薬局新聞 12月号 平成29年1月から始まるセルフメディケーション税制

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2016
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2016 December
平成29年1月から始まる セルフメディケーション税制
平成29年1月1日から、
「セルフメディケーション税制」
とい
う、
一部の市販薬を購入した方に対しての新しい減税制度が
始まります。
今月号では、
その制度の内容や対象となる医薬
品などについてご紹介します。
セルフメディケーション税制とは?
「セルフメディケーション税制」
は、
健康の維持増進や病気
の予防に一定の取り組みを行っている方
(及び生計が一緒の
家族)
が、
対象となる市販薬を年間1万2千円
(税込)
を超えて
購入した場合、
超えた分の金額
(上限8万8千円)
について、
そ
の年分の総所得金額等から控除する新制度です。
この制度は平成29年1月1日にスタートし、平成33年12
月31日までが対象期間となっています。
この制度が作られた目的は、
「普段から生活習慣に気をつ
けるなど健康管理に取り組み、
ちょっとした体の不調であれ
ば、
病院へ行かなくとも市販薬を上手に活用するなど自分で
対応すること
(セルフメディケーション)
」
の推進にあります。
また、
そのことが、
国の医療費の適正化にもつながります。
Self-medication
セルフメディケーションとは?1)
WHOの定義
「自分自身の健康に責任を持ち、
軽度な身体の不調は自分で手当すること」
どのような人が利用できるの?
セルフメディケーション税制を利用できるのは、
申告対象の
1
3
∼
1
2月)
に、
次の
∼ の全てに該当する人
です。
1年間
(1
1 健康の維持増進や病気の予防のために、
特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診断、
がん検診のいずれかを受けている人
2 対象となるOTC医薬品を購入した人
3 所得税、
住民税を納めている人
該当する場合は確定申告
をすることで控除が受けら
れます。
定 期健 康診 断などを受
けていないと、セルフメディ
ケーション税制は受けられませんので、
ご注意ください。
申告の際は、対象となる市販薬の購入合計金額をレシー
ト(領収書)で確認することになりますので、市販薬を購入
した際のレシートは、なくさないように保管しておくことが
大切です。
セルフメディケーション税制の対象となる医薬品のレシー
トには、
①薬の商品名、
②金額、
③その薬がセルフメディケー
ション税制の対象である旨、④販売店(薬局)名、⑤購入日
の5つすべてが記載されている必要があります。
従来からある
「医療費控除制度」
との関係は?
今回始まるセルフメディケーション税制は、従来からある
「医療費控除制度」
の特例という扱いになっています。
「医療
費控除制度」の適用条件は、自己負担した年間の医療費が
10万円を超えた場合に対象となりますが、
これも引き続き利
用できます。
ただし、
セルフメディケーション税制による所得控除と、
従
来の医療費控除制度を同時に利用することはできません。
例えば、
年間の医療費が10万円以上かつ、
セルフメディケー
ション税制の対象となる市販薬の購入合計金額が1万2千円
以上の場合は、
セルフメディケーション税制と医療費控除制
度のどちらを使うかは、
自分で選択しなければいけません。
医療費全体の合計金額の大きさや、
その中での対象とな
る市販薬の購入額によって選択する必要があります。
病院に行くことが少なく、
年間の
医療費は10万円を超えなくても、
市
販薬を購入することが多く、
対象の
市販薬の購入合計金額が年間1万2
千円を超えるような場合は、セルフ
メディケーション税制の利用をして
みてはいかがでしょうか。
2016 年 12 月号
医療費控除制度とセルフメディケーション税制
医療費控除制度
セルフメディケーション
税制
1年間にかかった医療費
※市販薬だけでなく、
控除の対象
病院でかかった医療
となるもの
費
(治療目的)
なども
対象となる
1年間の対象となる
市販薬の購入額
※市販薬のうち、対象
となる市販薬に限定
10 万円(総所得金額等
が200万円未満の人は
総所得金額等の5%の
を超える金額
控除の対象 金額)
となる金額
1万2千円を超えた場合、
その超える分の金額
※超えた金額が全て 戻ってくるわけでは
ありません。
控除の計算の対象と
なるということで、
税
金が安くなります。
※それぞれの超えた金額が全て戻ってくるわけでなく、
控除の計
算の対象となるということです。
減税になるイメージ(例)
対象となる医薬品はどのようなものか?
セルフメディケーション税制の対象となる医薬品は、もと
もとは病院で処方される医療用医薬品であったものが、薬
局などで購入できる市販薬(OTC)に転用された医薬品
(いわゆるスイッチOTC 医薬品)です。
本税制の対象となる市販薬(約1,500品目)は厚生労働
省のホームページに掲載されています。
厚生労働省
セルフメディケーション税制
(医療費控除の特例)について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/
bunya/0000124853.html
対象製品の多くには、薬のパッケージにこの税制の対象
であることを示す「識別マーク」
(下)が表示されます。購入
の際のご参考にしてください。
識別マーク
ここで紹介するのは、
あくまで一例です。
課税所得金額や各種所得控除額によって異なります。
課税所得 400万円 の方
( 所得税率20%、
住民税率10% )
が、
対象医薬品を 年間20,000円 購入した場合
8,000円 が課税所得から控除される。
対象医薬品の購入金額
20,000円 − 12,000円 = 8,000円
これによる減税効果は、
所得税 1,600円
( 控除額:8,000円 × 所得税率:20% = 1,600円 )
個人住民税 800 円
( 控除額:8,000円 × 個人住民税率:10% = 800円 )
計
2,400円 となります。
【参考文献】
1)厚生労働省:セルフメディケーション税制(医療費
控除の特例)について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/
bunya/0000124853.html