本試験特別座談会

CERTIFIED
PUBLIC
ACCOUNTANT
平成 29年 公認会計士第Ⅰ回短答式試験 特別座談会
監 査 論
監査論担当
高橋 亮介 講師
本 試 験 を ふりか えって ∼ 出 題 傾 向・合 格 ラ イン 等 ∼
久野 次に 12 月 11 日3限 (13:40 着席, 14:00 ~ 15:00)に行われた監査論です。
監査論も, 昨年 2016 年試験と同じ 20 問出題各5点でしたね。
先ほどは 「今回の監査論は, 前回までと比較して, かなり易しくなりました。」ということでしたが, 高橋先生, 形式的 ・ 内
容的にはいかがでしたか。
高橋 問題数は 20 問で各5点, ア~エの記述4つで6択。 しばらくはこの形で落ち着くのでしょうかね。 全体的な文章量
自体にそれほど変化はありませんが, 長い記述の問題は減っています。 細かい知識が要求されやすい論点である法律
に関する問題について典型的な知識が問われていますし, 他の論点についても, そこまで細かい知識が要求される問題
は少なかったです。 全体的なバランスを考慮している印象を受けました。
久野 それでは各問題に対するコメントをお願いします。
高橋 問題1は 「公認会計士監査制度の意義」です。 非常に基本的な総論の問題ですね。 ウについて, 会計監査人に
取締役の行為の差止請求権は認められていませんし, エについては, 公認会計士に財務諸表の作成責任はありませ
ん。 無難に 1 を選んでいただきたいところです。
問題2は 「公認会計士監査制度の歴史」です。 今回出題された問題の中で, この問題だけ飛び抜けて難しかったです
ね ・ ・ ・ 。 できなくても問題ないでしょう。 昭和 20 年代から昭和 50 年台まで順番に問われていますが, 何とイ~エについ
ては, 類似の内容が平成 28 年第Ⅱ回短答式本試験で出題されています。 とは言え, 「○○年」まで押さえている方はほ
とんどいなかったと思います。 イについて, 公認会計士法が改正されて監査法人制度ができたのは昭和 41 年, エについ
て, 監査実施準則及び監査報告準則が廃止されたのは, 平成 14 年です。
問題3は 「公認会計士法」です。 やや, 迷われた方もいたかも知れません。 イの正しい記述は典型的な論点であり, ま
たウの誤り, 監査法人に対する刑事責任が法定されていない点は全国公開模試でも出題した論点ですから, 確実に判
断したいですね。 迷うとすればアとエですが, エについて, 課徴金納付を 「命じることができない」のではなく, 課徴金納
付を 「命じないことができる」に過ぎない, という点が誤りになります。 アとの比較衡量でアを正しいと判断する受験生が多
い気もしますが, 正答率は低いかもしれませんね。
問題4は 「金融商品取引法監査制度」についての問題です。 ウとエの正しい記述は, まぁ細かいかなとも思いますが,
それ以上にアとイの誤りが非常に基本的です。 有価証券報告書の提出義務は上場会社に限られませんし, 有価証券届
出書は監査証明が必要になります。 無難に正答しましょう。
問題5は 「会計監査人監査制度」の問題です。 難易度としてはBにしていますが, 個人的には, この問題もそれほど難
しくないですかね。 誤りの記述であるイとウについては,TACの上級講義で配付した問題集に同じ論点についての問題
が収録されています。 正しい記述についても, 企業法の知識も使いつつ, 判断してほしいところです。
問題6は 「四半期レビュー」からの出題です。 この問題は, あまり正答率が高くないかも知れません。 正しい記述はアと
イなのですが, アは無難に正しいと判断してもらって, イですが, これは四半期レビュー基準上の規定なので正しい記述
になります。 一方で, エの記述ですが, これは四半期レビュー報告書の文例まで丁寧に見ていないと正答することが
ちょっと難しいですね。 記述にある 「我が国において一般に公正妥当と認められる四半期レビューの基準に準拠して四
半期レビューを行った」との記載は監査人の責任の区分における記述なのですが, 結論の不表明の場合には, 監査人
監 査 論 ----------------------
本試験をふりかえって∼出題傾向・合格ライン等∼
の責任の区分についての記載事項は, 無限定の結論の場合と比べて少なくなりまして, 本記述のような記載はなされま
せん。 イが四半期レビュー基準からの記述で, エが文例からの記述なので, 少々戸惑ってしまった方もいたかなぁと。 ウ
の継続企業の前提に関する記述は典型的な誤りですが, この問題は個人的には落としてしまっても止むなしです。
問題7は 「内部統制監査報告書」についてです。 やや記述の文章量が多いですけれども, イについては, 慎重に読ん
でいただいて,開示すべき重要な不備が評価時点,つまりは期末日までに是正されている点に気付いてほしいですね。
エについては, 見慣れない記述かもしれませんが, 一般的な報告論の内容に当てはめてもらって, 重要性 ・ 広範性の観
点から不適正意見もあり得ると, 判断してほしいところです。 内部統制監査に関する問題は, 表現上, どうしても文章が
長くなりがちなのですが, この問題は慎重に読めば正答できるはずです。
問題8は 「監査の品質管理」です。 この論点からは細かい記述が出題されやすい傾向にありますが, 今回の問題は,
それほどでもなかったですね。 アウエについては, 答練でも出題しています。 ウの誤りはすぐに気付くでしょう。 イについ
ては, 記述の前段については正しいですが, 後段部分について, 四半期レビューに関する調書ファイルは, 年度監査の
監査ファイルと別に整理されます。
問題9は 「会計上の見積りの監査」の問題です。 イの記述については, 基礎答練で出題していますから, 記述の手続
が必ず要求されているわけではない点に気付きましょう。 ウについては, 初見だった方もいたかと思いますが, 本記述の
ような場合, まずは経営者が代替的な仮定又は結果を検討しなかった理由等を検討することとなり, 直ちに経営者の対
応を不適切と評価することになるわけではありません。 アとエの正しい記述については誤り要素が見当たらないので, 個
人的には何とか正答してほしい問題でした。
問題 10 は 「グループ監査」です。 アもイもテキストに掲載されている論点ですので, 気付いてほしいです。 アについて
は, 独立性以外の能力等については, 追加の監査手続に関する規定がありますが, 独立性については, これが保持さ
れていなければ, 追加の監査手続によっても, その状況は克服できないとされています。A37 項とA38 項を見比べてみ
て下さい。 この問題も問題9と同様に, 正しい記述であるウとエについて, あまり誤り要素がありませんでした。
問題 11 は 「一般に公正妥当と認められる監査の基準」についての設問です。 イについては, 中間監査を思い出すこと
ができれば, 誤りと判断できたのではないでしょうか。 また, エについては, 不正リスク対応基準の適用範囲については
バッチリ判断しないといけませんね。 アとウが正しいことについても問題ないでしょう。
問題12は「監査基準の一般基準」です。アの誤りは,入門・基礎マスターレベルの問題なので,簡単に判断できたかと。
また,エについても実施基準ですから,あるいは初めて見たとしてもすぐに誤りと気付くでしょう。無難に得点できたかと。
問題 13 は 「監査調書」です。 最近の本試験としては, 随分と短い記述です。 で, 簡単でした。 イはみんな分かるでしょ
う。 ウについても, 査閲者の記録は必要です。
監 査 論 ----------------------
本試験をふりかえって∼出題傾向・合格ライン等∼
問題 14 は 「分析的実証手続」の問題です。 少々難しかったでしょうか。 アについて, 企業外部の独立した情報源から
データを入手する場合には, その信頼性を評価する必要はないようにも思えますが, 信頼性の評価自体は必要です。 も
ちろん, 企業内部の情報源から入手したデータよりは, その評価自体は簡便なものとなることが予想されますが。 また,
エについて, 推定値と大きく乖離する変動が識別された場合, まずはその原因究明です。 例えば, 精度の高い推定値を
算出することができていれば, 大きく乖離した理由を調査するのであって, 推定値を見直すこととはならないでしょう。 とは
いえ, イ及びウも含め, やや実務的な問題でしたかね。
問題 15 は 「財務諸表監査において監査人が検討する内部統制」についての設問です。 この問題は, まぁまぁ基本的
でしょうか。 ウについては, すぐ分かりますね。 一方, エはITに関する記述ですが, 全般統制と業務処理統制について
の最低限の知識さえあれば正誤の判断はつくでしょう。
問題 16 は 「重要性の基準値及び虚偽表示の評価」についての問題です。 正しい記述ではありますが, ア及びエは答
練で出題していますね。 イについては, 監査計画の修正を求められるとは限りませんが, 修正が必要かどうかは判断す
ることが必要となります。 微妙なニュアンスの違いかもしれませんが, 気付きたいところです。 ウは初見だったかもしれませ
んが, 重要性の基準値はあくまで実績値に応じて見直されるものであり, 上方乖離であれば, 高い金額に改訂すること
は認められます。 考え過ぎると悩んでしまうかも知れませんが, 素直に読めばアとエが正しいと判断できるはずです。
問題17は「後発事象等の監査」です。ウとエの文末部分,誤っている空気感がプンプンしますが,そのとおり誤りです。
「いかなる場合であっても」と 「事前通知することなく直ちに」ですね。 アとイの正しい記述も, それほど難しいものではあり
ませんから, 無難に正答してほしいです。
問題 18 は 「監査報告書の記載事項」の問題です。 正しい記述のウとエは答練で似た問題を出題しています。 テキスト
にも載っている論点です。 誤り記述ですが, アについては, 報告基準あるいは監査報告書の文例を見ていないと判断で
きません。 監査が原則として試査によって行われることに変わりはありませんので, 正しいと判断してしまった方もいるかも
しれませんね。 イの審査と監査報告書の日付については基礎知識でしょう。 できれば正答してほしい問題です。
問題 19 は 「特別の利用目的のために作成された財務諸表の監査」です。 誤りの記述については, いずれも基本的内
容ではあるのですが, そもそもこの論点自体を手薄にしてしまっている方もある程度いるのではないかと。 その意味で
は, 難易度をAにしていますが, 正答率は伸び悩むかもしれません。 アについては, 適正性判断上の評価事項3つを思
い出していただいて, 実質的判断と表示の適切性についても必要だと考えてもらえれば良かったです。 イについては,
慎重に読む必要がありますが, 準拠性意見であるにもかかわらず, 「適正に表示されている旨」となっています。 これは
気付いてほしい。 ただし, この論点をどこまでキッチリと押さえていたかは ・ ・ ・ 。 きちんと対策していた方であれば, 一瞬
で終わる問題ではありました。
問題 20 は 「監査における不正リスク対応基準」の問題です。 この問題も非常に基本的です。 不正による重要な虚偽の
表示を示唆する状況と不正による重要な虚偽の表示の疑義の関係を理解していれば, それだけでイもウも誤りと判断す
ることができます。 似たような記述を全国公開模試でも出題していますし, 確実に正答してほしい問題です。
久野 ありがとうございました。 例年はもやもやっとした監査論なんですが, 今回はすっきりした感がもてるようですね。
さて,ここ2年間の平成27年第Ⅰ回・第Ⅱ回短答式試験・平成28年第Ⅰ回・第Ⅱ回短答式試験は,合格者数・合格率・
合格者水準は違和感の無いものだったと考えています。 この2年間の合格率 ・ 合格者水準を前提に, 短答式試験合格
者として監査論でどれくらいの得点比率が求められるでしょう。
高橋 全体として, 難易度Aが 10 問,Bが9問,Cが 1 問で, 例年よりもとってほしい問題が増えました。 難易度Aは取りこ
ぼしなく, 難易度Bは, 半分程度は正解したいです。 すると, 14.5 問, 7割を超えるんですよね。 とはいえ, この問題です
と, 平均点も上がるでしょうから, 監査論として, 他の受験生よりもアドバンテージを取りたいのであれば, 少なくとも 15 問
は取ってほしいところです。
久野 監査論でも 75%ですか。 総合の合格得点比率はどうなるんだろうな。。。
高橋先生, ありがとうございました。
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平成 29年 公認会計士第Ⅰ回短答式試験 特別座談会
財 務 会 計 論
財務会計論-計算担当
金杉 光弘 講師
本 試 験 を ふりか えって ∼ 出 題 傾 向・合 格 ラ イン 等 ∼
久野 最後に, 12 月 11 日4限 (15:40 着席, 16:00 ~ 18:00)に行われた財務会計論です。 財務会計論も昨年平成 28 年
第Ⅰ回 ・ 第Ⅱ回短答式試験同様, 問題1~問題 26 という構成でした。
先ほど, 計算の金杉先生からは 「簿記の問題に関しては, 幅広い範囲から満遍なく出題しているという印象」ということ
でした。
金杉先生, 計算分野では, 形式面 ・ 内容面 ・ 難易度についてもう少しお願いできますか。
金杉 財務会計論-計算の出題形式はここ数年の傾向通り, 8点問題 10 問, 総合問題 1 問という構成です。 8点問題は
7問が個別論点であり, 3問が構造論点です。 そして総合問題は連結財務諸表という内容も例年通りです。 個別論点とし
ては, 棚卸資産, 固定資産, 資産除去債務, 有価証券, ストック ・ オプション, リース会計, 固定資産の減損と幅広く,
また, 短答式試験では出題頻度の高い論点から出題されています。 構造論点としては建設業会計, 事業分離, 包括利
益とこちらも出題が予想された内容です。
今回出題された論点に関しては, 短答答練で出題していないものはありませんでしたから, ページをめくって驚いたと
いう局面はなかったと思います。 難易度についてはのちほど詳しくお話ししますが, 解きづらい問題がいくらかあるもの
の, 極端に難しいものはないといっていいでしょう。
全体の難易度は前回と比べても変わっていない印象です。 前回が易しかったので, それに比べると少しだけ難易度は
上がっているものの, 難化したというほどの変化ではありません。
久野 理論の岡安先生からは, 先ほど 「ここ数年の短答式試験よりも難しい問題が多く, 高得点は狙えない」ということで
したが, 難易度 ・ 形式面 ・ 内容面等はざっくりどんな感じだったんでしょう。
岡安 財務会計論-理論の, まず, 難易度についてですが, 平成 28 年第Ⅰ回, 平成 28 年第Ⅱ回は, いずれも易しい
問題が多かったという印象でしたが, 今回はだいぶ難しくなったと思います。 高得点を狙うのは難しいと思いますので,
理論では簡単な問題でミスなく確実に得点することに徹して計算でカバーする, という守りの対応が必要だったのではな
いかと思います。
次に, 形式面についてですが, 特に大きな変更はなかったと思います。 財務会計論全体の出題形式については,
平成28年第Ⅰ回,平成28年第Ⅱ回ともに個別問題22問 (各8点)と総合問題形式4問 (各6点)という出題形式でしたが,
今回も同様の出題形式でした。 計算と理論の出題割合についても, 個別問題 22 問のうち 12 問が理論問題でしたので,
理論問題が 12 問前後というここ数年の傾向と変更はありませんでした。 また, 理論問題だけに着目しても, 出題形式の
変更はほとんどありませんでした。 いつもよりも 「ア~エの記述について正しいものには○, 誤っているものには × を付し
た場合の組合せを6つの選択肢から選ぶ」という形式での出題が多かったとは思いますが, 以前から出題されている形式
でしたので, 受験生が戸惑うこともなかったでしょう。
なお, 平成 28 年第Ⅰ回, 平成 28 年第Ⅱ回の座談会でも話に出たのですが, やはり過去の短答式試験で出題された
問題と似ている問題が散見されています。TACでは, 今までも, 過去の短答式試験の出題内容を分析し, 答練や配布
問題で類題を提供していますが, 今後も過去の短答式試験を意識した学習は必要でしょうね。
最後に, 「出題範囲の要旨」と 「実際の出題」を比較したところ, 特に乖離は見られませんでした。
久野 過去本試験問題との類似性は他科目でも指摘されていますね。 現在の試験制度に移行して 10 年, 現在の試験
平成 29年 公認会計士第Ⅰ回短答式試験 特別座談会
財 務 会 計 論
財務会計論-理論担当
岡安 俊英 講師
本 試 験 を ふりか えって ∼ 出 題 傾 向・合 格 ラ イン 等 ∼
制度に移行する際に公認会計士 ・ 監査審査会が公表した文書のなかに 「問題のプール」という表現がありました。 10 年
経過して機能し始めたのかもしれませんね。
それでは,個々の問題についてコメントをお願いします。問題1・問題2・問題3は理論ですので,岡安先生からですね。
岡安 問題1は 「財務会計の基礎概念」の問題で, 特に会計主体論の意義と役割に関する出題です。 さっそく難易度の
高い問題が出ましたね。 アとイが正しい肢であることは分かると思うのですが, それだけでは答えに辿り着けません。 ウと
エのどちらかが分からなければならないのですが, いずれも受験生にとっては確信を持って正誤判断するのは難しい肢
だと思います。 この問題は得点できなくても仕方ないのではないでしょうか。 ただ, ウの肢は, 平成 28 年第Ⅱ回の問題1
アとほぼ同じ文章ですので, 過去問をよく見ていた受験生は正答できたかもしれません。
問題2は 「財務会計の概念フレームワーク」の問題です。 必ず得点しなければならない問題ですね。 「財務会計の概
念フレームワーク」は, 毎年のように出題されている超重要論点ですから, しっかりと学習して試験に臨み, しっかりと得
点していただきたかったです。
久野 問題3は悩ましい問題みたいですね。
岡安 問題3は 「財務会計の機能と制度」の問題です。久野さんのご指摘の通り、難易度が高く,悩ましい問題ですね。
アの肢はすぐに分かると思うのですが, イ~エの肢は迷ってしまう受験生が多かったのではないでしょうか。 特にイの肢は
確信をもって正誤判断できないでしょう。 イの肢の 1 文目については, 「会社計算規則」第 14 条に関連する記述はあるの
ですが, 受験生はそこまで学習していないと思いますので。 ただし, イ~エの肢の中だと, ウの肢が比較的正誤判断しや
すいと思うのですが, アの肢とウの肢が分かれば答えに辿り着けるので, 正答できた受験生もいるかもしれませんね。
久野 次は, 計算, 金杉先生ですね。 問題順にお願いします。
金杉 問題4は 「棚卸資産の期末評価」の問題です。 難易度は高い問題です。 棚卸資産の貸借対照表計上額を求める
問題ですから, 単価 × 数量の単価がいくらになるかの判断がポイントです。 正味売却価額が取得原価を下回っている場
合, 正味売却価額まで簿価を引き下げる, これは当然理解していると思います。 しかし, 今回は正味売却価額を判断す
るにあたって売価から控除する金額のデータが細かく, 判断が難しかったでしょう。
問題5は 「固定資産 (資本的支出)」の問題です。 修繕費を資本的支出と収益的支出に按分し, 資本的支出を取得原
価に加えたうえで, 要償却額を残存耐用年数で割って当期の減価償却費を求めます。 内容は標準的ですが, 残存価額
に関する指示の解釈にやや迷ったのではないでしょうか。 資本的支出部分の残存価額をどうするかが悩ましいですが,
「建物本体の残存価額に変更はない」ことから, 当初の建物の 10%を残存価額として計算すると考えられます。
岡安 問題6は 「負債会計」の問題で, 特に偶発債務に関する出題です。 偶発債務だけに着目した問題も珍しいです
ね。 エの肢は少し難しいと思いますが, ア~ウの肢が平易ですから, 是非とも正答していただきたい問題です。 注意点と
しては, イの肢, 「回収不能となる可能性がある場合」とされていますが, 引当金の4要件を満たすには 「回収不能となる
可能性が高い場合」でなければいけませんね。
金杉 問題7は 「資産除去債務」の問題です。 例題の通りに解ける問題であり, 確実に得点してもらいたい問題です。 四
捨五入の指示を厳密に計算しないと少し数値がずれますが, 多少四捨五入のタイミングが違っても近似値から選択肢を
判断できます。
財 務 会 計 論 ----------------------
本試験をふりかえって∼出題傾向・合格ライン等∼
久野 問題8はさらに悩ましい問題みたいですね。
岡安 問題8は 「負債会計」の問題で, 特に引当金に関する出題です。 この問題も悩ましいですね。 企業会計上, 引当
金の4要件を満たした場合, 重要性が乏しい場合を除き, 引当金を設定しなければならないこととされています。 そのた
め, アの肢は誤り, エの肢は正しい, となります。 ただ, これだけでは答えに辿り着けず, どうしてもイの肢かウの肢で正
答しなければなりません。 ですが, どちらも, 受験生にとっては確信をもって正誤判断するのは難しいです。 イの肢は,
「財務諸表等規則」第 47 条や 「企業会計原則」に照らして, 正しいと判断することになります。 ウの肢は, 引当金の4要
件を満たしていない特別法上の準備金についても, 負債の部の中の流動負債 ・ 固定負債の次に別の区分を設けて記載
することになりますが, 負債性引当金とは区別されるものですので, 誤りと判断することになります。 まあ, なかなか高度な
判断が要求される問題ですね。 正答できなくても仕方ないでしょう。
金杉 問題9は 「建設業会計」の問題です。 建設業会計はややマイナーな論点という印象でしたが, 2016 年第Ⅰ回に
続き, 出題されました。 収益と原価の見積変更があり, 工事損失引当金を計上するという問題で, 内容は基礎レベルで
あり, テキストをきちんと学習していれば特に悩むこともなく解ける問題です。
岡安 問題 10 は 「金融商品会計」の問題です。 ア~ウの肢でしっかりと正誤判断して, 正答しましょう。 エの肢は, 分からな
い受験生が多かったかもしれませんが, 答えを導く上では全く影響はありません。 これは確実に得点したい問題です。
金杉 問題 11 は 「有価証券 (外貨建有価証券)」の問題です。 問われているのは貸借対照表に計上される有価証券の
合計額ですから, 売買目的有価証券とその他有価証券は期末の時価を, 満期保有目的の債券は償却原価を外貨建で
求めてCR換算して求めます。 この問題も得点すべき問題といえるでしょう。
岡安 問題 12 は 「ストック ・ オプション」の問題です。 これがまた難しい問題です。 ア~ウの肢は比較的簡単です。 少なく
とも, イの肢とウの肢は, 必ず誤りと判断できなければいけないでしょう。 そうすると2と6が残りますので, エの肢の正誤判
断で答えが決まるのですが。 エの肢は, 確信を持って正誤判断できる受験生はほとんどいないでしょうね。 この問題は得
点できなくても仕方ないでしょう。
金杉 問題 13 は 「ストック ・ オプション」の問題です。 頻出論点であり, かつ, 定型的な計算で解答できる点で, ストック ・
オプションは受験上, 費用対効果が非常に高い論点です。 今回も例題を練習している人にとっては難なく解答できたこと
でしょう。
岡安 問題 14 は 「リース取引」の問題です。 非常に基本的な問題です。 エの肢の 「300 万円以下のリース取引に」などと
いう細かい記載に動揺しないようにしましょう。 この問題も確実に得点したい問題です。
金杉 問題 15 は 「所有権移転外ファイナンス ・ リース取引 (前払い)」の問題です。 リース取引もストック ・ オプションと同
様, 頻出論点であり, また, 短答式試験の出題は基礎的な内容が多いことから, 十分に対策しておき, 出題されたら正
答して得点を稼ぎたい論点です。 今回も, 前払いである点に気を付ければ特に引っかかる要素はないと思われます。
岡安 問題 16 は 「退職給付会計」の問題ですが, これは得点できなくても仕方ない問題でしょう。 確固たる知識に基づ
いて正答できた受験生はほとんどいないでしょうね。 文章をよく読み, 空気もよく読み, 選んでみたら正解だった, という
受験生はいるかもしれませんが。 この問題ができなくても合否に影響はありませんね。
問題 17 は 「税効果会計」の問題です。 これは確実に得点しましょう。 ウとエの肢は, 少し難しいかもしれませんが, アと
イの肢は非常に簡単です。 エの肢も答練や配布問題で出題している問題ですので, 正誤判断できる受験生も多いでしょ
う。 いずれにしても, アとイの肢が分かれば正答できますので, この問題も確実に得点したい問題です。
久野 問題 18 は見解が分かれているという情報が入ってきているんですが。
金杉 問題 18 は 「固定資産の減損」の問題です。 割引前将来キャッシュ ・ フローの問題で, やや細かい知識が問われて
います。 しかしながら,TACのテキストでは, ほぼこの通りの例題を学習していますから, 対策していた人にとっては難し
くない論点です。
岡安 問題 19 は 「四半期財務諸表」の問題です。 基礎的な問題ですので, しっかりと正答しましょう。 エの肢は, 少し細
かい注記に関する肢ですから正誤判断できないかもしれませんが, ア~ウの肢は正誤判断できるはずです。
財 務 会 計 論 ----------------------
本試験をふりかえって∼出題傾向・合格ライン等∼
金杉 問題 20 は 「事業分離 (新規子会社)」の問題です。 事業分離全体の会計処理は, 個別上 ・ 連結上とあり, 相応の
量になりますが, 問われているのはのれんの金額のみです。 したがって,B社のタイム ・ テーブル資本合計から取得持分
をもとめ, 連結上の取得原価と差額を取れば求められます。 このように短答式試験の問題では, 問われている数値をピ
ンポイントで考え, 余計な処理を行わずに短時間で解答することが重要です。
問題 21 は 「包括利益」の問題です。 今回の問題は資料の与え方が, いつもと少し違うという点でやや戸惑った方がい
たと思います。 普段練習問題で解いていたようにタイム ・ テーブルを書く必要はなく, 各社のその他有価証券評価差額
金の当期の増減額を求め, 子会社や関連会社に関しては親会社持分比率を乗じて親会社株主に係る包括利益を求め
ます。
岡安 問題 22 は 「包括利益の表示」の問題です。 おそらくすべての肢について正誤判断できるでしょう。 仮に 1 つ分から
ない肢があっても正答できますので, この問題も確実に得点しましょう。
久野 最後の4問は計算の総合問題ですね。
金杉 問題23~26は 「連結財務諸表」の問題です。
現行の総合問題が大問 1 問, 配点6点 × 4ヶ所
の形式になってからは, 毎回総合問題は連結財
務諸表からの出題でしたが, 今回も予想に違わ
ず連結財務諸表の問題です。 企業集団の状況は
親会社P社がまず国内会社のS社を子会社とし,
後に在外子会社のT社を子会社とし, さらに子会
社T社が子会社S社の株式を追加取得するとい
う, 間接所有になっています。 その点で, 過去の
出題に比べ,組織の構造がやや複雑です。ただし,
親子会社間の取引は一切行っておらず, 資本連
結のみが問われています。 資料は2ページにまと
まっており, シンプルです。 取るべき部分は,S社
のみが子会社である 20X1 年度の数値を答える問題 23 とT社の換算を行えばよい問題 24 です。 問題 25 の資本剰余金
は間接所有における追加取得である点, 問題 26 の 20X4 年度の利益剰余金は集計箇所が多い点から解答できなくても
やむを得ないと思います。
久野 ありがとうございました。
さて,ここ2年間の平成27年第Ⅰ回・第Ⅱ回短答式試験・平成28年第Ⅰ回・第Ⅱ回短答式試験は,合格者数・合格率・
合格者水準は違和感の無いものだったと考えています。 この2年間の合格率 ・ 合格者水準を前提に, 短答式試験合格
者として正解しておくべき問題はどれでしょうね。
金杉 財務会計論-計算は全体の難易度は標準よりもやや易しく, テキストの内容の理解で解ける問題が多い印象で
す。 難易度をAとした, 資産除去債務, 建設業会計, 有価証券, ストック ・ オプション, リース会計, 固定資産の減損, 事
業分離はテキスト ・ トレーニングで十分練習していた人にとって難しい部分はないはずです。 固定資産の資本的支出は
残存価額に迷う点, 包括利益は資料の読み取りに迷う点から難易度をBとしました。 また, 棚卸資産は細かい知識を要
する点, 連結の資本剰余金は間接所有である点, 利益剰余金は集計が多い点で難易度をCとしました。
岡安 財務会計論-理論については, ここ数年と比較して難しい問題が多く, 難易度B, 難易度Cの問題も少なからず
あります。 具体的には, 問題1と問題3は難易度B, 問題8, 問題 12, 問題 16 が難易度Cとなっています。 それ以外の問
題は, すべて難易度Aとしています。
久野 得点 ・ 得点比率で言うとどれくらいになるのでしょうか。
金杉 財務会計論-計算では,AランクすべてとBランク半分の問題を正解して計算部分の配点 104 点中 76 点, 73%を
財 務 会 計 論 ----------------------
本試験をふりかえって∼出題傾向・合格ライン等∼
確保してほしいです。 もう1問間違えると 68 点, 65%, 他の科目で挽回できてもこの辺りが下限ではないでしょうか。
岡安 財務会計論-理論では, 難易度Aをすべて正答したとすると, 12 問中7問正答ということになりますから, 58%とな
ります。 また, 難易度Bと難易度Cで5問ありますが, この中で1問正答すれば, 12 問中8問正答ということで, 66%となり
ます。
12 問中8問正答してもらいたいという講師としての気持ちもありつつも, 現実的に考えれば 12 問中7問正答してあとは
計算でカバーしていくことになるのだと思います。
合格ラインは 12 問中7問~8問ということになるでしょう。
久野 財務会計論-理論は 56 点ですか。 58%になるのかな。 合計すると財務会計論-全体で 124 ~132 点, 62 ~
66%になりますね。
さて, 金杉先生, 岡安先生, 受験生の皆さんに, メッセージをお願いします。
金杉 論文式試験に向けて歩を進める方は, ここまでで自分なりの簿記の学習法が確立できているはずですから, 今ま
で通り, 自信をもって学習を継続してください。 簿記に関しては短答と論文で学習法を大きく変えなければならないという
ことはありません。 論文の重点的出題範囲に力点を置いて問題演習中心に学習してください。
次回の短答に再挑戦するという方は, 直ちに学習を再開する前に, 少し時間をかけて今回の失敗の原因を分析してみ
てください。 うまくいかなかったことには何らかの原因があるはずですから, 「もっともっと学習をすればいい」といった精神
論ではなく, 間違えた問題をなぜ間違えたのか, 次から何を気を付ければよいか, 冷静に考えて自分に不足していた部
分を補うような学習を心がけてください。
岡安 毎回, 最後に 「基本が大事だ!」 「基礎をしっかり学習するように!」と言っている気がしますが, 今年も結局同じ
です。 今回の短答式試験は難易度の高い問題が多かったですが, 合格ラインとした 12 問中7問に辿り着くためには, 難
易度Aの問題7問をすべて得点できればよいのです。 ということは, 合否の分かれ目となるのは, 難易度Aの問題を確実
に得点できたかどうかであり, つまり, 基本的な論点をしっかりとマスターしているかどうかということです。 この話は, 5月
の短答式試験でも, 8月の論文式試験でも全く同じといえるでしょう。 短答式試験も論文式試験も, 難しい問題を正答し
なければ合格できない試験ではありません。 基本的な問題を確実に得点することができれば合格できる試験です。 この
点も十分理解した上で, 今後の学習を進めていきましょう。
久野 お二人のおっしゃるとおりですね。
金杉先生, 岡安先生, ありがとうございました。
CERTIFIED
PUBLIC
ACCOUNTANT
平成 29年 公認会計士第Ⅰ回短答式試験 特別座談会
本 試 験をふりかえる
司会
久野 元靖 講師
最後に
久野 さて,改めて,受験生の皆さんが気にされる平成29年第Ⅰ回年短答式試験の予想合格ラインを検討してみましょう。
座談会冒頭にも述べましたが, 公認会計士 ・ 監査審査会は, 短答式試験の合格基準は, 「試験実施規則」により 「総
点数の 70%を基準として, 公認会計士 ・ 監査審査会が相当と認めた得点比率となり, 1 科目につき, その満点の 40%
に満たないもののある者は, 不合格となることがある。」としています。 一方, 例年 「公認会計士試験受験案内」に記載さ
れていた 「試験の公平性の観点から, 第Ⅰ回短答式試験と第Ⅱ回短答式試験の合格得点比率は, 原則として同じとし
ます。」という文言は昨年の 「平成 28 年公認会計士試験受験案内」には記載されず, 今年 「平成 29 年公認会計士試験
受験案内」にも記載されていません。
平成 26 年短答式試験では,
第Ⅰ回短答式試験の合格得点比率は 70%, 合格者数は 1,003 人, 形式合格率は 13.0%, 実質合格率は 16.8%,
第Ⅱ回短答式試験の合格得点比率は 68%, 合格者数は 402 人, 形式合格率は 6.1%, 実質合格率は 8.2%となってい
ます。
平成 27 年短答式試験では,
第Ⅰ回短答式試験の合格得点比率は 60%, 合格者数は 883 人, 形式合格率は 12.3%, 実質合格率は 15.9%,
第Ⅱ回短答式試験の合格得点比率は 67%, 合格者数は 624 人, 形式合格率は 10.3%, 実質合格率は 13.9%となって
います。
平成 28 年短答式試験では,
第Ⅰ回短答式試験の合格得点比率は 67%, 合格者数は 863 人, 形式合格率は 12.3%, 実質合格率は 15.8%,
第Ⅱ回短答式試験の合格得点比率は 66%, 合格者数は 638 人, 形式合格率は 8.0%, 実質合格率は 13.5%となって
います。
平成 26 年試験では, 短答式試験の第Ⅰ回と第Ⅱ回とで合格率の乖離が顕著になっていますが, おそらくは異例な数
値としてみておいたほうがいいでしょう。 短答式試験合格率の推移は, おそらく, 論文式試験受験者数が影響しているで
しょうね。
平成 26 年短答式試験年間合格者数 1,405 人, 論文式試験受験者 2,994 人, 論文式試験合格者 1,102 人。
平成 27 年短答式試験年間合格者数 1,507 人, 論文式試験受験者 3,086 人, 論文式試験合格者 1,051 人。
平成 28 年短答式試験年間合格者数 1,501 人, 論文式試験受験者 3,138 人, 論文式試験合格者 1,108 人。
このような状況下で行われた今回の平成 29 年第Ⅰ回短答式試験の願書提出者数は 7,818 人と公表されています。 減
少し続けていた第Ⅰ回短答式試験願書提出者数が増加に転じましたね。
ここでは, データリサーチ等の受験生さんの得点状況を見ることができませんので, まず, 各科目レベルで考えてみま
しょうか。
金杉 財務会計論-計算では,AランクすべてとBランク半分の問題を正解して計算部分の配点 104 点中 76 点, 73%を
確保してほしいです。 もう 1 問間違えると 68 点, 65%, 他の科目で挽回できてもこの辺りが下限ではないでしょうか。
岡安 財務会計論-理論では, 12 問中8問正答してもらいたいという講師としての気持ちもありつつも, 現実的に考えれ
本 試 験 を ふりか える ----------------------
最後に
ば 12 問中7問正答してあとは計算でカバーしていくことになるのだと思います。 合格ラインは 12 問中7問~8問ということ
になるでしょう。
高岡 管理会計論では, 計算 ・ 融合問題, 理論問題を合計すると 74 点となりますが, 本試験の緊張感, 誰にでも必ずあ
るケアレスミスを勘案すると, 1 問分差し引いた 70 点前後が合格ラインとなるのではないでしょうか。
高橋 監査論として, 他の受験生よりもアドバンテージを取りたいのであれば, 少なくとも 15 問 ・ 75 点は取ってほしいとこ
ろです。
田崎 企業法は, 講師間の話合いでは, 企業法の合格ラインは 80 点ということでした。
久野 財務会計論 124 ~ 132 点+管理会計論 70 点+監査論 75 点+企業 80 点=349 点 (69.8%)~ 357 点 (71.4%)。
近年になく高い数字になっていますね。。。。 う~ん。。。。 まじ???。
ここまでの, そして, ここからの推定は受験者の皆さんの協力による 「データリサーチ」の結果を見ずに行っています。
したがいまして, その内容次第では,TACの予想合格ラインは修正されるかもしれません。 また, 合格得点比率 ・ 合格
者数は, 公認会計士 ・ 監査審査会によって決定されます。 また, おそらくは, いくつかの問題で受験指導校の解答例が
分かれることがあるかもしれません。 過去には, 受験指導校間で一致していた解答例が誤っていることになった場合もあ
りますし, 1 つの問題について正解が2つあるとされたこともありますし, 全員正解とされたこともあります。
さて・・・
(中略。 この部分, 議論が長くなりますし, 諸般の事情もございますのでご容赦ください。)
久野 それでは, 先生方, よろしいでしょうか。
12 月 11 日, 23 時 30 分現在, 平成 29 年第Ⅰ回短答式試験を終えた段階での予想合格ラインとして,
講師陣が短答式試験合格者として期待する水準は
総点数の 「70∼71%」前後,
公認会計士 ・ 監査審査会が短答式試験合格者数の増加を意図するならば
総点数の 「70%」前後
となると推測されます。
合格発表の日までは前向きに,
合格発表の日までにやっておくべきことをしっかり学習
されることを願います。
とします。
なお, ここでお話しした予想合格ラインは,TACの最終予想合格ラインではありません。 この座談会の状況が皆さんの
目に触れる頃には, 「データリサーチ確定集計結果」も公表されています。 必ず, 「データリサーチ確定集計結果」を参
照してください。
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本 試 験 を ふりか える ----------------------
最後に
久野 今回の平成 29 年第Ⅰ回短答式試験, 形式的には昨年の短答式試験同様でしたが, 管理会計論で配点等の微
妙な変更があったようです。取り組みやすい科目・問題が多かったようですので,気持ちよく試験を終えられた方が多かっ
たのではないでしょうか。
さて, 公認会計士試験に合格するために, 1 月~3月 ・ 4月はとても大切な時期です。 最終目標は論文式試験合格で
あることを見据えて, 学習スケジュールを考えてくださいね。
次が 「論文式試験の方」, 「短答式試験の方」, 共通なんですが, これからは 「論文式試験合格を目標とした体系的理
解 ・ 理屈を深める学習」ないし 「短答式試験合格に必要な正確な知識および短答式試験合格を後押しし論文式試験合
格を目標とした体系的理解 ・ 理屈を深める学習」の時期です。 4月下旬からスタートする第 1 回論文式全国公開模試を
一つの目標として学習を進めていってください。 第 1 回論文式全国公開模試までに積み残しのない状態にしておけば,
第 1 回全国公開模試の成績を反映した修正行動を含む5月以降ないしは6月以降の効果的学習が可能になります。 そ
のために, 通常の論文基礎答練, 論文応用答練の出題範囲指定に合わせて, 毎回, 仕上げた状態でいけば, 自動的
に第 1 回論文式全国公開模試までに数回転はできます。 与えられるカリキュラムは利用しない手はない。
論文答練に追われて理論中心の学習になる方もいらっしゃいますね。 計算力の維持を忘れないように。 計算力に不安
がある方は論文答練が本格化する前に計算力を高めてください。 計算力を高めておいて, 計算問題さえ解けば計算力
が維持できるという状態・気持ちになることを早期に達成してください。成績が上昇していく方のよくあるパターンとして「先
に計算が安定し, 理論が後から上がってくる」というものがあります。 計算に最低限の時間を割けば計算力の維持ができ
ると思えるようになると, 遠慮なく理論に時間を配分できてくるんですね。
次が 「論文式試験」の方。 お願いだから, 短答式試験合格で満足しないでくださいね。 ダレちゃだめですよ。 この趣旨
のことは多くの講師が話すと思いますが, 本当に, いらっしゃるんですよ, 燃え尽き症候群みたいな方が。
次が 「短答式試験」の方。 短答式試験対策に偏る, とか, 論文式試験対策に偏るとかは禁物です。 短答式試験対策と
論文式試験対策って同時進行できます。 同時並行じゃないですよ。 計算分野って, 短答式試験でも論文式試験でもや
ることは一緒です。 理論分野でも, 論文式答練のための準備でテキスト等を読んでいても, 工夫次第で, テキストに短答
答練で出題された記載の箇所に印をつけるとかですが, 短答式試験に必要な知識の正確性を高めることができます。 短
答式試験に気持ちよく合格するためには 「正確な知識」と 「体系的な理解 ・ 理屈」が両方とも必要です。 文章の正誤判
定をするために 「知識」だけを使っていませんよね。 知らないことが出てきたら 「理解 ・ 理屈」も使っているはずです。 理
解を高めながら正確性もつける。 バランスよく学習してください。 車の両輪ですから, 回らないと動かないし, どちらかか
が強いと曲がってしまう。 1 月から3月 ・ 4月の間, 「正確な知識」と 「体系的な理解 ・ 理屈」を高めることの同時進行がで
きれば, 5月 ・ 8月のセット合格が見えてきます。
「まず短答式試験に合格したい」と考える方もいらっしゃるかと思います。 計算が不安定な場合には, まず計算で 「悪く
ても平均点」を確保できるご自身になってください。 極端な話, 理論はそれからでもいいんじゃないかな。TACのカリキュ
ラムでいうと入門・基礎マスター期でやらなければいけなかったことが足りないから今の状況になっているんじゃないでしょ
うか。 それを取り返しましょう。 取り返せばいいだけです。 取り返すための学習に 1 年かけるのか, 半年かけるのか, 3ヶ
月でやるのか, 1 ヶ月でやるのか?ですよ。 理論は, 先ほども似た趣旨を言っていますが 「知識」に頼りすぎないことで
すね。 「正確な知識」と 「体系的な理解 ・ 理屈」の両方が短答式試験合格に必要であることを意識してください。
「何度受けても少し足りないんです。」なんて言葉も耳にします。 「講師学習相談」とか 「個別成績 ・ 学習方法相談」とか
で, 学習方法をすぐに修正できる方もいらっしゃるようですね。 「少し足りない」の原因をきちんと考えないと同じことの繰り
返しになるかもしれません。 学習する姿勢として, 計算なのか理論なのか, 「みんなが取れるところを落とさない」って意
味を誤解していないか, 「体系的な理解 ・ 理屈」ができていないのに 「知識」の詰め込みに走っていないか, 「体系的な
理解 ・ 理屈」を重視しすぎて 「正確な知識」があいまいになっていないか, 答練の点数だけを気にしていないか, 答練の
復習をしていて 「知らなかった」ことを 「知った」状態にしたから大丈夫なんて思っていないか ・ ・ ・ 。 試験時間中の行動と
して, 問題の見た目にごまかされていないか, とらなきゃいけないという思い込みにとらわれていないか ・ ・ ・ 。 いろんな原
本 試 験 を ふりか える ----------------------
最後に
因があります。 次には間違えないために自分に何が足りなかったのか。 「後少し」が何かは考えなきゃいけない。 「講師
学習相談」とか 「個別成績 ・ 学習方法相談」とかで, お手伝いしかできないんですが, 少なくとも, ヒントぐらいは見つかり
ます。
次が 「論文式試験の方」, 「短答式試験の方」, 共通的な内容に戻りますが, ご自身のインプットのメインとなる教材,
テキストにせよレジュメにせよ, それを大切にしてください。 基礎力の確認をしながら, 丹念にインプットを行ってください
ね。 「理解すべきは理解し」 「暗記すべきは暗記し」 「正確にすべきは正確に」を心がけてください。 そして普段から, ア
ウトプット的な要素, 必要なことを頭から出す, 本試験時間中の頭の中の動きを練習することを学習に取り入れてくださ
い。
関東のみならず, 東海 ・ 関西, 全国の講師の皆さん, お疲れ様でした。 この後, まだ 「解説」作成業務が続くと思いま
すが, そちらもよろしくお願いします。
そして, 平成 29 年第Ⅰ回短答式試験を受験された皆さん, お疲れさまでした。 まだ, 次の本試験に向けて地道な努力
の日々を続けてください。 「効率的」な学習方法ってないです, 「効果的」なものならあるかもしれないけれど。 短答式試
験にせよ論文式試験にせよ, 厳しい試験になるかもしれませんが, がんばっていきましょう。
2017 年が良い年になりますように。
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追記 : 久野 短答式試験当日の座談会では, 「データリサーチ」の結果を見ずに, 出題水準からの予想合格ラインを検
討しています。 先ほど 「データリサーチ中間集計結果」を一瞥しました。 「予想合格ライン」は, 大きな修正は行わないか
もしれませんが, 修正する可能性がありますので 「データリサーチ最終集計結果」等を 「データリサーチサイト」 「@C.P.A.」
等でご覧ください。