神奈川東部方面線事業に関する対応方針

神奈川東部方面線事業に関する対応方針
平成28年12月
独立行政法人
鉄道建設・運輸施設整備支援機構
神奈川東部方面線事業に関する対応方針 目次
1. 神奈川東部方面線の事業再評価..............................................................................................3
1.1 再評価の必要性 .................................................................................................................3
1.2 再評価実施フロー..............................................................................................................3
1.3 再評価結果等の公表 ..........................................................................................................3
2. 神奈川東部方面線の事業概要 .................................................................................................4
2.1 事業の主たる目的(ミッション).....................................................................................4
2.2 事業概要............................................................................................................................6
2.3 事業による効果・影響.......................................................................................................8
2.4 計画経緯.......................................................................................................................... 11
3. 工事の進捗状況と開業時期の延期 ........................................................................................12
3.1 工事の進捗状況 ...............................................................................................................12
3.2 開業時期の延期 ...............................................................................................................16
4. 建設費...................................................................................................................................18
4.1 建設費の増加...................................................................................................................18
4.2 コスト縮減 ......................................................................................................................24
5. 事業を巡る社会経済情勢等の変化 ........................................................................................26
5.1 検討対象地域...................................................................................................................26
5.2 パーソントリップ調査.....................................................................................................31
5.3 他の鉄道ネットワーク及び交通機関の状況.....................................................................31
5.5 需要予測結果...................................................................................................................32
6. 事業効率 ...............................................................................................................................33
6.1 本事業の投資効率性 ........................................................................................................33
6.2 本事業の採算性 ...............................................................................................................35
7. 実施環境 ...............................................................................................................................37
7.1 関係者との協議状況 ........................................................................................................37
7.2 今後の手続き...................................................................................................................37
7.3 交差施設との協議状況.....................................................................................................37
7.4 用地の確保 ......................................................................................................................37
7.5 上位計画との関連............................................................................................................37
8. 今後の本事業の整備に向けて ...............................................................................................38
8.1 整備主体の採算性............................................................................................................38
8.2 事業進捗の見込み............................................................................................................38
8.3 コスト縮減の取組み ........................................................................................................38
8.4 沿線市民との交流............................................................................................................39
9. まとめ...................................................................................................................................40
1.
神奈川東部方面線の事業再評価
1.1 再評価の必要性
神奈川東部方面線事業は、相鉄線とJR線及び相鉄線と東急線を結ぶ短絡線を整備する
ものであり、都市鉄道等利便増進法に基づく速達性向上事業として施行されている。
国土交通省においては、公共事業の効率性及び実施過程の透明性の向上を図るため、再
評価実施要領が定められ、平成 10 年度より導入されており、神奈川東部方面線は、「都市
鉄道利便増進事業費」補助事業で、事業評価の対象となっている。
神奈川東部方面線については、平成 23 年度及び平成 25 年度に再評価を行っているが、
平成 28 年 8 月に開業時期の延期と建設費の増加が生じる見通しとなり、事業の前提条件が
大幅に変化するため、再評価を実施する必要がある。
【再評価実施要領による事業評価実施事業】
① 事業採択後一定期間(5 年間)が経過した時点で未着工の事業
② 事業採択後長期間(5 年間)が経過した時点で継続中の事業
③ 再評価実施後一定期間(5 年間)が経過している事業
④ 社会経済情勢の急激な変化、技術革新等により再評価の実施の必要が生じた事業
↓
④に該当
図 1-1
事業評価対象事業
1.2 再評価実施フロー
神奈川東部方面線の事業再評価を「再評価実施要領」及び「再評価実施細目」に従って、
以下のフローで実施するものとする。
再評価に係る資料の作成及び対応方針(原案)の作成 【鉄道・運輸機構】
対応方針(原案)に対する審議、意見の具申 【事業評価監視委員会】
対応方針の決定
【鉄道・運輸機構】
対応方針の決定理由等を添えて本省等に送付し、
補助金交付等に係る要求を行う。
【国土交通省】
事業の補助金交付等に係る対応方針の決定
図 1-2
再評価実施フロー
1.3 再評価結果等の公表
再評価結果及び対応方針等については、対応方針の決定理由、結論に至った経緯、再評
価の根拠等とともに公表する。
3
2.
神奈川東部方面線の事業概要
2.1 事業の主たる目的(ミッション)
相鉄線は、横浜駅と横浜市西部(旭区、瀬谷区、泉区)、神奈川県県央部(大和市、海
老名市、藤沢市等)を結ぶ路線であり、東京都心部へアクセスするためには横浜駅や大
和駅、海老名駅、湘南台駅での乗換が必要となっている。
本事業は、近年の鉄道における速達性向上やシームレス化といった社会的要請の高まり
を受け、東京都心部や東海道新幹線新横浜駅に対し、これらを達成するため効率的かつ
効果的であり、経済的にも優れた方法として、神奈川東部方面線を整備することにより、
横浜市西部及び神奈川県県央部と東京都心部等を直結するものである。
①相鉄本線西谷駅付近からJR東日本東海道貨物線横浜羽沢駅付近までを結ぶ相鉄・
JR直通線を整備し、相鉄線とJR線との相互直通運転を実施すること
②相鉄・JR直通線整備事業に加えてJR東日本東海道貨物線横浜羽沢駅付近から東
急東横線・目黒線日吉駅までを結ぶ相鉄・東急直通線を整備し、相鉄線と東急線と
の相互直通運転を実施すること
図 2-1
事業位置図
4
これにより、両地域間の速達性を向上し、広域鉄道ネットワークの形成と機能の高度
化、経路の選択肢の増加、乗換回数の減少、既設路線の混雑緩和等の鉄道の利便性向上
を図るとともに、地域の活性化等に寄与することを本事業の目的とする。
図 2-2
シームレスな広域交通ネットワークの形成
<主な目的及び関連する政策目標>
■横浜市西部及び神奈川県県央部から東京都心部へのアクセス性を、速達性向上、シーム
レス化により大幅に向上させる。
<関連する政策目標>
・東京中心部、広域連携拠点、広域的な交通結節点相互間の連絡強化に資する整備を推進
する。
(首都圏整備計画:平成 18 年 9 月)
・都心、副都心、業務核都市間を結ぶ高速広域鉄道ネットワークを整備する。(運輸政策審
議会答申第 18 号:平成 12 年 1 月)
・東京都心と市南西部方面を直結して利便性と速達性を向上、新横浜都心の機能強化や沿
線地域の活性化を図るため、神奈川東部方面線の整備を進める。
(横浜市中期 4 か年計画
2014~2017:平成 26 年 12 月)
■極めて高い混雑率を示している東京都心からの放射状路線の混雑緩和を図る。
<関連する政策目標>
・通勤時の混雑緩和や長時間通勤等の課題への対応に資する整備を推進する。(首都圏整備
計画:平成 18 年 9 月)
・混雑緩和対策は都市鉄道対策の最重要課題であり 2015 年に 150%にすることを目指す。
(運輸政策審議会答申第 18 号:平成 12 年 1 月)
■横浜市西部及び神奈川県県央部と東京都心部とを結ぶシームレスな広域鉄道ネットワー
クを形成する。
<関連する政策目標>
・分散型ネットワーク構造の実現に向け、効率的かつ利便性の高い公共交通体系の整備を
目指す。
(首都圏整備計画:平成 18 年 9 月)
・鉄道網等の整備を推進し、相互直通運転や乗換円滑等を図ることにより、利便性が高く、
5
利用者にとってシームレスな交通網を目指す。
(首都圏整備計画:平成 18 年 9 月)
・鉄道相互間等との乗継円滑化を図るためのシームレス化を積極的に推進する。
(運輸政策
審議会答申第 18 号:平成 12 年 1 月)
・県央、湘南方面と横浜及び東京都心との連絡強化による県内都市拠点の育成に寄与する。
(かながわ交通計画:平成 19 年 10 月)
2.2 事業概要
神奈川東部方面線は相鉄・JR直通線及び相鉄・東急直通線で構成される。
相鉄・JR直通線は、横浜市西部及び神奈川県県央部から東京都心部への速達性の向上
やシームレス化を目的として、相鉄本線西谷駅からJR東日本東海道貨物線横浜羽沢駅付
近までの連絡線建設(約 2.7km)、駅の新設及び相鉄線の施設改修を行い、相模鉄道(株)が
これらの施設を利用して相鉄線とJR線との相互直通運転を行うものである。
相鉄・東急直通線は、横浜市西部及び神奈川県県央部から東京都心部への速達性の向上
やシームレス化、新幹線駅である新横浜駅へのアクセスの向上を目的として、事業中の相
鉄・JR直通線にあわせて、JR東日本東海道貨物線横浜羽沢駅付近から東急東横線・目
黒線日吉駅までの連絡線建設(約 10.0km)及び駅の新設を行い、相模鉄道(株)及び東京急
行電鉄(株)がこれらの施設を利用して相鉄線と東急線との相互直通運転を行うものである。
図 2-3 神奈川東部方面線周辺路線図
6
表 2-1
整備区間
事業費※
事業予定期間※
開業予定時期※
整備主体
営業主体
運行区間
運行頻度
新駅
関連事業
神奈川東部方面線事業概要
【連絡線】相鉄本線西谷駅~JR東海道貨物線横浜羽沢駅付近(約 2.7km)
羽沢駅(仮称)~東急東横線・目黒線日吉駅(約 10.0km)
【追越施設】相鉄本線瀬谷駅下り待避線の新設
【その他都市鉄道施設】鉄道電気施設等の整備
約 4,022 億円
平成 18 年 11 月(速達性向上計画の認定)~平成 37 年 3 月
相鉄・JR直通線 平成 31 年度下期
相鉄・東急直通線 平成 34 年度下期
独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構
相模鉄道株式会社、東京急行電鉄株式会社
相鉄・JR直通線
海老名駅・湘南台駅~西谷駅~羽沢駅(仮称)~新宿方面
相鉄・東急直通線
海老名駅・湘南台駅~西谷駅~羽沢駅(仮称)~新横浜駅(仮称)
~新綱島駅(仮称)~日吉駅~渋谷方面・目黒方面
相鉄・JR直通線 朝ラッシュ時間帯:4 本/時程度
その他時間帯:2~3 本/時程度
相鉄・東急直通線 朝ラッシュ時間帯:10~14 本/時程度
その他時間帯:4~6 本/時程度
羽沢駅(仮称)、新横浜駅(仮称)、新綱島駅(仮称)
JR東日本が大崎駅付近で実施する短絡線等整備事業
※:今回変更見込み
【参考】都市鉄道利便増進事業のスキーム
本路線は、いわゆる上下分離方式による鉄道整備が盛り込まれた「都市鉄道等利便増進法」に
基づく速達性向上事業として、施行されている。
図 2-4
都市鉄道利便増進事業のスキーム
7
本事業は受益活用型上下分離方式の事業スキームとなっており、国及び地方自治体が事業費の
1/3ずつを補助し、残りの1/3を整備主体が民間借入等により資金調達し整備を行い、営業
主体は開業後に毎年受益相当額を施設使用料として整備主体に支払い、整備主体は施設使用料を
借入金の償還に充てるものである。
表 2-2 資金フレーム
補助金
2/3
借入金
1/3
国
地方自治体
鉄道・運輸機構
1/3
1/3※
1/3
※本事業では神奈川県1/9、横浜市2/9となっている。
2.3 事業による効果・影響
神奈川東部方面線の整備による効果として、主な区間の所要時間は以下の通り短縮する
ことが見込まれる。
※開業後の所要時分は計画上の想定
図 2-5
主な区間の開業後の所要時間(相鉄・JR直通線)
※開業後の所要時分は計画上の想定
図 2-6
主な区間の開業後の所要時間(相鉄・東急直通線)
8
また、現在、相鉄線・東急線の沿線から東海道新幹線新横浜駅へのアクセスは、横浜駅
や菊名駅等で乗換える必要がある。
本路線の整備により、新横浜駅(仮称)が設置され、相鉄線・東急線沿線から東海道新
幹線新横浜駅へ乗換えなくアクセスすることが可能になり、速達性の向上、乗換回数の減
少等により、沿線住民の利便性の向上、広域的な地域間の流動の活発化が期待される。
新横浜駅
大和駅
図 2-7
図 2-8
東海道新幹線へのアクセス改善例
乗換えなく新横浜駅に到達できる区間
9
渋谷駅
さらに、本路線の整備により、東京圏南西部を貫く新たな鉄道ネットワークが形成され、
現在、相鉄線・東急線沿線において進められているまちづくりの促進、活性化に寄与する
ことが期待され、実際に事業が進められつつある。
新綱島駅(仮称)周辺における
羽沢駅(仮称)周辺における
新綱島駅周辺地区土地区画整理事業
神奈川羽沢南 2 丁目地区土地区画整理事業
新綱島駅前地区第一種市街地再開発事業
二俣川駅周辺における
ゆめが丘駅・下飯田駅周辺における
二俣川駅南口地区市街地再開発事業
泉ゆめが丘地区土地区画整理事業
図 2-9 今後進められる沿線開発事例
出典:横浜市、二俣川駅南口地区市街地再開発組合、泉ゆめが丘土地区画整理組合ホーム
ページ
10
2.4 計画経緯
神奈川東部方面線の計画経緯を以下に示す。
表 2-3 神奈川東部方面線 計画経緯
年
昭和 60 年
(1985)
平成 12 年
(2000)
平成 17 年
(2005)
月
7月
1月
8月
相鉄本線西谷駅~JR東海道貨 羽沢駅(仮称)~東急東横線・
物線横浜羽沢駅付近(約 2.7km)
目黒線日吉駅(約 10.0km)
運輸政策審議会答申第 7 号で、神奈川東部方面線の整備について
答申(2000 年までに開業することが適当)
運輸政策審議会答申第 18 号で、神奈川東部方面線の整備について
答申(2015 年までに開業することが適当)
都市鉄道等利便増進法施行
都市鉄道等利便増進法に基づく整備構想を鉄道・運輸機構が国土
交通省関東運輸局長に申請、同時に相鉄・東急が営業構想を申請
6 月 整備構想・営業構想の認定
速達性向上計画を国土交通省
8月
関東運輸局長に申請
速達性向上計画を国土交通省
11 月 速達性向上計画の認定
関東運輸局長に申請
速達性向上計画の認定
4月
5月
平成 18 年
(2006)
平成 19 年
(2007)
平成 20 年
(2008)
平成 21 年
(2009)
平成 22 年
(2010)
平成 23 年
(2011)
平成 24 年
(2012)
平成 25 年
(2013)
平成 26 年
(2014)
平成 27 年
(2015)
平成 28 年
(2016)
8月
都市計画市素案説明会の開催
〃
5月
9月
10 月
3月
10 月
都市計画市素案の公告・縦覧
都市計画案の公告・縦覧
環境影響評価書の公告・縦覧
第一次分割工事施行認可
都市計画決定の告示
速達性向上計画の変更認定申
請及び認定
都市計画市素案の公告・縦覧
都市計画案の公告・縦覧
6月
2 月 都市計画法に基づく事業承認
10 月
〃
〃
12 月
開業時期と建設費の見直しを
4月
公表
都市計画決定の告示
環境影響評価書の公告・縦覧
工事施行認可
都市計画法に基づく事業承認
3月
速達性向上計画の変更認定(事業期間、事業費)
4月
第二次分割工事施行認可
8月
開業時期と建設費の見直しを公表
11
3.
工事の進捗状況と開業時期の延期
3.1 工事の進捗状況
神奈川東部方面線のうち、相鉄・JR直通線(約 2.7km)間は、平成 18 年 11 月に速達
性向上計画の認定を受け、都市計画決定手続き及び環境影響評価手続きを行った。平成 21
年 10 月に工事施行認可を受け、工事を進めており、予算ベース(平成 28 年度まで)での
進捗率は約 65%となっている。
また、相鉄・東急直通線(約 10.0km)は、平成 19 年 4 月に速達性向上計画の認定を受
け、都市計画決定手続き及び環境影響評価手続きを行った。平成 24 年 10 月に工事施行認
可を受け、工事を進めており、予算ベース(平成 28 年度まで)の進捗率は約 30%となって
いる。
【工事進捗状況写真】
西谷駅付近
延長:694m
既 存の線 路を工事 桁 で仮 受け
し、線路下に箱型トンネルの構
築を進めている。
西谷トンネル
延長:1,446m
平成 27 年 11 月土木工事完了。
今後、軌道や電気など設備工事
を進める。鉄道・運輸機構が開
発したSENS工法を、都市部
で初めて適用したトンネル(26
ページ参照)。
12
羽沢駅(仮称)
延長:223m
土木工事、ホームの設置が完了。
今後、軌道や電気など設備工事
を進める。
東海道貨物線接続部付近
延長:634m
東海道貨物線の線路を工事桁で
仮受けし、線路下に箱型トンネ
ルの構築を進めている。
羽沢トンネル
延長:3,349m
平成 28 年 3 月から、シールドマ
シンによりトンネル掘進を進め
ている。
13
新横浜駅(仮称)
延長:249m
平成 28 年 2 月から、駅部の掘削
を進めている。
新横浜駅(仮称)地下鉄交差部
延長:77m
平成 28 年 5 月から、市営地下鉄
3 号線直下の導坑掘削に着手し、
仮受杭によるアンダーピニング
の施工を進めている。
新横浜トンネル
延長:3,304m
シールドマシン及びRCセグメ
ントの製作を進めている。
14
新綱島駅(仮称)
延長:206m
平成 27 年 5 月から、鋼製地中連
続壁による土留壁工事を進めて
いる。
綱島トンネル(立坑発進部)
延長:1,100m
現在、工事着手に向けて準備を
進めている。
日吉駅付近
延長:約 1,500m
既設東急東横線構造物の両側部
に高架橋を構築しており、今後、
東急東横線の線路切り替え工事
を実施。
15
3.2 開業時期の延期
3.2.1 相鉄・JR直通線
東海道貨物線に接続する区間は在来線の直下にトンネルを施工するため、在来線敷地外
から施工せざるを得ない施工条件にあったが、本線にかかる用地取得が難航し、工事着手
が遅れた。また、横浜羽沢駅構内において安全対策設備の検討に時間を要したため着手が
遅れた。この区間の土木工事は在来線直下におけるトンネル施工となり、施工条件が厳し
いため工期を短縮することは非常に困難であり、設備工事及び訓練運転の開始・終了時期
が遅れることとなった。
これらにより、開業時期は平成 31 年度下期となる見通しとなった。
年 度
用
地
取
得
難
航
区
間
安
全
対
策
検
討
用地取得
24
25
26
27
28
29
30
31
用地取得の遅れ
計画
今回変更
着手遅れに伴う延伸
土木工事
設備工事
設計
計画
新たに生じた安全対策の検討
安全対策追加
による延伸
今回変更
設備工事
訓練運転等
図 3-1
工程の遅延
16
3.2.2 相鉄・東急直通線
本線にかかる用地取得や集合住宅の多数の居住者の転居に時間を要し、工事着手が遅れ
た。また、新綱島地区において、着工前の地質調査の結果、当初想定よりも地質が軟弱で
あることが判明し、土留壁の変位抑制のため掘削に先行して地盤改良により地中梁を施工
する必要が生じ、施工に時間を要している。
新綱島駅部は、隣接駅までのシールドトンネルの発進立坑となることから、上記により
工程が延び、シールドトンネルの着手が遅れている。
さらにその結果、新綱島駅から新横浜駅へと掘削するトンネルが鶴見川の直下を横断す
る時期が掘削を制限される出水期に当たる見込みとなり、工期が延びることになった。
これらに伴い、設備工事及び訓練運転の開始が繰り下がる見込みとなり、開業時期は平
成 34 年度下期となる見通しとなった。
年 度
立
坑
部
ト
ン
ネ
ル
部
用地取得
24
計画
25
26
27
28
29
30
31
32
33
用地取得の遅れ
今回変更
地質不良による遅れ
土木工事
河川横断部着手遅れ等による延伸
土木工事
設備工事
訓練運転等
図 3-2
工程の遅延
17
34
4.
建設費
4.1 建設費の増加
4.1.1 概要
本事業の建設費は、平成 26 年 3 月の速達性向上計画変更により約 2,739 億円として計画
していたが、建設物価の上昇、法令の改正による増額、施工計画の見直しによる増額から
コスト縮減の取組による減額をさしひいて建設費は約 4,022 億円となる見通しとなった。
図 4-1
建設費の増加
18
表 4-1
項
建設費増加事項
目
建設物価の上昇
事
項
東日本大震災の復興需要、2020 年東京オリンピック・
金額
約 538 億円
パラリンピック開催決定を契機とした建設需要増大
及び建設業担い手確保のための待遇改善政策等を受
け、建設物価が高騰。
法令の改正によ
る増額
1)土壌汚染対策法が改正となり、処分費が増額(約
約 268 億円
191 億円)
。
2)高齢者・障害者等の移動等の円滑化の促進に関す
る法律の制定により、可動式ホーム柵の設置が必
要となり増額(約 16 億円)。
3)消費税率が 5%から 8%、10%に変更されること
による増額(約 61 億円)。
施工計画の見直
しによる増額
1)地質調査や現地の精査の結果、施工方法等が変更
約 692 億円
となり増額(約 404 億円)。
2)用地取得協議や、管理者との協議の結果、施工方
法等が変更になり増額(約 288 億円)。
計
表 4-2
項
目
技術開発による
約 1,498 億円
コスト縮減事項
事
項
金額
新しい設計・施工法による縮減。
約 107 億円
現地の精査の結果、施工方法等の変更による縮減。
約 108 億円
縮減
施工計画の見直
しによる縮減
計
約 215 億円
19
4.1.2 増加要因
建設費の増加要因は、それぞれ以下の通りとなる。
(1)建設物価の上昇に伴う増額
東日本大震災(平成 23 年 3 月)の復興需要、2020 年東京オリンピック・パラリンピッ
ク開催決定(平成 25 年 9 月)を契機とした建設需要増大及び建設業の担い手確保のための
技能者の待遇改善政策(担い手 3 法:平成 26 年 6 月成立)等をうけ、建設物価が高騰して
いる。鉄道・運輸機構工事における工事デフレータ推移に着目すると、平成 23 年度までは
上昇と下降を繰り返しており、極端な上昇・下降は想定していなかったが、平成 24 年度か
ら平成 27 年度にかけて連続して平均 3%上昇する傾向が現れている。
図 4-2
工事費デフレータの推移
(2)法令の改正による増額
①土壌汚染対策法改正による増額
土壌汚染対策法が改正(平成 22 年 4 月)となり、これまで対象とされていなかった自然
由来の有害物質を含む建設発生土が新たに対象となった。そのため従来一般残土として処
分してきた自然由来の有害物質を含む建設発生土については汚染土として処分しなければ
ならなくなり、産廃として処理することとなる。
掘削前の段階では汚染土として処分を要するか断定しがたいところであったが、掘削の
進ちょくにより約 85 万 m3 の発生土の 3 分の 2 にあたる約 57 万 m3 については産業廃棄物
として処分する予定となり、処分単価は一般残土として処分する場合と比べて約 5 倍の費
用がかかる見込みである。
20
②高齢者・障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の制定による増額
相鉄・東急直通線のホームドアについては乗入車両の特定ができなかったため未設置と
していたが、運用車両が特定されたことから「高齢者・障害者等の移動等の円滑化の促進
に関する法律(平成 18 年 12 月)
」に基づき、ホームドアを設置することととなり増額が生
じた。
ホームドア
図 4-3
ホームドア設置に伴う設備
③消費税率変更に伴う増額
平成 26 年 4 月に消費税率が 5%から 8%に変更され、平成 31 年 10 月には 10%へと再変
更の予定であり増税分の増額が発生した。
21
(3)施工計画の見直しによる増額
①現地精査の結果による増額
地質調査や現地精査の結果、施工方法等が変更となり増額となった。
新綱島駅では現地近傍の地質調査結果を基に計画していたが、事業着手後に可能となっ
た詳細な地質調査の結果、地表付近の軟弱な沖積層が当初想定していたよりも深く分布し
ていることが判明し、土留壁変位抑制のため掘削に先行して地盤改良による地中梁の追加
施工や土留壁自体の規格を上げることとなったほか、被圧地下水による盤ぶくれ対策とし
て土留の延長による遮水壁の追加が必要となったため増額となった。
(図 4-4)
(当初)
(変更)
図 4-4
新綱島駅土留壁の変更
また、駅間トンネル区間において、交差する雨水幹線の埋設管があり、事業化前は地形
図等により概略検討したところ、埋設管は支障しないものと想定していたが、事業着手後
に埋設物の位置について詳細な調査を実施したところ埋設管が支障することが判明した。
切回し工事費が高額になることから、埋設管の移設あるいは迂回は難しく、トンネル縦断
勾配を変更し、埋設管との支障を回避することとしたため、開削工事の規模が増加し増額
となった。
22
図 4-5
縦断変更による埋設管支障の回避
②用地取得協議や管理者協議による増額
開削部において、雨水幹線の埋設管が交差しており、通常、交差する埋設管を切回しさ
せる事例が多いため、移設を想定していた。しかし、事業着手後に埋設管の管理者と具体
的な切回し方法について協議した結果、新たな用地取得を要するほか、切回し工事費が高
額になることから、埋設管の移設は難しいことが判明した。このため、埋設管の切回しの
必要がない工法(路下連続壁)へと変更することとなり増額となった。
連続壁
図 4-6
埋設管位置の変更を伴わない工法変更
23
4.2 コスト縮減
4.2.1 コスト縮減の取組み
本事業では、前項で述べたような建設費の増加が生じたが、一方で技術開発や設計の精
査により約 215 億円のコスト縮減の取組みを行っており、その取組み事例を示す。
<コスト縮減の取組み事例①>
地質や近接構造物への影響を検討した結果、鉄道・運輸機構が技術開発した SENS を適
用し、トンネル覆工をセグメントから場所打ちコンクリートに変更することによりコスト
縮減を図った。
始終点部は上載荷重の関係からセグメントとする必要があったが、中間部は場所打ちコ
ンクリートで対応可能であったため、一台のシールドマシンで両者に対応できるよう、更
なる技術開発を行った。
セグメント
場所打ちコンクリート
図 4-7
セグメント
コスト縮減取組み事例①
【SENS:センス】シールドを用いた場所打ち支保システム
シールド工法(Shield)、場所打ちライニング(ECL)
、山岳工法(NATM)を組み合わせ鉄道・
運輸機構が技術開発したトンネル構築システム(System)。トンネル覆工コンクリートを既製品
(セグメント)から場所打ちコンクリートに変更することによりコスト縮減に取り組んでいる。
既製品(セグメント)
場所打ち
コンクリート
場所打ち
コンクリート
既製品(セグメント)
24
<コスト縮減の取組み事例②>
開削構造となる新横浜駅及び新綱島駅において、仮土留として計画していた鋼製地中連
続壁を工法の比較や芯材を垂直に建て込む施工精度管理を向上させる等の詳細検討の結果、
鉄道構造物としては初めての試みとしてソイルセメントを用いた鋼製地中連続壁を本体壁
として利用し、用地費、掘削量、コンクリート量等を削減した。
(当初)
(変更)
連続壁
2.0m
0.3m
28.7m
32.1m
図 4-8
コスト縮減取組み事例②
25
5.
事業を巡る社会経済情勢等の変化
5.1 検討対象地域
神奈川東部方面線の需要予測は平成 20 年東京都市圏パーソントリップ調査の調査対象圏
域とする。
図 5-1
検討対象地域
神奈川東部方面線・相鉄線の沿線自治体(11 市区)は下記のとおり。
相鉄・東急直通線
相鉄・JR直通線
相鉄線
図 5-2
沿線自治体
26
5.1.1 将来推計人口
今回の再評価とこれまでの再評価における将来推計人口(国立社会保障・人口問題研究所
(以下、社人研とする)による推計値)及び人口の実績値(国勢調査)を比較し、傾向を
把握する。都道府県別将来推計人口の推計時期は以下のとおりであり、前回の再評価以降、
将来推計人口は更新されていないため、前回の再評価と同じ将来推計人口を使用する。
表 5-1
事業評価
平成 23 年度再評価
平成 25 年度再評価
今 回
使用した国勢調査と社人研将来推計人口の推計時期
社人研
社人研
ベースとなる
日本の将来推計人口
都道府県別将来推計人口
国勢調査
平成 18 年 12 月推計
平成 19 年 5 月推計
平成 17 年
平成 25 年 3 月推計
平成 25 年 3 月推計
平成 22 年
5.1.2 1 都 3 県の人口推移
平成 22 年の国勢調査における 1 都 3 県の人口は、平成 19 年 5 月推計人口と比べて各都
県とも 1~2%多い結果となっており、平成 25 年 3 月推計人口によると、埼玉県、東京都、
神奈川県の人口は平成 27 年ごろ、
千葉県は平成 22 年ごろをピークに減少する傾向にある。
図 5-3
1 都 3 県の人口推移(平成 7 年=100)
※平成 7 年~22 年は実績値(国勢調査)
、平成 27 年以降は、都道府県別将来推計人口(平成 25
年 3 月推計)(社人研)
27
5.1.3 沿線地域の人口推移
平成 22 年の国勢調査による横浜市と、横浜市と川崎市を除く神奈川県県央・県西部の人
口は、平成 19 年 5 月推計の人口と比べてほぼ同等となっている。
平成 25 年 3 月推計の人口では、沿線地域の横浜市、川崎市、神奈川県県央・県西部の人
口は、現在も増加しており、横浜市及び神奈川県県央・県西部は平成 27 年ごろをピークに、
川崎市は平成 42 年ごろをピークに減少する傾向にある。
図 5-4
横浜市、川崎市、神奈川県県央・県西部における夜間人口推移(平成 7 年=100)
※平成 7 年~22 年は実績値(国勢調査)
、平成 27 年以降は、市区町村別将来推計人口(平成 25
年 3 月推計)(社人研)
28
次に、横浜市内の沿線区の人口動向を見てみる。
平成 25 年 3 月推計の人口によると、港北区、神奈川区は平成 37~42 年ごろまで増加傾
向にあるが、保土ケ谷区・泉区は平成 27 年ごろをピークに減少、旭区・瀬谷区は減少傾向
を示している。
図 5-5 横浜市沿線各区における夜間人口推移(平成 7 年=100)
※平成 7 年~22 年は実績値(国勢調査)
、平成 27 年以降は、市区町村別将来推計人口(平成 25
年 3 月推計)(社人研)
29
神奈川県下の相鉄沿線の市の人口動向を見てみる。
平成 25 年 3 月推計の人口によると、今後、海老名市・藤沢市は平成 32 年ごろまで増加
傾向を示す一方、これ以外の 3 市は平成 22~27 年ごろをピークに減少する傾向を示してい
る。
図 5-6
神奈川県下沿線各市における夜間人口推移(平成 7 年=100)
※平成 7 年~22 年は実績値(国勢調査)
、平成 27 年以降は、市区町村別将来推計人口(平成 25
年 3 月推計)(社人研)
30
本路線の需要に影響を与えると思われる横浜市内沿線 6 区と神奈川県下沿線 5 市の計 11
市区における就業人口と就学人口の合計は下記の通り推移する。なお、前回再評価時と使
用する将来推計人口が同じであるため、前回再評価とは同様の傾向で推移する。
図 5-7
沿線 11 市区における就業・就学人口推移
5.2 パーソントリップ調査
東京都市圏交通計画協議会によるパーソントリップ調査は、最新のパーソントリップ調
査を使用する。
5.3 他の鉄道ネットワーク及び交通機関の状況
平成 25 年度再評価以降、首都圏の鉄道ネットワークで変化が見られた点は、上野東京ラ
インの運行開始が挙げられる(平成 27 年 3 月)。現在、小田急小田原線の複々線化事業が
進められているが、需要予測では折り込んでいる。
また、他の交通機関については、事業開始以降、本路線の輸送需要の見込みに大きく影
響を与えるような新たな事業認可は無かった。
31
5.5 需要予測結果
需要予測は、最新の人口統計等を用いて四段階推定法により平成 32 年、42 年、52 年に
おける需要予測を実施した。相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線の両線が開業した場合
の下記 2 区間の一日輸送人員は下記のとおり(往復の輸送人員を示している)。
図 5-8
図 5-9
一日輸送人員(西谷~羽沢間)
一日輸送人員(新綱島~日吉間)
32
事業効率
6.
6.1 本事業の投資効率性
6.1.1
費用便益分析
平成 25 年度の再評価において、本事業の費用便益比は 2.3、経済的内部収益率は 10.6%
であった(計算期間 30 年)
。
今回、以下の点について変更を行った結果、事業全体の投資効率性は以下のとおりとな
る。
・建設費の増加、工期の延伸
・現在価値化基準年度を平成 25 年度から平成 28 年度に変更
表 6-1
区間
西谷・羽沢・
日吉間
事業全体の費用便益分析
便益
費用
費用便益比
純現在価値
経済的
(B)
(C)
(B/C)
(B-C)
内部収益率
6,198 億円
3,914 億円
1.6
2,284 億円
6.9%
(1.7)
(2,693 億円)
(7.0%)
(6,720 億円) (4,026 億円)
※1 便益及び費用は、年度毎に現在価値化し、供用年度から 30 年間を累計した額。
( )内は 50 年。
※2 現在価値化基準年度:平成 28 年度
※3 社会的割引率:4%
表 6-2
区間
西谷・羽沢・
日吉間
(参考)平成 25 年度再評価時における事業全体の費用便益分析
便益
費用
費用便益比
純現在価値
経済的
(B)
(C)
(B/C)
(B-C)
内部収益率
6,400 億円
2,816 億円
2.3
3,584 億円
10.6%
(2.4)
(4,220 億円)
(10.7%)
(7,163 億円) (2,944 億円)
※1 便益及び費用は、年度毎に現在価値化し、供用年度から 30 年間を累計した額。
( )内は 50 年。
※2 現在価値化基準年度:平成 25 年度
33
6.1.2 感度分析
感度分析については「鉄道プロジェクトの評価手法マニュアル 2012 年改訂版」に示され
ている項目について行った。建設費、工期については、今回精査を行ったため、今後大幅
な変更はないものと考え、需要・費用についてそれぞれ±10%、建設期間について±1 年と
して感度分析を行った。
以下に事業全体の投資効率性の感度分析結果を示す。
表 6-3
区間
西谷・羽沢・
日吉間
※1 計算期間:30 年
感度分析
感度分析ケース
費用便益比
(B/C)
純現在価値
(B-C)
経済的
内部収益率
需要+10%
1.8
2,947 億円
7.7%
需要-10%
1.4
1,621 億円
6.2%
費用+10%
1.5
1,990 億円
6.4%
費用-10%
1.7
2,577 億円
7.5%
建設期間+1 年
1.5
2,028 億円
6.6%
建設期間-1 年
1.6
2,543 億円
7.3%
※2 現在価値化基準年度:平成 28 年度
34
6.2 本事業の採算性
採算性は、鉄道・運輸機構の事業収支を対象とするが、今回、以下の点について変更す
る。
・建設費の増加、工期の延伸
・借入金利を最新の実勢のものに変更
・資金調達方法に債券による調達を含めたものに変更
今回の再評価における前提条件は以下のとおり。平成 26 年 3 月に相鉄・JR直通線と
相鉄・東急直通線は、速達性向上計画を統合しており、収支については両線の開業後(平
成 35 年度)からの年数で評価する。
表 6-4
採算性の前提条件
前提条件
項目
施設使用料
受益相当額
事業費
4,022 億円
建中利息
資
金
調
達
方
式
借
入
金
金
利
債
券
短
期
備
86 億円
考
開業時から一定額
金額は表 6-5②ケースの場合
補助金(国)
1,341 億円
補助金(地方自治体)
1,341 億円
借入金
2,186 億円
過去調達分
調達実績金利
今後調達予定
想定金利
開業後 10 年目まで
1.58%
長期プライムレートの過去 10 年の平均値
開業後 11 年目以降
1.82%
長期プライムレートの過去 20 年の平均値
施設整備費の 1/3
(建中利息は除く)
鉄道・運輸機構債(以下、
「機構債」
とする)による(金額は表 6-5②ケ
ースの場合)
表 6-5①~④の 4 ケース
※1 補助金スキームどおり、今回の増加分も含めて国及び地方自治体から補助を受けられるものとした。
35
借入金は機構債による調達となるが、金利は近年の実績から設定し、下記 4 ケースを示
す。この結果、資金収支の黒字転換は以下のとおりとなる。
表 6-5
収支の黒字転換年
感度分析
営業収支
ケース
機構債、他独法発行債券金利の
①
平成 68(2056)年度
過去 3 年(平成 25 年 10 月
開業後 34 年
~平成 28 年 9 月)平均値
機構債、他独法発行債券金利の
②
③
平成 67(2055)年度
過去 2 年(平成 26 年 10 月
~平成 28 年 9 月)平均値
平成 35(2023)年度
機構債、他独法発行債券金利の
開業後 1 年
過去 1 年(平成 27 年 10 月
開業後 33 年
平成 65(2053)年度
開業後 31 年
~平成 28 年 9 月)平均値
機構債、他独法発行債券金利の
④
資金収支
平成 62(2050)年度
過去半年(平成 28 年 4 月
開業後 28 年
~平成 28 年 9 月)平均値
表 6-6 (参考)平成 25 年度再評価時における収支の黒字転換年
営業収支
資金収支
平成 31 年(2019 年)
平成 55 年度(2043 年度)
開業後 1 年
開業後 25 年
36
7.
実施環境
7.1 関係者との協議状況
・事業を進めるにあたり、国、関係自治体及び営業主体と十分な協議を行っている。
7.2 今後の手続き
・平成 28 年 8 月に神奈川東部方面線の開業時期の延期と建設費の増加について公表を行
うとともに、国及び関係自治体に、開業時期の延期と建設費の増加の見通しについて
通知した。
・今後、関係自治体等との協議を行うとともに、開業時期の延期と建設費の増加にかか
る速達性向上計画等の変更手続きを実施する。
7.3 交差施設との協議状況
・交差施設の管理者との基本協議はすべて完了している。詳細協議は一部において協議
中の施設があるが、今後の工事の進捗にあわせて完了する予定であり、事業の進捗に
特段の影響を与えるものではない。
7.4 用地の確保
・用地は概ね 9 割程度(地権者数比)を確保しており、未取得用地については、事業の
進捗に影響が生じないよう、関係自治体と連携し、引き続き地元のご理解・ご協力を
得ながら用地協議の進捗を図っていきたい。
7.5 上位計画との関連
・運輸政策審議会答申第 18 号において、2015 年までに開業することが適当である路線
(A1 路線)に位置付けられている神奈川東部方面線の一部機能を有する路線である。
・長期的、総合的な視点から首都圏の地域整備を推進することを目的として策定された
「首都圏整備計画(平成 18 年 9 月策定)」において、神奈川東部方面線(西谷-横浜
羽沢)について事業を推進すると位置付けられた路線である。
・神奈川県の将来(2025 年)の総合的な交通ネットワークの形成を目指し、神奈川にお
ける望ましい都市交通を実現するための交通施策の基本的な方向を示した「かながわ
交通計画(平成 19 年 10 月改定)
」では、早期実現が期待されるとされている。
・横浜市の今後 20 年を展望した市政の根本となる指針として策定された「横浜市基本構
想(平成 18 年 6 月策定)
」を着実に具体化していくための計画である、
「中期4か年計
画 2014~2017(平成 26 年 12 月策定)」では、整備を進めるとされている。
37
今後の本事業の整備に向けて
8.
8.1 整備主体の採算性
平成 22 年国勢調査を基にした将来推計人口(社人研)によると、少子化の影響により沿
線地域の横浜市、川崎市、神奈川県県央・県西部、東京都では平成 27~32 年頃をピークに
人口が減少すると予測されているが、今後の少子高齢化、人口減少等の社会経済情勢等の
変化を考慮に入れ、需要予測、採算性を検討したものの、極端な採算性の悪化は認められ
なかった。
現在、東日本大震災復興事業及び東京オリンピック・パラリンピック関連事業等に伴い、
建設資材費や人件費が上昇しているところであるが、今後も事業の進捗や社会経済情勢等
の変化、採算性に注意を払い、業務を推進していく所存である。
8.2 事業進捗の見込み
平成 18 年 11 月に都市鉄道等利便増進法に基づく速達性向上計画の認定を受け事業に着
手し、
平成 21 年 10 月に新線区間の鉄道事業法の工事施行認可を受け工事に着手している。
都市計画決定や環境影響評価の手続きは完了しているが、今回、開業時期の延期に伴い
工事作業期間の延伸が生じる。環境影響評価の過程において工事用車両の走行による渋滞
対策や交通安全の確保、供用後の騒音等の環境対策を求める意見が出されていることに鑑
み、工事期間中の環境対策を適切に行うとともに、供用後の環境保全目標を達成すべく適
切に対応して事業を進めていきたい。
用地取得状況は 9 割程度であり、当面現在工事に必要な箇所は確保しており、今後工事
に必要な箇所に関しては、事業の進捗に影響が生じないよう、関係自治体と連携し、引き
続き地元のご理解、ご協力を得ながら用地協議の進捗を図っていきたい。
土木工事の発注は完了し、各所において鋭意工事中であり、今後設備工事など順次発注
する予定である。
今後、一日も早い開業を目指し、工程管理に努め、引き続き事業を進めて行く予定であ
る。
8.3 コスト縮減の取組み
トンネル施工において鉄道・運輸機構が開発したSENSの採用、セグメントと場所打
ちコンクリートの両方に対応したシールド機の開発、鋼製地中連続壁の本体利用等による
コスト縮減の取組みを行っているが、今後も引き続き技術開発等によるコスト縮減に努め
ていきたい。
38
8.4 沿線市民との交流
神奈川東部方面線に関する新しい情報や工事の進捗を伝える「神奈川東部方面線だより」
の発行や、沿線の小学校の社会科見学会等、建設現場の見学会等を通じて、事業について
沿線住民や関係するさまざまな人々に理解を得ることに努めており、今後も継続していき
たい。
図 8-1
図 8-2
神奈川東部方面線だより
沿線小学校の社会科見学会
39
9.
まとめ
神奈川東部方面線事業は、建設費の増加等が発生しているが、事業を巡る社会経済情勢
等の変化、事業による効果・影響、事業効率、事業の進捗状況について再評価を行った結
果、事業の必要性が認められることから、事業を継続することとしたい。
なお、一日も早い開業を目指し、工程の管理に努めるとともに、コスト縮減に最大限努
力を払いつつ事業を進めてまいりたい。
40