① 「観光からみる北海道とロサンゼルス」 北海道立釧路江南高等学校 普通科 3年 長久保 幾子 今年の 8 月上旬におよそ二週間、アメリカからの友人を迎えホームステイの受け入れを した。自宅のある釧路や札幌市内及びその近郊を案内したのだが、たかだか二週間程度では 到底この魅力にあふれる北海道すべてを紹介できるわけはなく、また、私の街が誇る美しい 秋の夕焼けも見せることはできなかった。しかし私とは全く異なるバックグラウンドを持 つ彼と過ごしたことで様々なカルチャーショックを受け、自分の街が誇りにしているもの の再確認ができたと思う。また、日々インターネットを介し様々な国の人と話していると、 ここでも多々驚くことがある。中でも北海道の認知度には驚く。皆口を揃えて「ああ、あの 美しいところ!」と言う。確かに私が交流を持っているのは大抵が日本を好きな人々なのだ が、それでもである。北海道の良さというものを外からの刺激によって日々ひしひしと感じ てはいる。しかし、実際には駅前へ行くと昼間でも錆びついたシャッターを固くおろしたか つての商店街やおよそ 20 年前の繁栄を支えた百貨店の取り壊されて行く姿が目にはいり、 本当に彼らの知るこの街と私の知るこの街は同じなのだろうかと考えさせられる。 北海道の主要産業はこの自然の恩恵を活かした農林水産業と観光業であり、どちらにお いても国内では然るべき地位を築いている。確かに、知名度が高まり、更に他国からの観光 客の増加が著しいのは観光という点で優れているからであろう。豊富な観光資源に恵まれ、 ある程度の規模もあり、更に知名度やブランド力もある。私はそれをとても誇りに思うし、 大半の道民がそう思っているに違いない。 しかし今後世界がさらにグローバル化していく上で自然という抽象的で、言ってしまえ ばどこにでもあるものしかない北海道はどうなっていくのであろうか。日本は先進国とし てこれまで采配を奮って来たが、今後まだ発展の途上段階にある国々が観光に力をいれ、北 海道以上に広大で独自の自然をアピールし始めたらどうであろうか。北海道は厳しくなる であろう観光市場の国際競争に勝ち残って行けるのだろうか。 さて、焦点をロサンゼルスへと合わせたい。都市の世界総合ランキングでも 3 位と高位 置につくロサンゼルスは世界でも屈指のリゾート地としてその名を轟かせ、他の都市に先 駆けて独自の市場を展開し他にとってかわることのない新境地を開拓している。 ここで北海道とロサンゼルスを比較していくと、共通点として挙げられるのが、共に観光 業が市を支える主要産業の一つとして成り立っている点である。北海道は山や川、雄々しい 海などを中心に、そしてロサンゼルスはその温暖な気候やビーチ、アミューズメント施設な どを売りにしているという差異はあるが、どちらもより多くの観光客を得ようと奮起して いることに変わりはない。 またもう一つの共通点は、どちらも比較的最近拓かれた地であるということが言える。ロ サンゼルスは 1900 年頃、人口はわずか 10 万人ほどであったのにも関わらず、1960 年の時 点ではおよそ 248 万人へと増え、 現在も人口増加を続けている。一方北海道においても 1890 年頃の明治維新を背景に人口は急増し 1945 年の終戦時には疎開を背景に全国 1 位の人口 を誇った。 私は自分の将来のビジョンとして、大学では観光・ホスピタリティを専攻し、卒業後は北 海道へ戻り観光事業の促進に関わる事業や、現在所属している国際交流ボランティアで活 動の幅を広げ、北海道のさらなる発展へと貢献していきたいと考えている。 ロサンゼルスには北海道が手本にできるようなアイディアやノウハウが多くあると思う。 例えばフランスや、日本の京都のような場所には何百年、何千年という歴史を誇る建造物や それにまつわる逸話などが豊富にあるが、新しい地にはそれがない。過ぎた過去に歴史を付 け足すことは不可能なのである。しかしロサンゼルスにおいては見事にそのハンディキャ ップを乗り越え、アミューズメント施設やサンタモニカビーチ、ビバリーヒルズなどといっ たそこにしかない、特別な数々の観光名所を新たに生み出すことで老若男女を問わず広く 人々が楽しめる地を作り出すことに成功している。世界における、いわば観光業の新境地と して先を行くロサンゼルスへ実際に足を運び肌に触れることで初めてなぜこれほどまでに もロサンゼルスが評価され人々を魅了し続けているのかがわかるに違いないし、全く異な った環境に身を置き、外から北海道という地を見ることで、またこれまでとは違った視点、 観点から良さや強みにも気付けることと思う。物事を多角的にみる力を養い、これまで自分 では考えることもなかった新たなアイディアや思考をぜひアメリカでつかんでわが愛する 故郷へと持ち帰りたい。
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