情報・通信技術の活用によ る新たな可能性について

講演ダイジェスト
第341回 技術サロン
情報・通信技術の活用によ
る新たな可能性について
日本下水道事業団 技術戦略部長(当時)
畑田 正憲
日本下水道事業団(JS)の情報・通信技術を活用した業務体系構築への取組状況を紹介するとともに、
私見を交えながら情報・通信技術活用の新たな可能性についても説明を行いました。
ト間での活用を図って行きたいと考えています。
3次元CAD
JSでは,老朽化した施設の長寿命化対策に合わせて
ICTの活用
ストック資産のデータを調査し蓄積するとともに,計
現在B-DASH実証事業として,下水処理場の設備に
画的に長寿命化や改築・更新を行うためのAMDB(ア
振動センサーを設置して自動で異常診断を行うセンシ
セットマネジメントデータベース)を構築してきまし
ング技術と点検等のデータについてビッグデータ分析
た。
技術を用いた異常予測の実証試験を行っています。
BIMやCIMといった三次元CADは,工事における
この技術は,主として維持管理の実務者を対象とす
空間認識が立体的に行えるため,仮設材設置の工夫,
る技術ですが,最近,増加しつつある包括民間委託に
重機施設の姿勢確認,導線との競合調整,受発注者間
おける下水道管理者向けの支援ツールとして,処理の
での作業手順の共通認識を持つことが可能となります
状況を把握するモニタリングシステムにも活用できる
が,
各機器等の固有の属性データ(型式,寸法,出力等)
可能性があります。
を容易に取得できるため,AMDBさらにはPMSや調
達系のシステムとのシームレスな連携により,データ
情報・通信技術の展望
入力から長寿命化設計の半自動化やプロジェクト計画
三次元CADは,下水処理場やポンプ場の工事にお
に反映させるとともに,入札・契約から施工そして維
ける競合調整やストックされた各機器の特定から機器
持管理にいたるまで品質向上や業務の効率化に大きく
の属性データを容易に取得することが可能となるた
寄与すると期待されています。
め,ストックマネジメントにおける有効なツールとし
情報共有システム
て期待されるだけでなく,事業計画の策定機能を含む
アセットマネジメントから,それらを戦略的に展開す
情報共有の業務効率化などのため,国土交通省で開
るファシリティーマネジメントの概念を実現するツー
発・運用開始した工事情報共有システムをJS版情報共
ルとしても期待されています。
有システム(JS-INSPIRE)として運用することを
また,下水道法の改正により各自治体には,道路陥
検討しています。インターネット上の情報共有システ
没が疑われる主要な管きょは5年に1度の点検と事業管
ムに,受注者が施工状況などの情報を登録すると,発
理計画の策定が求められています。大量のストック資
注者はそれをすぐに閲覧・承認できるようになり,受
産に対する調査手法やそのデータの蓄積・分析・評価
発注間での情報共有による業務の効率化,電子納品へ
に関して,これまで紹介した情報・通信技術以外にも
の直接的な活用も期待しています。
最近話題となっているIoTの活用などを含めて管きょ
当面は工事の受発注者間での活用を行い,将来,複
の管理の効率化にも役立つ可能性が高まっていると考
数の受注者や設計コンサルタントを含めたプロジェク
えています。
12 —— 下水道機構情報
Vol.10 No.22