)の 乳児血管腫(いちご状血管腫)の 薬物療法について

乳児血管腫(いちご状血管腫)
)
の
薬物療法について
にゅう
じ けっ かん しゅ
これから治療を始めるお子さまの保護者の皆様へ
[ 疾 患・治療についての患者説明用資料 ]
監修
国家公務員共済組合連合会 斗南病院
血管腫・血管奇形センター センター長 兼 形成外科長 佐々木 了 先生
医療関係者用
乳児血管腫(いちご状血管腫)とは
疾患
乳児血管腫は皮膚の表面や内部にできる「赤あざ」の一種で、
未熟な毛細血管が増殖してあらわれる良性の腫瘍です。
見た目が赤く、いちごのような外観から「いちご状血管腫」とも呼ばれます。
し ゅ よう
血管腫
●乳児血管腫ができる仕組み
表皮
真皮
増殖した未熟な毛細血管
血管
脂肪
●乳児血管腫のタイプ
局面型
(表在型)
しゅりゅう
腫瘤型
局面型・皮下型 写真提供:国家公務員共済組合連合会 斗南病院 血管腫・血管奇形センター センター長 兼 形成外科長 佐々木 了 先生
乳児血管腫とは
皮下型
乳児血管腫の自然経過
疾患
生後1∼4週にあらわれ、大きくなる場合は1年以内に急速に増大します(増殖期)。
赤みは、90%以上で5∼7歳までに数年間かけて少しずつ消えていきますが(退縮期)、
多くの場合、あと(瘢痕)が残ります。
は んこん
乳 児 血 管 腫の 増 殖の 程 度
増殖期
退縮期
4歳
退縮後
5歳
7歳
1歳
3ヵ月
6ヵ月
1歳1ヵ月
写真提供:国家公務員共済組合連合会 斗南病院 血管腫・血管奇形センター センター長 兼 形成外科長 佐々木 了 先生
自然経過
2歳3ヵ月
年齢
4歳4ヵ月
乳児血管腫の治療
治療
大きさや形、できた部位などによって、
経過観察しながら自然に消えるのを待つか、治療するかを決めます。
●治療選択
経過観察
(自然治癒を待つ)
薬物治療
乳児血管腫
治療する
レーザー照射療法 パルス幅可変式色素レーザー療法 など
外科的治療
治療
ヘマンジオルシロップ、
ステロイド内服・局所注射 など
ヘマンジオルシロップについて
ヘマンジオルシロップは、乳児血管腫の増殖を抑え、小さくなるのを速めます。
●成分:プロプラノロール塩酸塩
高血圧や不整脈などの治療薬としても使用されており、
血圧を下げたり心拍数を減らしたりする作用もあります。
乳児血管腫治療薬の発見エピソード
フランスの医師が心臓の病気を治療する目的で
ヘマンジオルシロップと同じ成分のお薬を使用したところ、
たまたま乳児血管腫が短期間で小さくなり消えていくことに気が付きました。
それがきっかけとなり、乳児血管腫に対する臨床試験が行われ、
2014年から欧米などでも使用されるようになりました。
ヘマンジオルシロップに
ついて
治療
ヘマンジオルシロップ治療に伴う検査
ヘマンジオルシロップで治療を始めるときやお薬の服用量が増えるときなど、
定期的に検査を行う必要があります。
●治療開始前(服用前)の検査
◎心拍数測定
●初回服用時及び増量時における
1回目服用後の観察
◎心音/肺音聴診
◎心拍数測定
◎血圧測定
◎呼吸数測定
◎血糖値測定
◎血圧測定
◎心電図(必要に応じて行います)
◎血糖値測定
乳児血管腫以外の病気で通院中又は、何らかのお薬を服用中の場合は、
ヘマンジオルシロップによる治療を受ける前に、その旨をお知らせください
(特に気管支感染症や気管支の異常がある場合)。
治療に伴う検査
治療
ヘマンジオルシロップによる治療スケジュール
治療
ヘマンジオルシロップの服用量は、お子さまの体重と治療期間によって
変わっていきますので、指示された用量を間違えないよう、気を付けてください。
治療終了の検討
増量
(初回服用から24週後)
増量
治療開始
2日以上
2日以上
【 治療開始前の検査 】
●心拍数測定 ●血圧測定
●心音聴診 ●血糖値測定
●肺音聴診 ●心電図(必要に応じて)
【 初回服用時及び増量時における1回目服用後の観察 】
●心拍数測定 ●呼吸数測定 ●血圧測定 ●血糖値測定
定期的な受診・検査
※指示された用量を必ず守って服用させてください。
※保護者の方の判断で飲む量や回数を変えることは、絶対にしないでください。
治療スケジュール
ヘマンジオルシロップ服用に関する注意点
治療
●服用時間についての注意点
◎1日2回、食事中(ほ乳中)又は食後(ほ乳後)すぐに服用させる
◎空腹時に服用させない
◎服用間隔は9時間以上あける
9時間以上
9時間以上
●服用中の注意点
◎お子さまの様子の変化に注意
◎お子さまに風邪の症状があるときには、早めに医療機関を受診する
◎乳児血管腫以外で医療機関を受診する際は、
お子さまがヘマンジオルシロップ*を服用中であることを伝える
◎指示された受診日を必ず守る
◎授乳者(母親)が何らかのお薬を服用する場合は、事前に医師又は薬剤師に相談する
(何らかのお薬を服用していて母乳を与える場合、
種類によってはお薬が母乳へ移行し、
お子さまが服用した
ヘマンジオルシロップと相互作用を起こして効果が増減したり副作用を増強したりする可能性がある)
*ヘマンジオルシロップは、医師によってはこのお薬の成分であるプロプラノロール塩酸塩と伝えたほうが良い場合もあります。
服用に関する注意点
ヘマンジオルシロップの使用方法(飲ませ方)
・保管方法
個装箱に
含まれる内容物
ボトル
●使用方法
1
使用前にボトルを振らないでください。
キャップを下に強く押しながら、
矢印の
方向
(反時計回り)
に回して開けます。
5
ボトルの向きを元に戻し、
ボトルからピ
ペットを取り外します。
使用後は、
ボトルのキャップを閉めて保
管して下さい。
※お子様には開けにくい安全キャップを採用し
ています。
2
専用ピペット(5mL)
プランジャー
治療
3
使用説明書
4
●保管方法
プランジャーが止まるまで押し下げて
中の空気を出してから、
ピペットの先端
を、
アダプターの奥までさし込みます。
ピペットをアダプターに差し込んだ状
態で、
ボトルを逆さにします。
プランジャーを引いて、指示された用
量を抜き取ります。
ピペット 内 に 気 泡 が あ る 場 合 は 、
ピペットをまっすぐに立て、プラン
ジャーを十分に押し上げ、大きな気泡
を取り除きます。
その後、もう一度指示された用量を
抜き取ります。
6
ピペットをお子様の口にいれ、頬の内
側にくっつけます。
ゆっくりとピペットからお薬を押し出
してください。
※のどの奥までピペットを入れないように注意し
てください。
※ピペットから直接飲ませることが難しい場合
は、
コップ等に移し替えて飲ませてください。
※誤嚥を防ぐため、服用後、すぐにお子様を横に
寝かせないでください。
7
使用後は外側を流水で洗った後、
きれい
な水を吸い取り、吸い取った水を捨てる
動作を3回繰り返して水洗いし、その
後、
自然乾燥させます。
※ピペットは分解しないでください。
プランジャーの動きが悪くなる可能性があるた
め、洗剤・消毒液などの使用や煮沸は避けてく
ださい。
◎直射日光などの光を避けて室温で保管する
◎薬局から提供された遮光性のある容器又は遮光用の薬袋を使用する
◎誤ってお子さまが飲んでしまうと大変危険なため、
お子さまの手の届かないところに保管する
使用方法・保管方法
紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、すべての症例が同様な結果を示すわけではありません。
ヘマンジオルシロップ使用症例写真
治療開始日
治療
投与24週後
投与12週後
症例1
副作用:発熱、下痢、臨床検査値異常
症例2
副作用:なし
症例3
副作用:臨床検査値異常
出典:国内第Ⅲ相臨床試験
使用症例写真
副作用とその防止策① 主な副作用
治療
特に注意が必要な副作用について説明します。
中でも、低血糖、心拍数の低下及び低血圧、呼吸困難の症状があらわれたときには、
直ちに医師に相談してください。
ヘマンジオルシロップ服用中は、お子さまの様子の変化に注意を払ってください。
●主な副作用
●低血糖
●心拍数の低下及び低血圧
●呼吸困難
●下痢
●おう吐
●睡眠障害
●気管支炎の悪化
副作用とその防止策①
主な副作用
副作用とその防止策② 低血糖
治療
●「低血糖」の症状を見逃さないために
下記のような兆候があらわれたら、低血糖のおそれがあります。
そうはく
・蒼白(顔色が青白くなる) ・寝起きが悪い
・体温低下
・発汗
・反応が悪い
・けいれん
・震え
・起こしても起きない
・脈が速い
・食事やほ乳ができていない
●「低血糖」を防ぐために
◎絶対に、空腹時には飲ませない
◎必ず、食事中(ほ乳中)又は食後(ほ乳後)すぐにヘマンジオルシロップを飲ませる
◎食事(ほ乳)をしていないときやおう吐したときは、その回の服用を中止する
◎飲ませ忘れたときやお薬を吐き出してしまったときは、その回の服用を中止し、次の服用時まで待つ
副作用とその防止策②
低血糖
副作用とその防止策③ 心拍数の低下・低血圧 呼吸困難
治療
●「心拍数の低下及び低血圧」の症状を見逃さないために
下記のような兆候があらわれたら、心拍数の低下及び低血圧のおそれがあります。
・脱力 ・手足が冷たい
・顔色や手足の色が悪い ・意識がない
※意識がない場合には救急車を呼んでください。
【注意】全身麻酔を受ける予定がある場合には、麻酔科医や医療関係者に
ヘマンジオルシロップ*を服用中であることを必ず伝えてください。
●「呼吸困難」の症状を見逃さないために
下記のような兆候があらわれたら、呼吸困難のおそれがあります。
・咳き込む ・速い呼吸 ・息苦しそうにしている
・喘鳴(呼吸の際のゼーゼー、ヒューヒューという音)が聞こえる、ときに顔色が青白くなる
ぜんめい
【注意】風邪の症状があるときには早めに医療機関を受診し、医師に相談してください。
その際、ヘマンジオルシロップ*を服用中であることを必ず伝えてください。
*ヘマンジオルシロップは、医師によってはこのお薬の成分であるプロプラノロール塩酸塩と伝えたほうが良い場合もあります。
副作用とその防止策③
心拍数の低下・低血圧
呼吸困難
副作用とその防止策④ 注意点まとめ
治療
●副作用を防止するための注意点
◎指示された用法・用量を必ず守る(服用間隔は9時間以上あけるなど)
◎お子さまの様子の変化に気を付ける
◎食事(ほ乳)をしていないときやおう吐したときは、その回の服用を中止する
◎飲ませ忘れたときやお薬を吐き出してしまったときは、
その回の服用を中止し、次の服用時まで待つ
◎指示された用量より多く飲ませた場合は、
すぐに医師又は薬剤師に相談する
副作用とその防止策④
注意点まとめ
日常生活での注意点
治療
ヘマンジオルシロップ服用中は、日常生活のお子さまの様子に十分に気を付けてください。
服用量や服薬時間、お子さまの状態を日記に記録し、医療機関に持参しましょう。
指示された用法・用量を必ず守って正しく服用すること
(服用間隔は9時間以上あけるなど)
お子さまの様子の変化に気を付けること
乳児血管腫の部分をかいたり、傷つけたりしないように気を付けること
●ヘマンジオルシロップ治療のお役立ちツール
▲ヘマンジオルシロップ小児用0.375%を
服用するお子さまの保護者の方へ
▲ヘマンジオルシロップ小児用0.375%服用日記
日常生活での注意点
5033901
2016年9月作成
A0916BX-M&