2016. 10.17 分子生物学 後期 第5回 分子生物学分野 助教 岡﨑 裕之 5-B:遺伝子のクローニング法 (p.110) ・ゲノムDNA/cDNA ライブラリーとは (ポイント1-5) ・遺伝子クローニングとその方法(ポイント6-8) ・PCR法について、その方法と応用 (ポイント9-11) 5-B:遺伝子のクローニング法 (p.110) ①遺伝子クローニング 遺伝子クローニングとは; DNAライブラリーから特定 の遺伝子構造領域を単離 すること。 5-B:遺伝子のクローニング法 (p.110) ①遺伝子クローニング DNAライブラリー;断片化さ れたDNAの集合体 ゲノムDNAライブラリー ⇒ゲノムDNAクローニング cDNAライブラリー ⇒cDNAクローニング ②-a. ゲノムDNAライブラリーの作製法(p.111) ショットガンクローニング ゲノムDNAを制限酵素・超音波 などにより物理的に切断し、手当 たり次第にベクターに組み込ん だライブラリーを作成する方法。 ②-a. ゲノムDNAライブラリーの作製法(p.111) ショットガンクローニング 1. ゲノムDNAの断片化 2. ファージゲノムDNA の制限酵素処理 3. ファージDNAへのゲノム DNA断片の挿入と連結 4. ファージ構成タンパクとの混和 による組換えDNAファージの生成 ②-b. cDNAライブラリーの作製法(p.112) cDNA; mRNAから逆転写反応により生成されたDNA. ⇒イントロンの情報を含まない 遺伝子産物としてのタンパク質を発現させる ことができる ある細胞から作成されたcDNAライブラリーは、その細胞 の全ての発現タンパク質の情報が含まれる。 ②-b. cDNAライブラリーの作製法(p.112) 1. リンカープライマー (オリゴdT)の結合 2. 逆転写反応による cDNAの合成 ②-b. cDNAライブラリーの作製法(p.112) 3. RNA分解酵素・ DNAポリメラーゼによる 2本鎖cDNAの合成 4. アダプター配列の ライゲーション 5. 制限酵素処理と ベクターへの挿入 6. コロニーの単離 ③-a. 核酸塩基配列を利用したクローニング法 (p.114) 目的とする遺伝子やcDNAの(一部の)核酸塩基配列 が明らかな場合に実施できる。 ③-a. 核酸塩基配列を利用したクローニング法 (p.114) 一部のアミノ酸配列だけがわかっている場合には、 その配列から予測される塩基配列を基にオリゴヌク レオチドを複数作成し、混合したものをプローブとして クローニングを行うことができる。 ③-b. 遺伝子産物の特徴, 機能を利用した クローニング法(p.115) ・特定の抗体に反応するタンパク質 ・特定のDNAやRNAと結合性を示すタンパク質 ・タンパク質と相互作用するタンパク質 これらをコードするmRNAに相当するものをcDNAラ イブラリーから探し出す。 ③-b. 遺伝子産物の特徴, 機能を利用した クローニング法(p.115) 目的の遺伝子やcDNAの一部の塩基配列がわ かれば、データベースから目的遺伝子、cDNA の全塩基配列を知ることができる。 DNAライブラリーから、PCR法によって目的遺伝 子やcDNAを容易に得ることができる。 ③-c. PCR法によるクローニング (1) クローニング操作におけるポリメラーゼ連鎖反応 (PCR法) これまでクローニングで見てきたように、ある目的 DNAを増幅するためには、そのDNAを組み込んだ組 換えDNAを作成する必要があった。 PCR法は、DNAの組換えを行わずに目的DNAの増幅 を行うことができる方法である。 また、PCR法によってクローニングを行うためのDNA 断片を得ることができる。 ③-c. PCR法によるクローニング (2) 使用試薬および反応条件について 1) DNAポリメラーゼ 通常の酵素は高温下で熱変性して失活する。 PCR法では好熱菌由来の耐熱性DNAポリメラーゼ (TaqDNAポリメラーゼなど)が使用される。 ⇒TaqDNAポリメラーゼは校正機能がないので注意。 2) 鋳型となるDNAの種類 PCRに用いる鋳型DNAは一本鎖DNA、クローン化 DNA、ゲノムDNA、cDNAのいずれも鋳型として用いる ことができる。 ③-c. PCR法によるクローニング (2) 使用試薬および反応条件について 3) オリゴプライマー ・鋳型となるDNA上の標的部位を挟むようにして5’お よび3’末端側の一対のプライマーを設計する。 ・プライマーの長さは20~30塩基対、濃度は0.1~ 0.5µM程度で用いる。 ・プライマーの3’末端側は鋳型DNAの塩基配列と相 補的でなければならない。 ・プライマーの分子内・分子間に相補的な配列を含ま ないように注意する。 ③-c. PCR法によるクローニング ③-c. PCR法によるクローニング PCR法の特徴、注意点など ・1サイクルごとにDNAが2倍に増加する。 ⇒PCR反応をn回行うと元のDNAは2n倍に増加する。 ・試薬に微量でもDNAが混入すると増幅されてしまい 誤りの原因となる。 ・反応の温度、時間、サイクル数は適切に設定する 必要がある。 ③-c. PCR法によるクローニング (3) PCR法の応用;RT-PCR法 復習;ポリメラーゼの種類 ・DNA依存性DNAポリメラーゼ⇒複製(DNAポリメラーゼδなど) ・DNA依存性RNAポリメラーゼ⇒転写(RNAポリメラーゼIIなど) ・RNA依存性DNAポリメラーゼ⇒逆転写(逆転写酵素) ・RNA依存性RNAポリメラーゼ⇒RNA複製 逆転写酵素は、RNAを鋳型としてDNAを合成することができる。 PCR法ではRNAを鋳型として使うことができないが、逆転写に よってcDNAを合成することでPCRの鋳型として用いることがで きる。これをRT-PCR法と呼ぶ。 ③-c. PCR法によるクローニング PCR法の応用例 ・病原菌の検出 (結核菌、インフルエンザウイルス) ・犯罪捜査 ・遺伝子検査、親子鑑定 (→p.136~、SNPの検出、マイクロサテライト多型 の検出)
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