1 (参考11)カラテオドリの原理: 熱力学第2法則の表現の一つ 積分分母

2016 年 11 月 12 日
戸田昭彦
(参考11)カラテオドリの原理: 熱力学第2法則の表現の一つ
積分分母としての温度および状態量としてのエントロピーの定義
A.2変数 x, y により状態が指定される系における準静的な断熱可逆過程は,次式で表される変化と
なる。
q = L1 (x, y ) dx + L2 (x, y ) dy = 0
∵ 例えば,熱力学第 1 法則より q = dU + p dV = 0
以下に示されるように,このとき必ず積分分母 T と状態量 S が存在し,
・ 上式を変形して得られる常微分方程式
q
= dS と表される。
T
L (x, y )
dy
=− 1
は,以下の曲線状の一般解を必ずもつ。
dx
L2 (x, y )
一般解 S (x, y ) = C (一定)
・ 「常微分方程式の解の一意性」定理により曲線群 S (x, y ) = C は互いに交わることがない。
・ 定数 C の連続的な変化により,曲線群 S (x, y ) = C で,(x, y)平面が密に埋め尽くされ,
S (x, y ) は,(x, y)平面上の任意の点で一意的な値を持つ状態量となる。
∂S
∂S
) dx + ( ) dy = 0 であり,任意の関数 T (x, y ) について,
∂x
∂y
∂S
∂S
q − TdS = [L1 − T ( )] dx + [L2 − T ( )] dy = 0 が成り立つ。ただし,この曲線上で x, y は独立で
∂x
∂y
∂S
はない。そこで, x を従属変数とする一方で L1 − T ( ) = 0 を満たすように T を決める。その結果,
∂x
∂S
∂S
[L2 − T ( )] dy = 0 が独立な変数 y に関して成り立ち, L2 − T ( ) = 0 の関係も満たされている。
∂y
∂y
L
q L
∂S
∂S
以上から,積分分母を T として, = 1 dx + 2 dy = ( )dx + ( )dy = dS と表される。
T T
T
∂x
∂y
・ この曲線上では, dS = (
・ q を T で割ると全微分 dS となり,積分可能となるので, T は積分分母と呼ばれる。
2変数により状態が指定される場合には,積分分母が必ず存在する。
1
B.3つ以上の変数 x1 , x2 ,⋯ , xn により状態が指定される系における準静的な断熱可逆過程は,次式
で表される変化となる。
q = L1dx1 + L2dx2 + ⋯ + Ln dxn = 0
このとき,積分分母が必ず存在するという保証はない。 (下記 C 参照)
・ カラテオドリの定理:
「 n 次元空間内の任意の点 x = (xi =1…n ) について,この点から q = L1dx1 + L2dx2 + ⋯ + Ln dxn = 0 で
到達できない任意の近傍の点があるとき, q は積分分母をもつ。」
「到達できない任意の近傍の点がある」 とき,容易に推察されるようにベクトル L = (Li =1…n ) と直
交 ( Ldx = 0 ) す る 変 位 dx = (dxi=1…n ) に よ っ て 到 達 で き る 点 は , あ る 曲 面 S (x1 , x2 , ⋯ , xn ) =
C (一定) 上に限られることが示される。(下記 D 参照)
更には,下記(補)で定義される Cijk がゼロとなることも示される。(下記 E 参照)
異なる定数 C をもつ曲面群 S = C は互いに交わらず,これらの曲面群で空間が密に埋め尽くされ
S は状態量となる。
曲面上では dS = 0 なので,任意の関数 T (x1 , x2 ,⋯, xn ) を用いて以下の関係が成り立つ。
q − TdS = [L1 − T (∂S / ∂x1 )]dx1 + [L2 − T (∂S / ∂x2 )]dx2 + ⋯ + [Ln − T (∂S / ∂xn )]dxn = 0 ただ し ,こ の 曲面 上で x1 , x2 ,⋯ , xn は 独立 で は な い 。そ こで , x1 を従属変数 と する一 方 で ,
L1 − T (∂S / ∂x1 ) = 0 を満たすように関数 T を決めてやると,以下の関係が独立な変数 x2 ,⋯ , xn に
関して成り立つ。
[L2 − T (∂S / ∂x2 )]dx2 + ⋯ + [Ln − T (∂S / ∂xn )]dxn = 0
すなわち, L2 − T (∂S / ∂x2 ) = 0 , ⋯ , Ln − T (∂S / ∂xn ) = 0 の関係が満たされる。
以上より,積分分母を T として,以下の表式が得られる。
q L1
L
L
∂S
∂S
∂S
= dx1 + 2 dx2 + ⋯ + n dxn =
dx1 +
dx2 + ⋯ +
dxn = dS
T T
T
T
∂x1
∂x2
∂xn
2
・ カラテオドリの原理: 熱力学第2法則の表現の一つ
「与えられた系のどの状態にも,その状態からの断熱変化によっては,可逆・非可逆を問わず,到達
できない任意の近傍の状態がある。」
カラテオドリの原理が成り立つとき,可逆な断熱過程 q = 0 に関するカラテオドリの定理から,状態
量 S が定義され,この過程で到達可能な状態は曲面 S = C 上に限られることが示される。
微小な非可逆的断熱過程により曲面 S = C の両側( S が増加・減少する向き)への変化が可能で
あるとすると,断熱過程で任意の近傍に到達可能となってしまう。そこで,カラテオドリの原理より,
非可逆な断熱過程で可能な変化は, S が増加するか,減少するか,どちらか一方向のみとなる。
ただし,カラテオドリの原理のみから, S が増加するとは結論できない。
1例として理想気体の非可逆的な断熱自由膨張で S が増大することは経験的に知られている。
そこで,任意の系の非可逆断熱過程についても,理想気体の非可逆的な断熱自由膨張の系を加
えて考えることで,カラテオドリの原理から,エントロピー S が増大することが結論できる。
一方,断熱過程におけるエントロピー増大則から,カラテオドリの原理が結論できることは,自明で
あろう。
以上より,カラテオドリの原理も熱力学第2法則の一つの表現とされている。
(文献) A.B. Pippard "Elements of Classical Thermodynamics" Cambridge Univ. Press, 1957, Ch. 4
(ISBN:0521091012)
H.A. Buchdahl, "The Concepts of Classical Thermodynamics" Cambridge Univ. Press, 1966, Ch. 4
(ISBN:0521115191)
S.M. Blinder, in "Physical Chemistry: Thermodynamics" vol. 1, Ed. W. Jost, Academic Press Inc, 1971, Ch. 10
(ISBN:0122456017)
原島鮮 「熱力学,統計力学」 培風館, 1978,第3章(ASIN:B000J8MIXU)
3
補)フロベニウスの積分可能性定理:
q = L1dx1 + L2dx2 + ⋯ + Ln dxn = 0 について,積分分母が存在する必要十分条件は以下の通り。
任意の3つの i, j, k の組について,Cijk ≡ (
∂Lj
∂xi
−
∂Li
∂L ∂L
∂L ∂L
)Lk + ( k − j )Li + ( i − k )Lj = 0
∂xj
∂xj ∂xk
∂xk ∂xi
十分条件であることは下記 E を参照。
必要条件であることは以下のように簡単に示すことができる。
積分分母1/µ が存在するとき,
 ∂Lj ∂Li
∂µ
∂µ
−
)µ =
Li −
Lj
(
∂
x
∂
x
∂
x
∂
x
i
j
j
i

 ∂L ∂L
∂µ
∂µ
j
k
の関係が成り立ち,展開すると, ⇒ 任意の3つのi, j, k で, −
)µ =
Lj −
Lk
(
∂xj ∂xk
∂xk
∂xj

∂Lj ∂Li
∂µ
∂µ
 ∂L ∂L
Li −
Lj
(
−
)µ =
∂µ
∂µ
∂xi ∂xj
∂xj
∂xi
( i − k )µ =
Lk −
Li
∂xi
∂xk
 ∂xk ∂xi
∂
∂
µLj =
µLi
∂xi
∂xj
上右式の辺々に,それぞれ Lk , Li , Lj を掛けて足しあわせると,
Cijk µ = [(
∂Lj
∂xi
−
∂Li
∂L ∂Lj
∂L ∂L
)Lk + ( k −
)Li + ( i − k )Lj ] µ
∂xj
∂xj ∂xk
∂xk ∂xi
=(
∂µ
∂µ
∂µ
∂µ
∂µ
∂µ
Li −
Lj )Lk + (
Lj −
Lk )Li + (
Lk −
Li )Lj = 0
∂xj
∂xi
∂xk
∂xj
∂xi
∂xk
のように,µ によらない Li=1…n の関係式 Cijk = 0が得られる。
(文献) スミルノフ:高等数学教程 第 II 巻 第3章 (ISBN:4320010175)
Forsyth, A.R.: "A Treatise on Differential Equations" 1903, CH. 8 (ISBN:8123916612)
4
C.3変数での例
Frobenius の積分可能性定理より,積分分母(積分因子)
が存在する必要十分条件は,
3変数の場合,ベクトルR = (L, M , N ) に関する以下の関係式として表される。
∂N ∂M
∂L ∂N
∂M ∂L
R ⋅ curl R = L (
−
)+M(
−
)+N(
−
)=0
∂y
∂z
∂z ∂x
∂x ∂y
q = z dx + z dy + dz = 0
例1)積分分母が存在する例
R = (z, z ,1) であり,
∂1 ∂z
∂z ∂1
∂z ∂z
R ⋅ curl R = z ( − ) + z ( − ) + 1 ( − ) = 0
∂y ∂z
∂z ∂x
∂x ∂y
となり,積分分母が存在する。
q
1
積分分母は z (≠ 0),df = = dx + dy + dz は全微分可能であり,f = x + y + ln zと書ける。
z
z
q = 0 を保ったまま到達できる状態は,x + y + ln z = C の曲面上(下左図)に限られており,
(x, y, z ) 空間は,C の変化により,この曲面群で密に埋められている。
この曲面群は互いに交わることはなく,繋がることもない。
例2)積分分母が存在しない例
q = z dx + dy + dz = 0
R = (z , 1, 1) であり,
∂1 ∂1
∂z ∂1
∂1 ∂z
R ⋅ curl R = z ( − ) + 1 ( − ) + 1 ( − ) = 1
∂y ∂z
∂z ∂x
∂x ∂y
となり,積分分母は存在しない。
このとき,q = 0 を保ったまま到達できる状態は,
1. (0, C , 0) → (∀x, C , 0) 
→ (∀x, y + z = C )
dy =0
z =0
dx=0
d ( y + z ) =0
y + z = C の平面
2. dz = 0 , z0 dx + dy = 0 → y = −z0 x + C ′ 平面z = z0 上の直線
′ C ′は任意)は必ず交わる。
3. 平面 y + z = C と,平面z = z0 上の直線 y = −z0 x + C(
∴ この平面と直線上の移動で,任意の状態に到達できる。(下右図)
Y ′′ − Y
例えば, (X , Y , Z ) 
→ (X −
, Y ′′, Z ) 
→ (X ′, Y ′, Z ′)
Y ′′−Y = −Z ( X ′′−X )
Y ′+Z ′=Y ′′+Z
Z
5
D.カラテオドリの定理の補足
「 q = Ldx = 0 では到達できない任意の近傍の点があるとき」 到達できる状態は,ある曲面上に限ら
れることの証明
空間内のある点 P におけるベクトル L の向きの直線を ℓ とする。直線 ℓ を含む平面 F をつくる。平面
上は2自由度なので, P から Ldx = 0 を満足しながら変位すると,曲線上を辿り,別な点 M に至る。
点 M を通る直線を ℓ′ とする。(下左図参照)。
ℓ′
ℓ
ℓ′
ℓ
ℓ′
ℓ
F
F
F′
L
P
P3
L
q =0
M
P
P′
M
q =0
P2
P1
q =0
次に,上中図のように,両端 ℓ, ℓ′ を固定したまま平面 F を手前側に微小変形することで,新たな曲
面 F′ をつくる。 M から始まる曲面 F′ 上の q = 0 の変位により直線 ℓ 上に達するとき,達した点が
P′( ≠ P) であったとする。このとき2点 P − P′ を結ぶベクトルを ∆xPP′ とすると,点 P から L∆xPP′ ≠ 0 と
なる点 P′ に,曲面 F − F′ 上の q = 0 の経路 P → M → P′ で達することが可能となる。平面 F の微小変
形量を調節することで,点 P′ は直線 ℓ 上で連続的に移動するであろう。そこで, L∆x′ = 0 を満たす
任意の変位 ∆x′ を加えることで,点 P から ∆x′′ = ∆xPP′ + ∆x′ だけ離れた任意の近傍の点に q = 0 で
達することができてしまう。すなわち本来 L∆xPP′ = 0 であるべきであり,直線 ℓ 上で点 P′ は P と一致
する。このようにして q = 0 の変位により曲面 F − F′ 上の P − M − P の閉じた経路を構成できる。
さらに平面 F を前後に連続変形させることにより,上右図のように,閉じた経路のつくる曲面として互
いに交わることのない曲面群 Pi が得られる。
以上の議論では3変数で状態が指定される3次元空間を想定した。2自由度曲面 F, F′ に関する同
様な状況は4変数(4次元空間)以上でも成り立つであろう。そこで,4変数(4次元空間)以上の場合
も含めて,変数 x1 , x2 ,⋯ , xn により状態が指定できるとき,この(超)曲面群を S (x1 , x2 ,⋯, xn ) = C と表せ
ば,準静的断熱可逆過程で到達できる状態は,この曲面上のみに限られる。 S は状態量となる。
(文献)
S.M. Blinder, in "Physical Chemistry: Thermodynamics" vol. 1, Ed. W. Jost, Academic Press Inc, 1971, Ch. 10
(ISBN:0122456017)
原島鮮 「熱力学,統計力学」 培風館, 1978,第3章(ASIN:B000J8MIXU)
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E.カラテオドリの定理の別証とフロベニウスの積分可能性定理の十分条件の証明
(文献)H.A. Buchdahl, "The Concepts of Classical Thermodynamics" Cambridge Univ. Press, 1966, Ch. 4
(ISBN:0521115191)
n (≥ 3) 次元空間 x = (xi =1…n ) 内の q = ∑ i =1 Lidxi = Ldx = 0 で表される変位を考える。これは,許さ
n
れた変位ベクトル dx = (dxi =1…n ) がベクトル L = (Li =1…n ) と直交することを意味する。
上式を満たした曲線上を辿る変化により,点 PA から PB へと変位したとする。媒介変数 u を用いて,
微分方程式 L(dx / du) = 0 として表したときの点 PA , PB を通る解曲線 Σ を x = f (u) とする。すなわち,
Lfɺ =
L fɺ = 0 であり, u = u で点 P ( x = f (u ) ), u で点 P ( x = f (u ) )を通る。点 P を通
∑i
A
i i
A
A
B
B
B
A
るもう一つの解曲線 Σ′ を x′ = f (u) + ε g(u) とする。曲線 Σ′ は uB で点 PB′ ( x′ = f (uB ) + ε g (uB ) )を通り,
点 PA では x = f (uA ) + ε g(uA ) = f (uA ) なので g(uA ) = 0 である。
また,経路 Σ′ 上での L′ xɺ ′ について, ε ≪ 1 として,1 次の項までの展開をとると,
∂L
∂L
∂L
g j ](fɺ + εgɺ ) ≃ Lfɺ + ε Lgɺ + εfɺ ∑
g j = ε[ Lgɺ + fɺ ∑
gj ]
∂xj
∂xj
∂xj
∂L
→ Lgɺ = ∑ i Li gɺi = −∑ i ∑ j i fɺi g j
∂xj
0 = L′ xɺ ′ = [ L + ε∑
の関係が g = ( gi =1…n ) にあることがわかる。
一方で下記の理由により, q = Ldx = 0 により辿り着けない任意の近傍の点が存在することは,
L(uB ) g(uB ) = 0 を意味する。
∵ L(uB ) g(uB ) ≠ 0 のとき, g(uB ) は L(uB ) に平行な成分 g (uB ) 含む。 Lg⊥ = 0 なので,垂直な
成分 g⊥ (uB ) は任意にとれる。そこで ε を調整することで,点 PB の任意の近傍に点 PB′ を置くことが
できてしまう。すなわち,解曲線 Σ と Σ′ を辿ることで,点 PB から任意の近傍の点 PB′ に到達できること
になる。
以下では, Lg = 0 となる条件を求める。
Σ′
PB′
εgB
PA
L1µɺ = −µ∑ j (
補)∑ j (
Σ
PB
Σ′ : x′ = f (u) + ε g(u)
Σ : x = f (u )
∂L1 ∂Lj ɺ
∂µ ɺ
−
)fj により,新たな関数 µ を定義する。ただし, µɺ = ∑ j
fj である。
∂xj ∂x1
∂xj
∂µL1 ∂µLj ɺ
∂L ∂Lj ɺ
∂µ
∂µ
−
)fj = ∑ j µ ( 1 −
)fj + ∑ j
L1fɺj − ∑ j
Ljfɺj
∂xj
∂x1
∂xj ∂x1
∂xj
∂x1
∂µ ɺ
∂µ
= −L1µɺ + L1 (∑ j
fj ) −
(∑ j Ljfɺj ) = 0
∂xj
∂x1
の関係があり,上記の µ の定義は, 1 / µ が積分分母となり, µLi = (∂S / ∂xi ) となる全微分可能な関数
µL(f + εg − f ) = µL∆xuB
S が存在しうることを含意している。このとき,下記 µLg は ε(µLg) = 
の意
(grad
S
)
ε
g
=
∆
S
u

B
味をもち, µq = µLdx が積分可能となり, εµLg は PB − PB′ 間の ∆S に相当する。
7
この関数 µ により,
d (∑ i µLi gi )
du
= ∑ i (µɺ Li gi + µLɺi gi + µLi gɺi )
∂L1 ∂Lj ɺ
∂L
∂L
1
(
−
)fj Li gi + ∑ i (∑ j i fɺj ) gi − ∑ i ∑ j i fɺi g j ]
∑
j
L1
∂xj ∂x1
∂xj
∂xj
∂
L
∂L ∂L
∂L
µ
j
= − ∑ i ∑ j [( 1 − i )Lj + ( i −
) L1 ]fɺi g j
L1
∂xi ∂x1
∂xj ∂xi
= µ[−∑ i
Cij0 k ≡ (
∂Lk ∂Li
∂L ∂Lj
−
)Lj + ( i −
)Lk + F (Lj , Lk ) Li と定義する( F (Lj , Lk ) は任意の関数)。
∂xi ∂xk
∂xj ∂xi
∑ i Li fɺi = 0 なので,
積分すると,
g(uA ) = 0 であり,
d (µLg) d (∑ i µLi gi )
µ
=
= − ∑ i ∑ j Cij0 1fɺi g j
du
du
L1
uB µ
µL(uB ) g (uB ) − µL(uA ) g(uA ) = − ∫
C 0 fɺ g du
uA L ∑ i ∑ j ij1 i j
1
uB µ
µL(uB ) g (uB ) = − ∫
(
C 0 g )fɺ du
uA L ∑ i ∑ j ij1 j i
1
任意の経路x = f (u) で L(uB ) g (uB ) = 0 となるためには,∑ i Li fɺi = 0 なので∑ j Cij0 1g j = kLi ある
いは ∀i, j で Cij0 1 = 0であればよい。しかし,g ⊥ L である全ての向きの g について,一定の
Cij0 1 による回転で,同様に(∑ j Cij0 1g j )をL = (Li ) に平行にすることはできない。
すなわち,
∀i, j で Cij0 1 = 0 となるはずである。
∂Lj ∂Lk
 ∂Lk ∂Li
∂Li ∂Lj
= ( ∂x − ∂x )Lj + ( ∂x − ∂x )Lk + ( ∂x − ∂x ) Li とすれば,
さらに, Cijk 
i
k
j
i
k
j
 = (a − a )L + (a − a )L + (a − a )L
の形式となり,
ki
ik
j
ij
ji k
jk
kj
i

[(aki − aik )Lj + (aij − aji )Lk + (ajk − akj )Li ]L1 − [(a1 j − aj1 )Lk + (ajk − akj )L1 + (ak1 − a1k )Lj ]Li
− [(a1k − ak1 )Li + (aki − aik )L1 + (ai1 − a1i )Lk ]Lj + [(a1 j − aj1 )Li + (aji − aij )L1 + (ai1 − a1i )Lj ]Lk = 0
なので Cijk L1 = C jk1Li + Cki1Lj − C ji1Lk の関係が成り立ち,任意の i, j, k について Cijk = 0 となる。
以上より, n (≥ 3) 次元空間内のどの点にも q = Ldx = 0 で辿り着けない任意の近傍の点が存在する
とき,全ての点で任意の i, j, k について Cijk = 0 となることが示された。
以下では, Cijk = 0 のとき,積分分母( 1 / µ )が存在すること(Frobenius の積分可能性定理の十分条
件)を示す。( Cijk = 0 が積分分母をもつ必要条件であることは上記 B(補)参照)
8
全ての点で任意の i, j, k について Cijk = 0 のとき,関数 µ について,以下の関係が確認できる。
∂L ∂L Lj
∂L ∂Lj 1 ɺ
1 ∂L ∂Lj ɺ
µɺ
)fj = −∑ j [( 1 − i )
) ]fj
= −∑ j ( 1 −
+( i −
µ
L1 ∂xj ∂x1
∂xi ∂x1 L1Li
∂xj ∂xi Li
=−
1 ∂L1 ∂Li
1 ∂L ∂Lj ɺ
1 ∂L ∂Lj ɺ
(
−
)∑ j Ljfɺj − ∑ j ( i −
)fj = −∑ j ( i −
)fj
L1Li ∂xi ∂x1
Li ∂xj ∂xi
Li ∂xj ∂xi
すなわち,任意の i について, Liµɺ = −µ∑ j (
∂µL
∑ j ( ∂x i −
j
∂Li ∂Lj ɺ
)fj の関係がある。そこで,
−
∂xj ∂xi
∂µLj ɺ
∂L ∂Lj ɺ
∂µ
∂µ
)fj = ∑ j µ ( i −
)fj + ∑ j
Lifɺj − ∑ j
Ljfɺj
∂xi
∂xj ∂xi
∂xj
∂xi
= −Liµɺ + Li (∑ j
∂µ ɺ
∂µ
(∑ j Ljfɺj ) = 0
fj ) −
∂xj
∂xi
任意の経路 x = f (u) について上の関係が成り立つためには,∑ j Ljfɺj = 0であるので,
∂µLi ∂µLj
−
= kLj or = 0 であればよい。ところが,
∂xj
∂xi
 ∂µLi ∂µLj
k = 0 or
 ∂x − ∂x = kLj

 Li + Lj = 0
 j

i
→

L + L = 0 →  L + L = 0 → L = (L ) = 0 の場合のみ成立。
j
i
k
i
 ∂µLj − ∂µLi = kL
 i

i
∂xj
−( Lj + Lk ) = 0

 ∂xi
∂µLj
∂µL ∂µLj
∂µLi
すなわち,全ての点で任意の i とj について, i −
= 0 となり,∴ (
)=(
)
∂xj
∂xi
∂xj
∂xi
確かに, 1 / µ が積分分母となり, µLdx が全微分可能となる。
以上をまとめると, n (≥ 3) 次元空間内の任意の点 x について,この点から q = Ldx = 0 で到達できな
い任意の近傍の点があるとき,全ての点で任意の i, j, k について Cijk = 0 となる。このとき, q = Ldx
は積分分母をもつ。
9