マスコミの当院に関する報道姿勢に関する意見 平成 28 年 12 月 14 日 医療法人財団緑生会(以下「当法人」といいます。)が運営する水口病院(以 下「当院」といいます。)における、母体保護法 14 条 1 項に基づく医師会の指 定を受けていない医師が、人工妊娠中絶手術(以下「中絶手術」といいます。) を行ったこと(以下「本件事件」といいます。)は、マスコミを通じ、既に広く 報道されているところです。本件事件については、完全に当法人の不徳の致すと ころであり、深く反省しております。 しかしながら他方で、本件事件に関する報道は、マスコミにより意図的にミス リードされたものであり、 「誤報」ともいえるものです。これら一連の報道の影 響により、当院に入通院されていた皆様方、当院でお産等をされた皆様方、その 他関係者の皆様方に、多大なご不安、ご迷惑をおかけする結果となりました。 当然のことながら、当法人が本件事件を起こさなければ、マスコミで報道され ることはありませんでした。そのため、報道に関する一次的な責任は当法人にあ ります。しかしながら、公共機関であるマスコミが意図的なミスリードにより社 会に誤った認識を持たせることは到底看過できません。当法人としては、マスコ ミの報道姿勢に一石を投じたいと考え、本意見を公表するものです。 記 1 意見の趣旨 本件事件に関する報道は、意図的にミスリードされたものであり、マスコミ の報道姿勢は極めて不当なものです。 2 意見の理由 (1)マスコミの報道内容 マスコミにより具体的表現は異なりますが、概要、 「①当院において医師 1 の資格を持たない者が、②胎児が育たないと診断された患者様に対して中絶 手術をし、③その結果、患者様が死亡した。」と視聴者ないし閲覧者(以下 「視聴者等」といいます。)が誤解する報道をしました。 (2)報道内容が事実に反すること ア ①医師の資格を持たない者が手術をしたとする点 本件事件で中絶手術を担当した医師は、医師の資格と産婦人科専門医の 資格を有していました。 イ ②胎児が育っていないと当院が診断したとする点 本件事件で当院が患者様に対し、胎児が育っていないと診断したことは ありません。また、当院が患者様に対し中絶手術を勧めた事実もありません。 ウ ③中絶手術の結果、患者様が死亡したとする点 中絶手術と患者様の死亡との因果関係は、行政解剖で否定されています。 また、これまでに監督官庁や捜査機関から、因果関係があると指摘されたこ とはございません。そのため、当法人としては、中絶手術と患者様の死亡と の間に因果関係はないものと考えています。 (3)報道内容が事実に反する憶測を呼んだこと 「胎児が育っていないと診断されたため、当院に中絶手術を勧められた」 と報道されたことにより、患者様は稽留流産であり、本来流産手術を行うべ きであったのではないかとの意見が、インターネット上で広くみられるよう になりました。 他方で、当院は確かに患者様に対し、中絶手術を行いましたので、当法人 はその旨のプレスリリースをしました。そのため、当法人とご遺族様の話が 食い違い、当院に対しては、流産手術をすべきであるにもかかわらず、当院 の利益のためにあえて患者様に中絶手術を勧めたなどと、事実に反する憶測 を呼びました。当然、当院がそのような行為に及んだことはありません。 (4)マスコミの報道姿勢の問題点 2 ア 「医師会の指定を受けていない医師」を「無資格医師」としたことについ て 大多数のマスコミは、本件事件で中絶手術を担当した医師が「無資格医師」 であると報道しました。しかし、「無資格医師」では「医師資格を持たない 医師」と視聴者等の誤解を招きます。本件事件では、中絶手術を担当した医 師が、母体保護法 14 条 1 項に基づく医師会の指定を受けていなかったこと が問題だったのであり、これを「無資格医師」と表現することは不適切です。 イ 死亡との因果関係について 当法人は、本件事件が報道がされるより前に、ご遺族に対し、診療記録を 開示しました。そして、本件事件を最初に報道したフジテレビ「みんなのニ ュース」を監修する医療ジャーナリストから取材を受けたとき、同ジャーナ リストは、患者様の診療記録に事前に目を通したうえで取材に臨んでいる様 子でした。また、同ジャーナリストは、中絶手術と患者様の死亡との間の因 果関係が不明であることも理解していましたし、中絶の理由もご存じの様子 でした。そのため、少なくともフジテレビは事実に沿った報道をすることが 可能であったと思われます。 しかしながら、平成 28 年 12 月 5 日に放送された「みんなのニュース」 では、アナウンサーやナレーターが、 「亡くなったこととの因果関係は不明」 などと、ところどころに断りをいれながらも、冒頭でご遺族様が患者様の死 に対する想いを述べる場面を放送し、「中絶手術により患者様が死亡した」 と視聴者等が誤解しやすい番組構成で放送を行いました。因果関係が不明な らば、ニュースの冒頭で患者様の死亡に関する場面を放送する必要はないは ずです。あえて放送した理由は、中絶手術によって患者様が死亡したと視聴 者等に印象付けようとしたからに他なりません。 そして、他のマスコミも、みんなのニュースの報道内容を受けて、同様に 誤解を招く報道を繰り返しました。そして、上記 2、(4)、アと併せ考える 3 と、マスコミは「当院で医師の資格を持たない者が中絶手術を行ったことに より患者様が死亡した」と、視聴者等を意図的にミスリードしようとしたこ とが明らかです。 ウ 胎児が育っていないと当院が診断したことについて 平成 28 年 12 月 7 日には、ご遺族様の記者会見に関する報道がされまし た。これを受けてマスコミ各社は、中絶手術の理由が「胎児が育っていない と当院に診断されたから」と放送しました。しかし、上記 2、 (2)、イのとお り、係る診断を当院がしたことはありません。また、既にインターネット等 で多数指摘されているように、胎児が育っていないから中絶手術をするとい うのは、医学的に見て考え難いものです。 また、胎児が育っていない場合は、しばらく様子を見てから流産手術をす ることが通常です。しかし、流産手術であれば、母体保護法の指定は必要あ りません。そのためこの場合、手術を担当した医師が無資格であると報じる こと自体がそもそも誤りです。 このように、医学的に見て考え難い、あるいは誤った内容の報道を、事前 に検証もすることなく放送したことで、当院の患者様をはじめ、お産を予定 している、あるいはお産を経験している方々の混乱を招き、不快感、不安感 を与えました。 (4)まとめ 以上のとおり、フジテレビ「みんなのニュース」を発端とする本件事件に 関するマスコミ各社の報道は、「当院において医師の資格を持たない者が中 絶手術を行ったことにより患者様が死亡した」と視聴者等に印象付けるよう に、意図的にミスリードされたものです。また、現実に、このような印象を 持たれた方による当院に対する厳しいご意見が、インターネット上に溢れて います。 マスコミは、視聴者等の知る権利に奉仕するための公共機関です。このよ 4 うな公共機関としての役割を持つマスコミが、結論ありきで十分な取材や検 証を行わず、視聴者等をミスリードする報道をし、世論を誘導することは、 極めて問題であると考えます。 マスコミには、客観的資料に基づいた、冷静かつ正確な報道をしていただ きますよう、強く求める次第です。 以上 5
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