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2012年冬季
目次
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米大学院出願プロセス
僕のSoP論
英語力を磨くためのPodcast活用法
(連載)The Philosophy of a Bohemian - 冒険について
アンケート
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䝮䝷䜳䠅䚭 http://onomasahiro.net/fi les/Ono_sop2.pdf
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習、ビザ取得などについての情報も掲載します。最新号の
発行はメーリングリストにてお知らせします。バックナンバー
はホームページにてご覧い ただけます。
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英語力を磨くためのPodcast活用法
Massachussets Institute of Technology
大久保 達夫
英語圏への留学を目指している人や現在留学している人にとっ
て、
「いかにして英語力を向上させるか」は常日頃から頭にある重
要な問題であると思う。そのような中、勉強を進めていく上でつい
つい陥りがちなのが、英語を学ぶこと自体が自己目的化してしまう
ことだ。大学院留学では英語「で」学ぶことが重要であり、英語「を」
学ぶことで終わってはいけない。そのためには自分が興味を持て
る内容の英語を多く聞くことで、そこに含まれた情報を学びとりつ
つ、同時に情報を伝える媒体としての英語に慣れていくのが理想
的と言える。
大久保 達夫
Department of Brain and
Cognitive Sciences, MIT
幸いにしてインターネットの発達により、英語のラジオ番組や
podcastを聞くのはいとも簡単にできるようになった。そこで本稿
では、大学院留学生活で必要となる英語力を磨くのに役立つラジ
オやpodcastの番組を、目的別に整理し、周りのネイティブ・スピー
中で聞いている。その他のニュース系としては、同じくNPRから出
カー間での評判や、私自身の経験を元に紹介する。なおこれらの
ているPlanet Moneyがあり、
こちらは時事的な経済トピックをやさ
番組は、英語を母語とする人が日々聞くものであるため、学習教材
しく解説している。
よりもスピードが速く語彙も高度である。いきなりは難しく感じる場
合は、無理をせず自分が楽しめる所から徐々にステップアップする
ことが継続するための秘訣である。
2. 最先端の科学に触れる
一流科学誌として有名なイギリスのNatureとアメリカのScience
1. 時事ネタを仕入れる
だが、雑誌だけでなく、podcastも毎週配信されている(Nature
podcast, Science podcast)
。
これらのpodcastでは、その週の雑誌
専門分野に関する英語は、教科書や論文等を通じて触れる機会
に載った幾つかの記事や論文が取り上げられ、著者へのインタビ
も多いので、勉強は比較的しやすい。それに対して、昼休みやパー
ューや編集部による簡単な解説が加わる。
これらのやり取りを聞く
ティーの際の会話では、専門分野を離れた時事ネタが話題に上る
ことで、自分の専門以外の科学分野でどのような発見があるのか
ことも多く、留学生にとっては難しく感じることもあるだろう。
を知ることができ便利である。
また論文の著者へのインタビューを
その対策としては、普段から時事ネタを仕入れることに尽きる
聞くことで、最先端の実験結果をいかにして他分野の人に分かり
が、
アメリカの公共ラジオ局のネットワークNPR (National Public
やすく伝えるかの技術を学ぶことが出来る。
また Science podcast
Radio)は絶好の教材である。NPRは毎時間5分程度のニュースを
の番組の台本(script)はオンラインで入手できるため、聞き取れな
配信しており、重要なニュースを短時間で掴むのに適している。
こ
かった部分は文字にて確認することが出来る。
このようなフィード
れだけ短いと一度聞いて分からなかったところを辞書で調べてか
バックがあると、学習効果は大きい。
ら、
もう一度聞くといった学習法が可能となる。
またMorning
Edi-
tionやAll Things Consideredの2つの番組では、ニュースの解説
から話題の新刊に至るまで、
トピックが数分で次から次に移ってい
くので、流して聞くのに適しており、多くのアメリカ人が通勤時に車
www.npr.org/programs/morning-edition/
www.npr.org/programs/all-things-considered/
www.npr.org/blogs/money/
vol.09
www.nature.com/nature/podcast/
www.sciencemag.org/site/multimedia/podcast/
4
抱える問題点を浮き彫りにする物語構成力は見事であり、そのシ
3. 質問力を磨く
大学院生活を送る上では、講義を受動的に聞くだけでなく、不
明点を的確に質問する能力が求められる。あたりさわりのない質
問では会話の内容は深まっていかないが、かといって不躾な質問
をして相手の機嫌を損ねてもいけない。その辺りの匙加減はなか
なか難しいが、質問力を向上させるために参考になるのが良質の
インタビュー番組である。
インタビュー番組と言えば Fresh Air が
有名だ。その内容は、30年以上にも渡ってパーソナリティーを務
めているTerry Grossが、作家、俳優、企業家からシェフに至るまで
ニカルな切り口には毎回驚かされる。
科学的な話や心理学的な現象を取り上げ、軽快な二人の掛
け合いからなるRadiolabもストーリー性に優れている。音響効果
も凝っており、自然と引き込まれる番組作りとなっていて、上記の
This American Lifeがテーマ的に重いと感じている人には、
こちら
がお薦めだ。
5. プレゼン力を磨く
の様々な人と対談するというものである。彼女の質問は物腰柔ら
かではありながら、時折鋭いところを突き、
ゲストの本音をうまく引
き出すことに成功している。その他に、オンラインで見られるイン
大学院での仕事もまとまってきたら、いよいよその成果をプレゼ
ンテーションする番である。20分程度のプレゼンテーションの映
像集にTEDがある。
カバーする内容は自然科学から人文科学に至
タビュー番組としてテレビPBSのCharlie Roseがある。
るまで幅広く、多くの有名人も登場しそのレベルは高い。
ここでの
プレゼンテーションは、
データを朴訥に語るという日本人好みのス
タイルとは異なると思われる方もいるかもしれない。確かにそれ
も一理あるが、詳細に入りすぎず big picture を伝えることに集中
する、
スライドを棒読みせず補助的に使う、聴衆との一体感を意識
する、
といったプレゼンテーションの基本を数多くの実例を見るこ
とで学ぶことが出来る。
www.npr.org/programs/fresh-air/
www.charlierose.com
4. ストーリー力を磨く
研究を進めていくためには、実験や理論の結果を出すだけでな
www.ted.com
6. 最後に
く、
これらを一貫性のあるストーリーに仕立てていく作業が必要で
ある。そのためには、表面的には関連が薄いと思われる題材の間
に、本質的なつながりがあることを見抜いて、
あるテーマでひとくく
りにして議論することが有効となる。以下に紹介する番組は、毎回
一つのテーマを元に、それにまつわる何幕かの小話によって構成
されている。
ある家族や個人の生き様を追うことで、アメリカ社会の一面を
浮かび上がらせるThis American Life。
ここで取り上げられる人々
は華々しく活躍するスター達ではなく、普段はなかなか陽の当ら
ない人たちであるが、その人らの視点から、現代のアメリカ社会が
このような番組を聞くことで、
どのような効果が期待できるであ
ろうか。
その一つとして知らない単語を文脈から類推する力がつく
ことが挙げられる。時事英語の中には難しい単語も多く出てくるの
で、それらを事前に知っているケースは少ないと思われる。
しかし
会話の中で、同じ単語が繰り返し出てくるにつれて、次第に自分の
中で意味が推測できるようになれば、
しめたものである。
それ以外
にも、会話における重点の置き方に関しても学ぶことができる。
ど
の会話も無駄ないように構成されている教科書とは異なり、実世
界の会話はキーとなる質問から、軽く受け流すだけの相槌まで様
々な重要度からなる会話が織り交ぜられている。そのような会話
に多く触れることで、英語の会話のリズムに慣れることができる。
今回紹介したほかにも、オンラインで入手できる番組は数多く
あり、パソコン好き用の番組、洋楽好き用の音楽番組等、
自分に合
うものが見つかると思う。
これらの番組は、ネイティブ・スピーカー
が聞くものであるから決して易しくはないが、
自分の好きな題材の
番組を探して、継続して聞くことができれば、英語力のアップのみ
ならず、アメリカの現代社会や文化背景に対する理解の向上にも
役立つことと思う。いつのまにか次週のエピソードを楽しみにして
いる自分を発見できれば、情報をやりとりする手段としての英語
www.thisamericanlife.org
www.radiolab.org
vol.09
が物になってきた証拠である。
5
慶応義塾大学 理工学部
連載:The Philosophy of a Bohemian
小野 雅裕
(3) 旅について
僕が留学を決めたいまひとつの理由は、旅が好きだったから
ためである」
というゲーテの言葉がある。お目当ての観光地に予
だ。僕はバックパッカーだった。旅程を決めずホテルも取らず、
リュ
定通りに着きピースして写真を撮るだけの旅に旅情はない。旅の
ックサックひとつ背負って気の赴くままに旅をする。地元民に混じ
途中の心温まる出会いや予想外の体験にこそ旅の醍醐味がある
って汗臭いバスに揺られ、
シャワーのお湯が出ない一泊5ドルの
のだ。
安宿に泊まり、
カタコトの現地語で心温まる交流をすることもあれ
そして想像力のある人ならば、ゲーテが先の言葉で人生を旅
ば、怪しい日本語を喋る悪徳商人に騙されることも度々。
そんない
に例えていることが分かるだろう。
たとえば、大学の専攻や研究室
い加減な旅を、学生の頃は休みの度にしていた。
を、就活に強いかそうでないかで選ぶ学生がいる。留学すると就
訪れる観光地、泊まるホテルから三食のメニューまで全て予定
活に有利になるか、などと質問する人もいる。彼らはそこまでして
が組まれたパッケージ・ツアーと違い、バックパックの旅路では何
人生の旅程を前もって定め、パッケージツアーのように予定通り
が起こるか、誰に出会うかは、全く予想不可能だ。ペルーやインド
の一生を歩みたいのだろうかと思ってしまう。高校時代を大学受
ネシアで子供たちの草サッカーに飛び込み、キューバやニカラグ
験のために過ごし、大学時代を就職活動のために過ごし、就職し
アでは草野球に混じった。家に招待されてご馳走になったことも
たら安心した老後を送るための貯金を作ることにいそしんで、そ
何度かあった。
ガンビアで宇宙好きの青年と出会ったり、キューバ
の先にある目的地とは一体何だろう。死でしかないではないか!そ
でドラえもん好きのオタクに出会ったりした時には、僕から夕食に
んな目的地に予定通りに到着するためのパッケージツアーなど、
誘った。韓国でうっかりパスポートと一緒に海に飛び込んでしまっ
何の意味があろうか!ゲーテの言葉をこう言い換えることができよ
たり、
メキシコで夕食に誘われ付いていってみれば相手がゲイだ
う。人が生きるのは死ぬためではなく、生きるためなのだと。
ったなどというハプニングも、今では笑い話だ。
そうは言ったところで、偉大な先人たちの波乱万丈な生涯と比
行き当たりばったりの旅に慣れるにつれ、
「やってみれば案外何
べれば、僕の今までの人生などこの上なく平穏だ。現在の日本は
とかなる」
ということが分かってくる。
コスタリカからニカラグア国
雲行きが怪しいから、若者が安定志向になるのも無理もない。だ
境へ向かった時に、
ただバスを乗り継いで行ってもつまらないから
から受験勉強や就職活動を真面目に頑張る人を悪く言う気は毛
と、川沿いの町で降り、民家を一軒一軒ノックして、船を出してくれ
頭ない。
でも、いくら平凡で保守的な人生だって、要所要所に訪れ
ないか聞いて回った。何事もやってみるもので、路上で会ったオバ
る分岐点、たとえば学校選び、専攻選び、研究室選び、会社選び、
サンから
「アントニオが船を持っている」
という唐突な情報を得た。 ひいては「婚活」などにおいて、受験や就活に強いとか、大企業だ
アントニオとはどこの誰ぞや、
と思ったが、小さな町だったのでい
から安定だとか、そういった退屈な打算のみで選ぶのではなく、
自
とも簡単に見つかった。かくして僕らは翌朝にアントニオの小船に
分はこれが好きだからこの道を選ぶのだと素直に言えるような、そ
乗って川を下った。
しかし、無事に目的地に着いた安堵よりも、途
んな単純な生き方の方がきっと面白い。バックパック旅行のように
中で見た素晴らしい風景のほうが、旅の思い出として強く記憶に 「やってみれば案外何とかなるさ」
くらいの気持ちで気の赴くまま
残っている。Caño Negroと呼ばれるその一帯は野生の宝庫で、そ
に歩を進める方が、
ちょっくらいリスクがあったって、人生という旅
こらじゅうにワニが泳ぎ、色鮮やかな熱帯の鳥が群れていた。黒く
の途中の豊かな出会いや美しい景色を楽しめるものではないか
大きな羽を朝日に向けて凛然と広げ、その間から白く長い首を伸
と、僕は思う。
ばす美しい水鳥がいた。
アントニオがそれを指差しつつ僕らの顔
を見て、
「アニンガー!」
と叫んだのを覚えている。
もちろん、無計画な旅は相応のリスクも伴う。道に迷う、ぼったく
られるなど小さなトラブルは日常茶飯事だが、大きなトラブルも二
つ経験した。ひとつはガンビアで川に飛び込んで足を切り、麻酔な
しで三針縫ったこと。
もうひとつはバハマで強盗に遭い、ナイフを
突きつけられて身包み剥がされたことだ。
しかし、
リスクがあるから
といって旅を止めようとは決して思わない。いずれの時も多くの現
地人の優しさに助けられ、むしろトラブルに遭った場所を好きにな
った。おかげで飲み会で披露する武勇伝に事欠かないし、多少の
事には動じない度胸がついたと、ポジティブに考えている。
「人が旅をするのは目的地に到着するためではなく、旅をする
本記事は全6回に渡って連載される記事の第3回目です。
vol.11
ニカラグアで草野球をした子供達と
(筆者は右上)
小野 雅裕
慶應義塾大学 理工学部物理情報工学科 助教
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