やまのいもの需給動向 - alic|独立行政法人 農畜産業振興機構

今月の野菜
やまのいもの需給動向
調査情報部
主要産地
①北海道
周年
②青森県
周年
⑧秋田県
11月~12月
ながいも(青森産)
⑥岩手県
12月~2月、
4月~5月
⑤群馬県
周年
⑦茨城県
7月~4月
③長野県
周年
⑨鳥取県
周年
④千葉県
周年
⑩山梨県
10月~6月
いちょういも(千葉産)
資料:農林水産省「平成27年産野菜生産出荷統計」
(概数)
注:図中の番号は収穫量の多い順番、期間は主な出荷
期間を表している。
やまといも(伊勢いも、三重産)
やまのいもは、ヤマノイモ科ヤマノイモ属
ろなどに利用される。やまといもは、つく
のうち日本で食用として栽培されているもの
の総称であり、中国原産の山芋、日本原産の
じ ねんじょ
だいしょ
自然薯、東南アジア原産の大薯に分けられる。
ねいもとも呼ばれ、やまのいもの中では最
も粘り気が強く肉質も良いことから、高級
食材として和菓子の原料や練り物のつなぎ
さらに、山芋はその形状により、円筒形のな
がいも、扁平形のいちょういも、球形のやま
といもの3種類に大別される。
などにも使われている。
やまのいもは主に11月から12月にかけて
収穫するが、貯蔵性が高いため土の中で越冬
ながいもは、日本で最も多く栽培されて
おり、酢の物や山かけなどに利用される。
させ、翌年の春に収穫する春掘りと併用する
ことで、
年間を通して出回っている。近年は、
いちょういもは、関東ではやまといもとも
呼ばれ、ながいもより粘り気が強く、とろ
台湾や米国といった海外でながいもの需要が
高まっており、輸出量も増加傾向にある。
野菜情報
68
2016.12
作付面積・出荷量・単収の推移
作付面積の推移
平成27年の作付面積は、7270ヘクター
ル(前年比100.1%)と、ほぼ前年並みとなっ
ている。
上位5道県では、
◦青森県 2280ヘクタール(同101.3%)
◦北海道
◦群馬県
◦千葉県
1890ヘクタール(同101.1%)
538ヘクタール(同 96.4%)
524ヘクタール(同 98.9%)
◦長野県
310ヘクタール(同 98.1%)
となっている。青森県、北海道および長野県
は主にながいもが、群馬県および千葉県は主
にいちょういもが作付けされている。
(ヘクタール)
9,000
その他
8,000
7,000
長野
6,000
千葉
5,000
4,000
群馬
3,000
北海道
2,000
1,000
青森
0
平成20
21
22
23
24
25
26
27
(年)
資料:農林水産省「平成27年産野菜生産出荷統計」
(概数)
出荷量の推移
27年の出荷量は、13万4300トン(前年
比99.9%)と、ほぼ前年並みであった。
上位5道県では、
◦北海道
◦青森県
◦長野県
◦千葉県
◦群馬県
5万2700トン(同101.9%)
5万 700トン(同 97.9%)
5540トン(同 90.5%)
4880トン(同 96.6%)
4840トン(同103.6%)
となっている。
(千トン)
160
その他
140
群馬
120
100
千葉
80
長野
60
青森
40
北海道
20
0
平成20
21
22
23
24
25
26
27
(年)
資料:農林水産省「平成27年産野菜生産出荷統計」
(概数)
平成27年の主産地の単収
出荷量上位5道県について、10アール当
たりの収量を見ると、北海道の3.34トンが
最も多く、次いで青森県の2.50トン、長野
県の2.43トンと続いている。その他の県で
多いのは、
茨城県(2.35トン)、鳥取県(2.21
トン)であり、全国平均は2.24トンとなっ
ている。
(トン/10a)
3.5
3.34
3
2.50
2.5
2.43
2.35
2.21
2.24
鳥取
全国
2
1.5
1.32
1.17
1
0.5
0
北海道
青森
長野
千葉
群馬
茨城
資料:農林水産省「平成27年産野菜生産出荷統計」
(概数)
注:黄色は、出荷量上位5道県以外で単収が多い2県および全
国平均。
野菜情報
69
2016.12
作付けされている主な品種等
ながいもは、やまのいもの代表的な品種で
日本に古くから自生している自然薯は、食
あり、青森県や北海道などに大産地がある。
用だけでなく薬用としても珍重されてきた。
いちょういもは、千葉県や群馬県、埼玉県な
ど、主に関東周辺で栽培されている。また、
やまといもには、三重県や奈良県の伊勢いも、
天然ものは収穫するのが難しく数量が限られ
ることから、市場に出回っているのはほとん
どが栽培ものである。
兵庫県の丹波いもなどの特産品がある。
都道府県名 主 な 品 種
北 海 道 ながいも(十勝選抜系)
青 森 県 ながいも、トロフィーながいも、丸いも
長 野 県 ながいも
千 葉 県 いちょういも(デブ系、ふさおうぎ)
群 馬 県 いちょういも
資料:農畜産業振興機構の関係者聞き取りによる。
東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績
東京都中央卸売市場の月別入荷実績(平成
27年)を見ると、年間を通して安定した入
は青森産、
2位は北海道産である。青森産は、
月別入荷量全体の約60~70%を占めてい
荷となっている。大部分は関東以北の産地か
らの入荷であり、すべての月で入荷量の1位
る。
平成27年 やまのいもの月別入荷実績
(東京都中央卸売市場計)
(トン)
1,500
その他(4)
群馬(3)
その他(4)
その他(5)
群馬(3) 千葉(8) その他(4) 群馬(3)
その他(3)
群馬(4)
その他(2)
1,200
岩手(4)
その他(5) その他(4)
茨城(3)
その他(7)
群馬(4)
岩手(8)
茨城(4) 茨城(2)
群馬(3) 茨城(4) その他(5) 群馬(4) 岩手(5)
千葉(7)
岩手(5)
千葉(8) 群馬(3) その他(6) 茨城(5)
その他(6)
千葉(7) 茨城(4)
千葉(9) 北海道
群馬(4)
茨城(4)
北海道
岩手(5)
(13)
千葉(8)
北海道
茨城(6) 北海道 千葉(9) 千葉(8) 北海道
(17)
900
(12)
千葉(11)
(15)
北海道
千葉(9)
(11)
北海道
北海道
茨城(7)
北海道 岩手(7)
(13)
(11)
北海道
(12)
千葉(10)
(12)
千葉(11)
(13)
北海道
北海道(12)
600
(14)
300
0
青森
(61)
1
青森
(64)
2
青森
(69)
3
青森
(65)
青森
(71)
4
5
青森
(67)
6
青森
(64)
7
青森
(64)
8
青森
(66)
9
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:平成27年東京都中央卸売市場年報)
注:( )内の数値は、月別入荷量全体に占める割合(%)である。
野菜情報
70
2016.12
青森
(70)
10
青森
(58)
11
青森
(62)
12 (月)
大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成
を除き、両道県で全体の90%以上を占めて
27年)を見ると、すべての月で入荷量の1
位は北海道産、2位は青森産である。11月
いる。11月は秋田産の入荷が目立つ。
平成27年 やまのいもの月別入荷実績
(大阪中央卸売市場計)
(トン)
1,200
その他(3)
1,000
800
600
その他(2) その他(2)
岩手(3)
その他(2)
岩手(5)
その他(1)
岩手(5)
その他(2)
その他(2)
青森
その他(2)
青森
その他(8)
青森
(24)
(24)
青森
青森
その他(3)
(24)
青森
青森
(24)
(31)
青森
(34)
(21)
その他(3)
(27)
青森
(24)
青森(15)
400
200
0
北海道
(82)
北海道
(73)
1
2
北海道
(74)
北海道
(77)
3
4
北海道
(65)
北海道
(69)
北海道
(69)
北海道
(71)
6
7
8
5
秋田
(16)
その他(4)
青森
(12)
青森
(24)
北海道
(64)
北海道
(68)
北海道
(57)
9
10
11
北海道
(84)
12 (月)
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:平成27年大阪市・大阪府中央卸売市場年報)
注:( )内の数値は、月別入荷量全体に占める割合(%)である。
東京都中央卸売市場における価格の推移
東京都中央卸売市場の価格(平成27年)
を代表的な品種であるながいもで見ると、1
キ ロ グ ラ ム 当 た り309〜391円( 年 平 均
355円)の幅で推移している。月による変
動が少なく、価格は安定している。
卸売価格の月別推移(ながいも)
(円/kg)
500
400
300
200
平成25年
平成26年
100
平成27年
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:東京都中央卸売市場「市場月報」)
注:外国産も含む。
野菜情報
71
2016.12
11
12
(月)
輸入量の推移
輸入量全体(ながいも等(生鮮)となが
国別輸入量を見ると、中国の割合が多く、
いも(冷凍))を見ると、平成24年以降は
27年 の な が い も 等( 生 鮮 ) で は 全 体 の
減少傾向にあり、27年の合計は1612トン
となっている。
78.0%、ながいも(冷凍)では93.8%を占
めている。
ながいも等(生鮮)
、ながいも(冷凍)輸入量の推移
(トン)
6,000
ながいも等(生鮮)
ながいも(冷凍)
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
21
平成20
22
23
24
25
26
27 (年)
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」
(原資料:財務省「貿易統計」
)
国別輸入量
平成20年
ながいも等(生鮮)
韓国
5
0.2%
ベトナム
127
4.2%
タイ
3
0.1%
合計㻌㻟㻘㻜㻡㻝㻌トン㻌
平成27年
ながいも等(生鮮)
ベトナム
236
20.6%
その他
2
0.1%
中国
2,914
95.5%
合計㻌㻝㻘㻝㻠㻣㻌トン㻌
平成20年
ながいも(冷凍)
ベトナム
25
1.3%
中国
895
78.0%
平成27年
ながいも(冷凍)
ベトナム
29
6.2%
ペルー
2
0.1%
合計㻌㻝㻘㻥㻜㻝トン㻌
韓国 その他
タイ
2
4
11
0.3% 0.2%
0.9%
中国
1,874
98.6%
合計㻌
㻠㻢㻡トン㻌
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:財務省「貿易統計」
)
野菜情報
72
2016.12
中国
436
93.8%
輸出量の推移
平成27年のながいも(生鮮)の輸出量を
と、台湾への輸出が3419トンであり、米国
見 る と、 合 計7114ト ン で あ り、 前 年 比
が3150トンと、両国で全体の約90%を占
123%と大幅に増加している。国別に見る
めている。
ながいも(生鮮)の輸出量の推移
(トン)
8,000
台湾
米国
シンガポール
その他
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
25
平成24
26
27
(年)
資料 :農畜産業振興機構「ベジ探」
(原資料:財務省「貿易統計」
)
消費の動向
すり下ろしてお好み焼きに混ぜたり、そば
のつなぎや和菓子に利用したりと、用途が広
いやまのいもは、健康食志向の影響もあり、
需要は堅調に推移している。
さんやく
中国では山薬と呼ばれ、滋養強壮の漢方薬
含んでいる。また、やまのいもの粘り気はム
チンという糖タンパクによるものであり、ム
チンは胃壁を保護して損傷を防ぎ、高脂血症
や糖尿病を予防する効果を持つ。
風味豊かで栄養価に優れるやまのいもは、
として利用されており、高血圧の予防に効果
のあるカリウム、マグネシウムなどのミネラ
ルや、ビタミンB群、Cなどをバランス良く
生で食べたり酢の物や揚げ物にするなど、幅
広く使いたい健康野菜である。
小売価格(東京都区部)の動向
(円/㎏)
800
700
621
615
平成20
21
681
662
682
740
751
26
27 (年)
696
600
500
22
23
24
25
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」
(原資料:総務省「小売物価統計調査」
)
野菜情報
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