輸血情報

輸血情報
1610 -149
赤十字血液センターに報告された非溶血性輸血副作用 -2015年-
2015年の1年間に、医療機関において輸血による副作用・感染症と疑われ、
赤十字血液センターに報告された症例のうち、
最も報告数の多い非溶血性輸血副作用についてお知らせします。
■副作用の種類
医療機関から報告された副作用を症状別にまとめました。
重篤例が多い、
「アナフィラキシーショック」、
「アナフィラ
キシー」、
「血圧低下」、
「呼吸困難」が全体の54.4%を占
めています。なお、
「 TRALI」、
「 TACO」の疑い症例の
多くは、
「呼吸困難」の症状に含まれます。
その他
4.5%
呼吸困難
14.0%
蕁麻疹等
29.9%
69
214
血圧低下
4.4%
アナフィラキシー
16.0%
67
245
458
合計
1,533件
175
305
発熱反応
11.4%
■重篤・非重篤別報告件数
年
2004
453
1156
2005
520
1059
2006
590
1001
2007
653
973
2008
692
852
2009
683
858
2010
679
900
2011
743
854
2012
744
851
2013
703
812
2014
705
746
2015
773
760
0%
20%
重篤症例 40%
60%
非重篤症例
80%
100%
アナフィラキシーショック
19.9%
■使用製剤の種類及び製剤毎の副作用
(症状別)発生の内訳
赤血球製剤または血小板製剤による副作用が多く報告されています。
血漿製剤、血小板製剤では、蕁麻疹、
アナフィラキシー
(ショック)の報告割合が多くなっています。
血小板製剤
35.7%
赤血球製剤
40.4%
620
洗浄赤血球製剤
0.1%
合計
1,533件
158
2
複数の輸血用血液製剤
10.0%
547
赤血球製剤
620
6.0
23.5
20.8
13.2
11.5
17.6
7.4
6.3
3.4
1.5
血漿製剤
206
41.7
12.6
1.5
33.0
8.2
3.7
6.8
血小板製剤
547
206
0%
血漿製剤
13.4%
33.3
20%
22.5
40%
3.3
22.3
60%
蕁麻疹 発熱 アナフィラキシー
アナフィラキシーショック 呼吸困難 80%
血圧低下 100%
その他
■使用製剤・症状別副作用報告数(対供給本数に対する頻度)
(2015年)
製剤
血小板製剤
赤血球製剤※
血漿製剤
供給本数
833,780
3,314,055
955,517
蕁麻疹等
4,600)
146件(約1/
23,000)
86件(約1/ 11,000)
37件(約1/ 23,000)
129件(約1/
26,000)
3件(約1/ 319,000)
182件(約1/
発熱反応
血圧低下
アナフィラキシー
アナフィラキシーショック
呼吸困難
TRALI
37件(約1/
90,000)
7件(約1/ 137,000)
125件(約1/
6,700)
83件(約1/
40,000)
26件(約1/ 37,000)
124件(約1/
6,700)
71件(約1/
47,000)
68件(約1/ 14,000)
28件(約1/ 30,000)
70件(約1/
47,000)
8件(約1/ 119,000)
20件(約1/ 42,000)
5件(約1/ 167,000)
TACO
その他副作用
計
8件(約1/ 104,000)
18件(約1/ 46,000)
547件(約1/
1,500)
3件(約1/ 1,105,000)
1件(約1/ 956,000)
35件(約1/
95,000)
4件(約1/ 239,000)
46件(約1/
72,000)
620件(約1/
5,300)
3件(約1/ 319,000)
206件(約1/
上記製剤には、放射線照射製剤及び未照射製剤の両方を含み、2種類以上の製剤が使用された症例は除外しました。
※洗浄赤血球製剤、解凍赤血球製剤及び合成血液は除く。
4,600)
■TRALI、TACO症例の推移(2006年~ 2015年)
呼吸困難を認め、
主治医が輸血関連急性肺障害
(TRALI)
を疑った症例について、
診断基準に基づいて診断された件数です。
心原性肺水腫
TACO p-TRALI
TRALI
2012.4
TACO識別開始
100
100
14
50
101
21
17
14
45
0
31
2006
2007
28
16
30
47
48
64
70
77
50
14
16
24
2008
2009
38
35
44
63
29
26
15
9
2010
10
14
2011
2012
4
6
10
9
2013
6
7
7
2
2014 2015
0
33
2012
4
6
10
9
2013
44
2014
7
2
2015
6
7
TRALIの原因の1つとして、献血者由来の白血球抗体が関与していることが判明したため、安全対策として、2011年より
男性由来新鮮凍結血漿の優先製造を開始しており、2012年以降TRALIとして評価される事例が減少しています。
一方、同年4月からTRALI評価の中で、心原性肺水腫として判定した症例について、TACOの鑑別(日赤自主基準)
を開始した
結果、TACOとして評価される症例が年々増加傾向にあります。
■副作用発現時間(発現時間不明例は除く)
(2015年)
蕁麻疹等 458件
非溶血性副作用発現時間
(輸血開始後)
副作用症状別に輸血開始から副作用発現まで
の時間を割合で示しました。副作用は輸血開
始直後ばかりでなく、輸血中、輸血終了後にも
発現しています。輸血開始直後、輸血中及び
輸血終了後も患者さんの様子を適宜観察する
ように努めてください。
40%
発熱反応 175件
40%
30%
30%
20%
20%
10%
10%
0%
血圧低下 67件
~10 ~30 ~60 ~120 ~180 ~240 ~300 ~360 ~420 421~ 分
0%
アナフィラキシー 248件
アナフィラキシーショック 307件
40%
40%
30%
30%
30%
20%
20%
20%
10%
10%
10%
0%
0%
~10 ~30 ~60 ~120 ~180 ~240 ~300 ~360 ~420 421~ 分
40%
~10 ~30 ~60 ~120 ~180 ~240 ~300 ~360 ~420 421~ 分
呼吸困難 133件
0%
~10 ~30 ~60 ~120 ~180 ~240 ~300 ~360 ~420 421~ 分
TRALI 13件
TACO 44件
40%
40%
30%
30%
30%
20%
20%
20%
10%
10%
10%
0%
0%
~10 ~30 ~60 ~120 ~180 ~240 ~300 ~360 ~420 421~ 分
~10 ~30 ~60 ~120 ~180 ~240 ~300 ~360 ~420 421~ 分
40%
~10 ~30 ~60 ~120 ~180 ~240 ~300 ~360 ~420 421~ 分
0%
~10 ~30 ~60 ~120 ~180 ~240 ~300 ~360 ~420 421~ 分
〈参考〉
【輸血関連急性肺障害(TRALI: Transfusion related acute lung injury)】
輸血に伴う非心原性の肺水腫であり、呼吸困難、頻脈、血圧低下などを認める。
輸血後6時間以内の発症が多い。
輸血以外の原因によるARDS(急性呼吸窮迫症候群)
や過量輸液、輸血による肺水腫などでも、同様の症状を示すことがある。
【輸血関連循環過負荷(TACO:Transfusion associated circulatory overload)】
輸血に伴う循環負荷による心不全であり、呼吸困難、頻脈、血圧上昇などを認める。胸部X線で肺浸潤影など心原性肺水腫の所見を認めることがある。
輸血後6時間以内の発症が多い。
輸血用血液製剤の使用による副作用・感染症が疑われた場合は、直ちに赤十字血液センター医薬情報担当者までご連絡くだ
さい。また、原因究明のために、使用された製剤及び患者さんの検体
(使用前後)
等の提供をお願いすることがあります。
なお、使用された製剤及び患者さんの検体は
「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」
を参照のうえ保存してください。
〈発行元〉日本赤十字社 血液事業本部 技術部 学術情報課
〒105-0011 東京都港区芝公園1丁目2番1号
※お問い合わせは、
最寄りの赤十字血液センター
医薬情報担当者へお願いいたします。
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