花のソコが知りたい!” vol.38 グラジオラス編

華やかな花を咲かせ、種類が豊富な「グラジオラス」
。冠婚葬祭には欠かせないお花です。
周年出荷されているので、1 年を通して楽しむことができます。
✤栽培期間が短く、周年生産ができます。
✤生育には日当たりの良さが重要です!
✤先端のつぼみと咲き終わった花を
取り除くことが日持ちのポイントです!
学名:Gladiolus
和名:唐菖蒲(トウショウブ)
分類:アヤメ科 グラジオラス属
原産:南アフリカ、地中海沿岸
剣状の葉に因んで、
ラテン語で「小さな剣」を
意味するグラディスに由来して
名づけられました。
*グラジオラスの歴史*
18 世紀から 19 世紀中頃にかけて主にイギリス、フランス、オランダで改良が進
められ、ドイツを経てアメリカへ渡りました。19 世紀末にカリフォルニアで
乾燥と強い陽射しに適したものが作出され、その後はアメリカが生産の中心と
なっています。
日本へは江戸時代末期に入ってきましたが、栽培が普及し始めたのは明治末年に
なってからのことです。
*栽培方法*
グラジオラスは比較的栽培が容易であり、季咲き栽培のほか促成栽培、抑制栽培が
可能で長期間出荷できるのが特徴です。
また、園芸品種のグラジオラスは、夏季に生長する夏咲き系統と冬季に生長する
春咲き系統とに大別されます。
<夏咲き系統>
〇グランディフローラ系
従来からの大多数の品種がこの系統に属し、大輪
咲きで花色も豊富です。
花芽形成に日長は影響しませんが、花芽の発育は
長日で促され、短日下ではブラインド(花成が途
中で停止する)発生が多くなります。
この他に、草丈が低く小輪のピクシオーラ系、
秋植えで耐寒性のある春咲き系があります。
✤作型✤
作型 月
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
ハウス促成
▲-----------(4~5月)
トンネル半促成
▲----------------(6月出し)
マルチ
▲---------------(6月出し)
露地
▲---------------(7月出し)
露地抑制
▲----------(8月出し)
露地抑制
▲---------(9月出し)
露地抑制
▲----------(10月出し)
ハウス抑制
▲----------(11月出し)
▲植え付け 採花 冷蔵
✤植え付け✤
日当たり、排水のよい圃場を選びます。
密植はブラインドの原因にもなるので、
株間をやや広くします。
✤生育中の管理✤
ハウス栽培やトンネル栽培では、発芽までは
日中 30℃、発芽後は 25℃を目標に換気します。
✤採花✤
目安として、1~2 番花のつぼみが見え始めたら
球根ごと引き抜きます。花を切った後横に寝かして
おくと、植物が起こす屈地性※により、花穂が上を向いて
曲がってしまいます。長時間置く場合は垂直にたてて
おきましょう。
※屈地性とは、植物体が重力の作用に対して起こす屈性のことです。植物の伸長促進
作用のあるオーキシンが重力に従って下方に移動するため、植物体を横に置くと茎の
下側のオーキシン濃度が高くなり、上側に比べて伸長が促進され、起き上がります。
*注意する病気・病害虫*
フザリウム腐敗病
球茎の下半分や側面に水浸状の斑点を生じ、次第に黒褐色になる。
<対策>
・土壌中に菌がいるため、連作を避ける
・根付時に病気に罹った球根を除き、貯蔵するときは殺菌剤などを使用
する
・窒素肥料をやりすぎないようにする
首腐れ病
初夏から秋にかけて葉、葉鞘、球茎に接する部分に不整形黒褐色の病斑を
生じ、腐敗してくびれ茎部が抜ける。
<対策>
・排水の良好な畑に作付する
・発病した球茎を使用しないようにする
*年間の入荷量の推移*
20.0%
15.0%
10.0%
5.0%
0.0%
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月 10月 11月 12月
7~8 月の入荷が多くなりますが、
全国各地で立地条件を生かした作型で
栽培が行なわれ、周年生産されています。
*主な生産地*
茨城県
長野県
鹿児島県
晩秋~春は暖地、夏~秋は高冷地から
出荷されます。
*日持ちのポイント*
・日持ちは約 1 週間で、1 つの花の寿命は 2~3 日
・先端のつぼみは咲かないため、あらかじめ手で折っておくと
他の花に養分が届きやすくなります
・下から咲くので、終わった花は取り除きましょう
・花器の水を少なめにするとゆっくり咲きあがります
*品種*
ミルカ
ベンベヌト
ソフィ
フレボブリーザー
マスカーニ
ジェシカ
最近は草丈の短い小輪タイプも登場し、
家庭用やアレンジメント、花束にも活躍しています。
さまざまな花色の中からお好きなものを組み合わせ、
ぜひご家庭でもお楽しみください!
参考資料
農山漁村文化協会 発行 「農業技術体系 花卉編 10」
宇田明 桐生進 著 「花屋さんが知っておきたい花の小事典」
宍戸・長塩 著 「花屋さんの花材が全てわかるアレンジ図鑑」
株)大田花き
品質カイゼン室