空き家に係る譲渡所得の3,000 万円控除の特例について 平成28年11月

平成 28 年 11 月 14 日
No.558
空き家に係る譲渡所得の 3,000 万円控除の特例について
国税庁は 10 月 18 日、平成 28 年度税制改正等に対応した「
『租税特別措置法の取り扱いについて』等の一部改正について
の趣旨説明」を公表しました。今回は、そのうち【空き家に係る譲渡所得の 3,000 万円控除の特例】について紹介します。
1.被相続人居住用家屋の範囲について
被相続人居住用家屋の範囲について、被相続人が相続開始直前まで居住の用に供していたものかどうかの判定を、他の居住
用財産を譲渡した場合の特例と同様の取り扱いに準ずる旨の説明がありました。
この取り扱いから、被相続人が相続開始前に老人ホームに入居していた場合は同特例の適用外となることが明示されました。
2. 相続の時から譲渡の時までの利用制限について
本特例の適用対象となる譲渡に該当するためには、その譲渡した被相続人居住用家屋等が、
「相続時から譲渡の時ま
で事業の用、貸付の用又は居住の用に供されていないこと」とされています。
ここでいう「事業の用等に供されていないこと」とは、たとえ、一時的な利用であっても事業の用等に供されていた事実
が認められる場合には、当該要件を満たさないことが明示されました。
また、
「貸付の用」には、賃貸借により有償で貸し付けられていたものばかりでなく、使用貸借により無償で貸し付けられ
ていたものも含まれることが明示されました。
3.譲渡の対価の額について
本特例の適用対象となる譲渡から、被相続人居住用家屋等の譲渡の対価の額が 1 億円を超えるものは除かれています。こ
の譲渡の対価の額については、売買契約書に記載された不動産の契約金額以外に協力金や移転料等の別名目で金銭の授受が
行われる場合であっても、その名義のいかんを問わず、その実質において、譲渡の対価たる金額とされることが明示されま
した。
また、被相続人居住用家屋と一体として利用していた部分を別途分割して売却している場合や他の相続人が売却している
場合における 1 億円以下であるかどうかの判定は、相続の時からこの特例の適用を受けて被相続人居住用家屋等を売却した
日から 3 年目の年の12 月31 日までの間に分割して売却した部分や他の相続人が売却した部分も含めた売却代金により行
われます。
1 億円の判定における合算対象の範囲
相
続
この特例の適用を受
3 年を経過する日
ける人が売却した日
このため、相続の時から被相続人居住用家屋等を売却した年までの売却代金の合計額が 1 億円以下であることから、この
特例の適用を受けていた場合で、被相続人居住用家屋等を売却した日から 3 年目の年の 12 月 31 日までにこの特例の適用
を受けた被相続人居住用家屋等の残り部分を自分や他の相続人が売却して売却代金の合計額が 1 億円を超えた場合には、そ
の売却の日から 4 か月以内に修正申告書の提出と納税が必要となります。
複数の相続人が被相続人の居住用家屋等をそれぞれ譲渡する場合には、他の「居住用家屋取得相続人」に対し、対象譲渡をし
た旨などの通知義務があります。
通知方法については、特に形式は定められておらず口頭でも構いませんが、相続開始から同特例の制限のかかる適用後譲渡の
期間まで最長で7 年程度を要するケースもありますので、実務上は文書等に記録した形で通知をした方が無難であるものと考え
られます。
(担当:矢幡 賢一)