資料1 討議資料 (決済に関する中間的業者の取扱い) 1.オープン・イノベーションの重要性と課題 (1) オープン・イノベーションの重要性 ○ IT の進展等に伴い、金融サービスをめぐる環境が構造的に変化 する中にあって、決済関連分野において、FinTech の動きを進展 させることを通じて、利用者利便の向上、さらには我が国金融・ 経済の発展が図られるような環境整備を進めることが重要となっ ているのではないか。 ○ 特に、我が国においては、諸外国と比べて、銀行システムが提 供するネットワークが発達していることに鑑みれば、金融機関と FinTech 企業とのオープン・イノベーション(外部との連携・協 働による革新)を進めていくことが重要な課題の1つとなってい ると考えられるのではないか。 ○ その際、顧客が抱える課題やニーズを出発点に、単なる金融サ ービスの IT 化にとどまらず、より高い付加価値を提供するとの方 向性を考えた場合、決済関連分野において、近年、金融機関と顧 客との間に立ち、顧客からの委託を受けて、IT を活用した決済指 図の伝達や金融機関における口座情報の取得・顧客への提供を業 として行う者(以下、電子決済等代行業者又は業者という。)が 登場・拡大していることが注目されるのではないか。これらの業 者は、顧客とのインターフェイス(接点)を確保しつつ金融機関 とも接続することで、IT の進展を活用した多様なサービス展開の 可能性を有しており、FinTech を利用者利便の向上等につなげる 動きの1つの核となることが考えられるのではないか。 1 ○ また、金融機関と電子決済等代行業者との接続の方法について は、API(Application Programming Interface)を利用した方法 が、利用者のセキュリティを確保しつつ、電子決済等代行業者が 銀行システムにアクセスして様々な FinTech に関連したサービス を提供することを可能とする技術となっており、オープン・イノ ベーションの1つの核になる技術として考えられるのではないか。 ○ 我が国における FinTech の進展のためには、各金融機関におい て API の導入が広く進むとともに、それが、外部企業との連携・ 協働(オープン・イノベーション)の下で、適格性や情報管理能 力等の面で問題がある業者以外の業者に広く開放されること(オ ープン API)が重要であるとの指摘について、どう考えるか。 (2) オープン API をめぐる状況と課題 他方、我が国におけるオープン API をめぐる状況を見ると、以下 のような問題点が指摘できるのではないか。 オープン API を実施している金融機関は少数に留まっており、 また、オープン API を実施している金融機関においても、必 ずしも API を電子決済等代行業者に対し広く開放するには至 っていないのではないか。 電子決済等代行業者においても、そもそも多くの業者が、金 融機関の連携・協働先として認知されていない状況にあるの ではないか。また、金融機関において認知されている業者で あっても、オープン API により接続できる金融機関は限られ ているのではないか。 2 このため、多くの電子決済等代行業者が、顧客から預かった パスワード等を使って、金融機関との間で契約締結等の明確 な法的関係を構築することなく、銀行システムにアクセスす る「スクレイピング」による方法で、サービスを提供する状 態となっているのではないか。 こうした状況については、以下のような点からどのように考える べきか。 利用者において、サービスの利用にあたり、銀行口座に関す るパスワードといった重要な認証情報を業者に取得・保有さ せることとなることについて、顧客情報の漏洩、認証情報を 悪用した不正送金等、セキュリティ上の問題が生じないかと の不安が生じていることがないか。 電子決済等代行業者による決済指図の誤伝達・不正伝達によ る決済リスク、あるいは、電子決済等代行業者からのアクセ スの増大に伴う銀行システムへの過剰な負担の可能性など、 決済・銀行システムの安定性に影響を与えているといったこ とはないか。 「スクレイピング」によることにより、業者のコストが API による場合に比して増大する場合もあり、結果として社会全 体のコストを増大させているといったことはないか。 2.オープン・イノベーションに向けた環境整備 ○ 今後、我が国において、オープン・イノベーションを関係者に おいて健全かつ適切に進めていけるようにするための制度整備と して、欧州も参考にしつつ、仮に一つのモデルを提示するとすれ 3 ば、例えば、以下のようなものが考えられるがどうか。 業者に登録制を導入し、当該業者が顧客から資金を預かるこ とがないことに留意しつつ、例えば、以下を求める。 ・ 適正な人的構成(欠格事由等) ・ 必要に応じた財務要件 ・ 情報の適切な管理 ・ 業務管理体制の整備 業者が、金融機関と接続して顧客に対して電子決済等代行業サ ービスを提供する場合には、金融機関との契約締結を求める。 (注)業者のうち、決済指図の伝達は行わず、口座情報の取得・ 顧客への提供のみを行う者については、金融機関がオープン API を導入するために必要な期間を勘案して、一定期間、契約 締結を猶予する。 こうしたオープン・イノベーションの取組みに参加しようと する金融機関においては、一定の期間内に、オープン API に 対応できる体制の整備に努めることとする。 金融機関は、小規模業者等の接続を合理的理由なく拒否しな いよう、契約締結の可否に係る判断の基準を策定・公表し、 当該基準を満たす業者とは、原則として、契約を締結するこ ととする。 金融機関は、オープン・イノベーションの観点を踏まえたオ ープン API の導入に関する方針及び(オープン API を導入した 場合には、契約を締結した)業者との間で顧客に生じた損失の 分担を定め、公表することとする。 (注)なお、顧客との間での損失分担ルールについては、電子的 取引等をめぐる私法上のルールが必ずしも確立されていない 4 現状において、一般的なルールを規定することは難しいが、 当面の対応として、責任保険への加入の可能性等を含め、関 係者の申し合せによる取組み等が検討されるべきではないか。 上記(注)の猶予期間経過後であっても、金融機関との契約 に基づくものであれば、業者がスクレイピングによりサービ スを提供することも可能とするが、金融機関は、情報管理体 制の整備等が十分である業者に対してのみ、これを認めるこ とができるものとする。 ○ 以上のようなモデルに対して、米国においては、現時点では、 法制による利用者保護やオープン API の活用等を通じたオープ ン・イノベーションの推進のための措置は講じられていない。我が 国の状況等に照らして考えた場合、いずれの方向性が求められてい ると考えるか。 ○ この点に関し、決済指図の伝達を行う業者とそれ以外の業者と で、何らか異なる考慮が必要になるということがあるか。 ○ 以上の他、決済に関する中間的業者の取扱いなど、オープン・ イノベーションに向けた環境整備に関し、検討しておくべき点が あるか。 5
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