【年末特別レポート】「2016年不動産10大ニュース」長嶋 修(PDF)

Vol.21
2016 年 12 月号 News Letter
【年末特別編】
2016 年不動産 10 大ニュース
不動産コンサルタント 長嶋 修
NEWS LETTER
“Connecting the Dots”
・新築マンション売れ⾏き減退
・⼤統領選、まさかのトランプ⽒勝利
・マイナス⾦利、⼀部の市場には恩恵も ・傾斜マンションに進展、建て替え決議
・新築アパートの空き家増加
・⺠泊をめぐり、政府の⽅針固まる
・住宅診断の説明義務化、宅建業法改正 ・熊本地震、耐震基準の⾒直しなるか
・タワマン節税に待った!課税強化へ
・不動産情報の囲い込み、収まらず
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Vol.21
2016 年 12 月号 News Letter
●新築マンションの売れ行き減退
2012 年の政権交代以降 続いてきた価格上昇も落ち着きを見せた。契約率は市況の好不調を占
う分岐点とされる 70%を恒常的に下回り、海外マネー、タワマン節税も一服。とは言うものの、
新築マンション市場は大手寡占が進行しているため、かつてのような市場崩壊は起こりにくいだ
ろう。
一方、中古マンション市場は比較的好調。東日本不動産流通機構によれば、10 月の首都圏中古
マンション市場は成約件数が 3,339 件と前年同月比 16.1%増、成約単価も 6.1%上昇とどちらも
2013 年 1 月以降 46 ヶ月連続で前年同月を上回っている。都心の一部では価格に天井感もみられ
るが、新築より相対的に割安で選択肢の多い中古マンションへ、
新築より相対的に割安で選択肢の多い中古マンションへ、といった動きが見られた。
新築より相対的に割安で選択肢の多い中古マンションへ、
●マイナス金利、一部の市場には恩恵も
2 月に導入されたマイナス金利。住宅ローン金利は、流石にマイナスにはならないものの、一
段と低下。低金利は、割高な新築マンションを除き、相対的に割安な中古マンション、新築一戸
相対的に割安な中古マンション、新築一戸
建て市場に一定の恩恵をもたらした。年末借り入れ残高の
1%が税額から控除される「住宅ロー
建て市場に一定の恩恵
ン控除」と組み合わせれば実質的にはマイナス金利状態。
●新築アパートの空き家増加
主に相続税対策としての新築アパート建設。大半が「サブリース契約」つまり、家賃保証とセ
ットになったものとみられる。契約期間は 30 年だが、保証家賃は定期的に見直されるゆえ、今
後破綻する地主が多く出る恐れも。
国交省によれば、賃貸も売買もされず放置されている空き家約 320 万戸のうち「使える空き
家」はわずか 15%、48 万戸。残り
残りの
残りの約 270 万戸の空き家
万戸の空き家解体費
空き家解体費は
解体費は、戸あたり 150 万かかるとし
て、約 4 兆円必要と
兆円必要となる。その負担は国か基礎自治体か。4 兆円といえば、文科省の年間予算
(約 4 兆円)、はたまた国の防衛費(約 5 兆円)並み。
●住宅診断の説明義務化、宅建業法改正
媒介契約締結時、重要事項説明時、売買契約時にそれぞれ、インスペクション(住宅診断)や
建物のコンディションに関する説明が義務化された。これを受け、業界各所ではインスペクショ
ン市場への参入を始めとした各種対応をスタート。法施行は 2016 年 6 月 3 日から 2 年以内。
不動産業者との癒着問題の
不動産業者との癒着問題の噴出は
噴出は必至。
必至。今後は各所が提供するインスペクションの質が問われ
ることに。
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2016 年 12 月号 News Letter
●タワマン節税に待った!課税強化へ
行き過ぎた、いわゆる「タワマン節税」に待ったが掛かり、固定資産税・相続税について見直
しの動き。とはいえタワマンの相続税評価における相対的な優位性は相変わらず残る見通し。
とはいえタワマンの相続税評価における相対的な優位性は相変わらず残る見通し。こ
とはいえタワマンの相続税評価における相対的な優位性は相変わらず残る見通し。
の見直しは既存のタワマンに遡って適用することなく、2018 年以降に引き渡す新築物件に限定す
る見込みだが、それはまた新たな歪みを生む可能性。
●大統領選、まさかのトランプ氏勝利
11 月のアメリカ大統領選挙では、まさかのトランプ氏勝利で株式市場は乱高下。落ち着きを取
り戻したあとは、減税・公共投資といった政策を好感し円安・株高へ。トランプ関連として不動
産株にも上昇の動きが見られたが直接の関連はなし。アメリカ金利の上昇程度によっては、日本
日本
金利への上昇圧力から不動産価格下落圧力といった可能性も。
●傾斜マンションに進展、建替え決議
9 月、横浜都筑区の傾斜マンションに進展。管理組合が、傾いている1棟を含む4棟全ての建
て替えを決議。築 10 年ものが新築へと更新で資産性アップは間違いなし。工事費用や各種諸費
用はすべて事業主の三井不動産レジデンシャルが負担。大手の体力由来のこうした対応は、
大手の体力由来のこうした対応は、すべ
大手の体力由来のこうした対応は、すべ
ての事業者がとれるわけではないことに留意したい
ての事業者がとれるわけではないことに留意したい。
したい。
●民泊をめぐり政府の方針固まる
緩和・規制と世界各国が異なる対応を見せる民泊問題。日本は緩和方向で、東京都大田区、大
阪府の一部、大阪市など特区では、最低滞在日数を6泊7日から 2 泊 3 日へ。ただ、ネックとな
るのは「年 180 日以内」の営業日数上限。
また、福岡市は旅館業法施行条例を改正。フロント設置義務を解除することでマンションの一
室でも営業可能に。今後は
今後はこのような
今後はこのような各自治体による緩和の程度に注目
このような各自治体による緩和の程度に注目が集まる
各自治体による緩和の程度に注目が集まる。
が集まる。
●熊本地震、耐震基準見直しなるか
4 月 14 日、熊本地震発生。震度7を 2 度も計測し、多くの建物が倒壊するも、政府は「現行の
耐震基準には一定の効果があった」として耐震基準の見直しは行わない方針。
耐震基準の見直しは行わない方針。81
耐震基準の見直しは行わない方針。 年の宮城県沖地
震で 81 年に、95 年の阪神大震災で 00 年とそれぞれ、大地震のたびに耐震基準は見直されてき
た。業界では基準強化の意見も多いほか、地震の可能性の高いエリアへの基準見直しの声も上が
ったが、そもそも地震予測に限界があるため困難を極める。
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2016 年 12 月号 News Letter
●不動産情報の囲い込み、収まらず
REINS(レインズ / 不動産情報ネットワーク)を扱う各所不動産流通機構は「ステータス管理
機能」を導入するなどして可視化を強化したものの、罰則規定がないため不動産情報囲い込みは
罰則規定がないため不動産情報囲い込みは
なくならず。具体的な罰則規定が必要との声も。アメリカでは、囲い込みが発覚すれば約
50 万
なくならず。具体的な罰則規定が必要との声も。
円の罰金、度重なれば免許剥奪(ワシントン州の場合)などの罰則が定められている。
【まとめ】2016 年は「動」、来年は・・・
2016 年を一言で言い表せば「動」。17
年を一言で言い表せば「動」。17 年は「変」でしょう。
空き家の増加で、景気浮揚のための新築建設一辺倒にも疑問符がつき、中古流通制度改革に
弾みがつきましたが、その進捗に目配せしつつ 2017 年は、トランプ効果に端を発する国内経
済、株式市場、為替や金利次第によって、不動産市場にどのような影響があるか見極めたいと
ころですね。
次回の
次回のニュースレターでは年始に、市場
ニュースレターでは年始に、市場予測
では年始に、市場予測をお送り致します。
予測をお送り致します。そちらも
をお送り致します。そちらもぜひお楽しみに。
そちらもぜひお楽しみに。
◆不動産コンサルタント 長嶋 修(ながしま おさむ)
おさむ)
不動産デベロッパーで支店長として幅広く不動産売買業務全般を経験後、
1999 年に業界初の個人向け不動産コンサルティング会社である「不動産の達
人 株式会社さくら事務所」を設立。現会長。以降、様々な活動を通して“第
三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築
いた。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任している。
2008 年 4 月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度を
めざし、NPO 法人日本ホームインスペクターズ協会を設立、初代理事長に就
任。また自身の個人事務所(長嶋修事務所)にて、テレビ等メディア出演 、
講演、出版・執筆活動でも活躍中。現 在、 日 経電 子 版 「 NI K K E I
S T Y L E 」 、 「 F o r b e s J A P A N W E B 」 、「東 洋 経 済 O N L I N E 」で 連 載
中 。 業 界・ 政 策提 言 や社 会 問 題全 般 にも 言 及す る 。 『住宅購入学入門
―いま、何を買わないか』(講談社+α新書)『マイホームはこうして選びな
さい』(ダイヤモンド社)『これから3年不動産とどう付き合うか』(日本
経済新聞出版社)『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)他、著書多数。
◆不動産の
不動産の達人 株式会社さくら
株式会社さくら事務所
東京都渋谷区 / 代表取締役社長:大西
代表取締役社長:大西 倫加)
さくら事務所(東京都渋谷区
「人と不動産のより幸せな関係を追求し、豊かで美しい社会を次世代に手渡すこと」を理念として活動す
る、業界初の個人向け総合不動産コンサルティング会社です。第三者性を堅持した立場から、利害にとらわ
れない住宅診断(ホームインスペクション)やマンション管理組合向けコンサルティング、不動産購入に関
する様々なアドバイスを行なう「不動産の達人サービス」を提供、36,000 組超の実績を持っています。
さくら事務所ホームページ:http://www.sakurajimusyo.com/
本ニュースレターに関するお問い合わせは、お気軽に下記までご連絡ください。
株式会社長嶋修事務所 東京都渋谷区桜丘町 29-24 桜丘リージェンシー101
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TEL 03-6455-0726 FAX 03-6455-0022 広報室:伊野瀬・川崎 [email protected]
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