米州開発銀行 - 日本格付研究所

2016年12月15日
11005
米州開発銀行
チーフアナリスト
アナリスト
田村
山本
喜彦
さくら
長期格付
AAA
見通し*
安定的
短期格付
―
(長期格付は、原則として長期発行体格付を表示)
※本件は20xx年xx月x日付で格付を変更しました。同日付のニュースリリースを御参照ください。
※あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
バル経済における発展のため政府の潜在力、競争力を
強化する支援②公的機関の効率化および透明性向上③
貧困層にとっての機会を創造・拡大するプログラム④
財・サービス市場の発展に資する政府間の連携、地域
経済統合の促進―が挙げられる。
IDBの出資国であり、貸付先である中南米・カリ
ブ諸国は、総人口5億8,600万人、名目GDP合計は5
兆7,950億米ドル、一人当たりGDPは平均9,889米ド
ルに上る(15年時点)。国際金融危機や一次産品価
格の下落を経て、中南米・カリブ諸国の成長率は低
下している。それとともに、一部の加盟国の資金調
達環境は悪化しており、IDBの開発資金に対するニ
ーズは一段と高まっている。
IDBの業務は、民間資金をより効果的に開発に動
員する触媒としての役割も担っている。民間部門、
公的部門の各業務の効率的、効果的な連携を目的と
して、16年にIDB内の全ての民間部門業務をIICに集
約した。このため、民間部門向け貸付で不稼働資産
が発生したとしてもIDBがこれを計上することはな
くなり、不良債権比率は先々低下していくと見込ま
れる。
近年、IDBは、環境・社会面での持続可能性を考
慮し、男女同権、気候変動への対応、持続可能なエ
ネルギーの振興などに焦点を当てた業務を拡大して
いる。15/12期の貸付実行額103億米ドルのうち35%
相当が、気候変動および環境的持続可能性に配慮し
た貸し付けであった。
1. 企業概要
米州開発銀行(Inter-American development Bank、
IDB)は、中南米・カリブ諸国の経済社会開発を支
援することを目的として1959年に設立された国際開
発銀行(MDB)である。IDBの加盟国は、域内借入
国26ヵ国、非借入国22ヵ国の計48ヵ国である。米国
ワシントンD.C.に本部を置き、域内加盟国のほか、
東京、パリを含め計28拠点を有し、職員数は2,000名
超に上る。05年10月から、元コロンビア開発大臣の
ルイス・A・モレノ氏が総裁を務めている。
IDBグループは、通常資本(OC)、特別業務基金
(FSO)、無償資金ファシリティ、多国間投資基金
(MIF)からなるIDBに加え、米州投資公社(IIC)
、
中期融資枠勘定(IFF)、IDB交付金枠(GRF)から
構成されており、IDBは同グループの中核的機関で
ある。
IDBの主要業務は、加盟国からの出資金と国際資
本市場からの調達資金を原資として、域内加盟国の
政府および民間企業に対し貸付・保証を行う、通常
資本業務である。設立協定により、通常資本業務と
そのほかの業務は、その運営および会計が分離され
ている。なお、IDBは、加盟国が課しうる資産に関
する規制や課税を免除されるなど様々な優遇措置を
享受している。
2. 事業環境・事業リスク
現在、IDBは、環境的に持続可能な成長の促進を通
じて、さらなる経済的、社会的発展ならびに貧困の削
減および社会的平等を促進することを主たる目的とし
て業務を推進している。優先分野としては、①グロー
3. 資産内容
16/12期上半期末で、総資産は1,226億米ドル、総
貸付残高は14/12期末比5.9%増の790億米ドル、こ
<1>
Issuer Report
のうち、92%が政府保証付き、残る8%が政府保証
なしの貸し付けであった。
当行は、政府保証付きのOCローン債権について
償却を行ったことは設立以来一度もない。13年以降
は上位貸付先であるアルゼンチンのデフォルトや、
ブラジルの相次ぐ格付引き下げなどから貸付ポート
フォリオの質は低下しているものの、両国政府によ
るIDBへの債務履行は期日通りなされている。00年
以降、不良債権は政府保証なしの民間向け貸付での
み発生しており、15/12期末の不良債権比率は14/12
期末から変わらず0.2%にとどまっている。
15年12月、国際復興開発銀行(IBRD)、アフリカ
開発銀行(AfDB)との間でエクスポージャー交換
に関する合意(Exposure Exchange Agreement,EEA)
を締結した。これは、ソブリン貸付先の集中リスク
を低減するため、エクスポージャーを特定し、相互
に保証を提供した上で交換する取り引きである。
OCでの貸付先上位5ヵ国(ブラジル、メキシコ、ア
ルゼンチン、コロンビア、エクアドル)のシェアは
14/12期末には全体の64%に上っていたが、EEAに
基づく取り引きを実施したため、15/12期末には
59%へと低下した。また、15/12期から政府保証付
き貸付について国別借入限度額(Single Borrower
Limit)を導入し、貸出先のさらなる多様化を図って
いる。
には追加的な支援を仰ぐことが可能である。
IDBは、ほかのMDBと同様、収益を高めることを
目的とせず、健全な財務基盤を維持し開発業務を推
進できるだけの利益を確保することを財務目標の一
つとしている。堅調な貸付収益などから15/12期は
9.6億米ドル、16/12期上半期は7.8億米ドルの純利益
を確保した。
5. 総合判断・格付の見通し
格付は、①IDBの業務に対する加盟国からの強い
支援②強固な資本構造③厳格なリスク管理による健
全な財務状態④融資対象国から享受している優先債
権者としての地位―を主に評価している。第9次増
資によりリスク許容度は向上しており、今後も保守
的な財務運営により、健全な財務状態を維持すると
みている。また、気候変動および環境的持続可能性
に配慮した貸し付けを通じて、中南米・カリブ諸国
の環境保全や社会的平等の実現に積極的に貢献して
いくと思われる。
4. 財務・損益状況
財務運営は、貸付・借入総量規制、流動性管理
規制などを中心に堅実になされている。具体的に
は、①純借入残高は非借入加盟国(米国、カナダ、
日本およびその他の域外加盟国)の請求払資本合計
を上限とする②向こう12ヵ月間の債務償還予定額は
残存する債務残高の25%を超えてはならない③ヘッ
ジ目的の通貨・金利スワップなどデリバティブ活用
時に許容されるスワップカウンターパーティ格付の
下限はA-/A3―といった規定がある。こうした保守
的な財務運営基準を順守しており、金融危機時も含
め逸脱したことはない。
IDBは、設立以来、授権資本のたび重なる増資を
実施し、リスク許容度を高めてきた。16年には第9
次増資(総額700億米ドル、このうち17億米ドルが
払込資本金、残りが請求払資本金)がおおむね計画
通り完了した。15/12期末の上位出資5ヵ国は、米国
(議決権総数に占めるシェアは30%)、アルゼンチ
ン(11%)
、ブラジル(11%)
、メキシコ(7%)
、日
本(5%)となっている。請求払資本のうち約5割を
信用力の高い非借入国が出資しており、必要な場合
<2>
Issuer Report
11005 米州開発銀行
●財務指標
(単位:百万米ドル)
2011/12
2012/12
2013/12
2014/12
2015/12
貸付
承認済ローン・保証
10,400
10,799
13,290
12,652
10,404
総貸出実行額
7,898
6,883
10,558
9,423
9,719
純貸出実行額
3,297
2,312
2,096
4,210
4,587
現金および投資純額(スワップ後)
13,882
14,592
21,226
27,458
27,969
ローン残高
66,130
68,640
70,679
74,585
78,745
承認済ローン中の貸出未実行額
23,994
26,987
29,207
31,601
30,711
総資産
89,432
92,209
97,007
106,299
111,139
借入金残高(スワップ後)
58,015
59,754
67,460
76,686
80,487
100,641
112,240
123,840
138,901
151,240
19,794
20,681
23,550
23,697
25,253
貸借対照表
請求払資本
総資本
損益計算書
業務利益(損失)
836
910
881
652
717
非トレーディング・ポートフォリオおよび外国為替取引
の公正価値調整純額
- 919
194
626
96
443
総務会承認済振替
- 200
- 200
- 200
- 200
- 200
純利益(損失)
- 283
904
1,307
548
960
その他の包括利益(損失)
- 883
- 300
1,506
- 750
229
- 1,166
604
2,813
- 202
1,189
包括利益(損失)
※直近期は、速報値をもとに指標などを掲載する場合があります。
●格付明細
(単位:百万円、%)
対
象
長期発行体格付
●長期格付推移
格付
見通し*
発行額
利率
発行日
償還期限
公表日
AAA
安定的
-
-
-
-
2016.11.25
(長期発行体格付またはそれに準ずる格付)
日付
格付
1998.11.20
AAA
2006.12.05
AAA
見通し*
会社名
米州開発銀行
安定的
米州開発銀行
*「見通し」は、長期発行体格付の見通し。クレジット・モニターの場合は、見直し方向を表示。
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Issuer Report
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