第 351 回企業会計基準委員会 資料番号 日付 プロジェクト 収益認識に関する包括的な会計基準の開発 項目 第 74 回収益認識専門委員会で聞かれた意見 審議事項(6)-10 2016 年 12 月 20 日 本資料の目的 1. 本資料は、第 74 回収益認識専門委員会(2016 年 12 月 6 日開催)において審議し た項目について、聞かれた主な意見をまとめたものである。 【論点 8】独立販売価格に基づく配分 2. 取引価格を配分する際の目的(IFRS 第 15 号第 73 項)は本則的な考え方であるた め、結論の背景ではなく、表現を考えたうえで企業会計基準に含めることがよいの ではないか。 3. 「調整した市場評価アプローチ」は、独立販売価格を直接観察できない場合の見積 方法であるため、表現を見直した文案の「市場価格を基礎として」という表現では なく、市場を評価するということがわかるように表現を見直すべきではないか。 4. 取引価格の配分は IFRS 第 15 号において非常に重要な論点であり、取引価格を独立 販売価格に基づき配分する趣旨は恣意的な配分を防ぐことであると考えられるが、 顧客と合意した契約価格を独立販売価格に基づく価格に修正することはかえって 恣意的になる可能性があると考えられる。開発する日本基準において、取引価格の 配分の趣旨を示したうえで、その趣旨に基づくと契約を基礎とする価格もありうる ことを補足することが考えられるのではないか。 5. 我が国の実務においては、税務も含めて、第三者間取引における契約当事者の合意 が重視されているため、取引価格を独立販売価格の比率で配分することは、実務へ の影響が非常に大きいのではないか。独立販売価格に基づく配分は、重要性の問題 として対応することは困難である可能性もあり、一定の状況について求めることと することなどを含め、今後検討すべき課題として実務的な対応方法を議論したこと がよいのではないか。 6. 財又はサービスについて契約に記載された価格や定価は独立販売価格である可能 性があるが、そのように推定してはならない(IFRS 第 15 号第 77 項)とされてい ることや IFRS 第 15 号における取引価格の配分の趣旨を踏まえて、契約価格の取扱 いを検討することがよいのではないか。 1 財務会計基準機構のWebサイトに掲載した情報は、著作権法及び国際著作権条約をはじめ、その他の無体財産権に関する 法律並びに条約によって保護されています。許可なく複写・転載等を行うことはこれらの法律により禁じられています。 審議事項(6)-10 【論点 17】貸借対照表項目の表示科目 7. 契約資産及び契約負債の定義については、IFRS 第 15 号と同様に、基準本文のみな らず、用語の定義にも記載することが、読み手にとって有用であると考えられる。 8. 債権は対価に対する企業の権利のうち無条件のものであるという定義について、よ りわかりやすい表現を検討することがよいのではないか。 9. 日本基準における工事進行基準の適用により計上される未収入額についての記載 (企業会計基準第 15 号「工事契約に関する会計基準」第 59 項)を考慮して、契約 資産の性格についての説明を結論の背景に含めることがよいのではないか。 10. 未履行部分について債権と契約負債が両建てで計上される懸念については、IFRS 第 15 号における債権の定義を踏まえると、国際的な比較可能性の観点から対応し ないことも考えられる。 契約の識別 11. 契約の識別については、開発する日本基準が適用される契約の範囲に影響を受ける ため、開発する日本基準の適用範囲の検討が重要となると考えられる。 製品保証 12. 我が国の IT 業界で使用される「アシュアランス」という用語の意味を踏まえると、 開発する日本基準において「アシュアランス」という用語は使用しない方がよいと 考えられる。例えば、財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証と、 それを超えるものを提供する保証という区分とすることも考えられるのではない か。 13. アシュアランス型とサービス型の両方の製品保証が含まれているが、サービス型の 製品保証にかかるコストが僅少な場合であって、両者を区分して会計処理できない ときに、一般的な重要性の判断により、単一の履行義務として会計処理しないこと とすることができるのか難しいところがあると考えられる。 14. 製品保証に関するガイダンスの追加については、開発する日本基準における全体的 なバランスを勘案すると対応しないことも考えられる。 2 財務会計基準機構のWebサイトに掲載した情報は、著作権法及び国際著作権条約をはじめ、その他の無体財産権に関する 法律並びに条約によって保護されています。許可なく複写・転載等を行うことはこれらの法律により禁じられています。 審議事項(6)-10 契約における重大な金融要素の存在 15. 重大な金融要素の有無の判断は非常に難しいと考えられ、開発する日本基準におい て首尾一貫した判断が行われるように検討する必要があると考えられるが、重要性 の定めを設けることで対応することは困難ではないか。 16. 我が国における長期大型の工事等においては、出来高払いというより竣工払いが多 く、顧客からの支払が 1 年以上先になることは通常であり、また顧客からの中間金 支払等の履行義務への紐付けは困難であるため、重大な金融要素についての実務上 の対応は極めて困難であると考えられる。重大な金融要素を調整すると、受注高の 管理や債権管理における金額と会計上の金額が連動しなくなるため、大きな問題が あると考えられる。 進捗度の測定方法 17. 表現を見直した文案では、アウトプット法が企業の履行の忠実な描写を提供しない 場合の例示(IFRS 第 15 号 B15 項)を結論の背景に含めることとしているが、企業 会計基準適用指針に記載する方が適切な注意を促すことができるのではないか。 現金以外の対価 18. IFRS 第 15 号にある「公正価値」を「時価」に置き換えないことも考えられるので はないか。 19. 「時価」と「公正価値」の用語については、出口価値の概念との関係もあり、海外 でも議論がある内容であるため、「公正価値」という用語の使用は慎重に検討すべ きであると考えられる。 顧客との契約から損失が見込まれる場合の取扱い 20. 我が国において、工事損失引当金や契約損失に対する引当金の実務は既に定着して いると考えられる。 21. 契約損失については、企業会計基準第 9 号「棚卸資産の評価に関する会計基準」及 び企業会計原則注解(注 18)との関係について検討する必要があると考えられる。 3 財務会計基準機構のWebサイトに掲載した情報は、著作権法及び国際著作権条約をはじめ、その他の無体財産権に関する 法律並びに条約によって保護されています。許可なく複写・転載等を行うことはこれらの法律により禁じられています。 審議事項(6)-10 今後の進め方について 22. 我が国においては実現主義に基づく会計処理が行われてきたことを考慮して、開発 する日本基準が適用される際に、どのように内容の理解を促し、実務における混乱 を回避することができるかを検討する必要があると考えられる。 23. 会計基準における定めがある中でも、何らかの重要性の定めを置いて、実務におけ る運用を容易にすることは必要であると考えられる。 24. 適用初年度より後の年度においても、従来より工数が増加する可能性がある論点に ついては、その増加原因を分析したうえで、開発する日本基準に含めるべきかどう かを検討することが考えられる。 25. 次回以降は会計基準全体を通読して、IFRS 第 15 号を参照せずに理解することが可 能かどうかを確認することが非常に重要であると考えられる。 26. 作成者が開発する日本基準の本質を理解することが重要だと考えられるため、開発 する日本基準の結論の背景に各ステップの目的等を記載することが必要ではない か。 27. ガイダンスの追加又は設例の作成を検討する項目については、ガイダンスの追加が IFRS の解釈を示すことになるリスクもあるため、設例の作成を優先的に検討する ということも考えられるのではないか。 28. ASBJ が作成する会計基準は、見出しのフォントサイズで階層化しているが、理解 が容易となるように見出しの記載方法について見直すことを検討してはどうか。 以 上 4 財務会計基準機構のWebサイトに掲載した情報は、著作権法及び国際著作権条約をはじめ、その他の無体財産権に関する 法律並びに条約によって保護されています。許可なく複写・転載等を行うことはこれらの法律により禁じられています。
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