LNG - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報

中国:天然ガス需要の回復とLNG新規需要
開拓に向けた動き
2016年11月17日
調査部
竹原 美佳
1
本日の内容
2016年上期の天然ガス需要
LNGにおける新たなプレイヤー
LNG新規市場の動き
2
2016年上期の天然ガス需要
~2015年の低迷から一転回復へ~
2,400
30%
25%
1,900
2016年上期の天然ガス需要
・前年同期比13%増の104BCM
・特にパイプライン・LNGの輸入増
20%
1,400
15%
900
10%
400
5%
(100) 2006年
(億m3/年)
国産ガス
2008年
LNG
2010年
2012年
輸入パイプラインガス
2014年
輸出
2016H1 0%
消費成長(%)
需要回復の要因
・天然ガス卸価格値下げに伴う
価格競争力回復
・石炭抑制政策に伴い「煤改気」
(石炭から天然ガスへの転換)進
展
・その他季節要因
天然ガス需給推移(2013年~16年6月)
生産(CBM、石炭合成ガスを除く)は広東油ガス商会、
輸出入は新華社China OGPに基づきJOGMEC作成
3
参考:天然ガス卸/輸入価格推移
天然ガス卸価格・LPG輸入価格(2013年1月~2016年8月、ドル/MMBtu)
25.0
LPG価格下落
(2014年8月~)
20.0
天然ガス卸価格値
下げ(2015年4月)
15.0
10.0
天然ガス卸価格値
下げ、±20%の調整
幅(2015年11月)
5.0
0.0
卸価格(前年消費)
卸価格(増加分、15年4月以降は統合)
参考:中国LPG CIF
参考:卸価格下限(-20%)
天然ガス卸価格とLPG輸入価格の対比
China LNG Weekly、新華社China OGPに基づき作成
15年11月の天然ガス卸価格(シティゲート価格)値下げと価格制度改
革(±20%の変動幅)で価格競争力回復へ
4
参考:天然ガス需給推移
億m3
天然ガス需給前年同期比増減(2014Q1~2016Q2)
80
60
40
20
0
-20
-40
14Q1
14Q2
14Q3
国内生産
14Q4
15Q1
LNG輸入
15Q2
15Q3
パイプラインガス輸入
15Q4
16Q1
16Q2
輸出
天然ガス需給前年同期比増減(2014年Q1~16年Q2)生産は広東油ガス
商会、輸出入は新華社China OGPに基づきJOGMEC作成
政府の石炭消費抑制政策、小規模(非効率)・違法な炭鉱の淘汰や「276規定」*
で石炭生産・消費減(16年上期の生産量は前年同期比10%減、消費は同5%減)
*炭鉱年間操業日数を276日以下とし、法定祝祭日と日曜は生産停止
5
2016年上期のLNG輸入は対前年比大幅増
2500
万t/年
2000
1500
1000
500
0
豪州
マレーシア
インドネシア
カタール
パプアニューギニア
スポット・ポートフォリオ
LNG輸入
2015年
供給過剰で初の前
年割れ
2016年上期
前年同期比21%増
(約200万トン増)の
1,150万トン
輸入の9割超は長期
契約
中国国別LNG輸入推移(2006年~2016年1-6月)
広東油ガス商会等に基づきJOGMEC作成
6
2016年上期のLNG輸入
~スポット伸び悩み、長期契約の輸入増加~
300
万トン/年
200
LNG(非長期契約)
2007~14年:16%
2015年:8%
2016年上期:5%
100
0
-100
-200
-300
豪州
マレーシア
インドネシア
カタール
パプアニューギニア
スポット・ポートフォリオ
LNG輸入対前年増減(2007~2016年1-6月)
広東油ガス商会等に基づきJOGMEC作成
長期契約による供給増加が需要増加ペースを上回り(オーバーコミット)、
安価なスポットLNG価格の恩恵を享受できず
7
天然ガス中長期需要見通しとLNG契約
~LNG新規契約供給は2023年頃必要となる見通し~
中国のLNG需要見通しと長期契約推移(2015~2030年)
万トン/年
8000
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 2026年 2027年 2028年 2029年 2030年
Qatargas 2 (Train 5)
Qatargas 4 (Train 7)
Tangguh (Train 1, 2)
MLNG III (Tiga) (Train 7, 8)
North West Shelf (Train 1-5)
Gorgon
QCLNG (Train 1)
Australia Pacific LNG (Train 1)
PNG LNG
Yamal
Total Portfolio
ENGIE Portfolio
BG Portfolio
BP Portfolio
②中国能源研究会
③JOGMEC推計
LNG長期契約とLNGの需要見通し
天然ガスリファレンスブック、中国能源研究会等に基づきJOGMEC作成
8
参考:天然ガス輸入・長期契約
BCM
天然ガス輸入・長期契約
180
150
125
120
90
60
30
0
34
27
輸入
2015年
LNG 計
59
長期契約
Pipeline 計
2015年までにLNG・パイプラインガス合計185BCM/yの長期
売買契約を締結。
9
参考:天然ガス輸入能力
LNG受入基地
輸送能力
(MMt、BCM)
天然ガスパイプラ
イン
輸送能力
(BCM)
現状
操業中
14基地
48.8MMt
(66BCM)
中央アジア(トルク
メ~ウズベク~カ
ザフ)~中国
30(→55)
操業中
2010年稼働(増強
中)
建設中
5基地
11MMt
(15BCM)
中央アジア(トルク
メ~ウズベク~キ
ルギス)~中国
30
建設中(2020年稼
働予定)
計
59.8MMt
(81BCM)
ミャンマー~中国
12
操業中
2013年稼働
ロシア~中国
(東ルート)
30
建設中(2019年稼
働予定)
計
122BCM
建設中のものが全て完成した場合、中国の天然ガス輸入能力は210BCM/yに
達する。
10
各機関の天然ガス需要見通し
2020年
2030年
備考
需要:290BCM
輸入:155BCM
うち輸入
LNG55BCM
≒4,000万トン
需要:462BCM
輸入:227BCM
うち輸入
LNG100BCM
≒7,350万トン
需要CAGR~2030:
6.3%
生産CAGR~2030:
4.0%
需要262BCM
(過去5年の伸び
輸入101BCM
で固定、長期売買 うち輸入
契約に基づく、ロ
LNG46BCM
シア西ルート除く)
≒3,400万トン
需要417BCM
輸入189BCM
うち輸入
LNG86BCM
≒6,300万トン
需要CAGR~2030:
5.5%
生産CAGR~2030:
3.8%
参考:IEA
WEO2015
需要483BCM
ガス輸入
223BCM
需要CAGR~2030:
6.6%
生産CAGR~2030:
4.7%
「中国能源展望
2030」
中国能源研究会
(2016年3月)
JOGMEC試算
需要315BCM
ガス輸入
143BCM
LNG長期契約とLNGの需要見通し(天然ガスリファレンスブック、中国能源研究会、JOGMEC推計)
11
参考:輸入LNG需要の不確実性
需要・輸入パイプラインガス
600
250
BCM
483
500
200
462
417
400
223
227
189
300
200
BCM
214
184
150
100
50
187
0
57
100
0
2015年(実績)
2030年(IEA)
国産ガス
2030年(CERS)
2030年JOGME試算
輸入ガス
各機関の天然ガス需要・輸入見通し
LNG
パイプライン
天然ガス長期契約
石炭から天然ガスの転換が進展し、天然ガスの需要が順調に伸びれば、
2030年までに40BCM程度の追加契約が必要だが需要に不確実性あり。
また、需要進展の場合もロシア西ルート(30BCM)や中央アジアからの供給に
より輸入LNG需要(追加契約)は変動
12
参考:輸入LNG需要の不確実性
~国産ガス供給~
600
BCM
483
500
462
417
400
300
200
187
260
100
235
228
2030年(CERS)
2030年JOGME試算
130
0
2015年(実績)
2030年(IEA)
国産ガス
輸入ガス
各機関の天然ガス需要・国産ガス供給見通し
過去5年の国産ガス供給増加:
7BCM(各機関2030年までの増
加見通し年平均6~9BCM)
各機関ともに非在来(特にシェー
ル)の供給増に期待
シェールガス生産
2015年4.5BCM
2016年1-7月5BCM
(天然ガス生産の約6%)
政府シェールガス生産目標
2020年30BCM
2030年80~100BCM
在来型を含む開発難易度の上昇やシェールガスの補助金低減で国産ガス
が増産ペースを維持できない場合、輸入ガス(LNG)需要は上振れする
13
LNGにおける新たなプレイヤー
~非国有石油企業~
国有石油企業
PetroChina
Sinopec
CNOOC
中国における輸入LNGの主な流れ
発電、都市ガス企業
申能(Shenergy)、九豊
(Jovo)
北京燃気、広匯(Guanghui)
華電(Huandian)他
発電所
都市ガス
ユーザー
パイプライン
LNG調達
LNG受入基地
(ガス製造工場)
LNG
ローリー車
(コンテナ)
貯蔵タンク・
サテライトス
テーション
CNG・LNG
ステーション
CNG・
LNG車ユ
ーザー
これまで国有石油企業主体であったLNG調達、受入基地建設に非国有石
油企業が独自展開の動き
14
政府は非国有石油企業のLNG市場への参
入や投資促進を図る法整備を展開
2016年10月9日、国家発展改革委員会は「天然ガスパイプラ
イン輸送価格(試行)管理法」および「天然ガスパイプライン
輸送コスト(試行)審査法」施行((8月16日から9月5日まで意
見を聴取)
マージンが原則8%に固定、人件費等コストの内訳を規定
試行法制定の目的はパイプライン輸送費の低減と
透明性向上ならびに天然ガス開発・利用、第三者
アクセスの促進
15
天然ガス市場取引の動きは限定的
上海石油天然気交易中心
(SHPGX)の設立
2015年3月上海自由貿易区で設立
出資企業は10社、資本金は10億元
・国営通信社:新華社(価格等のデータを
発行)
・三大国有石油会社:PetroChina、
Sinopec、CNOOC
・国有、地方、民間発電・都市ガス企業:
申能(Shenergy)、北京燃気、新奥(ENN)
、中国ガス、香港中華ガス、華能
政府主導で天然ガス(LNG)取引所を設立
2016年上期の成約量はLNG約28万トン(0.4BCM)、パイプラインガス0.9BCM
2016年上期見かけ消費量の約1%、取引量は限定的
16
LNG第三者アクセスは限定的
LNG受入基地への第三者アクセス(2014~2015年)
受け入れ基地
出資国有石油企業
利用企業
江蘇・如東
Jiangsu・Rudong
PetroChina
上海申能(Shenergy)、新奥
(ENN)、太平洋油気(Pacific
Oil & Gas)*
河北・唐山
Hebei・Tangshan
北京燃気*
遼寧・大連
Laioning・Dalian
広匯
広東・東莞
Guangdong・
Dongguang
九豊(Jovo)
N.A
*太平洋油気は如東基地に35%出資、北京燃気親会社北京控股は唐山基地に29%出資
2015年のLNG受入基地第三者アクセス実績は7船43万トン(LNG輸入の2%)
17
非国有石油企業による操業・建設中の受入基地
企業
操業中
建設中
立地
受入能力
(万t/年)
稼働開始
申能
上海・五号溝
(Shanghai・
Wuhaogou)
50
九豊
(Jovo)
広東・東莞
(Guangdong
Dongguang)
100
広匯能源
(Guanghui)
新奥
(ENN)
江蘇・啓東
(Jiangsu Qidong)
浙江・舟山
(Zhejiang・
Zhoushan)
2008年11月
稼働中
60 2018年(見込み)
300 2018年(見込み)
発電、都市ガス企業等非国有石油企業は独自に受入基地建設へ
18
非国有石油企業による主なLNG調達(合意)
九豊
(Jovo)
Petronas
広匯能源
(Guanghui)
Petronas
(加Pacific
NorthWest
LNG)
Chevron
(Gorgon)
Total
(ポートフォリオ)
新奥
(ENN)
新奥
(ENN)
新奥
(ENN)
華電
(Huandian)
華電
(Huandian)
豪Origin Energy
(GLNG他ポート
フォリオ)
Petronas
(加Pacific
NorthWest
LNG)
BP
華電
(Huandian)
Chevron
九豊
(Jovo)
九豊
(Jovo)
米SCT&E LNG
合計
数量
合意時期
(万トン/年)
30 2014年
SPA
N.A 2015年12月
HoA
最大65 2016年8月
50 2016年2月
Binding HoA
最大50 2016年3月
80 2015年4月
100 2015年10月
non-bingding
HoA
最大100 2015年12月
HoA
N.A. 2016年5月
(合意)
Chevron
最大50 2016年7月
(Key Terms
(ポートフォリオ)
Agreement)
最大525万トン前後
契約開始時期
2014年
契約開始年
契約期間
10年
N.A
2018年~2019
年
2018年
10年
2018~2019年
10年
契約開始年
20年
契約開始年
20年
2020年
10年
10年
契約開始年
N.A.
2018年
5年
発電、都市ガス企
業等非国有石油
企業が独自にLNG
調達へ
実現性不透明、
短期的には供給
過剰を招く恐れ
19
参考:地方製油所(ティーポット)と新たな
LNGプレイヤー
盤錦北方(Panjin Beifang)、東
明石化(Dongming)等主に山東
省の地方製油所約20社が原油
輸入ライセンス150万b/d(中国の
2015年輸入量の約2割)を保有
政府の国有企業独占打破・環境
政策により、地方製油所(地煉、
ティーポット)の原油輸入・使用要
件が緩和、地方製油所は原油輸
入の2割を占める存在に成長、産
油国も新たな市場として注目
申能(Shenergy)、九豊(Jovo)
北京燃気、広匯(Guanghui)
華電(Huandian)等主に発電、都
市ガス企業が最大500万トン/年
程度の調達(全量調達実現の場
合長期契約量の1割程度)
?
20
中国における小型LNG輸送船ブーム
~JOVOの野心的なハブ事業計画~
JOVO、フィリピンSubic湾内でLNGハブ事業を計画
豪州またはインドネシアから9万4000トンのLNG輸送船でSubic湾(Free Port)
までLNGを運び、4万7000トンのLNG輸送船に積み替え、大型船の入港には
水深が十分でない中国の港へLNGを輸送する計画。
Jovoは5年を目途に他の東南アジアを含むローカル市場へのLNG供給に対応
する地域ハブを構築していくかどうか決定。
21
江蘇省でLNGを動力とする内航船複数隻竣
工(運河内の輸送向け)
2016年9月、江蘇省揚州新華船廠が建
造した、LNGを動力とする運河内の輸
送を目的とする内航船(バラ積み船)4
隻が竣工
総トン数1500トン、全長58m
240kWの天然ガスエンジン2基搭載
中国海事服務網によると、2014年に交
通部が北京から浙江省杭州を結ぶ”京
杭運河“の江蘇区間をLNG水運適用の
モデル地区”と定めた。江蘇省では淮
安(Huai’an)、揚州(Yangzhou)・塩城(
Yancheng)、常州(Changzhou)などで
2015年12月までにLNGを単一の動力
源とするLNG燃料船58隻を建造中。
京杭運河
22
貴州省でLNG動力船16隻建造の動き
(烏江水運向け)
2016年10月19日、貴州貴陽でLNGを
動力とする内航船建造契約式典(1000
トン級16隻)
発注者:貴州深能股份(株式)
造船所:重慶川東船舶重工
貴州省は烏江水運をLNG水運パイロッ
ト地域に選定。
貴州深能は3300万元を投じ沿岸部に
LNG、L-CNG充填ステーションを建設
する。
また同社は将来3億元を投じ計70隻の
LNG動力船を多目的コンテナ船として
建造し、烏江航路に投入する計画。
人民網
23
CNOOC、LNGを単一燃料とするタグボート2隻を
建造、港湾作業を実施
2016年8月、CNOOC傘下の
海油発展が建造したLNGを
単一燃料とするタグボート2
隻(“海洋石油525”および“
海洋石油526”)が中国船級
社の検収を通過、9月14日
には“海洋石油525”が広東
省珠海港でパナマ船籍の18
万トン級の大型バラ積み船
に対し港湾作業を実施。
「海洋石油」525 出所:CNOOC
気候変動対応(CSR)の側面も
24
まとめ①
2016年上期~中期天然ガス需要
2015年の低迷から一転回復。石炭生産・消費抑制政策による石
炭からの転換進展、天然ガス卸価格改革による価格競争力の回
復、その他季節要因。
LNG輸入は増加したが、オーバーコミットで安価なスポット価格の
恩恵を享受できず。新規契約によるLNGの供給が必要となるのは
2023年頃の見通し。
LNGにおける新たなプレイヤーの出現
政府は非国有石油企業のLNG市場への参入や投資促進を図る法
整備を展開。新たなプレイヤーとして発電、都市ガス事業者が参
加、独自の基地建設、直接契約に向かう。短期的には新規需要
創出よりも供給過剰を招く恐れあり
25
まとめ②
LNG新規市場創設の動き
・小型LNG輸送船により東南アジアを含むLNGハブ事業を志向
する野心的なプレイヤー出現。
・気候変動・環境問題への対応から江蘇・貴州省などで運河や
河川向けのLNG燃料船ブーム。国有企業によるLNGを単一燃料
とするタグボート建造の動きも。中長期的に市場創出の可能性。
・原油取引では政府の国有企業独占打破政策により地方製油
所(ティーポット)が原油輸入の2割を占める存在に成長、産油
国も新たな市場として注目。LNG市場も政策の後押しにより、地
方や非国有石油企業が原動力となり新規需要が開拓され、原
油と同様に新たな市場として注目される存在となる可能性。
26