図書だより霜月(11月) - 広島県立五日市高等学校

霜月号
おススメの本
本
おススメの
広島県立五日市高等学校図書室
図書室だより
図書室だより
芸術(
芸術(書道科)
書道科)懸川一明先生
平成28
平成28年
28年11月
11月21日発行
21日発行VOL, 8
★夕日射す
夕日射す校舎の
校舎の
窓 に 映 る , 一心に
一心 に
辞書を
辞書を繰る君の姿
…。
新
★ 教室掲示
『感動する
感動する漢字
する漢字』
漢字』
山口謡司著
廣済堂出版
漢字一文字の
漢字一文字の中に刻まれた古代人
まれた古代人の
古代人の思いを知
いを知ることで,
ることで,漢字がも
漢字がも
っと身近
っと身近に
身近に感じられ,
じられ,贈りたい一文字
りたい一文字や
一文字や座右の
座右の銘がきっと見
がきっと見つかる一
つかる一
冊です。
です。
着
図
書
案
内
★図書活用状況10/3~28…3年88冊/2年78冊/1年69冊
砂漠を
砂漠を緑の町にかえた ある女
ある女のひとのおはなし‐
のひとのおはなし‐』
『木のすきなケイトさん‐
のすきなケイトさん‐
H・J・ホプキンズ著
・ホプキンズ著
BL出版
BL出版
本作は宮沢賢治の,杉苗をひたすら植える物語「虔十公園林」と読み比べ
ると大変面白い作品である。150年前のアメリカに生きた少女ケイトの半生を
物語絵本化している。夏の全国読書感想文コンクールの課題図書にもなって
いた作品である。当時のアメリカでは女子は手を汚すことをしてはいけない
とされ,女子が科学を学びたがるなんて,とんでもないと思われた時代でも
あったという…。ケイトは平気で泥んこになり,周囲に何と言われようとも,
熱心に科学の勉強に打ち込んだ…。カリフォルニア大学を「初めての女性の
科学者」として卒業し,茶色の砂に覆われた砂漠の町サンディエゴに教師と
して赴任した。が,緑のない町に木や森を増やすことの方が重要だと気付き, 『人口と
人口と日本経済』
日本経済』
先生を辞めて園芸家となる。世界中の園芸家に手紙を書き種を取り寄せ, 吉川洋著
中央公論新社
暑く乾いたサンディエゴの気候に,ぴったりの樹木を探し植えて回った。ケイ
トがどんな風にして木を植え,どのようにして緑の町を作り出したのか?本書 人口減少が進み,労働人口が減って
が絵本にしてある理由がここにある。ページを見開き,ゆっくりと拡がってい いく現在の日本…。財政赤字は拡大の
く緑の世界には誰しも素朴な感動を覚えるはずである。砂地に一本の木の苗 一途を辿り,地方は「消滅」の危機に
を植えることから,世界を描いていったケイトから学べるものは多いし,それ ある。もはや衰退は不可避ではないか?
は虔十の生き方とも重なる。
短絡的な意見に対し,長く人口問題と
格闘してきた経済学は「NO」を突き
『推理は
霧舎巧(
光文社
つける。経済成長の鍵を握るのはイノ
推理は一日二時間まで
一日二時間まで』
まで』
霧舎巧(むしゃたくみ)
むしゃたくみ)著
ベーションであり,日本が世界有数の
国内某所にある個室レンタルスペースその名も「秘密基地」…そこから物 長寿国であることこそ,利点となると論
語は始まる。集っている者は,全身タイツのヒーローコスプレ男やカンフー を展開する。
着をまとった老人,熱狂的ゲームマニアなど,一癖も二癖もある趣の御人ば
かりだ。彼らを取りしきるオーナーは年齢不詳のその名も「クールビューテ
ィー美貴」。 ある日,突然やって来た土佐垣という男は美貴のパソコンがハ
ッキングされているかもしれないと告げる。彼はインターネットのセキュリテ
ィに詳しく,ネット上で『全国こどもパソコン相談室』を開設していた。その
中に「ぼくはママに,推理は一日二時間までと言われています。どうしてで
すか?」という意味深な質問があり…物語は奔放に流れ思わぬ展開へと…。
『希望荘』
希望荘』
宮部みゆき
宮部みゆき著
みゆき著
小学館
杉村三郎は,東京都北区に私立探偵事務所を開業する。早速,亡き父・
武藤寛二が生前に残した「昔,人を殺した」という告白の真偽を調査してほ
しいという依頼が舞い込む…。依頼人の相沢幸司によれば父は母との離婚
後,息子と再会するまで30年の空白があったという…。果たして,武藤は人
殺しだったのか?35年前の殺人事件の謎を調べていく中で,昨年発生した女
性殺害事件を解決するカギが隠されていることに,杉村は注目してゆくのだ
が…。
『手のひらの京
のひらの京』
綿矢りさ
りさ著
綿矢
りさ著
新潮社
おっとりした長女・綾香,恋愛に生
きる次女・羽依,自ら人生を切り拓く
三女・凛。生まれ育った街や家族への
思い,かけがえのない日常…。京都に
暮らす奥沢家三姉妹を描く,春夏秋冬
が鮮やかに息づく綿矢版『細雪』だ。
『蜜蜂と
蜜蜂と遠雷』
遠雷』
恩田陸著
幻冬舎
『 東京會舘とわたし
東京會舘 とわたし』/㊤
とわたし』/㊤旧館
』/㊤ 旧館・
旧館・
㊦新館』
新館』
本作は500ページ余・上下2段 辻村深月著
角川書店
組の恩田陸渾身の小説である。物
語は,あるピアノコンクールを巡る 東京会館は大正11(1922)年,
設定だ。「ここを制した者は世界最 東京・丸の内に国際的な社交場と
高峰のS国際ピアノコンクールで優 して誕生した。大政翼賛会の徴用
勝する」というジンクスがあり近年, ・戦後GHQ(連合国軍総司令部)
世界中から若い才能が集まってく の接収を経て,新館に建て替えら
る。かつて,天才少女と注目され れた。結婚披露宴や宴会場,ま
ながらも事情によりピアノから遠ざ た芥川賞・直木賞の記者会見・
かっていた20歳の栄伝亜夜・サラ 贈呈式や宝塚のトップスターのイ
リーマンで,妻子もある年齢制ぎり ベント会場としても知られ,多くの
ぎりの音大出身の高島明石・完璧 人々に愛されてきた。現在,2度
な演奏技術と音楽性で優勝候補と 目の建て替え中である この会館
目されるマサル・C・レヴィ=アナ を舞台に訪れる客や,スタッフの
トール19歳。そして養蜂家の父と かけがえのない時間を描いた上
各地を転々とし,ピアノを持たない ・下2巻に及び,10章からなる連
少年・風間塵16歳。この3人を軸 作短編集となっている。著者も東
に物語は展開する。…単なる3人 京会館で結婚式を挙げ,もちろん
の競争物語などではない。彼らに 直木賞受賞贈呈式もここで受けて
関わる人達,それぞれの視点から …と,思い出深い場所である。そ
人生の物語が紡がれているのであ して何より,本作は彼女の初の歴
る。人生の意味?を考える一冊。 史小説となる意欲作。