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Success StoriesーOther Manufacturing
キャタピラージャパン株式会社
建設機械のグローバルメーカーである米国 Caterpillar inc.の日本法人・キャタピラージャパン株式会
社は、兵庫県明石キャンパスにて油圧ショベルの研究開発・製造を行っている。明石キャンパスとは、
Caterpillar グループの油圧ショベル部門のグローバル開発拠点である油圧ショベル開発本部と、油圧
ショベル事業のマザー工場に位置付けられている明石事業所を配置した事業場で、グループの油圧ショ
ベル事業の中枢拠点となっている。
米国の Caterpillar inc.(以下 Caterpillar)は、
製造などで業績を順調に拡大し、1987 年に、キャ
1925 年の設立以来、建設機械および鉱業用機
械、ディーゼルおよび天然ガス・エンジン、産業用ガ
タピラー三菱と三菱重工業の明石工場が合併する
形で新キャタピラー三菱が誕生。初の Caterpillar
ス・タービン、ディーゼル電気機関車などの開発・製
ブランドの油圧ショベル「E200B」の生産を開始する
造を行うグローバルメーカーである。180 カ国を超え
る世界各地の顧客に対し、300 を超える製品を提
など、同社の油圧ショベル事業は益々拡大していっ
た。
供し、2015 年には売上げ 470 億 1,100 万ドル、
その後、新キャタピラー三菱の業績は順調に推
世界中で 10 万人以上の従業員を有するなど、世
界の建設機械産業において躍進を続けている。
移しつつも、日本の建機市場の停滞や中国市場
の台頭など、同社を取り巻く建機市場の情勢は変
Caterpillar の日本法人であるキャタピラージャパ
ン株式会社(以下キャタピラー)は、東京本社をは
じめ、同グループの油圧ショベル部門のグローバル拠
点である明石キャンパス(兵庫県)、油圧機器の開
化。三菱重工業は建機事業から撤退の方向で動
き始め、2008 年、米 Caterpillar が出資比率を上
げることで、会社は現社名に変更となった。2012 年
には米 Caterpillar の 100%出資となり、明石キャン
発・製造を行う相模事業所(神奈川県)、など総
従業員約 2,100 名を有している。その他にも、販
パスを含め、Caterpillar 単独での経営が始まった。
売部門やデモンストレーションを行う秩父ビジターセ
ンターなどを有する日本キャタピラーグループといった
複数の関連会社を持つ、国内建機業界の最大手
企業である。
キャタピラージャパン株式会社の設立背景
Caterpillar の日本進出は、1963 年、三菱重工
業(当時:新三菱重工業)との折半出資の合弁会
社であるキャタピラー三菱の設立(神奈川県相模
原市)から始まる。
一方、建設機械市場への参入を進めていた三
菱重工業では、合弁会社設立前の 1960 年から
神戸造船所所有の敷地内に建機専門工場を開
設し、日本初の国産油圧ショベル「Y35(ユンボ)」を
生産していた。これが後のキャタピラージャパン・明石
キャンパスの原型となる。
建設ラッシュに沸く高度経済成長期に誕生した
キャタピラー三菱は、ブルドーザやホイールローダーの
キャタピラー油圧ショベル CAT320E
油圧ショベルグローバル拠点・明石キャンパス
キャタピラー明石キャンパスは、甲子園球場の約
5 倍の敷地内に、生産部門である明石事業所と、
油 圧 シ ョ ベ ル 開 発 本 部 ( Hydraulic Excavator
Development Center)が併設された油圧ショベル
専門工場である。世界の Caterpillar の中で油圧
ショベルの中枢拠点と呼ばれている明石キャンパス
について、油圧ショベル開発本部副本部長の豊浦
信海氏は次のように説明する。「ここでは、小型から
大型までの油圧ショベルの開発・生産を一貫して行
える体制を整えているほか、全世界のキャタピラー
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油圧ショベル工場に設計図面を供給する機能が集
約されている。ワールドワイド・ワンデザインとすること
に必要な情報が豊富にある。そこに拠点を持つこと
のメリットは計り知れない」と日本で開発を続ける理
で、グループ全体の業務の効率化と高いクォリティの
維持を図っている。一方、製品の現地化にも力を
入れており、各国の多様な要求に対応した次世代
由を、豊浦氏は語る。
キャタピラーは、日本国内で NOx(窒素酸化物)
低減装置搭載など排ガス規制への対応、および
油圧ショベルの研究開発にも余念がない。『明石の
力を世界へと発信!』」のスローガンの通り、世界の
Caterpillar の油圧ショベル事業の中心であると自
IoT 活用などの最新型油圧ショベルを次々に発表
し、話題を集めている。今後の展開について豊浦氏
は「世界 No.1 企業であり続けるために、製品開発
負している」。
キャタピラーは、経済産業省が実施した 2014 年
度対内投資等地域活性化立地推進事業費補助
力とともに人材獲得にも力を入れている。開発の精
度を上げるため、最新鋭 VR(ヴァーチャルリアリティ)
装置の導入なども行っているが、最終的にそれらを
金(グローバル企業立地推進事業)に採択されてい
る。「油圧ショベル開発におけるソフトウェア開発拠
点整備や、車両試験拠点整備をすることができた。
扱うのは人である。外資系の当社は、日系企業と
比べると知名度が低く、人材獲得が後手に回ってし
まう実情がある。まずは会社のことや、仕事のことを
我々の計画に対し、補助金の存在が本社への説
知ってもらうために、就業前の子供たちを対象に、
得材料にもなり、大変ありがたかった」という。
工場見学や VR 体験、仕事体験などのイベントを
定期的に開催している。また、女性が働きやすいよ
キャタピラーの強み:取引先と Win-Win の関係
同社の強みについて、「常に製品の品質向上を
続けていくことができる、ディーラーやサプライヤーとの
Win-Win の信頼関係である」と豊浦氏は力を込め
る。「当社の顧客は、国内外ともに長年にわたって
当社製品をご使用いただいている方が多く、品質、
操作性、生産性などについて大変良くご存知で、そ
うした方々の声は、品質改善や次の製品開発には
欠かすことができない。顧客の声を製造・開発の部
門まで届けるためのディーラーネットワーク力は、全
世界に拠点を有する当社ならではの強みだと言え
る。メンテナンスなどのアフターマーケットの分野にお
いて、作業を行うディーラーが、顧客に対して素早く
正確にサービス提供でき、なおかつ利益もしっかり出
るようにするところまで考えて製品設計をしている。さ
らに当社だけが儲かるのではなく、サプライヤーと一
緒に育っていくという姿勢が重要であり、我々は、こ
うした取引先との信頼関係構築のために、多大な
投資をしてきた。取引先との Win-Win の関係こそが、
顧客満足度につながり、新しい製品開発にも活か
される。それが、Caterpillar 設立以来のビジネスモ
デルとして成立している」。
うに企業内保育園など施設整備も進めているほか、
日本で開発を続ける理由と今後の展開
「以前に比べたら、世界における日本の建設機
械市場の割合は確かに減ってはきているが、キープ
レーヤーはまだまだ多く存在しているため、製品開発
外国人エンジニアを迎え入れていく為の環境整備も
必須課題として取り組んでいる」と語った。
油圧ショベル開発本部副本部長 豊浦氏
ジェトロのサポート
ジェトロは、キャタピラーの 2014 年度対内投資
等地域活性化立地推進事業費補助金の取得に
際し、各種情報提供を行った。ジェトロのサポートに
対して、「我々だけでは把握しきれない部分もあった
が、スムーズに手続きを行うことができた。ジェトロか
ら積極的に働きかけてもらい、大変感謝している。
今後も、情報提供を含めて、いろいろとアドバイスを
いただきたい」と豊浦氏は述べた。
(2016 年 9 月取材)
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同社沿革
1925 年 米国 Caterpillar 設立
1987 年
1960 年 三菱重工業(当時:新三菱重工業)・明石工場で
合併して新キャタピラー三菱が誕生
初の Caterpillar ブランド油圧ショベルを生産
初の国産油圧ショベル「Y35(ユンボ)」を生産
1963 年 Caterpillar と三菱重工業が合弁会社・
キャタピラー三菱を設立
キャタピラー三菱と三菱重工業・明石製作所が
2008 年 キャタピラージャパン株式会社に社名変更
2012 年 Caterpillar 単独での経営がスタート
キャタピラージャパン株式会社
設立:
1963 年
事業概要:
建設機械(油圧ショベル等)の開発・製造
親会社(グループ):
Caterpillar Inc.
住所:
(本社)〒158-8530 東京都世田谷区用賀 4-10-1
URL:
http://www.cat.com/ja_JP.html
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