コウノトリ野生復帰と生物多様性・ ラムサール条約湿地 特に注目されたのは、環境を良くする行動と経済活動の共鳴を目指す「環境経済」の視点でした。 経済と関連付けることで、環境保全、生物多様性保全の大きな推進力になる。それは取組みを持続 可能なものにするためにとても大切なことです。ご覧ください、 この生き生きとした表情を! 写真提供:NPO法人コウノトリ市民研究所 コウノトリ湿地ネット ■ラムサール条約湿地 平成24年7月、 「円山川下流域・周辺水田」がラムサール条約に登録されました。 ラムサール条約は、国際的に重要な湿地と、 そこに生息・生育する動植物を保全し、湿地の賢明な利 ■生物多様性 一度失ったコウノトリをもう一度取り戻す――。そのためには、 コウノトリ自身を保護再生させると同 時に、 その生息を支えられるだけの豊かな環境を保存・再生・創造していく必要があります。 重要な餌場となる「田んぼ」に生きものを増やすこと、そのために農業のやり方を変えること、田 んぼと川の水のネットワークを再構築すること、河川に生きものを増やす工夫を施すこと、その川につ ながる里山に目を向けること・ ・ ・。豊岡全体を生きものでいっぱいにすること! コウノトリから始まったこれらの動きは、地球規模で行われている「生物多様性の保全」にほかなり 用を進めることを目的とした条約です。 「円山川下流域・周辺水田」が特に高く評価されたのは、元来保有している自然の潜在能力に加え、 自然再生の積み重ねによってさらに豊かさを増した湿地環境の下で、世界的な絶滅危惧種であるコウ ノトリが安定して暮らしているということです。 人々が関わる豊かな自然の中で、大小さまざまな生きものがいて、 コウノトリが生息している。 この風 景は世界中で豊岡にしかない魅力です。 ませんでした。そして、コウノトリ野生復帰の取組みを通じて経済活動を刺激し、地域を活性化 しようとする取組みは、世界が目指す「生物多様性と経済の好循環」の先駆けとなるものでした。 国連が定める「国際生物多様性年」である平成22年を機に、豊岡の取組みは国際的に高い評価 を受け、全世界に向けて紹介されました。 「生態系と生物多様性の経 ティーブ 済学(TEEB)報告書」 (左) 生物多様性条約事務局機関 サ ト ヤ マ 誌「Satoyama」 (右) などで、世界における生物多 様性保全の好例として豊岡 の取組みが紹介されています。 ハチゴロウの戸島湿地に 舞い降りるコウノトリ 円山川下流域・周辺水田の景観 た い 休耕田を再生した田結湿地 コウノトリの生息地づくりに多くの市民が携わることで、 半世紀以上にわたって続けられてきたコウノトリ野 生復帰の取組みを確実に未来につないでいく。 ラムサール条約への登録はその推進力となるものであり、 ふ るさとへの郷土愛と誇りが醸成され、 地域づくりに生かされています。 21 22
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