院内感染対策における高感度インフルエンザ迅速診断システム選択基準

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院内感染対策における高感度インフルエンザ迅速診断システム選択基準の検証
◎梅田 由佳 1)、角野 忠昭 1)、岡田 真弓 1)、築田 礼 1)、石山 進 1)
金沢市立病院 中央診療部 臨床検査室 1)
【目的】インフルエンザの迅速診断には、イ
齢者では咳嗽、関節痛・筋肉痛の 2 項目が有
ムノクロマト法を利用した迅速診断キット(従
意な因子であったが、小児、成人においては
来法)と銀増幅技術を応用した高感度インフル
有意な因子はなかった。従来法陽性群は陰性
エンザ迅速診断システム(高感度法)がある。高
群に対し、高齢者では頭痛・頭重感、咳嗽、
感度法は、従来法に比べ A 型で 8 倍、B 型で
関節痛・筋肉痛の 3 項目が、成人では咳嗽、
32 倍高感度であり、6 時間未満の発症初期で
鼻水、高体温の 3 項目が、小児では頭痛・頭
の検出力がより高い。しかし検査の運用面に
重感、高体温の 2 項目が有意な因子であった
おいては、1 台の装置につき 1 検体しか測定で
(p<0.05)。また、成人では発熱後 6 時間以上経
きず、最終判定までに 15 分を要し、試薬コス
過した例ではおおむね従来法で検出できるが、
トが従来法の約 2 倍という問題点もある。こ
小児と高齢者では 12 時間以上経過しても高感
のため装置の台数が限られている場合や採算
度法のみでの検出例が目立った。
性の面において、インフルエンザ流行期に全
【考察】これまで高感度法と従来法の選択に
検体を高感度法で検査するのは難しい。そこ
おいては、発熱後経過時間が最も重要な因子
で当院では、2014 年インフルエンザ流行期に
とされ、今回の検討でも成人では高感度法陽
おける検査結果の検討を踏まえ、高感度法を
性者は発熱早期に多くみられた。しかしなが
選択する基準を『発熱後 6 時間未満、入院患
ら高齢者では、高感度法陽性者の発熱後経過
者の急な発熱時、職員の急な発熱時、小児・
時間にはかなりのばらつきがあり、さらに高
妊婦・重症患者』とした。今回この基準の検
体温自身が検査陽性の有意な因子とならなか
証を目的に追加検討を行った。
った。これは高齢者では、免疫力の低下や薬
【対象と方法】2014 年および 2015 年インフル
剤服用などにより高熱が出にくいことなどが
エンザ流行期(2014 年 12 月から 2015 年 5 月、
原因と考えられる。小児では発熱後数十時間
2016 年 1 月から 4 月)に当院に入院、あるいは
経過しても高感度法でしか検出できない例が
外来受診し、病歴・症状などからインフルエ
あり、症状の発現やウイルスの増殖に個人差
ンザ罹患が疑われ、迅速診断検査が行われた
がある可能性が高い。今回の検討結果より、
患者 845 例を対象とした。高感度法にて陰性
成人では従来通りの検査法選択基準を適用で
判定された群(陰性群)、高感度法にて銀増幅後
きるが、高齢者や小児においては高熱や経過
に陽性判定された群(高感度法陽性群)、高感度
時間を目安とするよりも症状、身体所見、使
法にて銀増幅前および従来法にて陽性判定さ
用薬剤などを考慮して検査法を選択する必要
れた群(従来法陽性群)の 3 群に分け、臨床学的
があることが示唆された。
因子を調査し、小児(0-12 歳)、成人(1364 歳)、高齢者(65 歳以上)の各年齢層で比較検
討した。またインフルエンザ検査陽性時の発
熱後経過時間についても調査した。
【結果】高感度法陽性群は陰性群に対し、高
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