マーケット・フォーカス

2016/
マーケット・フォーカス
12/1
投資情報部
シニアコモディティアナリスト
津賀田 真紀子
シニアエコノミスト
折原 豊水
商品・為替:原油・ルーブル
OPEC減産合意のインパクトとロシアルーブルへの影響
 OPEC 8年ぶりに減産合意。サウジが特例としてイランに増産を認めたことが突破口に
 OPECは今後ロシア等、非OPECとも協議する見通し。非加盟国の参加が減産実施の条件
 ただし、シェールオイルの増産によりWTI原油先物の上値余地は限定される可能性
 原油価格の安定はロシア経済やルーブルにとってポジティブ。米ロ関係の改善進むか注目
OPEC減産合意。イラ
ンに増産を認めたこ
とが突破口に
11/30、オーストリアのウィーンで石油輸出国機構(OPEC)定時総会が行われ、来年1
月から半年間、加盟国全体の生産量の上限を日量3,250万バレルとすることで最終
合意したと発表された。OPECが減産に踏み切るのは、リーマンショックによる影響で
原油の需要が減少した2008年12月以来、約8年ぶりとなる。
OPECは9/28に開催された臨時総会で、加盟14ヵ国の原油生産量を日量3,250万~
3,300万バレルに制限することで暫定合意したものの、その後の非公式会合で意見が対
立。産油国間で調整が難航していた。今回、サウジアラビアが特例としてイランに増産を
認めたことが、合意への突破口になったようだ。イランはこれまで、米欧による経済制裁
前の水準である日量400万バレルを回復するまでは減産に応じないと主張してきた。
イランの生産量は10月時点で日量369万バレルにまで回復しているが、余剰生産能力
はわずか日量32万バレル程度しかなく、制裁解除前に期待されていた海外企業による
投資も欧州大手銀行が慎重姿勢を崩していないことからほとんど進んでいない。した
がって、これ以上の増産は限られるとサウジアラビアが判断したものと思われる。
OPEC 加盟国余剰生産能力
OPEC 原油生産量
(2014/11 → 2016/10)
(百万バレル/日)
34.0
11/30 の総会で
合意された
減産レベル
33.5
インドネシア
エクアドル
アルジェ リア
33.0
クウェ ート
32.5
2016年
32.0
過去3年最多
31.5
過去3年平均
31.0
過去3年最少
2014年11月
UAE
イラク
2016年10月
カタール
リビア
ベネズエラ
イラン
30.5
アンゴラ
30.0
ナイジェ リア
サウジアラビア
29.5
▲ 500
29.0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12
0
500
1,000
1,500
2,000
(月)
出所:OPEC 月報よりみずほ証券作成
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
1
1
2,500
3,000 3,500
(千バレル/日)
2016/12/1
マーケット・フォーカス
非OPEC最大産油国
のロシアも日量30万
バレル減産する方針
なお、OPECは今後、ロシア等の非加盟国とも協議する見通しであり、12月上旬に会
合を開く予定だ。合計で60万バレルの減産を求める考えを示しており、非加盟国の参
加を減産実施の条件とすると述べている。OPEC議長国であるカタールのサダ・エネル
ギー相は、総会後の記者会見で「ロシアは段階的に減産し、日量30万バレル減産する」
と述べ、他の非加盟国にも減産への参加を呼びかけた。
ただし、OPECが今回設定した日量3,250万バレルという目標生産高は、ほぼ過去最
高水準に近く、国際指標であるウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)原油先物
が今年2月に年初来安値をつけた時の水準をも上回る。10月時点の合計生産量は約
3,364万3,000バレルであった。このため、今回OPECから発表された減産幅は120万バ
レル程度にとどまる。
WTI原油先物は1バ
レル=40~50ドルの
ボックス相場か
WTI原油先物価格はOPECの原油生産量と逆相関関係にあるが、今後もこの傾向が
続くと仮定した場合、日量3,250万バレルの水準にまで生産量が引き下げられたとして
も、原油価格は1バレル=45ドルを挟んだ値動きに収まるのではないかと推測される。
今後は今回の減産合意を好感した買い戻しにより一時的に相場が上昇する可能性も
考えられる。ただし、ファンダメンタルズが劇的に改善されたわけではないことを考える
と、上値は限定されるだろう。
また、好調な米経済指標を背景に、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加
利上げが実施されるとの見方が強まっており、ドルが主要通貨に対して上げ幅を拡大し
ていることも注意が必要だ。原油はドル建てで取引されるため、ドル高により割高感が意
識され、下押し圧力がかかりやすくなるためだ。今回の減産合意により、来年5/25の
OPEC定時総会までの間、下値めどは40ドル前後とみているが、今後、米国内でシェー
ルオイルの生産が活発化する可能性も考えられることから、産油国で突発的な事象が
発生しない限り、上値めどは1バレル=50ドル前後になるのではないかとみている。
OPEC 原油生産量とWTI原油先物価格
アルジェリア
アンゴラ
エクアドル
ガボン
インドネシア
イラン
イラク
クウェート
リビア
ナイジェリア
カタール
サウジアラビア
UAE
(月次:2013/1~2016/10)
(1バレル=ドル)
120
110
100
90
80
70
60
50
46.86
40
30
20
29.0
29.5
30.0
30.5
31.0
31.5
32.0
32.5
33.0
33.5 34.0
(百万バレル/日)
OPEC減産合意の内訳
1月以降の目標
1,039
1,673
522
193
ベネズエラ
減産幅
▲ 50
▲ 78
▲ 26
▲9
加盟一時停止
3,797
4,351
2,707
90
▲ 210
▲ 131
除外
除外
618
10,058
2,874
1,972
▲ 30
▲ 486
▲ 139
▲ 95
単位:千バレル/日
出所:OPEC 月報、ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
出所:OPEC の資料よりみずほ証券作成
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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2016/12/1
マーケット・フォーカス
原油価格の 動向に
影響を受けやすいロ
シ ア 、 OPEC の 減産
合意はポジティブ
原油や天然ガスの主要な生産・輸出国であるロシアにとって、原油価格の動向は輸
出のみならず、財政収入や資源関連投資等、経済の幅広い分野に影響する。輸出に
占める原油・天然ガスのシェアは約6割、財政収入に占める石油関連収入は約4割と
なっているためである。
ロシアは2014年半ば以降の原油価格の急落に加えて、欧米による経済制裁が加わ
り、ロシアルーブルの急落やインフレが起こったことが、企業の設備投資や個人消費の
急速な悪化に拍車をかけた。15年の経済成長率は前年比▲3.7%とリーマンショック時の
09年(▲7.8%)以来の景気悪化となった。もっとも、国際通貨基金(IMF)の予想(WEO:
16年10月時点)によれば、16年の成長率は同▲0.8%と下押し圧力は和らぐ見込みだ。
中銀の金融引き締めや原油価格の反発により、ルーブルが安定したことでインフレ圧力
が落ち着き始めていることが大きい。11/30のOPEC総会において原油の減産合意に達
したことはこうした動きを後押しするだろう。17年の経済成長率は前年比+1.1%と3年ぶり
にプラス成長になる見込みだ。
ただ、前述のように今回の合意後においても原油を巡る供給過剰は大きく改善する
か不透明だ。また、米国の大統領選以降の米金利の上昇を受けたドル高圧力は原油
価格の上値を抑える要因となろう。そうしたことからすると、原油価格が現状程度で推移
するもとで、ロシア経済はL字型の緩やかな回復が続くとみられる。
石油収入の安定のも
と財政再建と景気回
復のバランスが求め
られるプーチン政権
ロシア政府は原油価格が現状の水準でおおむね推移するとの前提のもと、2016年に
GDP比▲3.9%程度まで悪化した財政赤字の削減のため、歳出抑制を19年にかけて継
続する見込み。ただ、12年5月に就任したプーチン大統領は18年には6年の任期が満
了するため、再選を目指すためには17年から18年春先にかけて景気を浮揚させる必要
がある。そのため、増税や歳出カットによる財政再建にもおのずと限界がある。17年~
19年の3ヵ年予算では、財政赤字を補てんするため17年中にソブリン・ウエルス・ファンド
のひとつである予備基金を使い切る計画だが、17年~18年を中心にもう1つのファンド
である国民福祉基金の活用や、国営企業株の売却を行うことで国債増発を抑制する方
針だ。IMFの予想によれば、政府のこうした取り組みもあって公的債務残高GDP比は16
年に17.1%、19年時点でも19.1%と新興国のなかでも低位安定した状況が続く見込み。た
だ、ウリュカエフ経済発展相が国営石油大手同士の株式取得を巡って賄賂を受け取っ
たとして11月に身柄を拘束されている。政権内部の権力闘争の可能性も指摘されてお
り、国営企業の民営化ペースを遅らせる要因となるのか短期的に留意したい。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
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2016/12/1
マーケット・フォーカス
トランプ政権の発足
で欧米との関係改善
につながればルーブ
ルにポジティブに
他方、トランプ次期米大統領は大統領選後の11/14にプーチン大統領と電話会談を
行い、関係改善を目指すことで合意している。ウクライナ問題を巡って冷え切った米ロ
関係が改善に向かえば、欧米によるロシアへの経済制裁解除に対する期待につなが
り、ルーブルにとってポジティブだろう。実際、11月の主要通貨の月間対ドル騰落率を
みると、ルーブルは相対的に下げ渋っていることがうかがえ、原油価格の動向に加え
て、こうした米ロ関係の改善期待が寄与している可能性もある。ロシアのクリミア編入を
受けて2014年3月以降、経済制裁を強く主張したオバマ大統領に呼応する形で欧州連
合(EU)が経済制裁に参加したが、米国の姿勢が変化すれば経済的な結びつきが強
く、一部の国で制裁にともなうマイナスの影響を受けているEUの姿勢も変化する可能性
があろう。EUによる経済制裁は17年1月末に半年間の制裁期限を再び迎える。ポーラン
ドやバルト3国等の北大西洋条約機構(NATO)加盟国の一部では、ロシアの軍事的な
脅威に直面し制裁解除に慎重な国も多く、制裁は再延長される可能性があるものの、
17年夏にかけて関係改善が進むのか注目されよう。
ロシアルーブルは当面、原油価格の動向をにらんでボックス圏での推移が見込まれ
る。リスクとしては、アップサイドの要因としては上記のように経済制裁の解除により、ロシ
アの大手銀行や資源関連企業の海外市場での資金調達が回復したり、海外からの直
接投資が増加することで、貸出や設備投資の下支えにより景気の回復ペースが速まる
ことが期待される。この場合、ルーブルは原油価格を上回るパフォーマンスが見込まれ
よう。反対にダウンサイドとしては、米金利の上昇が続き新興国や商品市場からの資金
流出が続くこと等が挙げられる。
米ドル・ロシアルーブルと原油価格
(1ドル=ルーブル) (日次:2014/7/1~2016/11/30)
30.0
(1バレル=ドル)
120
ドルルーブル(左逆目盛)
40.0
100
北海ブレント価格(右目盛)
50.0
80
↑ルーブル高
↑原油価格上昇
60.0
60
70.0
40
80.0
20
90.0
0
14/7
15/1
15/7
16/1
16/7
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
(年/月)
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2016/12/1
金融商品取引法に係る重要事項
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