腎瘻造設後の右腎尿よりヘマトイジン結晶がみられた1症例

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腎瘻造設後の右腎尿よりヘマトイジン結晶がみられた1症例
◎築田 礼 1)、角野 忠昭 1)、岡田 真弓 1)、松井 里穂 1)、石山 進 1)
金沢市立病院 中央診療部 臨床検査室 1)
【はじめに】ヘマトイジンとは,閉塞した腔
なかったこと,特異的な結晶形態であったこ
内での大量出血後の赤血球崩壊により,ヘモ
とからヘマトイジン結晶と判断できた.ビリ
グロビンが分解し生成される物質である.そ
ルビン結晶の出現は肝・胆道系の疾患を意味
の結晶は黄褐色から赤褐色を呈し,菱形,針
しており,ヘマトイジン結晶を誤ってビリル
状,或いは顆粒状を示す.これまで髄液,尿,
ビン結晶と報告すると臨床的意義が全く異な
関節液などで検出され,その意義について報
ってしまうため注意が必要である.
告されている.特に尿では,膀胱腫瘍や前立
本例は,右腎瘻交換による外科的侵襲と敗血
腺切除などの外科的処置での大量出血例が報
症・血小板減少による出血傾向のため尿路系
告されているが,報告数はまだ少ない.今回
大量出血を来し,ヘマトイジン結晶が形成さ
我々は,腎瘻造設後の右腎尿よりヘマトイジ
れたと考えられる.一般的にヘマトイジン結
ン結晶を認めた症例を経験したので報告する.
晶の出現は陳旧性の出血があったことを意味
【症 例】70 歳台女性.2014 年 2 月下腹部痛
しており,今回のようにビリルビン結晶との
を主訴に当院泌尿器科を受診.同年 3 月尿路
鑑別ができれば,その出血時期や部位を推測
上皮癌と診断され,経尿道的膀胱生検が施行
することが可能となる.ヘマトイジン結晶の
された.病理検査・画像検査より Stage Ⅳと
出現は臨床的意義が低いとされているが,出
診断され,化学療法施行.腫瘍は一旦縮小す
現した際の尿所見や臨床所見,その他の検査
るも増大し,腫瘍からの膀胱内出血を繰り返
データとともに総合的に判断することで,有
し,2015 年 2 月に腫瘍による尿管閉塞のため
用な診断補助データとなる場合がある.その
水腎症が出現.腎不全・貧血が進行し,3 月に
臨床的意義を理解し,適切に判断し,報告す
腎瘻造設.その後,敗血症,血小板低下も来
る意義があると考える.
し、腎不全も進行し 5 月に死亡.死亡 1 週間
表1)右腎尿検査所見
前の右腎尿で菱形,針状のヘマトイジン結晶
尿一般
結果
が認められた. 色調
赤色
【尿検査所見】表1 混濁
2+
【考 察】ヘマトイジン結晶はその出現部位
蛋白
2+
によって臨床的意義が異なるとされている.
潜血
3+
ビリルビン
2+
亜硝酸塩
-
白血球
2+
髄液での出現は,過去の頭蓋内出血を意味し,
関節液では関節の外的損傷を意味する.尿中
の出現は陳旧性の大量出血を示唆し,尿路系
外科的処置に起因することが多い.類似して
いるビリルビン結晶との鑑別が重要であり,
本例では尿中ビリルビンが「2+」であったが,
生化学データでは肝・胆道系酵素の上昇は見
られなかったこと,尿沈査背景が黄褐色では
尿沈渣
赤血球
≧100
白血球
30-49
連絡先:076-245-2600(内線 255)