群馬県の養豚業の現状と課題

(2016 年 11 月号掲載)
群馬県の養豚業の現状と課題
一般財団法人
群馬経済研究所
主任研究員
~要
小此木伸一
約~
1.群馬県は、2014 年の豚の産出額で全国6位の養豚県である。また、県農産物の個別
品目別順位でも豚が1位と、養豚業は県農業の中で重要な位置を占めている。
2.近年豚肉の生産費用の3分の2を占める飼料価格が上昇し、その影響で豚肉価格も
足元で高止まりしている。また、16 年2月に合意したTPPの影響も今後の養豚
経営にとっては懸念される材料である。
3.養豚業者へのヒアリングで養豚業経営のポイントを聞いたところ、生産コストや肉
質を左右する「種豚」と、経費中最大で肉質に大きく影響する「飼料」の2つが挙
がった。種豚は、①繁殖能力の高さ、②肉質の良さ、③発育の良さ、等々を重視し
絶えず改良に努めている。また飼料は、①大量購買、②自前の飼料工場の保有、③
独自の高品質な飼料の使用、④食品ロスの利用、など価格の低減と高い品質を両立
させる工夫がみられる。
4.種豚、飼料以外の養豚業経営のポイントは、①豚の飼育成績を向上させる快適な豚
舎、②農場内への立ち入り制限や獣医師巡回による病気予防、③養豚経営に不可欠
な地域住民の理解を得るための環境対策への配慮、であった。
5.食肉加工業者へのヒアリングでは、①地域の特色を生かした銘柄豚が増えた影響で
生産者と購買者が相対でする取引のボリュームが「セリ」の取引を上回る状況にあ
ること、②輸入豚肉との比較では、銘柄豚の品質は高いが普通の豚肉は変わらない
こと、③米国などでも日本人好みの豚肉の生産が行われレベルは上がっていること、
などが挙げられた。
6.養豚業界は飼料価格の上昇や環境対策の強化などの課題に直面しているが、県内の
養豚業者はそれぞれに独自のビジネスモデルを確立して奮闘している。群馬県養豚
業のさらなる発展のためには、政府や県による振興策に加えて、「TONTON(とんと
ん)のまち前橋」のような地域を挙げた地産地消活動も重要となろう。