OTC 市場に関する調査を実施(2016 年)

2016 年 11 月 22 日
プレスリリース
OTC 市場に関する調査を実施(2016 年)
-税制導入を好機とし、潜在需要掘り起こしが求められる OTC 市場-
【調査要綱】
矢野経済研究所では、次の調査要綱にて国内 OTC 市場の調査を実施した。
1.調査期間:2016 年 6 月~9 月
2.調査対象:国内有力 OTC メーカー等
3.調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail 等によるヒアリング、ならびに文献調査併用
<OTC とは>
OTC とは、Over The Counter の略で、医師による処方箋を必要とせずに購入できる一般用医薬品を指す。
<OTC 市場とは>
本調査における OTC 市場とは、OTC(要指導医薬品、第一類、第二類、第三類の一般用医薬品)の出荷金額と、
指定医薬部外品(厚生労働大臣の指定により、一般用医薬品から医薬部外品となった品目)の出荷金額を合算
し、算出した。
【調査結果サマリー】
‹ 2015 年の OTC 市場は前年比 1.8%増の 8,090 億円、3 年連続のプラス成長
2015 年の国内 OTC 市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年比 1.8%増の 8,090 億円と推計した。
OTC 市場全体の成長率は1%台にとどまるが、一般用医薬品に限定すれば前年比 3.3%増の高い伸び
を示している。新製品投入により市場活性化を果たした一部の薬効(製品)の貢献や一般用医薬品が免
税対象となったことで、訪日外国人客によるインバウンド需要が牽引した。
‹ 2015 年の薬効別 OTC 市場は
目薬が前年比 11.8%増の 485 億円と 2 桁成長、ビタミン剤も同 4.4%増と好調推移
2015 年の国内 OTC 市場(メーカー出荷金額ベース)を薬効別にみると、目薬が前年比 11.8%増の 485
億円と 2 桁成長を達成した他、ビタミン剤が同 4.4.%増の 710 億円と好調に推移、パップ剤・プラスター
(同 1.8%増の 344 億円)や解熱鎮痛剤(同 1.3%増の 320 億円)も堅調に推移した。訪日外国人客による
インバウンド需要が牽引した他、新製品の投入や積極的なプロモーション展開などが効果的に作用した
と考える。
‹ 市場拡大には新規需要の創出や潜在需要の掘り起こしによる
国内 OTC 市場の本格的な活性化が不可欠
今後の国内 OTC 市場拡大を継続するためには、インバウンド需要が一巡する前に国内市場の本格的
な活性化が不可欠である。そのためには、新領域へのスイッチ OTC 投入および新たな効能・効果を持つ
スイッチ OTC 投入による新市場の創出、これまでにない切り口を持った製品投入による新規需要の創出、
新たな訴求展開による既存薬効における潜在需要の掘り起こしなどを通じて、国民全体のセルフメディケ
ーションの推進・定着を実現する必要があると考える。
◆ 資料体裁
資料名:「OTC 市場の展望と戦略 2016 年版」
発刊日:2016 年 9 月 30 日
体 裁:A4 判 322 頁
定 価:115,000 円(税別)
‹ 株式会社 矢野経済研究所
所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝
設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/
本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております http://www.yano.co.jp/)
㈱矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム TEL:03-5371-6912 E-mail:[email protected]
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
本資料内容を転載引用等されるにあたっては、上記広報チーム迄お問合せ下さい。
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2016 年 11 月 22 日
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【 調査結果の概要 】
1. 市場概況
2015 年の国内 OTC 市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、3 年連続のプラス成長となり、前年比
1.8%増の 8,090 億円と推計した。内訳をみると、一般用医薬品が同 3.3%増の 6,600 億円、指定医薬部
外品が同 4.5%減の 1,490 億円であった。
2015 年は、新製品投入により市場活性化を果たした一部の薬効(製品)の貢献と、2014 年に改定され
た外国人旅行者向け消費税免税制度で、一般用医薬品が免税対象となったことで、急拡大した訪日外
国人客によるインバウンド需要が牽引し、一般用医薬品については前年比 3.3%増の高い伸びを記録し
ている。一方で、指定医薬部外品市場の中心を占めるドリンク剤やミニドリンク剤は、特定保健用食品を
含む健康飲料や一般飲料、サプリメントなど一般の食品との競争激化により減少が続いている影響もあり、
指定医薬部外品については同 4.5%の減少となった。
図 1.国内 OTC 市場規模推移と予測
(単位:億円)
10,000
一般用医薬品
8,000
指定医薬部外品
8,090
8,170
8,200
8,210
8,260
1,560
1,490
1,470
1,450
1,430
1,410
6,370
6,390
6,600
6,700
6,750
6,780
6,850
2013年
2014年
2015年
2016年
予測
2017年
予測
2018年
予測
2019年
予測
7,831
7,967
7,910
7,940
7,950
1,530
1,481
1,500
1,570
6,301
6,486
6,410
2010年
2011年
2012年
6,000
4,000
2,000
0
注 1:メーカー出荷金額ベース
注 2:2011 年までは厚生労働省「薬事工業生産動態統計」より引用、2012 年~2015 年は矢野経済研究所推計値、2016 年以降
は矢野経済研究所予測値
注 3:本調査における OTC 市場とは、OTC(要指導医薬品、第一類、第二類、第三類の一般用医薬品)の出荷金額と、指
定医薬部外品※の出荷金額を合算し、算出した。
※指定医薬部外品とは、薬事法改正で厚生労働大臣の指定により、一般用医薬品から医薬部外品となった品目をさし、主
な製品にはコンビニエンスストアで販売されている滋養強壮を目的とするドリンク剤などがある。
2. 薬効別の OTC 市場動向
薬効別に 2015 年の国内 OTC 市場(メーカー出荷金額ベース)をみると、ドリンク剤・ミニドリンク剤
が 1,750 億円(構成比 21.6%)と全体の約 2 割を占める。次いで、総合感冒薬が 755 億円(同 9.3%)、
ビタミン剤が 710 億円(同 8.8%)、目薬が 485 億円(同 6.0%)、胃腸薬が 400 億円(同 4.9%)と続い
ている。その他では、パップ剤・プラスター、解熱鎮痛剤、整腸薬・止瀉薬、便秘薬、水虫薬、痔疾用
薬などが OTC として購入されている。(図 2 参照)
また、2015 年各薬効の市場規模推移(表 1 参照)をみると、目薬が前年比 11.8%増と 2 桁の成長
を達成した他、ビタミン剤(同 4.4%増)が好調に推移、パップ剤・プラスター(同 1.8%増の 344 億円)、
解熱鎮痛剤(同 1.3%増の 320 億円)も堅調に推移した。これらの製品は、訪日外国人客によるイン
バウンド需要が牽引した他、新製品の投入や積極的なプロモーション展開などが効果的に作用した
と考える。
これに対し、ドリンク剤やミニドリンク剤(同 2.2%減)、総合感冒薬(同 0.7%減)が伸び悩んだ他、
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胃腸薬(同 1.0%減)は需要低迷に歯止めが掛からず市場縮小が続いている。これらの製品の減少
傾向は、特定保健用食品や各種健康飲料など一般の食品との競争激化や、かぜの流行がほぼ例
年並みであったこと、健康志向の高まりで暴飲暴食など不摂生をする人の減少などが要因として挙
げられる。
図 2. 国内 OTC 市場 薬効別構成比(2015 年)
2015年出荷⾦額
8,090億円
ドリンク剤・
ミニドリンク剤
21.6%
その他
33.9%
総合感冒薬
9.3%
ビタミン剤
8.8%
痔疾用薬
1.3%
水虫薬
便秘薬
解熱鎮痛剤
1.5%
1.9%
4.0%
整腸薬・止瀉薬
胃腸薬
4.9%
パップ剤・プラスター
目薬
4.3%
6.0%
2.3%
矢野経済研究所推計
注 4:メーカー出荷金額ベース
注 5:本調査における OTC 市場とは、OTC(要指導医薬品、第一類、第二類、第三類の一般用医薬品)の出荷金額と、指
定医薬部外品の出荷金額を合算し、算出した。
注 6:四捨五入のため、図内の比率が一部異なる。
表 1. OTC 主要 7 薬効の国内市場規模推移と予測
(単位:百万円、%)
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
2016年
予測
2017年
予測
2018年
予測
2019年
予測
ト ゙ リ ン ク 剤 ・ ミ ニ ド リン ク 剤
193,000
189,000
186,500
188,000
179,000
175,000
173,000
170,000
168,000
165,000
(前 年 ⽐)
101.0
97.9
98.7
100.8
95.2
97.8
98.9
98.3
98.8
98.2
薬
75,000
76,000
77,000
76,500
76,000
75,500
75,000
74,500
75,000
75,500
103.4
101.3
101.3
99.4
99.3
99.3
99.3
99.3
100.7
100.7
剤
65,500
67,000
67,500
67,500
68,000
71,000
72,000
72,500
72,000
71,000
98.8
102.3
100.7
100.0
100.7
104.4
101.4
100.7
99.3
98.6
44,600
43,800
43,500
43,900
43,400
48,500
50,000
49,000
48,000
47,000
97.4
98.2
99.3
100.9
98.9
111.8
103.1
98.0
98.0
97.9
薬
42,300
41,600
41,200
40,700
40,400
40,000
39,700
39,400
39,200
39,000
(前 年 ⽐)
98.1
98.3
99.0
98.8
99.3
99.0
99.3
99.2
99.5
99.5
パッ プ剤・フ ゚ラスター
34,200
33,800
33,500
33,500
33,800
34,400
34,700
35,000
35,300
35,500
(前 年 ⽐)
97.4
98.8
99.1
100.0
100.9
101.8
100.9
100.9
100.9
100.6
29,400
30,800
31,200
31,400
31,600
32,000
32,500
32,800
33,000
33,200
99.0
104.8
101.3
100.6
100.6
101.3
101.6
100.9
100.6
100.6
総
合
感
冒
(前 年 ⽐)
ビ
タ
ミ
ン
(前 年 ⽐)
目
薬
(前 年 ⽐)
胃
解
腸
熱
鎮
痛
(前 年 ⽐)
剤
矢野経済研究所推計
注 7:メーカー出荷金額ベース
注 8:OTC 市場規模を薬効別に分類し、2015 年の上位 7 位までの薬効の市場推移をまとめた。
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3. 注目すべき動向~OTC を活用したセルフメディケーションの進展
今後の国内 OTC 市場においては、インバウンド需要が一巡する前に市場の本格的な活性化が求めら
れる。そのためには、①新領域へのスイッチ OTC※※投入および新たな効能・効果を持つスイッチ OTC 投
入による新市場の創出、②これまでにない切り口を持った製品投入による新規需要の創出、③新たな訴
求展開による既存薬効における潜在需要の掘り起こし、④販売店における情報提供と相談体制の整備、
⑤異業態小売業など新規参入の増加に伴う販売機会の拡大、などの対応を通じて、国民全体のセルフメ
ディケーションの推進・定着を実現する必要がある。
また、高齢化社会の進展に伴い年々増大する医療費の抑制が切実な問題となっているおり、社会保
障制度を維持する観点からも、医療費の抑制は避けては通れない。医療費抑制策の一環として、OTC を
活用したセルフメディケーションが、これまで推進されてきている。厚生労働省では、適切な健康管理の
下で医療用医薬品からのスイッチ OTC への代替を進める観点から、その購入費用について所得控除を
認めるセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)を進めている。同税制は 2017 年1月から導入さ
れるが、この施策のみでセルフメディケーションを大きく推進させることは難しく、これまでに打ち出された
セルフメディケーション推進に向けた各種の施策を踏まえた総合的な展開が必要であると考える。国は税
制改正という大きな施策を打ち出しており、OTC 業界全体でこうした機会を逃すことなく、セルフメディケ
ーションを推進する好機としなければならない。
※※スイッチ OTC とは、本来は処方箋の必要な医療用医薬品の成分を転用した OTC を指す。
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