16-D-0675 2016 年 11 月 11 日 株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。 投資法人みらい (証券コード:3476) 【新規】 長期発行体格付 格付の見通し A+ 安定的 ■格付事由 (1) 本投資法人は 15 年 12 月 4 日に設立され、現時点で 16 年 12 月 16 日に東京証券取引所(不動産投資信託 証券市場)に上場を予定している総合型の不動産投資法人(J-REIT)。資産運用会社である三井物産・イ デラパートナーズ(MIP)のスポンサーは、三井物産グループにおいてアセットマネジメント事業を推進 する三井物産アセットマネジメント・ホールディングス(三井物産 AM、出資比率 50%)と、独立系アセ ットマネジメント会社であるイデラキャピタルマネジメント(イデラキャピタル、出資比率 50%)。三井 物産グループの幅広い分野における事業知見やネットワークからなる総合力と、イデラキャピタルにおい てこれまでの投資運用実績を通じて蓄積された経験・ノウハウを活用しながら多様なアセットカテゴリー への投資を行うこととしている。 (2) 三井物産は国内を代表する総合商社である。総合商社ならではの多岐にわたる事業領域とネットワークを 活用し、豊富なアセットカテゴリーへの投資実績を有する。05 年には国内初の物流施設特化型 J-REIT を 立ち上げ、これまでに安定した運用実績を積み上げてきており、本投資法人の運営においても当該 JREIT における長年の投資・運営実績が生かされることが期待される。一方、イデラキャピタルは累積で 8,000 億円超のアセットについて投資運用実績を有する。近年では中国を拠点とするフォースン・グルー プの資本傘下に入ったことを契機として、フォースンの豊富な資金力を背景に大型物件への投資が目立つ。 不動産の潜在価値に着目したバリューアップを得意とし、オポチュニスティック型アセットへの投資運用 において実績を有している。 (3) 本投資法人が上場の際に取得を予定している物件はイデラキャピタルグループからの取得を中心に 15 物 件、取得金額総額 1,007 億円。上場時のポートフォリオは、安定性に配慮してコアアセット(オフィス・ 商業施設・ホテル)のみで構成され、エリア別では東京圏の比率が 82.2%と比較的高い。本投資法人の 上場時のポートフォリオの規模は、他の総合型 J-REIT と比較して相対的に小規模である。本投資法人で は、両社のスポンサーパイプラインと、将来的にはキャッシュフローの増加やマーケットの拡大が期待で きると判断される「グロースアセット」の組み入れをも企図した成長戦略を推進することによって、中期 的に資産規模 5,000 億円を目指している。JCR では、上場後の両スポンサーが得意とするカテゴリーの物 件取得による資産規模の拡大状況、キャッシュフローの安定したポートフォリオの運営状況、両社の得意 とする分野の融合が本投資法人の運営にどのように生かされるのか、J-REIT として安定した運用状況に ついてのトラックレコードの積み上げ、などについて注目しており、これらの達成状況を格付に反映して いく。 (4) 上場時に予定している借入金については、メガバンクを中心に 9 金融機関から調達する予定である。三井 物産の信用力を背景に好条件で借入金の調達が予定され、また、平均調達年限は約 7 年の長期化と返済期 限の分散化が図られている。上場直後の LTV(総資産ベース)は、おおむね 40%程度の保守的な水準と なる見込みであり、上場後の資産規模拡大と分散化を進める中、PO を交えてどのように LTV をコントロ ールしていくのかについて注目している。 1/4 http://www.jcr.co.jp/ (5) 以上の、①上場時の資産規模が相対的に小さい点、②両スポンサーからの内部成長、外部成長および財務 面等に関わるサポート体制、③上場後の保守的なレバレッジコントロール水準を含めた財務方針、④現時 点においては非上場の J-REIT であり、今後、予定されている上場に伴う一連の手続の履践状況のみなら ず、上場後に期待される不動産運用、財務運営等に係る判断、を総合的に勘案して、本投資法人の長期発 行体格付を「A+」 、見通しを「安定的」と評価した。 【ポートフォリオの分析】 本投資法人では、オフィス・商業施設・ホテル・居住施設および物流施設を「コアアセット」としてポー トフォリオの中核に位置付けている。上場時のポートフォリオはコアセットのみで構成され、タイプ別の内 訳はオフィスで 68.6%、商業施設で 21.8%、ホテルで 9.7%となっている。 上場後は安定性を重視しながらも、収益性の増加が期待できると判断される「コアプラスアセット」や取 得競争が限定的で将来的なマーケットの拡大が期待できると判断される「ニュータイプアセット」を将来的 に一定程度組み入れていく。「コアプラスアセット」のアセットタイプは、オフィス・商業施設・ホテル・ 居住施設および物流施設、「ニュータイプアセット」のアセットタイプは、ヘルスケア・病院・教育施設・ インダストリアル不動産・インフラ施設・観光施設・森林・海外不動産から構成される。「コアプラスアセ ット」はイデラキャピタルが得意とするアセットカテゴリー、「ニュータイプアセット」は三井物産が得意 とするアセットカテゴリー。両スポンサーの強みを最大限に生かして外部成長を図る。将来的には資産規模 5,000 億円超の段階となった場合に「コアアセット」で原則 80%以上、 「コアプラスアセット」と「ニュータ イプアセット」から構成される「グロースアセット」で 20%以下とし、安定性と成長性のバランスに配慮し ながらポートフォリオの構築を図る方針である。 上場時のポートフォリオは 15 物件、取得金額総額 1,007 億円。ポートフォリオ中、「品川シーサイドパー クタワー」で取得価格比約 31.8%、 「川崎テックセンタービル」で約 23.0%、上位 2 物件で 54.8%を占める ことから、物件の集中度がやや高い。ただし、ポートフォリオの約 68.6%を占めるオフィスについては、マ ルチテナント化により一定程度分散化が図られ、一棟貸しが中心の商業施設およびホテルについては、長期 の定期借家契約により安定性に配慮されている。 今後の外部成長においては、MIP 独自のソーシング・ルートに加え、三井物産グループとイデラキャピタ ルのソーシングを活用していくものとしているが、多様なルートによる取得機会の最大化を図りながら、ど のように外部成長が進められていくのか、また、本投資法人が掲げる投資方針に適った物件の取得が実現さ れていくのかについて注目している。 ポートフォリオ稼働率は 97.7%と高い。個別物件では過去に大口テナントの退去によって稼働率が大きく 低下したものの、イデラキャピタルによる木目細かいリーシング戦略が奏功し大幅に稼働率が回復した物件 も見られる。イデラキャピタルによるテナント対応等に係る経験とノウハウが、本投資法人のポートフォリ オ運営の下支えとなろう。 【三井物産アセットマネジメント・ホールディングスの概要】 三井物産アセットマネジメント・ホールディングスは、国内不動産アセットマネジメント事業を推進する 戦略子会社として 16 年 4 月に設立された。新たな不動産ファンド運営会社の新規設立や M&A を通じて更な る事業拡大を目指している。 三井物産グループは、総合商社として様々な事業分野における運営実績を有し、また、多様なアセットタ イプの運営事業についてグローバルに展開している。三井物産グループが有する様々なオペレーショナルア セットの運営実績に基づく事業知見や広域的なネットワークや顧客基盤が本投資法人の内部成長と安定した ポートフォリオ運営の下支えとなることが想定される。 2/4 http://www.jcr.co.jp/ 【イデラ キャピタルマネジメントの概要】 エムケーキャピタルマネージメントとアトラス・パートナーズの合併により 12 年 5 月に誕生した独立系 アセットマネジメント会社。14 年 5 月に中国のフォースン・グループを新たなスポンサーとして迎え入れ、 資産運用事業の更なる拡大を目指している。フォースン・グループは、中国を拠点に多様な事業への投資を 行う複合企業グループ。豊富な資金力を背景に海外大型案件に積極的な投資を展開している。 イデラキャピタルは、コンストラクション機能とリーシング機能の内製化と協業により潜在的な不動産価 値の顕在化および不動産価値の最大化を得意とし、コアファンドからオポチュニスティックファンドまで豊 富な不動産運用実績を有する。 【主要な取得予定物件の概要】 (1) 品川シーサイドパークタワー 本物件は、品川シーサイドフォレスト内に所在する 03 年に竣工した大規模オフィスビル。 本物件が所在する「東品川」ゾーンは、90 年台以降「天王洲アイル」駅周辺および「品川シーサイド」 駅周辺において大規模開発が行われたことにより、オフィスマーケットが形成された。東海道新幹線を含む JR 各線および京浜急行「品川」駅や羽田空港方面へのアクセス性が比較的良好なエリアである。 基準階床面積は約 510 坪あり、レイアウトの自由度が高く、様々なテナントニーズへの対応が可能となっ ている。ゾーン別空調、天井高 2,700 ㎜、OA フロアー(100 ㎜)と設備水準の面での競争力は高く、また、 制震構造・非常用電源による BCP にも対応している物件である。 イデラ キャピタルにより、基準階共用部分のバリューアップ工事や稼働率の大幅な改善がなされた物件 であり、イデラ キャピタルによるバリューアップの代表例ともいえる物件である。 取得予定日:16 年 12 月 16 日 取得予定価格:320 億円(ポートフォリオ比:約 31.8%) (2) 新宿イーストサイドスクエア 本物件は、新宿区新宿 6 丁目の日本テレビゴルフガーデン跡地の大規模再開発により 12 年に竣工した築 浅の大規模オフィスビル。地下鉄「東新宿」駅から徒歩 1 分(直結)および「新宿三丁目」駅から徒歩 6 分 の距離に位置することから最寄駅へのアクセスは良好である。 建物一棟の延床面積は約 50,000 坪、基準階面積は都内でも最大クラスの約 1,789 坪の規模を有し、フレキ シブルなレイアウトへの対応が可能となっている。また、個別空調、天井高 2,850 ㎜、OA フロア(130 ㎜) など、ハイスペックな設備仕様を備え、高いテナント訴求力を有する。 東新宿エリアを代表するオフィスであり、三井物産が開発に関与し、三井物産グループが運用するファン ドから 5%の共有持分の取得を予定している。 取得予定日:16 年 12 月 16 日 取得予定価格:100 億円(ポートフォリオ比:約 9.9%) (担当)杉山 成夫・秋山 ■格付対象 発行体:投資法人みらい 【新規】 対象 長期発行体格付 格付 見通し A+ 安定的 3/4 http://www.jcr.co.jp/ 高範 格付提供方針に基づくその他開示事項 1. 信用格付を付与した年月日: 2016 年 1 1 月 11 日 2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者: 杉 山 主任格付アナリスト: 杉 山 成 夫 成夫 3. 評価の前提・等級基準: 評価の前提および等級基準は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp/)の「格付関連情報」に「信用格付の 種類と記号の定義」 (2014 年 1 月 6 日)として掲載している。 4. 信用格付の付与にかかる方法の概要: 本件信用格付の付与にかかる方法(格付方法)の概要は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp/)の「格付 関連情報」に、 「J-REIT」 (2014 年 6 月 2 日)の信用格付の方法として掲載している。 5. 格付関係者: (発行体・債務者等) 投資法人みらい 6. 本件信用格付の前提・意義・限界: 本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。 本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性 の程度を完全に表示しているものではない。また、本件信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するもので はない。本件信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外 の事項は含まれない。 本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入 手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。 7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者: ・ 格付関係者が提供した業績、経営方針などに関する資料および説明 8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要: JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、 いずれかの格付関係者による表明保証もしくは対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、当該方針が 求める要件を満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。 9. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置: な し ■留意事項 本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、 的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、また は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、 金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因 のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であ って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも のでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として 発行体より手数料をいただいて行っております。JCR の格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。JCR の格付データ を含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。 ■NRSRO 登録状況 JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。米国証券取引委員会規則 17g7(a)項に基づく開示の対象となる場合、当該開示は JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp/en/)に掲載されるニュースリリースに添付していま す。 ■本件に関するお問い合わせ先 情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026 4/4 http://www.jcr.co.jp/
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