地域包括ケアシステムのさらなる推進に向けて

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長
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48(174)地域医療
奈井江町は北海道の西部、札幌市と旭川市とのほぼ
中間に位置し、石狩平野の雄大な田園風景と北海道の
母なる川「石狩川」が流れ、緑豊かな山なみが眼中に
広がる自然豊かな町である。
人口は約5,600人、高齢化率は39%と少子高齢化、過
疎化が進んでいるが、本町が掲げる「健康と福祉のま
ちづくり」を最重要テーマとして、保健・医療・福
祉・介護の連携、推進のため、今日までさまざまな取
り組みを進めている。
地方の小規模病院においては、医師や看護師不足の
問題等を抱え、地域医療をどう維持していくかが大き
な課題であり、北海道においても道内の医育大学医学
部の地域枠定員の設定や修学資金貸付制度、短期勤務
医師派遣など、地域医療を守るため市町村と協議、連
携を進めているが、抜本的な解決策がなかなか見出せ
ないのが現状である。
Vol.54 No.2
message
本町では平成6年から地元開業医師との病診連携事
設がシステム推進の中心となり、一致団結のもと全国
業として、町立国保病院を開放型共同利用病院として
に発信しながら、医療、予防、福祉、介護の連携を進
位置付け、開業医師に病床の一部を開放し、開業医師
めていくとともに、これからは高齢者の単身世帯、夫
を主治医、病院医師を副主治医として、入院後も継続
婦世帯の増加とともに、
「住まい」の課題を含めたケ
的に開業医師が診療にあたり、合わせて高度医療機器
アシステムを考えていかなければならない。
や検査設備を共同利用し、病院だけではなく地元の老
本町では本年4月に病棟の一部を再編し、病床数を
人保健施設、特別養護老人ホームの入所者に対しても
96床から50床に減床し、新たに「サービス付高齢者向
かかりつけ医として継続して診療にあたっている。こ
け住宅」を開設することとした。これは病院内に住宅
のことが住民にとって継続してかかりつけ医に診療し
を設け、住まいと医療・介護サービスを一体的に提供
てもらえるという安心感、満足感につながっているも
する「新たな地域包括ケアシステム」のあり方を模索
のと高く評価している。
しながら、引き続き安心して暮らせる拠点施設として
また、平成17年から地域センター病院である砂川市
位置付けるものである。
立病院との病病連携事業に取り組みながら、
「地域医
さらには住まいの提供だけではなく、いつまでも健
療の再編・ネットワーク化」のもと、それぞれの病院
康で生きがいをもって暮らしていただくための「奈井
がもつ特色、医療資源を有効に活用しながら、同一地
江版CCRC~生涯活躍のまち構想」として、介護予防、
域のなかでより安心した質の高い医療サービスを提供
健康づくりや社会参加の推進を兼ねた、高齢者支援体
していこうとするものである。現在進めている連携内
制の新たな拠点づくりを全町的に取り組もうと考えて
容としては、小児科医師の派遣、急性期から慢性期、
いる。
療養期に移行する入院患者の紹介または逆紹介、臨床
研修医の研修期間の一部対応などである。
まさに、直営診療施設を中心とした地域包括ケアの
新たなシステムづくりを目指しながら、高齢者がいつ
さらには2次医療圏域である中空知の6つの自治体
までも元気で生きがいをもって過ごされ、必要時に医
病院による医療情報を共有するためのネットワークシ
療・介護サービスを身近に受けられるよう安心して暮
ステム(そら-ねっと)を整備し、本年7月から稼働
らせるまちづくりを目指したい。
を開始した。これにより、さらに地域全体での医療提
おわりに、地域医療を取り巻く状況は、これからも
供体制が確立され、各医療機関の機能、役割を分担、
大変厳しさが続くものと思われるが、現在進められて
明確にしながら地域住民への安心した医療提供に寄与
いる「地域医療構想」の策定では、10年後の2025年段
できるのではないかと期待する。
階での地域医療の姿が描かれることとなるが、全国の
これからますます進む高齢社会に向けて、全国では
医療圏域ごとの実情に照らし合わせた病棟再編のあり
地域包括ケアシステムをこれからさらにどう整備し、
方、役割や機能の明確化の協議が話し合われるが、今
推進するかが大きな課題となっているが、地域包括ケ
後、全国の直営診療施設が情報を共有するとともに、
アシステムの生みの親である山口昇先生がその礎を築
協力し合いながら、将来に向けた地域医療、地域包括
いていただき、その意志が全国に広がるなかで、高齢
ケアシステムの推進に向け、取り組みを進めなければ
者が住み慣れた地域で安心して暮らしていくための重
ならない。
要な柱となるものであり、国診協としても直営診療施
Vol.54 No.2
地域医療 49(175)