生産増による納期遅れの問題解決と予防対策の進め方 事例3

事例 3 生産増による納期遅れの問題解決と予防対策の進め方
[事例企業 C 社の概要]
・創業:1930 年
・資本金:40 億円
・従業員:400 名
・事業内容:独創的かつ高度な技術をもとに電気・電子、自動車など多くの産業に提供する部品メー
カー。特に技術力に伴う品質には顧客から定評がある
・工場は国内に4工場。生産特性は多品種少量ロット受注生産
・製品の種類は多く、数千にも及ぶ
・製造課、管理課(工程管理、資材調達)、技術課(設備保全、製品分析)
、品質保証課で構成
・営業拠点は東京、大阪、名古屋、仙台、福岡。海外営業部も創設して、販売拡大を図っている
1.C 社の重点課題
営業本部の販売拡大戦略による生産増に伴い、発生している納期遅れに対して解決し、安定した納
期を実現する。顧客の納期面での満足度を高め、将来的に安定したビジネス基盤の構築を目指す。
2.C 社の問題点
・販売部門の受注予測精度は昔から低く、トータルで売上目標達成すればよいと考えている。その結
果、予測がはずれ、生産部門で対応できず、納期遅れを起こす場合がある。
・受注の変動がきわめて激しく、取引先からは事前に内示されるがその通りに実行されることはほと
んどない。追加、飛込み、納期変更が頻繁に発生している。
・販売部門と生産部門とのコミュニケーションは悪く、販売計画、在庫計画と生産計画をおのおので
立てている。相互調整を図りながら関連づけて計画が立てられていない。
・生産部門の品質意識は高いが、納期意識については高いとはいえない。
・現場ではロットを大きくまとめて流す生産のやり方に起因して、仕掛在庫が過剰にある。今本当に
必要なものがつくられておらず、納期に影響を与えている。
・基準日程があるものの、他社と比べて長く、短納期に対応できていない。
・材料の調達リードタイムが長い。内示によるリードタイム短縮と在庫の確保をしているが、営業部
門の予測が大幅に上振れした場合には材料確保ができず、結果として納期遅れにつながっている。
・現在、IT における生産管理システムの構築途上であり、販売、生産、在庫の状況がリアルタイムに
見える化されていない。
3.事例テーマにおける問題解決のステップ
①問題解決の進め方
・工場内だけでの取組みでなく、営業部門も含めた現状の種々の部署からメンバーを選出し、協力
してすべての事実を明らかにしていきながら、問題解決を進めていく。
・「納期遅れ」問題は発生場所である工場にあると限らないという発想で、現状把握や原因究明を行
う。
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Vol.62 No.14 工場管理
特集 現場改善力を鍛える!極める!問題解決アプローチ術
・特性要因図で問題点の抽出と問題点の絞込みを行い、なぜなぜ分析の手法を使って、真の原因を
究明する。
・根本対策は工場側に起因する内容の対策を考え、予防対策は販売部門も含めた全体への取組みと
して対策を立てる。
②活用する問題解決手法
特性要因図、ブレーンストーミング、なぜなぜ分析
4.問題の抽出および問題を層別する問題解決手法
①問題抽出の考え方と手法
顕在化した問題だけでなく、潜在化した問題を抽出する。
→特性要因図、ブレーンストーミングの活用
・営業本部、管理課、技術課、製造課の各部署で事前に分科会を行い、詳細に現状把握。さらに
その部署で選別されたメンバーで集まり、特性要因図を使って問題を抽出していった。
・顕在化した問題だけでなく、潜在化したものを含めた問題点を洗い出すためブレーンストーミ
ングで抽出。
・販売、工程管理、製造、生産技術、調達を大骨として、特性要因図で問題点をまとめる。
②問題の絞り込みの考え方
・特性要因図の中で中骨、小骨が多いところを問題点として絞り込んでいった。
・その中でメンバーでも議論し、重点テーマを確認していった。
・中骨、小骨が多く発生する工場側の「製造、工程」に関わる部分を重点テーマとしてとらえ、次
に販売側、そして生産技術面として考えた。
ある製品が予測
以上に増加した
ときに生産が追
いつかない
納期遅れの要因分析(特性要因図)
◎
調達
調達リードタイムが
1∼2カ月
リードタイム
重点テーマ 1
製造
ロットが
大きい
工程管理
基準在庫の不備
生産方式
仕掛在庫が多い
基準日程が長い
内示以上に
なると時間
がかかる
原因究明が弱い
工程異常
短納期に応え
られない
予防保全ができていない
設備保全
突発故障が起こる
設備改善改良ができていない
設備投資
重点テーマ 3
工場管理 2016/12
計画サイクル
が長い
生産進度管理
まとめ生産
生産技術
生産負荷
予測以上の負荷がかかる
在庫管理
時間単位での管理が
できていない
顧客の短納期要求
受注の変動が激しい
日程変更が頻繁に起こる
生産日程計画
修正がタイムリーに行われてない
生産増による
納期遅れ
在庫の把握が
弱い
在庫責任がない
在庫管理
環境変化
小ロット化
販売計画達成率が上下する
オーダー
製品別の計画
精度が低い
納期のサバ読み
販売計画
総額での目標達成
販売
○ 重点テーマ 2
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