振れが「フクユタカ」に比べ大きかった 年~2013 年である。子実中の粗タンパク質および が,豆乳濃度は「フクユタカ」より高かった。 粗脂肪,全糖,水分含量は近赤外分析法 表1.豆乳・豆腐加工適性試験の結果 (Infratec1241 Foss 社)により分析し,豆乳作 成時の加水倍率はこの水分含量に基づき算出した。 豆乳・豆腐の評価は北海道立中央農試および十 勝農試で開発された「加熱しぼり法による大豆の 豆腐加工適性(豆腐硬さ,豆乳粘度)評価法」を 一部改変し実施した。具体的には生大豆 40g を 20℃で 18 時間水浸漬し,ミキサーで磨砕後,消泡 剤を加え攪拌し,蒸留水で 7.25 倍加水になるよう に調整した。スチームレンジで 5 分 30 秒,レンジ すずかれん フクユタカ すずおとめ 評価点数 46 49 15 粗タンパク 含量(%) 豆乳粘度 (mPas) 豆乳濃度 Brix(%) 豆腐かたさ (g/cm2) 46.5 (49.7-42.0) 37.4 (59.2-25.6) 12.4 (12.9-11.7) 57.0 (90.5-13.5) 44.6 (48.5-41.7) 29.3 (45.2-20.8) 11.9 (12.5-11.3) 63.6 (90.2-44.7) 43.2 (45.2-41.4) 29.4 (37.4-18.4) 11.6 (12.0-10.7) 47.1 (67.1-31.2) 注)括弧内の数値は評価したサンプルの最大値-最小値を表す。 で 3 分加熱後,遠心機を用い(100 メッシュフィ 引用文献 ルター使用)豆乳を抽出した。抽出した豆乳は氷 1) 水中で冷却し,30ml の PP 広口円筒容器(Nargen) 6 個に 20ml ずつ分注し,62.5%MgCl2 を 80μl 加え (2013) 2) 攪拌後,80℃で 40 分間凝固させた。1 時間冷却後, 20℃で 1 時間保管したものをレオメーター 高 橋 ら , 九 沖 農 研 セ ン タ ー 報 告 ,59, 1-22 松永ら,九沖農研センター報告,42,31-47 (2003) ─ 18 ─
© Copyright 2024 ExpyDoc