関川教授「高齢者福祉施設特化型車椅子PS-1の開発

産学官連携フェア2016 みやぎ
高齢者福祉施設特化型車椅子 PS・1の開発
東北福祉大学
総合福祉学部
関川
伸哉
現在,高齢者福祉施設(以下,施設)で使用されている車椅子の多くは,必要最
低限の機能しか持たない病院等で一時的な搬送を目的に使用されるものです.その
ため,体に合わない車椅子を使用している高齢者が非常に多くいます (図1).我々
は,2005年度から高齢一人ひとりに車椅子を合わせ,生活を支援する「車椅子適
合支援」(臨床介入)を行ってきました.今回は,そうした取組を通して開発した
高齢者のための車椅子“PS-1”を紹介(展示)します.
1. 高齢者の車椅子の現状と課題
■我々の調査によれば,約8割の施設利
用者が日常で車椅子を使用しています.
また,平均座位時間も一日約8時間と,
車椅子上での生活が長くなっています.
そのため車椅子は,単なる移動手段で
はなく,生活を支える重要な道具と
なっています.しかし,そうした認識
はまだまだ低く,枕・クッション・バ
スマットなどを体に挟み込み無理に姿
勢をつくろうとしています.また,
“きちんと座れないのは高齢者だから
仕方が無い”と思われています.
図1 体に合わない車椅子を使用している高齢者
■そこで我々は,上記問題解決のために施設で用いることを前提とした完全アジャ
スタブル次世代型車椅子PS・1(Posture Solution type-1)を開発しました.
2. 高齢者の車椅子に求められる6つの機能(要素)
表1 計測結果から算出された各部位サイズ(赤字)
既存車いす[㎜]
目標寸法値・調整幅[㎜]
①アームサポート高
245
200~320
②背もたれ高(自走)
430
310~470
③座幅
420
310~380
④シート奥行
400
300~400
⑤前座高
420
290~390
下腿長因子(第二主成分)
部位
スコアプロット64.6%
n=319
●女性
○男性
上肢・体幹長因子(第一主成分)
図2 第一・二主成分のスコアプロット
■319名を対象に計測・調査を行った結果,高齢
者の体型は個人差が大きく(図2),各部位10cm
以上の調整幅が必要であることがわかりました(表
1).更には,200名を超える臨床介入から以下の
機能(要素)が必要であることがわかりました.
【6つの機能(要素)】
① アジャスタブル機能(身体寸法適合)
② 姿勢保持機能(骨盤・アンカーサポート)
③ 脊柱形状への適合機能(円背等へも対応
する背面形状)
④ 足底接地による下肢機能の活用維持
機能(高齢者の下腿長に適した前座高)
⑤ 操作性の容易さ(漕ぎ易く,小回が利く)
⑥ デザイン性の大幅な向上(乗ってみたい,
乗せてあげたい!)
本研究に関するお問い合わせ先: [email protected]
関川 伸哉
産学官連携フェア2016 みやぎ
高齢者福祉施設特化型車椅子 PS・1の開発
東北福祉大学
総合福祉学部
関川
伸哉
3. 高齢者の姿勢を保ち生活を改善する車椅子 PS・1
MADE IN
宮城
カラーバリエーション
赤
ラベンダー
紺
乗ってみたい。
乗せてあげたい!
プロのデザイナーが手掛け
た機能美.10年以上の臨
床・調査・研究から生まれ
た全てが新しい次世代型車
椅子 PS・1
図3 長時間座っても身体への負担の少ない姿勢
図4 PS・1の概要(矢印は調整可能箇所)
■車椅子を使用する際には,一人ひとり体格に応じて,座面や肘掛けの高さ,背も
たれの位置などを調整して,身体への負担の少ない姿勢(図3)をつくる必要あり
ます.PS・1は,高齢者の車椅子に必要とされる機能(①~⑤)を満たし,デザイ
ン性を大幅に向上させました.サイズは,計測値を基にS/M/Lの中から選びます.
4. PS・1の導入事例(姿勢の変化と生活改善)
After
Before
After
Before
 88歳(女性)158cm 49kg MMSE23
 要介護2 ・老健入所,体幹変形(円背)
 車椅子座位時間9時間/日
 左右股関節,左膝関節伸展制限有
 95歳(女性)138cm 31kg MMSE不明
 要介護4 ・特養入所,体幹変形(円背)
 車椅子座位時間11.5時間/日
 移乗全介助,移動距離0m(一日中テレビの前)
After
足漕ぎ及び食事動作(頭部位置)大幅改善
After
移乗自立・自走距離25m・食事動作改善
図5 車椅子を一人ひとりに適合させた際の前後比較(図3の姿勢を参考に比べてみて下さい)
本研究に関するお問い合わせ先: [email protected]
関川 伸哉