リュードベリ定数と量子数

山北
リュードベリ定数
𝑚e 𝑒 4
𝑅∞ = 8𝑐
0ℎ
3 𝜀2
0
= 1.09737 × 107 m−1
(1)
波数の単位を持ち、式(1)で与えられる。原子核が無限に重いとした場合
にあてはまる式であるため、無限大のマーク∞が入っている。しかし、水
素原子については正しくない1。原子核は確かに電子よりはるかに重いが無
限に重くはなく、電子の運動に伴って重心位置を保つために動くからであ
る。したがって、厳密には、水素原子の場合には電子の質量 me の代わりに
次の換算質量を用いるのが正しい。
1
𝜇
𝜇𝑒 4
𝑅 = 8𝑐
0ℎ
3 𝜀2
0
=
1
𝑚e
1
+
(2)
𝑚H +
= 1.09678 × 107 m−1
(3)
リュードベリ定数は、状態間のエネルギー差に関係している。ボーアモ
デルにおける水素原子のエネルギー準位は式(4)で与えられるから2、状態
m,n のエネルギー差E は、
𝑚 𝑒4
𝐸𝑛 = − 8ℎ2e𝜀2𝑛2
(4)
0
𝑚 𝑒4
1
1
∆𝐸 = 𝐸𝑛 − 𝐸𝑚 = 8ℎe2 𝜀2 (𝑚2 − 𝑛2 )
0
(5)
E は光子のエネルギーhに等しいことを利用し、cを代入すると、式
が得られる。
1
𝑚e 𝑒 4
= 8𝑐
𝜆
0ℎ
1
3 𝜀2
0
1
1
(𝑚2 − 𝑛2 )
(6)
したがって、教科書の式(3.3.1)は厳密には R が正しい。
厳密には換算質量を用いなくてはならない。ボーアモデルは原子核が空
間に固定されていることに対応する。
3
式(1),(6)のリュードベリ定数 R∞は波数の単位(m-1)で表されているが、波
数をエネルギーの単位のひとつとみなすことができる。エネルギーの単位
(J)に変換したリュードベリ定数 R∞′= R∞hc を考えることもできる。hc は 1
ではないが、しばしば R∞′= R∞のように表記されてしまうことがある。
2
山北
方位量子数
水素原子の状態は次の 3 つの量子数 n,l,m で表される。
主量子数
n = 1,2,3,…
方位量子数
4
磁気量子数
l = 0,1,2,…, n-1
m=-l,-(l-1),…,0,…,l-1, l
以前は、副量子数 k(= l + 1)と呼ばれるものが用いられたが、現在では用
いられない。
4
教科書 p.52 上の-k ≤ m ≤ k は誤り。正しくは-(k-1) ≤ m ≤ k-1 である。