な っ た と 思 わ れ ま す が、ト ラ ン プ 世界の笑い者になりながらも、TP を成立させようとしてくることにな いっそう譲歩させた日米FTAなど 徴されるように、﹁米国に追従するこ けたい﹂という安倍首相の発言に象 ﹁東京オリンピックまで首相を続 した。 応え続ける姿勢から脱却し、真に国 りません。ずるずると米国の要求に 速される危険性を認識しなくてはな です。今後、さらに ﹁売国行為﹂ が加 決意表明したのが、今回の強行採決 の米国の批准を後押しするために、 送っているのです。すでに、TPP ないで下さい﹂というメッセージを の国益を差し出しますから、見捨て を増やすためのルールをつくるもの 多くは、TPPが大きな企業の利益 勢を示しました。アメリカの国民の 補者がそろってTPPに反対する姿 今回の大統領選挙では、二人の候 くに若い人たちを中心に ﹁格差是正、 ためにはカビが生えないように農薬 食品の安全基準はTPPによって をかけなければいけない。そこで農 影響を受けないと政府は説明し、参 薬を無理に食品添加物に分類し輸入 られるのは不当なアメリカ差別だと めてしまいました。これはTPPに とについても改善する約束を日本は 当時のアメリカ側の文書で発覚し 2年前の並行協議の中でしてしまっ Pに入れてやるぞと言われた時点で ても、日本政府はそんな約束はして 入れてもらうための前払い金、入場 緩めたということです。こういう形 たのです。 であることを理解しています。ベト トン候補も反対と言わざるをえな たが、TPPに賛成していたクリン らTPPからの脱退と言っていまし さ れ ま す。ト ラ ン プ 候 補 は 最 初 か に 使 う、そ れ で 我 慢 し ろ と な り ま る、いやなら短期雇用で雑巾のよう 業は賃金の高い日本人のクビを切 にして人の移動も自由にすれば、企 がTPPだ﹂ とはっきり言っていまし それを国際基準にまで緩めさせるの 基準以上の安全基準を使っている。 本は科学的根拠に基づかないで国際 でマランティス次席通商代表は、 ﹁日 2011年のアメリカでの公聴会 の意見交換と言い張りましたが、そ 3段階あります。政府は単なる事前 日本とアメリカとの2国間協議は いてあるのです。 点で日本が改善すると約束したと書 したTPPの付属文書には、その時 れは ︵交渉に入れてもらうための︶ 入 す。多国籍化している企業の経営陣 た。国際基準を守るという条文の意 場料としての事前交渉です。これが かったのです。他のTPP参加国も 味はそういうことです。そして、狂 第1段階です。そこでBSEを ヵ は かります。 アメリカの労働者はそのことに気 牛病の ヵ月齢にまで緩めた制限を、 アメリカの労働者は、日本の政府 同じはずなのに、日本の大企業の労 言っているのです。それは日本でも 会は水面下で整えているのです。 さらに撤廃する準備を食品安全委員 月齢から ヵ月齢まで緩めるとかの 約束をして、積み残し分については 2国間の並行協議でやらせるとし が言っているような、自由貿易協定 食の安全でいっそう象徴的なの て、防カビの件などについても認め 働組合はTPP賛成の立場をとって は、アメリカと日本の2国間の並行 によって自国労働者の仕事が増え 20 て、慎重に対応しようとしているの づき、これ以上は我慢できない、と 同じで、国民の意見をきちんと聞い 20 います。 です。 30 2 すずき・のぶひろ 1958年、三重県生まれ。東京大学大学院教授。農学博士。農林水産省入省、九州大学農学部助教授、教授を 経て現職。著書に『WTOとアメリカ農業』 『FTAと日本の食料・農業』 『食の戦争 米国の罠に落ちる日本』 『 「岩盤規制」の大義』 『悪夢の食卓 TPP批准・農協解体がもたらす未来』など多数。 新大統領は、 ﹁ TPPには署名しな ﹁日本の負担が足りない﹂ ということ い。2国間のFTA ︿ ※註﹀でよい﹂ 米国の大統領選挙でトランプ氏の を言ってきた人物ですから、日本に トランプ氏勝利の翌日に 強行採決 当選が確定した翌日の 月 日に、 P承認案と関連法案が衆議院本会議 とで自らの地位を守る﹂ことを至上 民の将来を見据えない限り、問題は この流れに自ら喜んで応じますと 命 題 と し て き た の が 官 邸 で す。﹁ ま 永続します。 水面下で国益を差し出し続けてきま であり、それによって労働者の賃金 大統領選ではTPP反対で一致 した。それをさらに加速して、トラ が下がりあるいは仕事を失い、さら ト ラ ン プ 大 統 領 の 誕 生 で、 大 統 自由貿易見直し﹂ という声が強まり、 に 格 差 が 進 む と 考 え て い ま す。と 領選後のオバマ政権のレームダッ 大きなうねりとなっています。 オバマ大統領をはじめ政治家は巨 協議で行われた防カビ剤の問題で す。日本では収穫後に農薬をかける 考人質疑でも与党側の参考人は口を を許可してきた。しかし、食品添加 のは禁止ですが、アメリカから運ぶ そろえて﹁まったく影響がございま 物は小売パッケージに表示させられ たとえば、BSE ︵狂牛病︶ の輸入 して改善しろと言ってきた。そのこ る。こんどは、そういう表示をさせ 基準は、 ヵ月齢を ヵ月齢まで緩 響はすでに出ているのです。 せん﹂と言っています。しかし、影 食の安全でも すでに譲歩している 批准をおこなうという動きが困難に ク ︵死に体︶ 期間に、米国がTPPの つもりなのです。 ンプ大統領のご機嫌取りに奔走する 大統領の要請に応じて、もっと日本 出しは決めました。次は、トランプ ず、TPPレベルの日本の国益差し でするのかと驚きを禁じえませんで ります。 10 で﹁強行採決﹂されました。そこま 11 料で、要するに先に譲歩したらTP 30 大企業からの献金で政治活動をして 木宣弘教授に聞いた。 (聞き手 編集部) いないと言いましたが、結局、合意 たい何が起こっているのか。TPPの問題性を訴え続けている鈴 でTPPの影響は出ているのです。 それでも安倍政権はTPP批准の関連法案を強行採決した。いっ ナムの人の賃金は日本人の 分の1 トランプ大統領誕生でTPPが発効しない可能性が高まった。 います。しかし大統領選挙は直接選 東京大学大学院教授 農学博士 から 分の1ですから、投資を自由 鈴木 宣弘 挙ですから国民の声が大きく反映 米国に国益を 差し出し続ける 安倍政権 て、賃金が上がるという説明がウソ 30 どを取り除き、経済活動の活性化に向けて締結する協定。関税の撤廃だけでなく、投資・サービスなどの規 制撤廃も含む場合が多い。 ▲ 20 30 ※註 FTA(Free Trade Agreement) 自由貿易協定。特定の複数国や地域において、貿易上の規制な 2016.12 3 TPPが破たんしても 米国大統領選の第2回討論会で主張しあう両候補。TPPに反対することでは 一致していた。 (10月10日/アメリカ・ミズーリ州セントルイス)提供時事
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