別紙 諮問第531号~第532号 答 1 申 審査会の結論 「教育職員評価結果に係る苦情相談調査票」を一部開示とした決定は、取り消すべき ものとは認められない。 2 異議申立ての内容 (1)異議申立ての趣旨 本件異議申立ての趣旨は、東京都個人情報の保護に関する条例(平成2年東京都条 例 113 号。以下「条例」という。)に基づき、異議申立人が行った「平成 27 年7月 17 日に開催された苦情相談検討委員会で使われた私に関する報告書、資料等全て。」及 び「平成 27 年5月○日から7月中に、東京都○○学校経営支援センター支所学校経 営支援担当課長○○等が作成した、平成 26 年度教育職員評価結果に係る苦情相談検 討委員会への報告書、資料等全て。」の開示請求に対し、東京都教育委員会が平成 27 年9月3日付けで行った一部開示決定について、その取消しを求めるというものであ る。 (2)異議申立ての理由 異議申立書及び意見書における異議申立人の主張を要約すると、以下のとおりであ る。 ア 平成 27 年7月 30 日に出された、 「平成 26 年度教育職員評価結果に係る苦情検討 結果通知書」には、当該結果に至った理由、判断基準等が一切示されておらず、東 京都に働く労働者として、判断に至った経緯を知る権利が当然存在する。 イ 東京都○○学校支援センター支所で作成された文書と本庁の苦情相談検討委員 会で使用された文書が全く同じものである。この開示結果より、○○支援センター -1- 支所の担当課長が、すでに結論を記入して本庁に送付したことが窺われる。7月 17 日に開催された苦情相談検討委員会には議事録も存在しない。はじめに結果ありき で、担当課長が最初に結論を記入している事実は、教育職員の苦情相談制度の趣旨 を逸脱した、極めて不適切な行政行為である。非開示部分の開示を受けて事実を確 認する必要がある。 ウ 平成 28 年6月 10 日付けの理由説明書には、「支援センター担当課長等が被評価 者の誤解や摩擦が生じることを懸念して、今後、当たり障りのない評価を記載し、 結果として記載内容が形骸化するなど、公正かつ円滑な人事事務の適正な遂行に支 障を及ぼすおそれがある」とある。 「教育職員評価結果に係る苦情相談制度」は、正に被評価者の誤解や摩擦が生じ ないように、担当課長が正確な事実内容を記載して誠実に説明責任を果たすことで、 円滑な人事事務の適正な遂行を行うことができる。最初から「誤解や摩擦が生じる」 と述べて開示しない部分を残したのは、異議申立人にとって不都合な記載が存在し ていることを東京都教育委員会自らが認めているからに他ならない。 エ 一部開示された部分に、担当課長による虚偽記載が存在している。このことから、 担当課長が非開示部分においても虚偽記載を行った可能性を否定できない。 3 異議申立てに対する実施機関の説明要旨 理由説明書及び口頭による説明における実施機関の主張を要約すると、以下のとおり である。 (1)本件請求に係る保有個人情報は、教育職員評価結果に係る苦情相談調査票であり、 非開示部分は事実確認内容欄の7行目以降、支援センター担当課長等の意見及び検討 内容である。 当該調査票は、人事考課に関する都立学校教育職員苦情相談検討委員会において、 苦情申出内容、事実確認内容、支援センター担当課長等の意見等を記録し、再評価の 要否、評価者等への指導・注意等の内容、教育職員への通知内容等を検討するための 資料である。 -2- 上記非開示部分を開示することが前提となると、判断の過程が明らかになるととも に、支援センター担当課長等が被評価者の誤解や摩擦が生じることを懸念して、今後、 当たり障りのない評価を記載し、結果として記載内容が形骸化するなど、公正かつ円 滑な人事事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。 (2)諮問第532号の調査票、諮問第531号の調査票のいずれの段階においても、支 援センター担当課長等の意見欄には苦情に対してどのように対応すべきかという苦 情相談員としての意見が記載されている。また、検討内容欄にはセンター所長が検討 委員会で行う検討の方向性を素案として記載している。苦情相談員、センター所長の それぞれの段階での判断が記載されているため、どの段階でどのような判断がなされ ていたのかが明らかになることから、判断の過程として非開示とする理由としている。 以上のことから、当該部分については、条例 16 条6号に該当するものとし、一部開 示決定処分を行った。 4 審査会の判断 (1)審議の経過 審査会は、本件異議申立てについて、以下のように審議した。 年 月 日 審 議 経 過 平成27年11月17日 諮問(諮問第531号~第532号) 平成27年12月25日 新規概要説明(第163回第一部会) 実施機関から理由説明書収受(諮問第531号~ 平成28年 6月10日 第532号) 平成28年 6月28日 平成28年 6月29日 実施機関から説明聴取(第168回第一部会) 異議申立人から意見書収受(諮問第531号~ 第532号) -3- 平成28年 7月26日 審議(第169回第一部会) 平成28年 9月13日 審議(第170回第一部会) (2)審査会の判断 審査会は、異議申立ての対象となった保有個人情報並びに実施機関及び異議申立人 の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。 ア 審議の併合について 諮問第531号及び第532号については、異議申立人が同一であること及び異 議申立ての趣旨が同一であることから、審査会は、これらを併合して審議すること とした。 イ 教育職員の人事考課等について (ア)人事考課について 実施機関における教育職員の人事考課は、「東京都立学校教育職員の人事考課 に関する規則」 (平成 11 年東京都教育委員会規則第 56 号。以下「規則」という。) に基づき、自己申告と業績評価によって行われる。業績評価は、東京都教育委員 会教育長(以下「教育長」という。)が年度ごとに作成する「東京都立学校教育 職員の業績評価実施要領」に基づき業績評価書を作成することで行われる。第一 次評価は、教育職員が勤務する学校(以下「勤務校」という。)の校長が行い、 勤務校を管轄する東京都学校経営支援センター所長(以下「支援センター所長」 という。)が調整者として、必要に応じ勤務校の校長(以下「校長」という。)に 対して指導・助言を行う。 また、最終評価は、教育長が行うこととされている。 (イ)評価結果に対する当該職員への本人開示について 規則 15 条2項において、業績評価の評価結果(以下「評価結果」という。)に ついては、被評価者本人に開示するものとされており、年度ごとに通知される「東 -4- 京都立学校教育職員定期評価本人開示実施要領」 (以下「要領」という。)に基づ き、開示が義務付けられている教育職員及び開示を希望する教育職員に対し、第 一次評価の項目別評価及び総合評価の結果を校長が面接を実施し開示すること とされている。 (ウ)本人開示された評価結果に係る苦情の取扱いについて 開示された評価結果に関する被評価者からの苦情については、規則 15 条3項 において、教育長は適切な措置を講ずるものとされている。教育長の講ずる具体 的な措置の内容については、「東京都立学校教育職員評価結果に係る苦情相談実 施要綱」 (平成 17 年3月 15 日付 16 教人職第 2239 号。以下「要綱」という。)で 定めており、要綱5条は、教育職員からの苦情に関する事項について検討を行う ための機関として、東京都教育庁人事部及び東京都学校経営支援センター等の管 理職職員を構成員とする苦情相談検討委員会(以下「検討委員会」という。)を 設置することとしている。 (エ)苦情の取扱いの流れについて 苦情の取扱いの流れについては、要領及び「東京都立学校教育職員評価結果に 係る苦情相談の留意事項」(以下「留意事項」という。)において、以下のとおり 定められている。 a 評価結果に対して苦情のある教育職員は、指定期日内に要綱で定める東京 都学校経営支援センター学校経営支援担当課長等が担当する苦情相談員(以 下「支援センター担当課長等」という。)に苦情を申し出る。 b 苦情を受けた支援センター担当課長等は、苦情申出者への面接及び校長へ の事情聴取を行い、事実関係等の確認をし、留意事項で定める様式「教育職 員評価結果に係る苦情相談調査票」(以下「調査票」という。)の「苦情相談 申出者」欄から「支援センター担当課長等の意見」欄まで記入し、支援セン ター所長に判明した事実確認等の内容を報告する。 c 支援センター所長は、支援センター担当課長等からの報告及び事実関係等 の確認の内容を総合的に検討した上で、「検討内容」欄から「備考」欄まで の「素案」を作成し、それを追記した調査票をもって教育庁人事部長(以下 -5- 「人事部長」という。)に報告する。 d 人事部長は、支援センター所長からの報告を受けた後、申出を受けた苦情 に係る「取扱案」としての調査票を作成し、当該調査票を検討委員会に提出 し、検討を依頼する。 e 検討委員会は、依頼のあった調査票について検討を行い、検討結果を人事 部長に報告する。 f 人事部長は、検討委員会における検討結果を考慮した上で、取扱いを決定 し、教育長に報告するとともに、所長を通じて、支援センター担当課長等か ら苦情申出者に取扱い及び検討の経緯等を通知する。 ウ 本件各諮問に係る対象保有個人情報について 諮問第531号に係る異議申立ての対象となった保有個人情報は、人事部長が作 成し、検討委員会に提出した異議申立人に関する「調査票」(以下「本件対象保有 個人情報1」という。)である。 諮問第532号に係る異議申立ての対象となった保有個人情報は、支援センター 担当課長等及び支援センター所長が作成し、支援センター所長が人事部長に提出し た異議申立人に関する「調査票」 (以下「本件対象保有個人情報2」という。)であ る。 エ 本件非開示情報について (ア)諮問第531号に係る本件非開示情報1から3までについて 実施機関は、本件対象保有個人情報1のうち、「事実確認内容」欄の関与者、 第一次評価者、調整者の職・氏名及び4行目から6行目までを除く部分(以下「本 件非開示情報1」という。)、 「支援センター担当課長等の意見」欄の記載内容(以 下「本件非開示情報2」という。)及び「検討内容」欄の記載内容(以下「本件 非開示情報3」という。)を条例 16 条6号に該当するとして、当該部分を非開示 とする一部開示決定を行った。 (イ)諮問第532号に係る本件非開示情報4から6までについて 実施機関は、本件対象保有個人情報2のうち、「事実確認内容」欄の関与者、 -6- 第一次評価者、調整者の職・氏名及び4行目から6行目までを除く部分(以下「本 件非開示情報4」という。)、 「支援センター担当課長等の意見」欄の記載内容(以 下「本件非開示情報5」という。)及び「検討内容」欄の記載内容(以下「本件 非開示情報6」という。)を条例 16 条6号に該当するとして、当該部分を非開示 とする一部開示決定を行った。 オ 条例の定めについて 条例 16 条6号は、 「都の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公共団体若しく は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することによ り、…当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼす おそれがあるもの」を非開示情報として規定している。 カ 本件非開示情報の条例 16 条6号該当性について (ア)本件非開示情報1及び4について 本件非開示情報1及び4には、校長が苦情相談員に報告した事実確認の内容や 苦情申出者に対する評価・判断に係る内容が詳細かつ具体的に記載されている。 これらの記載を開示することにより、校長は被評価者との誤解や摩擦が生じるこ とを懸念し、率直かつ詳細な意見の表明を行うことについて躊躇するようになり、 その結果、支援センター担当課長等による校長からの正確な事情聴取が実施でき ず、評価結果に係る苦情相談内容が正確かつ詳細に把握できなくなるなど、公正 かつ円滑な人事事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる。 したがって、本件非開示情報1及び4は条例 16 条6号に該当し、非開示が妥 当である。 (イ)本件非開示情報2及び5について 本件非開示情報2及び5には、苦情申出者と校長の双方から事情聴取を行った 支援センター担当課長等の総合的な意見が記載されている。このような意見に係 る部分を開示することにより、支援センター担当課長等が被評価者との誤解や摩 擦が生じることを懸念して、今後、「調査票」に当たり障りのない意見を記載す ることでその内容が形骸化するなど、公正かつ円滑な人事事務の遂行に支障を及 -7- ぼすおそれがあると認められる。 したがって、本件非開示情報2及び5は条例 16 条6号に該当し、非開示が妥 当である。 (ウ)本件非開示情報3及び6について 本件非開示情報3には、支援センター所長からの報告に基づいた人事部長の判 断が案として記載されている。また、本件非開示情報6には、支援センター担当 課長等から報告を受けた支援センター所長が、本件事実関係等を精査して総合的 に検討した上で行った判断が案として記載されている。これらのような判断に係 る部分を開示することにより、どの段階でどのような判断がなされたのかという 事務の過程が明らかになるとともに、支援センター所長及び人事部長が被評価者 との誤解や摩擦が生じることを懸念して、今後、当たり障りのない意見を記載す ることで案の内容が形骸化するなど公正かつ円滑な人事事務の適正な遂行に支 障を及ぼすおそれがあると認められる。 したがって、本件非開示情報3及び6は条例 16 条6号に該当し、非開示が妥 当である。 キ 本件一部開示決定について 本件対象保有個人情報1及び2のうち、開示とした「再評価の要否」欄、「評価 者等への指導・注意等の内容」欄、「教育職員への通知内容」欄及び「備考」欄の 記載内容(以下「本件開示情報」という。)については、案の段階の情報であると いう性質上、本件非開示情報3及び6と同種の情報と解されるが、実施機関は、本 件非開示情報3及び6については、判断の過程が明らかとなり、公正かつ円滑な人 事事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることを理由に非開示としている。 同一の文書における同種の情報に対し、実施機関の開示・非開示に係る判断が異 なっていることについて、審査会が実施機関に確認したところ、合理的な説明を得 ることができなかった。 以上のことから、実施機関の本件開示情報に対する判断には疑義が残るものの、 実施機関が行った一部開示決定は、既に開示とした部分以外の情報について開示す ることを要しないという点において、取り消すべきものとは認められない。 -8- よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。 (答申に関与した委員の氏名) 秋山 收、浅田 登美子、神橋 一彦、隅田 -9- 憲平
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