輸出企業は国内に 3.5 万社、半数が「減益」

2016/11/10
東京都新宿区本塩町 22-8
TEL: 03-5919-9341
URL:http://www.tdb.co.jp/
特別企画 :「輸出企業」の実態調査
輸出企業は国内に 3.5 万社、半数が「減益」
~ トランプ大統領誕生による保護主義台頭、円高等の影響懸念 ~
はじめに
アメリカ大統領選挙でのトランプ氏の勝利を受け、世界経済全体の先行き不透明感が増してい
る。日本経済も例外ではなく、円相場が短期間に乱高下を繰り返すなど、今後の企業業績への影
響が懸念される。保護主義的な貿易政策を掲げるトランプ氏が勝利したことで、自動車、電機を
はじめとする国内輸出企業への影響は避けられそうにない。
帝国データバンクは、2016 年 11 月 9 日時点の企業概要データベース「COSMOS2」
(146
万社収録)をもとに、直接、間接を含め輸出取引のある企業について、業種別、年商規模別、直
近業績、都道府県別に集計した。
なお、「輸出企業」に関するレポートは 2012 年 8 月 13 日に続いて 3 回目。
調査結果(要旨)
1.
海外との間で、直接または間接に輸出取引を行っていることが判明した企業は国内に 3 万
4870 社にのぼることが判明
2.
業種別では、「製造業」(1 万 5348 社、構成比 44.0%)と「卸売業」(1 万 5132 社、同 43.4%)
で全体の 9 割近くを占めた。業種細分類では、自動車、電気・機械、鉄鋼関連が目立つ
3.
年商規模別では、「1~10 億円未満」が 1 万 5581 社(構成比 44.7%)で最も多く、
「1 億円未
満」(3974 社、同 11.4%)と合わせて全体の過半数が 10 億円未満の中小企業
4.
直近決算および前期決算の当期純損益が判明した 2 万 3667 社について損益状況を見ると、
「減益」が 1 万 1304 社(構成比 47.8%)とほぼ半数
5.
都道府県別では、「東京都」(1 万 895 社、構成比 31.2%)がトップ。以下、「大阪府」(5471
社)、「愛知県」(2276 社)、「神奈川県」(2122 社)、「埼玉県」
(1546 社)が続いた
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2016/11/10
特別企画:「輸出企業」の実態調査
1.
業種別・年商規模別
海外との間で、直接または間接に輸出取引を行っていることが判明した企業は国内に 3 万 4870
社にのぼることが判明。業種別では、「製造業」(1 万 5348 社、構成比 44.0%)と「卸売業」
(1
万 5132 社、同 43.4%)で全体の 9 割近くを占めた。
業種細分類で見ると、自動車、電気・機械、鉄鋼関連が目立つ。年商規模別では、「1~10 億円
未満」が 1 万 5581 社(構成比 44.7%)で最も多く、「1 億円未満」(3974 社、同 11.4%)と合わ
せて全体の過半数を 10 億円未満の中小企業が占めた。
構成比
(%)
473
1.4
業種別
建設業
製造業
15,348
44.0
卸売業
15,132
43.4
小売業
1,018
2.9
432
1.2
2,132
6.1
132
0.4
運輸・通信業
サービス業
不動産業
その他
小計
203
0.6
34,870
100.0
社数
1 産業用電気機器卸
年商規模別
1億円未満
2 一般機械器具卸
801
3 化学製品卸
733
2.1
4 自動車部品付属品卸
557
1.6
5 精密機械器具卸
514
1.5
6 特殊産業用機器卸
504
1.4
7 中古自動車卸
497
1.4
8 鉄鋼・同加工品卸
412
1.2
2.3
9 食料飲料卸
408
1.2
10 金属加工機械卸
404
1.2
構成比
(%)
3,974
11.4
社数
1~10億円未満
15,581
44.7
10~50億円未満
9,223
26.4
50~100億円未満
2,269
6.5
100~500億円未満
2,779
8.0
500~1000億円未満
490
1.4
1000億円以上
554
1.6
34,870
100.0
小計
2.
構成比
(%)
1,375
3.9
業種細分類別
社数
直近業績
直近決算および前期決算の当期純損益が判明した 2 万 3667 社について損益状況を見ると、「減
益」が 1 万 1304 社(構成比 47.8%)を占めており、ほぼ半数の企業が利益水準を落としているこ
とが分かった。年商規模別では、「1 億円未満」の減益比率(50.3%)が最も高く、唯一過半数を
占めており、零細事業者への影響が最も懸念される。
年商規模別
1億円未満
減益
社数
増益
構成比%
社数
合計
構成比%
社数
構成比%
510
50.3
504
49.7
1,014
100.0
1~10億円未満
4,363
48.2
4,686
51.8
9,049
100.0
10~50億円未満
3,690
47.0
4,166
53.0
7,856
100.0
50~100億円未満
1,010
48.6
1,070
51.4
2,080
100.0
100~500億円未満
1,270
47.9
1,382
52.1
2,652
100.0
500~1000億円未満
209
44.4
262
55.6
471
100.0
1000億円以上
252
46.2
293
53.8
545
100.0
47.8
12,363
52.2
23,667
100.0
小計
11,304
※ 直近決算および前期決算の当期純損益が判明した企業が対象
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2016/11/10
特別企画:「輸出企業」の実態調査
3.
都道府県別
都道府県別に見ると、
「東京都」(1 万 895 社、構成比 31.2%)
社数上位 10都府県
がトップとなり、全体の 3 割を占めた。
都道府県
1 東京都
以下、「大阪府」(5471 社、構成比 15.7%)、「愛知県」(2276
社、同 6.5%)、「神奈川県」(2122 社、同 6.1%)、
「埼玉県」
(1546 社、同 4.4%)などが続いた。
構成比
(%)
10,895 31.2
社数
2 大阪府
5,471
3 愛知県
2,276
15.7
6.5
4 神奈川県
2,122
6.1
5 埼玉県
1,546
4.4
6 兵庫県
1,463
4.2
7 静岡県
994
2.9
8 千葉県
866
2.5
9 京都府
757
2.2
10 福岡県
669
1.9
順位
従業員数
(人)
都道府県別 社数・従業員数
構成比
(%)
北海道
北海道
402
1.2
15
24,748
滋賀県
234
0.7
25
25,283
青森県
80
0.2
44
6,923
京都府
757
2.2
9
103,772
岩手県
102
0.3
37
11,106
大阪府
5,471
15.7
2
579,915
宮城県
214
0.6
26
21,291
兵庫県
1,463
4.2
6
148,077
秋田県
104
0.3
36
11,764
奈良県
252
0.7
24
9,272
山形県
136
0.4
32
13,393
和歌山県
175
0.5
28
8,557
福島県
177
0.5
27
19,049
鳥取県
82
0.2
42
4,702
茨城県
305
0.9
20
28,680
島根県
65
0.2
46
4,861
栃木県
265
0.8
22
26,532
岡山県
310
0.9
19
28,175
関東
北陸
中部
順位
構成比
(%)
都道府県
東北
社数
従業員数
(人)
地域
地域
近畿
中国
都道府県
社数
群馬県
326
0.9
17
27,841
広島県
516
1.5
11
74,293
埼玉県
1,546
4.4
5
112,332
山口県
137
0.4
31
12,755
千葉県
866
2.5
8
36,111
徳島県
59
0.2
47
7,494
東京都
10,895
31.2
1
1,933,310
香川県
162
0.5
30
13,253
神奈川県
2,122
6.1
4
241,679
愛媛県
166
0.5
29
16,777
新潟県
444
1.3
14
42,661
高知県
79
0.2
45
4,202
富山県
285
0.8
21
28,076
福岡県
669
1.9
10
72,846
石川県
259
0.7
23
28,413
佐賀県
101
0.3
38
6,635
福井県
374
1.1
16
23,768
長崎県
97
0.3
39
6,711
山梨県
130
0.4
33
12,267
熊本県
121
0.3
34
12,871
長野県
501
1.4
12
64,520
大分県
85
0.2
41
11,805
岐阜県
464
1.3
13
39,475
宮崎県
95
0.3
40
6,627
静岡県
994
2.9
7
122,091
鹿児島県
109
0.3
35
5,346
愛知県
2,276
6.5
3
449,548
82
0.2
42
2,391
三重県
316
0.9
18
25,389
34,870
100.0
-
4,517,587
©TEIKOKU DATABANK, LTD.
四国
九州
沖縄県
合計
3
2016/11/10
特別企画:「輸出企業」の実態調査
4.
まとめ
9 日の円相場は一時 1 ドル=101 円台まで急伸したものの、翌 10 日午前中にかけて 105 円台の
水準にまで戻すなど、パニック的な相場の動きはひとまず落ち着いた格好だ。しかし、為替相場
がこのまま安定的に推移するかは予断を許さない。世界経済全体の先行き不透明感から、円高傾
向に再びシフトする可能性もあるだろう。
「米国第一主義」を掲げ、保護主義的な貿易政策を主張し続けてきたトランプ氏が今回勝利し
たことで、かつての日米貿易摩擦のような事態が再燃することも十分ありうる。米国市場におけ
る対日圧力が高まれば、日本の基幹産業である自動車、電機などの国内輸出企業には大きな打撃
となりかねない。他方、日米貿易不均衡の是正を目指すトランプ氏主導で、米国が対日輸出圧力
をさらに強めてくれば(日本にとっては米国からの輸入)
、国内の輸入企業にとっては新たなビジ
ネスチャンスを生む可能性があるのも事実だろう。
今年 6 月の英国国民投票によるEU離脱決定(Brexit)などもあり、国内輸出企業を取り巻く
環境は厳しさを増している。大手各社の企業業績への影響が懸念されるうえ、大企業からの受注
減等を通じて、体力的な余力に乏しい中小企業への影響は深刻なものとなることも予想される。
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FAX 03-5919-9348
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