基 発 第 9 0 1 号 昭 和 4 0 年 7 月 3 1 日 各都道府県労働基準局長 殿 労働省労働基準局長 労働者災害補償保険法の一部を改正する法律の施行について 労働者災害補償保険法の一部を改正する法律(昭和40年法律第130号。以下「改正法」という。) については、別に昭和40年7月31日付け労働省発基第117号をもつて労働事務次官より、その施行に 伴う行政運営の大綱につき通達されたところであるが、改正法第1条、労働者災害補償保険法施行令 の一部を改正する政令(昭和40年政令第262号。以下「改正政令」という。)及び労働者災害補償保険 法施行規則の一部を改正する省令(昭和40年労働省令第14号。以下「改正省令」という。)の施行に ついては、下記に留意のうえ、事務処理に遺憾なきを期せられたい。 なお、改正法第2条及び第3条並びにこれに伴う関係省令の施行については、それぞれおつて通達 する。 記 目次[1/3] 目次[2/3] 目次[3/3] 第1 総則関係 1 改正法による改正後の労働者災害補償保険法(以下「新法」という。)第3条、改正政令によ る改正後の労働者災害補償保険法施行令(以下「新施行令」という。)第1条及び改正省令によ る改正後の労働者災害補償保険法族行規則(以下「新規則」という。)第3条関係 (1) 法改正の趣旨 強制適用事業については、改正法による改正前の労働者災害補償保険法 (以下「旧法」と いう。)では、同法第3条第1項第1号から第3号までに列挙するほか、同項第4号の規定に基づ き改正省令による改正前の労働者災害補償保険法施行規則(以下「旧規則」という。)第3条 に規定されていたが、新法においては、同法第3条第1項第1号から第3号までに定めるものの ほか、政令によつて指定することとした。新法第3条第1項事4号の規定に基づき政令で指定 する事業は、新施行令第1朱に定めるとおりである。なお、労災保険の適用の拡大について は、かねてより各般の努力を重ねてきたところであるが、全事業全労働者に対するいわゆる 全面適用については、その効率的方策について改正法施行後2年以内に成果を得ることを目 途として調査研究を行ない、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされているので (改正法附則第12条)、各都道府県労働基準局(以下「局」という。)においても、保険加入の 促進については、一段と効率的かつ計画的に推進するよう努められたい。 (2) 新たに指定される強制適用事業 新施行令第1集の規定によつて指定する強制適用事業については、保険年度の中途でもあ り、その範囲の拡大を一部にとどめ、おおむね、旧規則第3条の規定に準ずることとした。 すなわち、旧規則第3条第1号に定められていた原動機の定格出力の範囲が2.2キロワツト以 上から1.4キロワツト以上に引き下げられ、定格出力の合計が1.4キロワツト以上の原動織を 使用して行なう製造業及び鉱業、石切業等であつて常時労働者を使用するものは、これをす べて強制適用事業とすることとした。この場合、定格出力の計算の対象となる原動機の範囲 は、当該事業の作業に直接使用されるものに限られることはいうまでもない。なお、同条第 6号の沈没物の引揚げの事業については、その要件を明確にした。 以上により新たに強制適用事業とされた事業に対しては、改正の趣旨の周知を図るととも に、適用事務を実情に即して処理するよう十分配慮されたい。 (3) 適用除外 改正法においては、旧法第3条第3項の一部を改正して「同居の親族のみを使用する事業」 を同項から削つているが、これは、強制適用事業及び任意適用事業の範囲を「労働基準法の 適用を受ける」事業としたことにより、「同居の親族のみを使用する事業」が強制適用事業 又は任意適用事業のいずれにも該当しないけれども新設の特別加入制度(新法第4章の4)の 対象となりうることとなつたので、法の適用を除外しないこととしたものである。 2 新法第3条の2及び新規則第3条の2関係 (1) 法改正の趣旨 小規模の建設業及び林業については、従来から、一括扱いが行なわれてきたが、改正法で は、事務の簡素化を図るため、従来の取扱いを法制化したものである。すなわち、一定の要 件を具備する2以上の有期事業を一括し、それらの事業を全体として1の事業とみなし、1の 保険関係を成立させようとするものである。その場合、一括された事業は、 (3)のイに記す とおり原則として継続事業として取り扱うこととする。 (2) 一括扱いの要件 新法第3条の2の規定による有期事業の一括扱いは、2以上の事業が次の要件のすべてに該 当する場合に行なわれる。 イ 事業主が同一人であること(新法第3条の2第1号)。なお、建設業に属する事業が数次の 請負によつて行なわれるときは、その事業主が新法第8条の規定により適用事業の事業主 とされるものに限られ、下請負事業は、一括扱いの対象とならず、もつぱら新法第 8条の 定めるところによる。 ロ それぞれの事業が有期事業であること(新法第3条の2第2号)。 ハ それぞれの事業が強制適用事業であつて、建設業又は立木伐採事業に属するものである こと(新法第3条の2第4号及び新規則第3条の2第2項)。 ニ それぞれの事業の規模が、概算保険料を算定することとした場合における概算保険料の 額に相当する額が20万円未満であり、かつ、建設業にあつては、請負金額が3000万円未満、 立木伐採事業にあつては素材の見込生産量が1000立方メートル未満のものであること(新 法第3条の2第3号及び新規則第3条の2第1項)。 ホ それぞれの事業が、他のいずれかの事業の全部又は一部と同時に行なわれること(新法 第3条の2第5号)。すなわち、2以上の事業が時期的に多少とも重複して行なわれること。 ヘ 建設業にあつては、それぞれの事業が保険料率表による事業の種類を同じくするもので あること(新規則第3条の2第3項第1号)。事業の種類を異にするときは、それぞれ事業の種 類ごとに一括されることとなる、たとえば、同一事業主がそれぞれ数箇の建築事業と道路 新設事業を行なうときは、両者は別々に一括される。なお、この点については、建設業の 事業の種類の一部を統合した「雑建設事業」及びその保険料率の新設を検討中である。 ト それぞれの事業に係る保険料の納付の事務が、1の事務所で取り扱われること(新規則第 3条の2第3項第2号)。 チ それぞれの事業が、トの事務所の所在地の都道府県又はこれと隣接する都道府県(昭和4 0年労働省告示第34号で指定する都道府県を含む。)の区域内(別表参照)において行なわれ るものであること(新規則第3条の2第3項第3号)。この場合、一括された事業の保険関係は、 事務所の所在地の都道府県の区域を管轄する局において成立させることとなる。 以上の有期事業の一括扱いは、それぞれの事業が以上の要件を充たせば、当然かつ強行 的に一括され、全体が1の事業(原則としての継続事業)とみなされるのであつて、当初に おいて、それぞれの事業がすべての要件に該当することとなるものと認められれば足りる から、建設業又は立木伐採事業を業として継続反覆して行なつている事業主については、 原則として、新法第3条の2の規定による取扱いをすべきものである。 (3) 一括扱いの留意点 有期事業の一括扱いについては、次の点に留意されたい。 イ 一括される有期事業は、原則として、その全体を1の継続事業として取り扱うこと。 ロ 建設業については、保険関係の成立を明示するために、一括されたそれぞれの事業場に ついても、その見やすい場所に新規則第50条の労災保険関係成立票(規則様式第4号)を掲 示させること。特に、それぞれの事業が、事務所の所在地の都道府県以外の都道府県の区 域内において行なわれるときは、この必要が大きいので、この趣旨を十分徹底すること。 ハ 事業主に対しては、それぞれの事業について、告示様式第1号の2の「事業開始届」を新 規則第3条の2第5項の規定による所轄労働基準監督署長(以下「所轄署長」という。)を経 由して所轄都道府県労働基準局長(以下「所轄局長」という。)に毎月5日までに前月中に 開始した事業について一括して提出させること(新規則第3条の2第4項)。 ニ 一括された有期事業の事業に対しては、確定保険料報告書の提出の際に、その別紙とし て従来の「工事施行明細書」又は「伐採施行明細書」と同様な「事業実施明細書」を所轄 署長を経由して所轄局長に提出させること(新規則第40条第5号)。 ホ 一括された個々の事業については、その後、事業の規模の変更等があつた場合でも、あ くまで当初の一括扱いによることとし、新たに独立の有期事業として取り扱わないこと。 また、当初、独立の有期事業として保険関係が成立した事業は、その後、事業の規模の 変更等があつた場合でも、一括扱いの対象としないこと。 ヘ 一括された個個の事業であつて保険年度の末日において終了していないものは、その保 険年度の確定保険料の対象から除外し、次年度の概算保険料の対象とすること。 ト 一括された事業に係る保険給付の支給に関する事務は、一括された事業に係る事務所の 所在地の所轄署長が行なうこと。 チ 新法第3条の2の規定による有期事業の一括扱いは、従来の一括扱いより、事業の規模に おいても地域的にも対象が拡大されたので、そのは握については、一層の徹底を期するこ と。 なお、建設業者又は素材生産業者で、従来、一括扱いされていなかつた事業主に対して は、新法第3条の2の規定による取扱いについて周知させたうえ、この取扱いへの切換えの 時期について十分指導し、事務処理に円滑を期すること。 (4) 従来から一括扱いされている事業の取扱い 昭和40年7月31日現在、一括扱いされている事業は、そのまま、新法第3条の2の規定によ り、一括された事業として取り扱うこと(この場合におけるメリツト保険料率については、 第4の4(2)参照。)。したがつて、一括扱いの範囲が自動的に拡大される場合があり、概算保 険料の増加の手続が必要となることがある。 なお、昭和40年7月31日現在、保険関係が成立している独立の有期事業には、法第3条の2 の規定は適用されない(改正法附則第2条)。 第2 保険関係の成立及び消滅関係 1 新法第6条及び新規則第3条の3関係 (1) 法改正の趣旨 強制適用事業の保険関係が新たに成立した場合には、その事業の事業主に保険関係成立の 届出をする義務を課するとともに、政府は、この届出により、又は職権で当該事業について の保険関係の成立の確認を行なうこととした。この届出及び確認の手続きは、保険年度の中 途に保険関係が成立した場合における概算保険料報告書の提出期限が 5日から45日に延長さ れたことに伴い、保険関係成立の時期をすみやかに確定して法律関係を明確にするととも に、これによつて、各事業の内容等基本的な事項をは握するため、新設されたものである。 なお、政府による確認は、すでに成立している保険関係を確認するということに止まり、 確認の有無は、保険関係の成否には関係ない。 (2) 手続 イ 強制適用事業の事業主は、保険関係が成立した日から5日以内に、告示様式第1号の3の 「保険関係成立届」3通を所轄署長を経由して所轄局長あて提出しなれけばならないこと (新規則第3条の3第2項)。 ロ 保険関係成立届が提出されたときは、所轄署長は、保険関係の成立を確認して、そのう ちの1通に新規則様式第1号の「保険関係成立印」を押し、保険加入者に返戻する(新規則 第3条の3第2項)とともに、残りの2通のうち1通を所轄局長へ送達すること。 ハ 保険関係成立届を提出を怠つている事業については、職権で保険関係成立の確認を行な うこと。その際、保険料の納付期限が経過している場合には、概算又は確定保険料の認定 決定を行なうべきことはいうまでもない。 なお、職権で保険関係の成立を確認したときは、告示様式第1号の4の「保険関係成立確 認通知書」により通知すること(新規則第3条の3第3項)。 (3) 経過措置 強制適用事業であつて、昭和40年7月31日までに概算保険料報告書を提出せず、又は政府 が概算保険料の認定決定をしていない事業(いわゆる未加入事業)の事業主は、新法第6条第2 項の規定による「保険関係成立届」を昭和40年8月5日までに所轄署長を経由して所轄局長に 提出しなれけばならないこととされているので(改正法附則第3条第1項)、その周知方に配慮 されたい。 2 新法第8条並びに新規則第4条の2、第5条及び第6条関係 (1) 法改正の趣旨 数次の請負による事業については、その取扱いの範囲を明確にするため、労働省令で定め る事業に限つて元請負人を事業主とすることに改め、新規則第4条の2において建設業を指定 した。建設業については、同時に新法第3条の2の規定による有期事業の一括扱いも行なわれ るので、第1の2(2)イにより、保険料の二重払いのような事態発生しないよう、関係者の指 導に留意されたい。 なお、同趣旨により労働基準法第87条及び同法施行規則の規定も改正された(改正法附則 第9条、改正省令附則第5項)。 (2) 下請負人に保険料の納付を引き受けさせる手続及び承認の基準 新法第8条第2項の規定により元請負人が下請負人に保険料の納付を引き受けさせようと するときは、元請負人が「引受下請負人承認申請書」を保険関係が成立した日 から5日以内 に提出しなれけばならないこととした(新規則第5条)。 また、これについての承認は、引受下請負人が請け負つた事業が少くとも新規則第3条の2 に規定する規模の事業以外の事業でなければ行なわないこととした(新規則第6条第1項)。す なわち、引受下請人となるためには、新法第3条の2の規定により一括扱いされる要件のうち、 事業の規模からみてその要件を満ため規模の事業以外の事業(建設業については概算保険料 に相当する額が、20万円以上又は請負金額が3000万円以上、立木伐採事業については概算保 険料に相当する額が20万円以上又は素材の見込生産量が1000立方メートル以上のもの)の事 業主でなければならないのである。 3 新法第11条の2及び新規則第8条の2関係 (1) 法改正の趣旨 近来、賃金計算等の事務を集中管理する事業が増加してきたことに伴い、これらの事業に ついての事務手続の便宜と簡素化を図るため、一定の継続事業については、申請に基づき、 数箇の事業を一括して保険関係を成立させることとしたものである。 (2) 一括扱いの要件 新法第11条の2の規定による継続事業の一括扱いをするには、それぞれの事業が、次のす べての要件に該当することを要する。 イ 事業主が同一人であること。 ロ それぞれの事業が継続事業であること(任意適用事業であると強制適用事業であるとを 問わない。)。 ハ それぞれの事業が、保険料率表による事業の種類を同じくすること(新規則第8条の2第1 項)。 ニ それぞれの事業について保険関係が成立していること(任意適用事業については、保険 加入の申込みの際に一括扱いの申請をしたものであつても差し支えない。)。 (3) 一括扱いの承認の基準 一括扱いの承認の基準は、次のとおりとする。 イ 一括扱いの対象は、当分の間、保険料率表における事業の種類の分類による「運輸業」、 「電気・ガス又は水道業」及び「その他の事業」に属する事業とすること。 ロ 政府の指定を受けることを希望する事業については、一括されるすべての事業の労災保 険事務を円滑に処理する事務能力を有すること。 ハ それぞれの事業について、従来から保険料の報告及び納付等が適正に行なわれているこ と。 (4) 一括扱いの効果 新法第11条の2の規定による継続事業の一括扱いが行なわれたときは、政府が指定するい ずれか一の事業(以下「指定事業」という。)に保険関係が集中し、その他の事業についての 保険関係は消滅する。したがつて、一括扱いは、保険年度の更新時に行なわれることが事務 処理上望ましいが、保険年度の中途において一括扱いをすることとなつたときも、一括され る各事業については確定保険料に関する手続を必要とし、指定事業については、事業規模が 拡大されたこととなるので、一般に概算保険料の増加の手続を必要とする。 なお、一括された事業の労働者に係る保険給付の支給は、それぞれの事業場の所在地の所 轄署長が行なうこととした(新規則第8条の2第5項)。この場合において、指定事業以外の事 業に係る保険給付であつて一括前の事故に係るのは、一括後においても、旧保険関係成立記 号番号によつて支給すること。 (5) 一括扱いの手続及び事務処理 継続事業の一括扱いの申請及び承認に関する事務は、次により処理すること。 イ 一括扱いの申請を行なおうとする事業主は、告示様式第3号の2の「継続事業一括扱い申 請書」3通を、政府の指定を希望する事業の所在地の所轄署長を経由して所轄局長(申請に 係る事業が2以上の都道府県にまたがるときは、当該所轄局長を経内して労働省労働基準 局長)に提出しなれけばならない(新規則第8条の2第2項)。 ロ 2以上の都道府県にわたる一括扱いの申請を受理した局長は、すみやかに本省あて、イ の申請書を申達するとともに、意見を付して所要の具体的事情を報告すること。 ハ 一括扱いの申請を承認したときは、「継続事業一括扱い承認書」により申請人に通知す るとともに、承認に係るそれぞれの事業の所在地の所轄署長にその旨通知すること、承認 をしない場合にも同様とすること。 ニ 本省においてロの申請を承認したときは、「継続事業一括扱い承認書」により申請人に 通知するとともに、この旨を指定事業の所在地の所轄局長及び承認に係るそれぞれの事業 の所在地の所轄局長に通知するので、この通知を受けた各局長は、承認に係るそれぞれの 事業の所在地の所轄署長及び関係事業場にその旨通知すること。承認をしない場合も同様 とすること。 ホ 一括された事業の事業主が保険料を滞納したときは、所轄局長は、承認に係るそれぞれ の事業の所在地の所轄署長にこの旨を通知すること。この場合において一括された事業が 2以上の都道府県にまたがるときは、指定事業の所在地の所轄局長は、当該承認に係るそ れぞれの事業の所在地の所轄局長にこの旨を通知し、当該所轄局長はこの旨を承認に係る それぞれの事業の所在地の所轄署長に通知すること。 ヘ ホの通知があつた場合において、承認に係るそれぞれの事業の所在地の所轄署長が当該 事業の労働者に対し保険給付を支給したときは、その旨を指定事業の所在地の所轄局長に 通知すること。 ト 一括された事業のメリツト保険料率は、指定事業のメリツト保険料率によること。 チ 一括扱いの承認を受けた事業主が、新たに当該承認に係る事業と種類を同じくする事業 を開始し、その事業をも一括扱いに含めることを希望する場合には、その事業が強制適用 事業であるときは「保険関係成立届」に、その事業が任意適用事業であるときは「保険加 入申込書」に一括扱いを希望する旨を附記して当該事業の所轄局へ提出させるとともに、 指定事業に指定事業の所轄局に対し、イの手続を行なわせること。 リ 一括扱いの承認後、当該事業が(2)の要件又は(3)の承認の基準に該当しなくなつた場合 には職権で承認の取消しをすることができることはいうまでもないが、このような場合に 事業主からの承認取消しの申請に基づき、又は職権で、承認の取消しを行なつたときは、 一括された各事業について保険関係成立の手続をとらせること。 ヌ 一括されている事業のうち指定事業以外の事業の全部又は一部の廃止又は終了があつ たときは、指定事業における労働者数又は賃金総額の減少とみなして、確定保険料報告の 際に精算すること。指定事業の廃止又は終了があつたときは、すみやかに、申請に基づき、 若しくは職権で指定を変更し、指定すべき事業がないときは、その後も存続している各事 業について保険関係成立の手続をとらせること。 ル 一括されている事業のうち指定事業以外の事業の全部又は一部の事業の種類が変更さ れたときは、事業の種類が変更された事業について保険関係成立の手続をとらせ、指定事 業を含む残りの事業については、指定事業の労働者数又は賃金総額の減少とみなして確定 保険料報告の際に精算すること。指定事業のみ又は指定事業を含む一部の事業の種類の変 更があつたときは、すみやかに、申請に基づき若しくは職権で指定を変更し、指定すべき 事業がないときは、事業の種類が変更されない事業について保険関係成立の手続を とら せ、指定事業及びこれを含む事業の一部については、前段と同様に取り扱うこと。 ヲ 一括されている事業の指定事業を他の事業に変える必要が生じたときは、申請に基づ き、又は職権で指定の変更を行なうこと。 (6) 一括扱いの留意点 イ 一括扱いは、指定事業の事務能力に応じ、一括される事業の範囲を定めるべきものであ り、必ずしもすべての事業を一括する趣旨ではない。したがつて支店、支社等において、 その下部機構の事務を集中管理している場合には、当該支店、支社等を指定事業としてそ の下部機構を一括することとなる。 しかし、事業主が、事務能力に関係なく、恣意的に一括の範囲を限つて申請をした場合 においては、当該局長は、新法第11条の2の承認をしないこと。 ロ 新法第11条の2の規定の運用にあたつては、事務処理に支障を生じないよう、関係局署 間の連絡に十分配慮すること。 (7) 経過措置 イ 従来2以上の営業所、出張所等で、独立の事業でないものは、それらの上級機構を事業 単位としてこれに含めて保険関係を成立させてきたが、これは、もともと新法第 11条の2 の規定によるべきものではないから、今後も従前の取扱いによるべきものである。もとよ り、それらを更に一括する場合には、新法第11条の2の規定によるべきことは、いうまで もない。 ロ 他方、事務手続の便宜上、独立の事業である小規模事業を一括して、一の保険関係を成 立させていた場合もあるが、これは、新法第11条の2の規定の予定するところであるので、 逐次同条の規定による申請を行なわせること。 第3 保険給付及び保険施設関係 1 新法第12条第1項関係 (1) 療養補償費 療養補償費については、1000円未満の療養費の不支給を改め、少額療養費についても全額 を支払うこととした(新法第12条第1項第1号)。 なお、昭和40年7月31日以前に療養を開始し、同年8月1日以後に負傷又は疾病がなおつた 者に係る療養費が1000円未満である場合でも、当該療養に要した費用については全額補償す る必要がある(改正法附則第6条)ので、これが取扱いについては、指定医、事業主その他の 関係者に対して周知徹底を図ること。 (2) 休業補償費 休業補償費については、休業7日以内で負傷又は疾病がなおつた場合における不支給を改 め、休業(業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受 けない場合をいう。)第4日目以降については、すべて支給することとした(新法第12条第1項 第2号)。この場合、休業補償費は、継続すると断続しているとを問わず実際に休業した日の 第4日目から支給するのである。したがつて、休業が8日をこえる場合にも、休業の最初の3 日間については休業補償費は支給されない。休業の最初の3日間については、労働基準法の 規定により事業主が災害補償をすることを要するので、事業主その他の関係者に対し、この 点の周知徹底に努めること。 「休業する日」の意義については、療養のため休業する日に限られるか、あるいは労働す ることができないため賃金を受けない日に限られるか、明文上必ずしも明らかでないが、第 1次改正後は、休業補償費に待期制度が設けられ、第3次改正後も、その趣旨において変りが ない以上、第3次改正後の法第14条第1項との関連において「業務上の負傷又は疾病による療 養のため労働することができないために賃金を受けない日」と解すべきことはいうまでもな い。したがつて従前の通達においてこれに反するものは、その限りにおいて、その趣旨を変 更することとする。ただし、休業最初の3日間について使用者が平均賃金の60%以上の金額を 支払つた場合には、特別の事情がない限り休業補償が行なわれたものとして取り扱うこと。 なお、昭和40年7月31日以前の休業の期間が7日以内であつて、同年8月1日以後その傷病が なおつた者についても、新法第12条第1項第2号の規定により、休業最初の3日を除き休業補 償賞を支給すること(この場合7月31日以前の休業に係る休業補償費の額についても給付基 礎日額を用いて計算する。)。また、昭和40年7月31日以前の休業の期間が7日以内であるが、 同年8月1日以後引き続き休業し、その休業日数が8日以上となつたときは、休業最初の3日間 を含めて、休業の全期間について休業補償費を支給すること(この場合も、7月31日以前の休 業に係る休業補償費の額は給付基礎日額を用いて計算する。)(改正法附則第7条)。いずれの 場合も新法と旧法の双方につき労働者の利益を考慮したものである。 なお、昭和40年7月31日以前の休業の日数が8日以上である者が、同年8月1日以後も引き続 き休業する場合の休業補償費の額については、8月1日以後の休業に係る分についてのみ給付 基礎日額を用いて算定すること。 2 新法節12条の2及び新規則第12条の2関係 (1) 法改正の趣旨 保険給付の額の算定の基礎としては、従来、労働基準法第12条の平均賃金を用いていたが、 今後は、これに代えて給付基礎日額を用いることとした。給付基礎日額は、原則として、平 均賃金に相当する額とするが、その額を給付基礎日額とすることが著しく不適当であるとき は、労働省令で定めるところによつて政府が算定する額を給付基礎日額とすることとした。 なお、「著しく不適当」とは、労働基準法の関係事項全般に共通して用いられる平均賃金 がそれ自体として著しく不適当であるということではなく、もつぱら保険給付算定の基礎と いう見地からのみ著しく不適当であるということであるから、平均賃金の算定方法の適否を 論ずるものでないことに留意されたい。 (2) 給付基礎日額の特例 平均賃金に相当する額を給付基礎日額として用いることが著しく不適当である場合の取 扱いは、次のとおりである。 イ 平均賃金に相当する額が380円に満たない場合には、給付基礎日額は380円とする(新規 則第12条の2第1号)。ただし、新法第12条第4項又は昭和35年改正法附則第16条の規定によ りスライドされた保険給付(スライドされることとなる保険給付を含む。)を受ける者につ いては、その者の平均賃金相当額にそのスライド率を乗じて得た額が380円をこえるとき は、その者の給付基礎日額は原則どおり平均賃金相当額とする(新規則第12条の2第1号た だし書)。 たとえば、平均賃金相当額が350円であつたとすれば、給付基礎日額は380円とされるが、 保険給付の額が20%スライドされた場合には、平均賃金相当額にスライド率を乗ずると350 円×120/100=420円となり380円をこえるので、この場合にはその者の給付基礎日額は350 円となる。 この点は、過去に保険給付がスライドされた者はもちろんのこと、給付基礎日額を380 円に引き上げられた後に保険給付がスライドされる者についても同様であり、後者につい ては、給付基礎日額が元の平均賃金相当額(350円)に変更される場合が生ずる。なお、平 均賃金相当額にスライド率を乗じた額が、380円に達しないときは、380円を給付基礎日額 とすることは、いうまでもない。 もとより、保険給付のスライドがあるため給付基礎日額を380円とすることを要しない 者についても、スライドしない一時金給付を受けることとなつた場合において、平均賃金 相当額が380円未満であるときは、給付基礎日額は380円となる。 このような給付基礎日額の特例は、労働者又はその遺族が受ける保険給付の額が、災害 補償の実効を期するに足る合理的なものであるように保険給付の額について最低保障を 行なうためである。したがつて平均賃金相当額が低くとも、労働者又はその遺族が受ける 保険給付の額がスライドにより保険給付の最低保障額を上回ることとなる場合には、スラ イドの事由が生じたからといつて、給付基礎日額の最低額をもつて算定した保険給付の額 をスライドさせることなく、その者の給付基礎日額を平均賃金相当額にもどすこととした のである。 以上のごとく、給付基礎日額の最低額は、保険給付の額との関連で決まるものであるか ら、実際の事務処理は、各受給者について原則どおりの平均賃金相当額をもつて保険給付 の額を算定し、それが380円の給付基礎日額による保険給付の最低額に満たない場合には、 その最低額の保険給付を支給すれば足りる。 なお、昭和38年6月14日付け基発第674号通達は廃止する。 ロ じん肺にかかつたことにより保険給付を受けることとなつた労働者の平均賃金に相当 する額が、じん肺にかかつたため粉じん作業以外の作業に常時従事することとなつた日を 平均賃金を算定すべき事由の発生した日とみなして算定した平均賃金に満たない場合に は、この額を給付基礎日額とする(新規則第12条の2第2号)。この取扱いは、従来の昭和39 年11月25日付け基発第1305号通達によるものと同一である。 (3) 給付基礎日額の端数処理 給付基礎日額に1円未満の端数があるときは、これを1円に切り上げることになつた(新法 第12条の2第3項)。これに伴い、従来の1円未満の端数のついた平均賃金による保険給付の額 は、給付基礎日額を用いて計算した保険給付の額と異なる場合があるので、従来から継続し て文給する休業補償費及び長期給付のうち必要なものについては本年 8月1日以後に支給事 由の発生するものについて改定し支給すること。 3 新法第12条の3関係 本条の改正は、事業の責めに帰すべき理由による支給制限に関する規定を削除したことに伴 う字句の整理である。なお、現在旧法第17条から第19条までの規定により保険給付を受けない ため労働基準法第75条の規定による療養補償を受ける労働者に対しても、長期傷病補償又は改 止法第3条の規定による改正後の法第18条の長期傷病補償給付を行なうことができることはい うまでもない。 4 新法第17条及び第18条関係 今般、旧法第17条及び第18条の規定を削除し、並びに第19条の規定を改め、事業主の不実の 告知、保険料の滞納及び故意又は重大な過失による事故発生による支給制限を廃止し、このよ うな事由がある場合にも労働者に対しては保険給付を行ない、その場合には事業主からこの保 険給付に要した費用を徴収することとした(新法第30条の4)。 したがつて、今後は、事業主の責めに帰すべき事由による支給制限は行なわないのであるが、 昭和40年7月31日以前に生じた事故に係る保険給付については、その支給決定が同年8月1日以 後に行なわれる場合でも、従前どおり旧法第17条から第19条の2までの規定により支給制限を 行なうことができる(改正法附則第8条)。 5 新法第19条関係 労働者の責めに帰すべき事由による支給制限については、旧法第19条の規定を整備したの で、その運用には適正を期せられたい。 新法第19条第1項の規定は、業務上とならない事故について確認的に定めたものであつて、 労働基準法第78条の規定で、結果の発生を意図した故意によつて事故を発生させたときは当然 業務外とし、重大な過失による事故のみについて定めていることと対応するものである。した がつて、被災労働者が結果の発生を認容していても業務との因果関係が認められる事故につい ては、同項の適用がないのはいうまでもない。また、同条第2項の「故意の犯罪行為」とは、 事故の発生を意図した故意はないがその原因となる犯罪行為が故意によるものであることを いう。この場合には必ずしも業務外になるとは限らないから、同条第1項の「故意」による事 故発生と混同すべきではない。 6 新法第19条の2関係 不正受給者の不正受給分の費用については、従来、民事上の手続によつて返還させていたの であるが、この場合の費用の回収を円滑にするため、徴収金として徴収することができるよう 新法第19条の2の規定を新設した。 7 新法第23条関係 本条の改正は、被災労働者の職業生活、社会生活への復帰を促進する趣旨において行なつた ものであり、被災労働者のリハビリテーシヨンについては、事業主、労働者、指定医その他の 関係者に対し、その趣旨の周知に努められたい。 また、本条の改正により、従来旧法第23条第5号の「その他必要と認める施設」として行な われていた義眼、かつら、眼鏡、人工喉頭、補聴器、車椅子等の支給は、新法第23条第2号の 「義肢その他の補装具の支給に関する施設」として行なわれることとなる。 なお、本条の改正に伴つて、労働福祉事業団法及び同法施行令の関係条文の字句整理を行な つた(改正法附則第11条)。 第4 1 費用の負担関係 新規則第24条関係 法第25条第1項の賃金総額に算入すべき現物給付の範囲及び評価に関する旧規則第24条の規 定は、全文を改正したが、現物給付の評価額については、従来の労働基準法施行規則第 2条の 規定に従つて評価した額をそのまま用いて差し支えなく、現物給付の範囲の決定についても、 実行上従来の手続によることとして差し支えない。 2 新法第25条第3項並びに新規則第24条の2、第25条、第25条の2及び第26条関係 (1) 法改正の趣旨 建設業のうち請負によるもの、林業又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業であつて賃 金総額を正確に算定することが困難なものについては、旧規則第25条、第25条の2及び第26 条において賃金総額算定方法の特例を定めていたが、これについて新たに新法第 25条第3項 に省令委任の規定を設けたものである。 (2) 特例を認められる事業 特例を認められる事業は、次のとおりである。 イ 新法第8条第1項の規定の適用を受ける事業、すなわち数次の請負によつて行なわれる建 設業 この場合、新法第25条第3項において「第8条第1項の規定の適用を受ける事業」と定め ているのは、「労働省令で定める事業が数次の請負によつて行なわれる場合」の当該事業 を指すものであり、新法第8条第2項の規定による引受下請負人を事業主とする事業を除外 する趣旨のものではない。 ロ 次の事業であつて、法第25条第2項の賃金総額を正確に算定することが困難なもの(新規 則第24条の2) (イ) 請負による建設業(上記イの事業を除く。したがつて1次請負のみによる事業に限る。) (ロ) 立木の伐採の林業 (ハ) 立木の伐採の事業を除き、造林、木炭又は薪を生産する事業その他の林業 (ニ) 水産動植物の採捕又は養殖の事業 (3) 特例による算定の方法 イ 上記(2)イの事業であつて賃金総額を正確に算定することが困難なもの及び上記(2) ロ の事業については、新規則第25条の規定により、従来と同じ方法で請負金額及び労務費率 を用いて賃金総額を算定する。なお、上記(2)イの事業であつて賃金総額を正確に算定す ることが困難でないものについては、従来と同様法第25条第2項の賃金総額を用いること。 ロ 上記(2)ロ(ロ)の事業については、新規則第25条の2の規定により従来どおり素材生産量 当り労務費を用いて賃金総額を算定する。 ハ 上記(2)ロ(ハ)の事業及び(ニ)の事業については、新規則第26条の規定により従来どお り協定平均賃金を用いて賃金総額を算定する。 3 新法第26条、新施行令第2条及び新規則第27条関係 保険料率の決定方法については、政令で定めるところにより過去3年間の災害率その他の事 情を考慮して定めることに改めるとともに、保険給付の年金化に伴い、将来にわたつて財政の 均衡を保つことができるものでなれけばならないこととしたものである。 新施行令では、保険料率は、事業の種類ごとに、過去3年間の業務災害に係る保険給付の種 類ごとの受給者数及び平均受給期間その他の事項に基づき算定した保険給付に要する費用の 予想額を基礎とし、すべての事業の過去5年間の災害率、事務の執行に要する費用の予想額そ の他の事情を考慮して定めるべきこととしている(新施行令第2条)。 なお、旧規則第27条第2項を削つた趣旨は、当該規定が事業の概念につき実情に即さない点 があるからである。 4 新法第27条並びに新規則第28条第3項、第29条及び第30条関係 (1) 法改正の趣旨 新法第3条の2の規定により一定の有期事業が一括され継続事業として扱われることとな つたことに伴い、継続事業のメリツト制の適用対象を拡げるとともに、メリツト計算の基礎 となる保険料の額と保険給付の額との割合の算定期間を、実情に即して過去5年間から過去3 年間に改めるほか、長期給付の額を保険給付の額に算入する方式を労働省令で定めることと したものである。 (2) 新たにメリツト制の適用対象となるもの(新規則第28条第3項) 新法第3条の2の規定により一括された有期事業であつて12月31日において一括有期事業 として保険関係成立後3年を経過したものについての当該12月31日の属する保険年度の直前 の保険年度の確定保険料の額が20万円以上であるものについては、新たに継続事業のメリツ ト制を適用することとした。ただし、昭和40年7月31日以前から一括扱いされている有期事 業については、昭和42年度の保険料率からメリツト制を適用すること。 (3) 長期給付の額の算入方法 長期給付については、労働省令で定めるところにより算定した額をメリツト制の基礎とな る保険給付の額に算入することとなるが、本年12月31日を基準として行なうべきメリツト計 算については、従来の方法によること。 (4) 一括された有期事業のメリツト料率の範囲(新規則別表第7)。 一括された有期事業については、新法第30条の2に定める有期事業のメリツト制との均衡 を図つてメリツト料率の範囲を上下20%とすることとした。 5 新法第28条及び新規則第31条関係 (1) 法改正の趣旨 保険者である政府及び保険加入者の事務の簡素化と事務の機械処理を円滑ならしめるた め、保険関係の成立の時期を問わず概算保険料報告書の提出期限と概算保険料の納付期限を 統一するとともに、継続事業については一定の場合には当年度の概算保険料の算定基礎とな る賃金総額の見込額に代えて前年度の賃金総額を用いることができることとしたものであ る。 (2) 概算保険料の報告期限と納付の期限 概算保険料の報告及び納付の期限は、継続事業については、保険年度の初日又は保険関係 成立の日から45日以内とし、有期事業については保険関係成立の日から20日以内とするとと もに概算保険料報告書に添えて概算保険料を納付すべきこととするとともに、旧規則第48条 の2及び第48条の3の規定により概算保険料報告とともに行なうべき漁林業労働者に関する 報告は廃止した。なお、新法第28条の規定は、本年8月1日以後に旧法による概算保険料の納 付の期限が到来する事業にも適用すること。また、本年度中は、概算保険料報告書又は確定 保険料報告書と納付書の様式を統合しないので、新規則第45条第2項の規定にかかわらず、 報告書は署へ提出させること。また、納付期限内に概算保険料を納付することかできない者 については概算保険料報告書のみを提出させること。 (3) 前年度の確定保険料の額を当年度の概算保険料の額とすべき場合(新規則第31条第1項) 継続事業については、当年度の賃金総額の見込額が前年度の賃金総額の50%以上200%以下 である場合には、前年度の賃金総額を概算保険料の算定基礎として用いることとした。 6 新法第29条及び新規則第32条関係 賃金総額の増加に伴う概算保険料の増加報告及びその増加額の納付は、賃金総額の見込額が 100分の200をこえて増加したときに行なうこととするとともに、増加保険料の報告の期限及び 増加額の納付の期限を賃金総額の見込額が現に増加した日から30日以内とした。 7 新法第30条並びに新規則第40条及び43条関係 (1) 法改正の趣旨 確定保険料についてその報告書の提出期限及びその納付期限を統一するとともにその期 限を次年皮の概算保険料の報告書の提出及び納付の期限と統一して次年度の概算保険料と 同時に処理することができることとし、また、確定保険料の超過額は特別保険料、追徴金、 延滞金はもちろんのこと、新法第19条の2第2項(不正受給者と連帯する事業主からの徴収金) 及び第30条の4(保険加入者からの徴収金)の規定による徴収金にも充当することができるよ うにした。なお同一事業主が行なう他の事業に係る未納の保険料その他の徴収金にも充当す ることができることはいうまでもない。なお、新法第30条の規定は、本年8月1日以後に確定 保険料の納付の期限が到来する事業にも適用すること。 (2) 確定保険料の報告及び納付手続 確定保険料の報告及び納付は、次の保険年度の初日又は保険関係が消滅した日から45日以 内にしなれけばならないこととした。ただし、確定保険料の額が概算保険料の額と等しいと き、又は後者が前者を上回るときは、報告書のみを所轄署長を経由して所轄局長に提出すれ ばよいことはもちろんである。 また、請負金額によつて保険料額を算定した保険加入者についての旧規則第 40条第2項の 規定による請負代金の額等の証明書類の提出義務は、実情に照らし廃止した。 なお、新法第3条の2の規定により一括された有期事業の保険加入者については、確定保険 料報告書を提出する際に、その別紙として「事業実施内訳書」を提出させること(新規則第4 0条第5号)。 8 新法第30条の2及び新規則第41条関係 労災保険適用事業の安全衛生意識の向上と労働災害の防止に資するため、有期事業のメリツ ト制の適用範囲を拡大することとし、請負金額3000万円以上の建設業及び素材生産量1000立方 メートル以上の立木伐採事業をその対象に加えることとした。ただし、新規則第41条の規定は、 本年7月31日以前に保険関係の成立した事業に対しては適用されない(改正省令附則第4項)。 なお、保険加入者が納付した確定保険料の額が新法第30条の2の規定により政府が決定した 保険料の額をこえる場合には、その超過額を、未納の保険料その他の徴収金に充当することが できることとした。充当の対象となる徴収金の範囲については、7(1)の場合と同様である。 9 新法第30条の4及び新規則第44条関係 新法第30条の4の規定による費用の徴収の制度は、旧法第17条から第19条までの規定による 事業主の責めに帰すべき事由による支給制限の制度に代えて設けられたものであるのでその 運用にあたつては適正を期せられたい。 第5 1 その他 新法第37条関係 新法第30条の4の規定により都道府県労働基準局長が保険加入者から保険給付に要した費用 の全部又は一部を徴収することとした場合に、当該保険加入者がその処分に不服であるとき は、行政不服審査法第5条の規定にかかわらず、労働大臣に対する審査請求の前に、まず、処 分庁である都道府県労働基準局長に対して異議申立てを行なうことができることとして、不服 の現地解決を図ることとした。 2 新法第46条及び第47条並びに新規則第51条の2関係 新法第46条及び第47条の規定は、罰則との関連において旧法の規定の整備を行なつたもので ある。さらに、これらの規定及び新法第47条の2の規定に基づく個々の命令については文書を もつて行なうこととし(新規則第51条の2)、個々の命令違反の行為に対する罰則の適用につい て明確を期した。 3 新法第47条の3関係 保険給付に関する事務の円滑化を図るため、保険給付の受給権者その他の者が、正当な理由 がなく、新法第47条及び第47条の2の規定に基づいてなされる都道府県労働基準局長又は労働 基準監督署長の保険給付の支給について必要な文書等の提出、医師の診断を受けるべきこと等 の命令に従わない場合には、保険給付の支払を一時差し止めることができることとした。 4 新法第49条の2関係 新法に基づく政令、省令、告示等を制定、改廃をする場合には、合理的に必要と判断される 範囲内において、これらの政令、省令、告示等で経過措置を規定しうる旨の委任規定をおいて、 当然の条理を明らかにした。 5 新法第52条及び第53条関係 旧法第52条及び第53条は、構成要件が必ずしも明確でなく解釈上疑義があつたのでこの点を 是正した。 6 その他の規定関係 以上のほかの新法及び新規則の規定は、他の条項の改正に伴う字句整理、又は表現の整備で ある。また、告示様式についても、既存のものについて一部の改正をしたほか、必要な様式を 新設した。 なお、木年度中においては、「保険関係成立届」のみを本省において作成し、管理換えする こととするので、この他の様式については、本年度中は旧様式を利用する等、各局において適 宜処置すること、また、改正された既存の様式については、様式番号あるいは注意書のみを改 められたものが多いので、当分の間、旧様式のまま、あるいはゴム印等により補正して使用す ること。 別添 有期事業の一括払いを行なう区域[1/2] 有期事業の一括払いを行なう区域[2/2]
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