【28】(1→3)-β-D-グルカンの経時的測定が有用であった

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(1→3)-β-D-グルカンの経時的測定が有用であったニューモシスチス肺炎 2 症例
◎大谷 雅代 1)、増田 嘉代子 1)、杵淵 秀子 2)、加藤 真一 1)、中﨑 聡 2)
公益社団法人 石川勤労者医療協会 上荒屋クリニック 1)、公益社団法人 石川勤労者医療協会 城北病
院 2)
【はじめに】関節リウマチ(以下 RA)など自
なく経過観察となった。受診 21 日後、咳症状
己免疫疾患の治療薬として免疫抑制剤、生物
の出現、歩行時のふらつきがあり再受診され
学的製剤が導入されて以来、ニューモシスチ
た。胸部 X-P、CT を実施したところスリガラ
ス肺炎(以下 PCP)の合併が数多く報告され
ス陰影を認め、PCP 疑いで他院紹介入院とな
ている。今回(1→3)-β-D-グルカン測定(以
った。入院時 BDG:119pg/mL。臨床経過より
下 BDG)が PCP の補助診断として有用であっ
PCP と診断された。
た症例を経験したので報告する。尚、BDG の
【考察】MTX 使用時に発症する肺病変のうち、
測定試薬はファンギテック G テスト MKⅡ
特にびまん性のスリガラス様陰影を呈した症
「ニッスイ」である。
例では PCP と薬剤性肺炎の鑑別が重要となる。
【症例1】71 歳 女性。《既往歴》RA
今回 2 症例とも BDG 値を前回と比較すること
《薬歴》メトトレキサート(MTX)10mg/週、
で、BDG の上昇時に異常値報告ができた。症
エタネルセプト(ETN)50mg/週《現病歴》
例1では入院への決定づけに、症例 2 では
4 月受診時の BDG:5.0pg/mL 未満。6 月咳、
PCP を念頭において経過観察することで、症
咽頭痛症状が出現した。咳症状が持続し、次
状初期に対応できた。リウマトレックス適正
第に食欲も低下した。その7日後息苦しさ、
使用情報 Vol.22 によると、2015 年までに報告
頭痛、関節痛にて受診され精査および BDG 検
された MTX との因果関係が否定できない感染
査実施。SPO2:96%。胸部 X-P にて両側気管
症による死亡例 117 例のうち 33 例(28.2%)
支陰影増強認めた。入院を勧めたが拒否され
が PCP であった。又エンブレルの適正使用情
た為、抗生剤処方にて治療開始となった。受
報 Vol.9 では ETN との因果関係が否定できな
診 2 日後外注先より報告された BDG:
い感染症死亡例 25 例のうち 6 例(24%)が
25.0pg/mL と上昇を認めた為、医師に異常値報
PCP であった。RA 治療により発症する PCP は
告を行った。再度胸部 X-P を実施した所、ス
症状が急速に悪化し、強い低酸素血症を伴う
リガラス陰影認め PCP 疑いで他院紹介入院と
ことが多い為、早期診断と迅速な対応が必要
なった。入院時 SPO2:90%。動脈血ガス分析
となる。しかし当クリニックでは BDG は外注
PaO2:57.5mmHg と低酸素血症を認めた。喀痰
検査の為結果報告に 2 日を要する。症例 1 で
Pneumocystis jirovecii DNA 陽性。
は入院時に低酸素血症を伴っており、重症化
臨床経過より PCP と診断された。
を防ぐ為にも BDG の迅速検査対応が必要であ
【症例2】65 歳 男性。《既往歴》RA《薬
ると感じた。進歩するリウマチ治療のニーズ
歴》MTX10mg/週《現病歴》12 月受診時の
に検査室として対応していくことが今後の課
BDG:5.0 pg/mL 未満。翌年3月食欲不振、全
題である。
身倦怠感にて受診され精査採血実施。受診
【まとめ】PCP の補助診断として BDG の経時
2 日後外注先より報告された BDG:49.4pg/mL
的測定は有用であり、今後も検査室として迅
と上昇を認めた為、医師に異常値報告を行っ
速に対応していきたい。
た。電話にて症状を確認したが、呼吸器症状
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