涼 峰 」

農 業 列島
産 地ルポ
つま
埼玉県
ごい
みね
前橋市・
走 る と、 標 高 2 5 6 8 m の 浅 間 山 を は
じめ2000m級の山々をバックにキ
ャベツの開拓畑が眼前に広がってきま
す。 ま る で 緑 の パ ッ チ ワ ー ク の よ う な
を数えるキャベツ生産
独 特 の 景 色 を 見 せ る こ の 産 地 は、 耕 作
面積3000
年 嬬 恋 村 農 業 協 同 組 合 が 発 足。 蔬 菜
広 が っ て い き ま し た。 戦 争 を 経 て 昭 和
古くは明治末にキャベツが試験導入
さ れ、 昭 和 の 初 め ご ろ よ り そ の 栽 培 は
高 日 本 一 の 群 馬 県 嬬 恋 高 原 で す。
ha
すず
JA嬬恋村
(編集部)
栃木県
群馬県
・嬬恋村
真田幸村ゆかりの地として盛り上が
る長野県上田市から国道144号線を
地域概況
「涼峰」
キャベツ生産高日本一のJA嬬恋村
長年の試作を経て推奨品種となった
↑黒岩初男さんの圃場にて。後列左から黒岩さん、JA嬬恋村大笹支所黒岩さん、農産部営農畜産課樋口さん、前列
が農産部営農畜産課係長横沢さん。
増 産 ブ ー ム に の っ て、 産 地 は 拡 大、 施
38
キャベツ
群馬県
JA嬬恋村
9
2017 タキイ最前線 春種特集号 ↑L玉はケースに8玉入る。
ン チ を 乗 り 越 え つ つ、 夏 秋 ど り 日 本 一
間山噴火による降灰被害など幾多のピ
で 整 備 が 進 み、 平 成 8 年 の O 1 5 7
成に入って真空予冷施設なども各支所
設 の 近 代 化 が 図 ら れ て い き ま し た。 平
し や す く ふ た が し や す い。
❷形状が安定し扁平で段ボール詰めが
な い。
雨 が 来 て も 安 心。 球 尻 か ら の 腐 敗 も 少
❶茎が短く倒伏しにくいのでゲリラ豪
先ずは「涼音」から引き継いだ嬬恋で
評 価 を 受 け る 特 長 は、
点 が 数 点 あ り ま す。
での栽培状況を聞きながら改良された
穫していく最近の栽培スタイルに向い
ていない。その点、『涼峰』
は早くからよ
ろ い ま す が、 若 ど り の 場 合 に は そ ろ っ
お話をお伺いした生産者の黒岩初男
さんも「『涼音』は畑に置いておくとそ
毛 作 に 取 り 組 む 方 も い ま す。
し て い く ス タ イ ル が 定 着 し、 中 に は 二
圃 性 が 求 め ら れ て い ま し た が、 価 格 が
せてなるべく収穫期間に幅をもてる在
て い ま す。
年の浅
近 年、 当 地 に タ キ イ 品 種 が 導 入 さ れ
すず ね
たのは、平成 年ごろの「涼音」からで
玉率が高いことを評価されて
理由にあげていただきました。特に「涼
く そ ろ う の で、 畑 に 置 か ず ど ん ど ん 収
安 定 し 需 要 が 増 え る 現 在 は、 次 々 収 穫
のキャベツ産地として発展を遂げられ
次に「涼峰」になって改良された部分
は、
て い ま す」 と、 産 地 状 況 の 変 化 を そ の
騒 動 で の 野 菜 価 格 暴 落、 平 成
す。 導 入 に 際 し て 評 価 を 受 け た の は 在
❸ 黒 腐 病 に 高 度 な 耐 病 性 を 備 え ま し た。
ほ
くろ ぐされ
圃性 に す ぐ れ て い た こ と、 ゲ リ ラ 豪 雨
嬬恋では平成
年に黒腐病の発生が問
に よ る 倒 伏 が 少 な い こ と、 肥 大 や そ ろ
峰」 は
ち合わせていませんでしたが、「涼峰」
題になりました。「涼音」は耐病性を持
ど が 評 価 さ れ ま し た。
❹大量のキャベツを包丁を使って
い、 形 状 の 安 定 が す ぐ れ て い た こ と な
管 内 は、 田 代 地 区、 大 笹 地 区 を は じ
め 6 地 区 に 分 か れ ま す が、 各 地 区 の 部
ずつ手で収穫される現場の奥様方を中
「扁平で片手で持ちやすいから、箱詰
め 作 業 が 楽 に 進 み ま す。 茎 が 抜 群 に 切
玉入りの段ボールにスムーズに入
として試作を重ね、中生の「涼音」につ
生の
「涼峰」
は、
試作番号
「TCA︲497」
奨品種として栽培暦に掲載される中早
入 さ れ て い ま す。 そ し て、 今 年 か ら 推
中 早 生 品 種 に な り ま し た。
❺形状安定性にすぐれ仕上がりの早い
の 現 場 で 大 好 評 で す。
使 い な が ら 朝 ま で 収 穫 が 続 く 中、 嬬 恋
と の こ と。 昨 年 1 7 0 0 万 ケ ー ス の 出
加 工 用 の 契 約 も 6 割 ほ ど に な り ま す が、
青果用と特に栽培方法は変えていない
年 々、 引 き 合 い が 増 え る 中、 西 日 本
の 市 場 へ の 出 荷 も 増 え て き て い ま す。
ながる7月中下旬から9月中旬までの
以上のような品種特性の変化があり
ま す が、 こ こ 数 年 で 求 め ら れ る 特 性 が
「涼峰」の評価
作 型 で 評 価 が 上 が っ て い ま す。
荷に対し今年は1870万ケースの出
産地の取り組み
る そ う で す。
く
玉率が高いと一番価格が付
会である野菜研究会で役員を中心に最
心に、「茎がかたいと収穫が大変」
という
りやすいので妻もほかの品種は切りた
い ま す。
低 3 年 の 品 種 試 験 を 経 て、 好 結 果 が 確
声 に 応 え て、 茎 が や わ ら か く 包 丁 が 劇
くないと言いますね」と、苦笑い。
は 耐 病 性 を 付 与 し て い ま す。
認できれば各地区で推奨品種となりま
的 に 入 り や す い 品 種 に な っ て い ま す。
個
す。現在、「涼音」
は8月中旬から 月中
時ごろから投光器を
L
変 わ っ て き た と い う こ と が あ り ま す。
月には夜中の
8
荷 が 目 標 で す。 産 地 で は ロ ス の な い 品
旬まで収穫の作型で推奨品種として導
1
例えば❺について、「涼音」
が試作されて
2
種 選 び が ま す ま す 求 め ら れ て い ま す。
8
いた当時は市場価格や労力配分にあわ
「涼峰」は「涼音」の導入を通じて嬬恋
10 2017 タキイ最前線 春種特集号
L
22
23
16−
10
↑5年間
「涼峰」
を試作した黒岩さん。作りやす
くて仕事のしやすいお気に入りの品種だと絶
賛。
↑茎がやわらかく、抜群に切りやすい。
「涼峰」
。70日程
↑夏季は真夜中から投光器をつけ涼しいうちに収穫が始 ↑扁平で片手で持ちやすく、箱詰めが容易。ふ ↑5月16日定植の黒岩さん圃場
度で収穫できる品種が求められる傾向。
まる。JA嬬恋村で年間1870万ケースの出荷計画。
たをしてもおさまりがよい。