“Make America Great Again”、レーガンとトランプ

リサーチ TODAY
2016 年 11 月 22 日
“Make America Great Again”、レーガンとトランプ
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
日本時間11月9日、米国大統領選でトランプ氏が当選したことは二つのショックを与えた。第一は、そも
そもトランプ氏が当選したことによる「トランプ・ショック」だ。第二は、9日の米国市場でリスクオフの予想が大
きく裏切られリスクオンに転じたことだ。これは翌朝10日の日本の市場参加者には驚きだった。
みずほ総合研究所は11月18日に「米国大統領選の結果と日本への影響」と題するリポートを発表してい
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る 。我々は、トランプ氏が当選の後、2回リポートを発表しており、今回がその2回目である。当選当日(11
月9日)のリポート「トランプの米国」2は、第一の「トランプ・ショック」を示したが、今回は第二のショック、つま
り市場の見方の大幅な転換を扱っている。市場に、1980年代前半のレーガノミクスのように減税を中心とし
た財政拡大による経済政策への転換期待がある。表題のスローガン“Make America Great Again”は1980
年にレーガンが用いたものだったが、今回の選挙戦でトランプ氏も用いている。下記の図表は世界の法人
税率の比較である。トランプ氏の公約では、最高税率が35%から15%に引き下げられる。米国の法人税率
は、先進国中でも突出して高い水準にあるが、改革が実現すれば英国並みになる。税率引き下げのほか
にも、企業の投資費用に即時償却を選択できる仕組みの導入も提案されている。
■図表:法人実効税率比較(トランプ提案の法人税勘案)
(%)
45.0
40.0
35.0
30.0
25.0
20.0
15.0
10.0
5.0
0.0
米
国
(
米
国
日
本
中
国
ド
イ
ツ
韓
国
英
国
ー
シ
ン
ガ
ポ
ル
)
連
邦
税
変
更
フ
ラ
ン
ス
(注)米国の地方税率はカリフォルニア州の税率を使用。日本の税率は平成 28 年度税制改正による影響を反映。
(資料)OECD、財務省より、みずほ総合研究所作成
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2016 年 11 月 22 日
大統領就任当初の経済情勢をみると、レーガン期は「3H」(高失業、高インフレ、高金利)と、トランプ期
の「3L」(低失業、低インフレ、低金利)と正反対だ。ただし、どちらも社会、経済が大きな閉塞感を抱えるな
かで、“Make America Great Again”と復権を唱えた点は共通であり、それが米国民の支持を集めたものと
考えられる。下記の図表は米国の過去の減税規模の比較である。トランプ氏の減税案は初年度でGDP比
2%超で、レーガン政権の減税を大きく超える。世界的にも経済政策の風潮は、金融政策の限界が顕現化
するなか、財政が重視される方向になりやすい。こうした財政重視のマクロ政策の潮流とトランプ氏の政策
の方向性とはベクトルが合う。そのため、当初の「トランプ氏の政策には全く思想がない」と言われていた状
況から相応の政策が後追いで付いていくことになりやすい。こうした状況は、当時の新自由主義の潮流に
乗ったレーガンとも共通する。
■図表:減税規模の比較
トランプ
レーガン
ブッシュ(2001)
(2002)
(国民所得比、%)
(2003)
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
(注)初年度の比較
(資料)Tax Policy Foundation よりみずほ総合研究所作成
下記の図表は今後の日程である。1月20日の米大統領就任式後の両院議会演説に注目だ。11月17日
の安倍・トランプ会談は成功に終わったとされる。遡ればレーガン時代、日本は中曽根長期政権の頃と重
なる。当時、「ロン・ヤス」の関係が注目されたように今回は「ドン・シン」の関係が深くなるかも注目だ。いず
れにしても、2021年まで米国はトランプ、中国は習近平、ロシアはプーチン、日本は安倍というグローバル
レジームの国際関係に注目だ。
■図表:米国の今後の日程
2017年 1月3日
新議会開会
1月20日
新大統領就任式
~5月
両院議会演説
予算教書
「最初の100日」
9月30日
2018年度予算期限
10月1日
2018年予算開始
(資料)みずほ総合研究所作成
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「米国大統領選の結果と日本への影響」 (みずほ総合研究所 『緊急リポート』 2016 年 11 月 18 日)
「トランプの米国」 (『Mizuho Research & Analysis』 2016 年 11 月 9 日)
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