会合報告 ITU-T SG17(セキュリティ)第8回会合報告 KDDI 株式会社 運用本部 セキュリティ オペレーション センター マネージャー せん が 株式会社 KDDI 総合研究所 セキュリティ 開発グループ グループリーダー わたる み やけ 千賀 渉 ゆたか 三宅 優 1.はじめに KDDI 株式会社 運用本部 顧問 なか お こう じ 中尾 康二 2.3 ITU-TとIETF間のセキュリティに関する連携のため 2016年8月29日〜 9月7日にスイス( ジュネーブ ) にて、 のスペシャルセッションの開催 ITU-T SG17の第8回会合が開催された。この会合には日本 前回の会合でIETFとのリエゾンオフィサーとなったMr からの11名を含む、31か国・4機関から143名の参加があっ Vasiliy Dolmatov(ロシア)から、IETF96(7月、ベルリン) た。提出された寄書は63件(うち日本から5件)で、391件 のセキュリティエリアミーティングにおいて、SG17の取組み の臨時文書(Temporary Document)が発行された。 について紹介した内容等が報告された。 本会合は、現研究会期(2013 〜 2016年)最後の会合に 課題11とIETFとで開催されたアドホックセッションでは、 あたり、ロシアのKremer議長のほか、日本の中尾(筆者) CMS(Cryptographic Message Syntax)とIETFでの を含む複数の副議長が任期満了により退任することとなっ ASN.1の利用に関する議論が行われた。IETFのRFCで古 た。新議長、副議長は10 〜 11月の世界電気通信標準化総 いASN.1が利用され続けていることを問題視している。 * 会(WTSA-16)で選出される予定である 。 3.各課題の主な審議内容と結果 2.SG17全体にかかわる結果 3.1 課題1/17:Telecommunication/ICT security coordination 2.1 開発途上国からの寄与に関するスペシャルセッションの開催 この課題は、SG17における進捗管理や課題間の調整、 開発途上国からの寄与に関するスペシャルセッションが ITU-T全体のセキュリティにかかわる調整を行うことを目的 開催された。7月27 〜 28日に開催されたSG17のアフリカ地 としている。 域グループのミーティングレポートが報告されたほか、アフ (Technical Report on the successful ◦技術レポートX.TRsuss リカからの寄書等が議論された。 use of security standards)がアグリーメント(同意)さ アフリカ地域グループでは、3つのWG(Cybersecurity、 れた。本文書は、ITU-Tのセキュリティに関する多くの Electronic Transaction and Mobile Security、Internet 勧告群を紹介し、ユーザ(特に途上国のユーザ)が利 Infrastructure Security)を構成して議論している。 活用できるように体系的に整理したものである。 2.2 SG20との連携について 3.2 課題2/17:Security architecture and framework IoT Security/Privacyに関するSG20との連携を議論す この課題では、各種サービスに必要とされるセキュリティ るスペシャルセッションが開催された。WTSA-16が近いこ アーキテクチャとフレームワークの検討を行っている。今会 とからSG20にはリエゾンを送付せず、SG20とメールベース 合での主な審議結果は、下記のとおりである。 で連携して検討するコレスポンデンスグループ(CG-IoT) ◦SDNの各レイヤにおける脅威とセキュリティ要件、設計及 を更新して継続することとし、WTSA-16後に、SG20側と び実装時の参照アーキテクチャを記述するX.sdnsec-2が 合同ラポータ会合の開催について検討することとした。 コンセント(合意)された。X.1038が割り当てられる予定 である。 ◦勧告X.805で規定される、アクセス制御や認証などの8つ * 新議長に韓国のYoum氏、副議長に日本の三宅(筆者)を含む9名が選出された。 42 ITUジャーナル Vol. 46 No. 12(2016, 12) のセキュリティ分 野ごとの対策技術をまとめたX.tigsc (Technical security measures for implementation of X.gpim for telecommunications organizations)を寄書 に基づいて更新した。 X.805 security dimensions) がコンセントされた。X.1039 が割り当てられる予定である。本件に関し日本から、提 3.4 課題4/17:Cybersecurity 案された勧告草案にX.1051(通信事業者向けのセキュリ 本課題は、異なる組織間でサイバーセキュリティ情報を交 ティ管理策の実践規範)と矛盾する内容が含まれている 換する技術であるCYBEXシリーズをはじめとする、サイバー ことを指摘し、課題3とのジョイントセッションにて該当 空間上の様々な脅威に対する具体的な対策やガイドライン 部分の修正を行った。 の検討を行っている。主な審議結果は、 下記のとおりである。 ◦勧告草案X.salcm(Security reference architecture for ◦ウェブサイト等の信頼性をエンドユーザが 認識できる lifecycle management of e-commerce business data) ように するため の 手 法 を 記 述 するX.cogent(Design 及びX.sgmvno(Security guideline for mobile virtual considerations for improved end-user perception of network operator)を寄書に基づいて更新した。 trustworthiness indicators)がデターミネーションされ た。X.1212が割り当てられる予定である。 3.3 課題3/17:Telecommunications information security management ◦ネットワーク間でインシデント情報を交換する際の様々な アクセス制御モデルを説明するX.nessa(Access control 本課題は、ISO/IECとの共同文書であるX.1051(電気通 models for incidents exchange networks)がデターミ 信事業者向けのセキュリティ管理策の実装ガイドライン)をは ネーションされた。X.1550が割り当てられる予定である。 じめ、テレコムにおける情報セキュリティマネジメントに関する ◦X.1500の付録1 (Appendix I-Structured cybersecurity 検討を行う。今会合での主な審議結果は、 下記のとおりである。 information exchange techniques)の改訂を行った。 ◦個人識別情報を保護するための管理策と実装の手引き ◦X.sbb (Security Capability Requirements for Countering を 記 述 す るX.gpim(Code of practice for personally Smartphone-based Botnets)及びX.samtn(Security identifiable information protection)がデターミネーション assessment mechanisms in telecommunication/ICT (凍結)された。本文書はISO/IECと共同で策定された規格 networks)を寄書に基づいて更新した。 であり、ITU-T X.1058│ISO/IEC 29151となる予定である。 ◦補足文書X.sup-gisb(Best practice for implementation 3.5 課題5/17:Countering spam by technical means of ITU-T X.1054-Case of Burkina Faso)がアグリーメン 本課題では、スパム対策技術を検討することを目的とし トされた。ISO/IECとの共同文書であるX.1054│ISO/IEC ている。主な審議結果は、下記のとおりである。 27014(情報セキュリティのガバナンス)のベストプラクティス ◦X.ticsc(Draft new Supplement to ITU-T X.1245- として、ブルキナファソ政府における適用例を示している。 Supplement on Technical measures and mechanism ◦新規ワークアイテムとして、インターネットからアクセス可 on countering the spoofed call in the terminating 能な資産のリスク管理ガイドX.sup-grm(Supplement to network of VoLTE)を補足文書として発行することを X.1055:Risk management implementation guidance 合意した。VoLTEにおけるなりすまし通話の技術的な on the assets of telecommunication organizations 対策とメカニズムを説明している。 accessible by global IP-based networks)を設立した。 ◦X.ctss(Supplement to ITU-T X.1231, Technical Frame- また、前回の会合でX.1051が改訂されたことに伴い、同 , 勧告のユーザーズガイド(Users guide for X.1051)を改 ワークアイテムとして設立することとした。ITU-T X.1231 訂するためのワークアイテムX.sup13-revを設立した。 の補足文書となる。電話サービスにおける詐欺行為対策 ◦勧 告草案X.sgsm(Code of practice for Information のための技術的なフレームワークの提供を目指している。 work for Countering Telephone Service Scam)を新規 security controls based on ITU-T X.1051 for small and medium-sized telecommunication organizations) 、 X . sup -g pim(C ode of pract ice for persona lly identifiable information protection based on ITU-T 3.6 課 題6/17:Security aspects of ubiquitous telecommunication services 本 課 題 は、 モバイルセキュリティやUSN(Ubiquitous ITUジャーナル Vol. 46 No. 12(2016, 12) 43 会合報告 Sensor Network)セキュリティ、 ITS/IoT/SDNセキュリティ 3.8 課題8/17:Cloud computing security に関連した議論が行われている。主な審議結果は、下記 SG13と連携を行いながら、クラウド・コンピューティング のとおりである。 のセキュリティ関連を中心に検討を行う課題である。今回 ◦X.itssec-1(Software update capability for ITS の会合における主な審議結果は、下記のとおりである。 communications devices)がデターミネーションされた。 ◦新規ワークアイテムとして、X.SRNaaS(Security require- X.1373が割り当てられる予定である。日本が中心となっ ments of Network as a Service(NaaS)in cloud て提案、更新を行ってきた文書であり、ITS通信デバイ computing)、X.SRCaaS(Security requirements for スのためのソフトウェア更新について説明している。 Communication as a Service application environ- ◦X.iotsec-1(Simple encryption procedure for Internet ments)及びX.GSBDaaS(Guidelines on security of Big of things(IoT)environments)がデターミネーションさ Data as a Service)を設立した。3件とも中国からの提案 れた。X.1362が割り当てられる予定である。本勧告案も である。 日本が中心的に提案、更 新を行ってきたものであり、 IoTデバイスを想定し、通信メッセージの重要な部分の みを暗号化して処理を軽量化する手法である。 ◦X.msec-11(Guidelines on mitigating the negative effects of infected terminals in mobile networks)が ◦勧告草案X.dsms(Data Security requirements for the monitoring service of cloud computing) 及びX.SRIaaS (Security Requirements of Public Infrastructure as a Service(IaaS)in Cloud Computing)を寄書に基づ いて更新した。 デターミネーションされた。X.1126が割り当てられる予定 である。モバイルネットワーク上でマルウェア等に感染し 3.9 課題9/17:Telebiometrics ている端末の状況を把握し、その影響を抑えるためのガ バイオメトリクス技術を通信環境で利用するための標準 イドラインとなっている。 の作成を目的とした課題である。主な審議結果は、下記の ◦スマートグリッドに関する新規ワークアイテム提案Security guidelines for smart metering service in smart grids があり、X.sgsec-3としてワークアイテム設立が承認された。 とおりである。 ◦X.bhsm(Telebiometric authentication framework using biometric hardware security module)がコンセ ントされた。ISO/IECとの 合同文 書(ITU-T X.1085│ 3.7 課題7/17:Secure Application Services ISO/IEC 27922) として発行される。生体認証ハードウェ 本課題は主に、Webサービスやアプリケーションサービ アセキュリティモジュールを利用したリモート認証フレー ス、P2Pで必要とされるセキュリティ技術に関連した議論を ムワークである。 行う。主な審議結果は、下記のとおりである。 ◦X.hakm(Guidelines on hybrid authentication and key ◦X.tam(A guideline to technical and operational countermeasures for telebiometric applications using management mechanisms in the client-server model) mobile devices)がコンセントされた。X.1087が割り当 を新規ワークアイテムとして設立した。パスワード認証を てられる予定である。モバイルデバイスを用いて生体認 強化するためのメカニズムを提供する。 証をリモートで行うアプリケーションのための対策ガイド ◦ X.srfb(Security requirements and framework for ラインである。 big data analytics in mobile internet services)を新 ◦X.tab(Telebiometric authentication using bio-signals) 規ワークアイテムとして設立した。モバイルインターネット を新規ワークアイテムとして設立することとした。韓国か サービスでのビッグデータ解析の際に必要とされるセキュ らの提案で、生体信号(心電図や脈波計等)を使ったバ リティ要件とフレームワークを提供する。 イオメトリクス認証のためのものである。 ◦X.fdip(Framework of de-identification processing ◦X.eassd(Framework of enhanced authentication in service for telecommunication service providers)を telebiometric environments using anti-spoofing 新規ワークアイテムとして設立した。電話サービス事業 detection mechanisms)が新規ワークアイテムとして提 者のための非特定化処理のためのフレームワークを提供 案された。中国からの提案で、偽造検知を使ったテレバ する。 イオメトリクス認証強化の技術的フレームワークに関する 44 ITUジャーナル Vol. 46 No. 12(2016, 12) ものである。 しいASN.1に対応させたが、 再調整が行われることになる。 3.10 課題10/17:Identity management architecture and 3.12 課題12/17:Formal languages for telecommuni- mechanisms cation software and testing ID管理に関連する技術やサービスについて検討する課 仕様記述言語、メッセージシーケンスチャート(MSC)、 題である。主な審議結果は、下記のとおりである。 User Requirements Notation、 統 一 モ デ リング 言 語 ◦ 勧 告 草 案X.1254rev(X.1254:Entity authentication (UML)、開放型分散処理(ODP)に関する検討を行って assurance frameworkの改訂)を寄書に基づいて更新 いる。主な審議結果は下記のとおりである。 した。エンティティ認証のための4つの保証レベルを規定 ◦Z.100(SDL-2010)シリーズの実装者ガイドであるZ.Imp100 , (Specification and Description Language implementer s する本勧告は、ISO/IEC 29115とほぼ同一の内容であ り、ISO/IEC側の改訂プロジェクト進捗と同期して検討 guide-Version 3.0.1)を発行することとした。 を進めている。 ◦SDL-2010の形式定義(Z.100 Annexes F1, F2 and F3) ◦オンラインビジネスにおける“人の実在性認証”に関する の改訂版がコンセントされた。 検討 (Analysis on use cases that point to gaps in current ◦Testing and Test Control Notation version 3シリーズ online authentication solutions)のための新規ワークア (TTCN-3)のTTCN-3 core language(Z.161) 、TTCN-3 イテムの提案が中国から行われたが、SG17のスコープ外 operational semantics(Z.164)、TTCN-3 control であるため提案が否認された。 interface(TCI) (Z.166)、Using XML schema with TTCN-3(Z.169)がコンセントされた。 3.11 課題11/17:Generic technologies to support secure 4.今後の会合の予定について applications X.509を含むPKI関連と、ASN.1/OID関連の検討を行っ 次回のSG17会合は、新研究会期(2017 〜 2020年)第1回 ている。主な審議結果は、下記のとおりである。 目の会合にあたり、2017年3月20日(火)〜 3月29日(水) ◦ISO側でのITU-T X.509シリーズ(X.500、X.501、X.509、 にスイス(ジュネーブ)で開催される。また会合前日の3月 X.511、X.520)のDAMの結果を全て取り入れ、第8版をコ 19日(月)には、SG17のマネジメントチームが中心となって、 ンセントした。また、X.509に対するTechnical Corrigendum ブロックチェーンをテーマとするワークショップを開催する 3がコンセントされた。 予定である。 ◦X.894(X.cms:Cryptographic Message Syntax)につ 次回会合までに開催される中間会合及び、次回以降の会 いてIETFとの連携に関するスペシャルセッションで議論 合予定は表1のとおりである。また、各課題のラポータ及び が行われ、X.894の作業を中止して新規ワークアイテム アソシエートラポータは第1回会合において選出されるが、 (X.CMS-prof:Cryptographic Message Syntax(CMS) それまでの空白期間のラポータ/アソシエートラポータ Profile)を立ち上げることとした。IETFにおけるCMSで (interregnum rapporteurs/associate rapporteurs)は表2 は古い失効したASN.1が使われていたため、X.894で新 のとおりとなっている。 ■表1.今後の関係会合の予定 会合名 開催期間 開催地 会合内容 課題8中間会合 2016年12月12 〜 13日 中国(北京) X.dsms、X.SRIaaS、X.SRNaaS、X.SRCaaS、X.GSBDaaS、新規 ワークアイテムの検討 課題4中間会合 2017年1月 バーチャル会合 課題4のワークアイテム全て ITSセキュリティに関するSG16課題27との合同会合 課題6中間会合 2017年1月19日または20日 スイス(ジュネーブ) 課題3中間会合※1 2017年2月 韓国(ソウル) X.gpim、X.sgsm、X.sup-gpim、X.sup-grm及びX.sup13-rev 課題6中間会合※1 2017年2月 韓国(ソウル) 課題6のワークアイテム全て 課題11中間会合 2017年2月6 〜 10日 チュニジア(チュニス) ISO/IEC JTC1/SC6/WG10との合同会合 ワークショップ 2017年3月20日 スイス(ジュネーブ) ブロックチェーンをテーマとしたワークショップ SG17会合 2017年3月21 〜 29日 スイス(ジュネーブ) ※1 2017年2月の課題3、6の中間会合は、同一会場・日程で実施される。 ITUジャーナル Vol. 46 No. 12(2016, 12) 45 会合報告 ■表2.次回会合までの空白期間のラポータ/アソシエイトラポータ(Interregnum Rapporteur/Interregnum Associate Rapporteur) Question Interregnum Rapporteur 1/17 Mohamed M. K. ELHAJ(スーダン) 2/17 Zhiyuan HU(中国)※2 Heung Ryong OH(韓国)※2 3/17 Miho NAGANUMA(日本/NEC) Interregnum Associate Rapporteur Cai CHEN(中国) Isaac Kobina KWARKO(ガーナ) Yiwen WANG(中国) ─ Kyeong Hee OH(韓国) 4/17 Youki KADOBAYASHI(日本/NICT) Jong-Hyun KIM(韓国) 5/17 Yanbin ZHANG(中国) Changoh KIM(韓国) 6/17 Jonghyun BAEK(韓国) Bo YU(中国) Yutaka MIYAKE(日本/KDDI) 7/17 Jae Hoon NAH(韓国) Lijun LIU(中国) 8/17 Liang WEI(中国) Sang-Woo LEE(韓国) 9/17 John George CARAS(アメリカ) Kepeng LI(中国) Abbie BARBIR(アメリカ) Hiroshi TAKECHI(日本/NEC) Junjie XIA(中国) 10/17 11/17 Erik ANDERSEN(デンマーク) Jean Paul LEMAIRE(フランス) 12/17 Dieter HOGREFE(ドイツ) Gunter MUSSBACHER(カナダ) ※2 共同ラポータ(Co-Rapporteur) 5.おわりに 今回開催された「ITU-T SG17(セキュリティ)第8回会合」 た。例えば、車同士、路側と車など「つながる車」に搭載 は、研究会期(2013 〜 2016年)の最後の会合となり、現 されるソフトウェアモジュールを遠隔からアップデートする勧 在の会期が 終了した。今会期では、前の会期(2009 〜 告については、 多くの車関係者 (団体)との議論の結果、アッ 2012年)で議論された課題を継続して検討することに加え、 プデート手 順を勧 告 化 することが できた。 本 結 果 は、 近年における脅威の変動、環境の変化に伴う多くの新たな ITU-T SG17では初めてのITSに関係する規格であり、多く 研究課題が審議され、その勧告化が進められた。 の標準化団体や車関係者に注目されている。 例えば、現在では多くの企業において一般的に活用され 上記の幾多の重要課題においては、ITU-T SG17だけで ているクラウドコンピューティングについては、2013年当初 それらの規格化の検討を行っているものではなく、ISO、 からクラウドセキュリティに関するフレームワークの検討が IEC、JTC1、IETF、多くのSDOでそれぞれ検討を開始し なされ、SG13との連携を考慮しながら、勧告X.1601(クラ ている状況である。特に、今後のIoTに関するセキュリティ ウドコンピューティングのためのセキュリティフレームワー については、ITU-Tの中でもその分担や連携に苦慮してお ク)を完成させた。本規格は、ISO/IEC JTC1/SC27に り、現在、SG17とSG20の間で作業役割分担の調整が急務 おいても参照されており、ITU-Tのクラウドセキュリティの とされている。さらに、本案件については、ITU-T以外の 基本規格となった。その後、クラウド提供者や利用者のた ISO/IEC JTC1、多くのローカルSDOなどでも規格化の検 めのセキュリティ管理策(対策)の実施の規範(Code of 討が多方面から既に開始されており、今後のITU-T SG17 Practice)が上記SC27と共同で規格化され、 クラウドセキュ で何を勧告化し、どのSDO(複数)と連携を進め、関係 リティの規格化の基礎を固めた。 SDO全体として最も効果的な規格化をどのように確立して さらに、今研究会期においては、近年の環境変化にお いくかが今後の重要な進め方の鍵になることは間違いない。 いて顕著となってきている、IoTサービス/システム、つな 新研 究会期(2017 〜 2020年) に向けた課 題 整 理は、 がる車(自動運転も含む) 、スマートグリッド、仮想化され 2016年10 〜 11月のWTSA-16において議論されることにな たネットワーク環境(SDN/FVN)などの多くの新たな環境 るが、具体的なSG17における役割、及び本当に活用され 要素に関するセキュリティ検討が提案され、それらの勧告 るセキュリティ勧告 化のための活 動プランについては、 化が開始された。これらの課題の多くは新研究会期におい WTSA-16の後のラポータ会合、第1回SG17会合において、 ても規格化作業が継続されるが、その一部については、 集中的に議論を行う必要があろう。新研究会期は、本当の 今回の第8回SG17会合にて凍結や合意を得ることができ 意味でSG17の真価が問われる会期となると考える。 46 ITUジャーナル Vol. 46 No. 12(2016, 12)
© Copyright 2025 ExpyDoc