新たなホールの整備に向けての提言書

(案)
新たなホールの整備に向けての提言書
平成28年11月
徳島市音楽・芸術ホール整備推進有識者会議
はじめに
~文化芸術の振興と新たなホールの整備に向けて~
国では、文化芸術の振興のための基本的な法律として、
「文化芸術振興基本法(平成
13年12月)」が施行され、「文化芸術の振興にあたっては、文化芸術を創造し享受
することが私たち国民の生まれながらの権利であり、居住する地域にかかわらず等し
く、文化芸術を鑑賞し、これに参加し、またはこれを創造することができるような環
境の整備が図られなければならない」ことが理念として明記されています。
さらに、平成24年6月に施行された「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律(劇
場法)
」では、劇場、音楽堂等に期待される役割や、実演芸術の企画制作、普及啓発、
人材養成、地域社会の維持・共生社会の実現に資する事業など劇場、音楽堂等が行う
事業が明確化されました。
わがまち徳島市においても、伝統芸能である阿波おどりをはじめ、音楽、舞踊、演
劇など、多彩な舞台芸術の分野において、文化団体、文化を愛する市民等が主体とな
って、創作活動、普及活動を展開し、多くの人々が優れた芸術文化に触れる機会の提
供や、徳島らしい文化の創造、文化を通じた交流活動が行われてきました。
こうした私たち市民の文化活動の拠点であり、芸術文化を享受する場であった徳島
市立文化センターは、
徳島県内でも数少ない一定の集客性を持った公共ホールとして、
半世紀もの間、市民の多様な文化活動を支えるという重要な役割を果たしてくれまし
た。しかしながら、文化センターは、昭和38年の開館当初は市民の集会所として建
設されたものであり、芸術文化ホールとしての機能の多くを満たしていませんでした。
このような状況の中、徳島市では、市民や文化団体からの強い要望により、文化セ
ンターに代わる新しい芸術文化施設として、規模や機能を充実させた新たなホールの
整備の検討が行われてきました。これまで長年にわたり、多くの市民、関係者により、
新たなホールについての様々な議論が行われてきましたが、市の方針の変更等により、
今後の整備方針が未定の状況です。
さらに、耐震性の問題による文化センターの利用中止により、現在、徳島市内には、
1,000席以上の客席規模のホールがない状況が続いており、早急なホール整備が必
要不可欠となっています。
そのような喫緊の重要課題に対し、専門的見地から検討を行うため、徳島市から委
嘱を受け、10月11日から始まった徳島市音楽・芸術ホール整備推進有識者会議で
は、11月11日まで計4回の会議を開催しました。
有識者会議での検討のテーマは、
「新たなホール整備についての基本的な考え方」と
「新たなホール完成までの方策」の2点でした。約1か月という短期間の会議でした
が、新たなホールは徳島市にとって必要であるという市の方針と私たち委員の共通認
識のもと、建設的な意見交換を行い、ここに提言書としてとりまとめました。
私たち委員一同は、徳島市の新たなホール整備の具体的な検討に向けて、次のとお
り提言します。
目
次
はじめに
新たなホール整備について
1
基本的な考え方
・・・
1
2
建設場所の選定
・・・
2
3
施設の規模・機能
・・・
2
4
整備手法とスケジュール
・・・
4
新たなホール完成までの方策について
1
文化センターの耐震リニューアル
・・・
5
2
代替ホールの整備
・・・
5
3
その他の方策
・・・
6
・・・
7
おわりに
参考資料
徳島市音楽・芸術ホール整備推進有識者会議開催概要
徳島市音楽・芸術ホール整備推進有識者会議設置要綱
徳島市音楽・芸術ホール整備推進有識者会議委員名簿
新たなホール整備について
1
基本的な考え方
徳島市のホール整備の現状と課題を踏まえ、四国県都のホール施設の状況や最近
の全国のホール整備の状況、他都市の事例等を参考として、県都にふさわしい新た
なホールの一日も早い開館を目指し、効果的・効率的、さらには、迅速的な手法も
視野に入れた整備への早期着手が必要不可欠です。
新たなホール整備の検討に向けては、劇場法の趣旨に基づき、ホールのコンセプ
ト(役割や使命)を明確化することが必要不可欠です。
これまで、市民会議等でも議論され、まとめられてきた新たなホールの基本理念、
基本方針等を継承するとともに、徳島市の将来ビジョンを考える上で、文化の持つ
大いなる力を福祉、教育などさまざまな分野に活用し、社会参加機会の拡大、地域
社会の絆づくり、共生社会の実現へとつなげていく「ソーシャル・インクルージョ
ン(社会的包摂)」という新しい視点をホールのコンセプトとして検討することも重
要となります。
ソ
ー
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ジ
ョ
ン
社会参加
機会の拡大
地域社会の
絆づくり
共生社会
の実現
新
た
な
ホ
ー
ル
- 1 -
創造
交流
鑑賞
市
民
の
芸
術
文
化
の
創
造
拠
点
2
建設場所の選定
新たなホール整備を進めるためには、まず、建設場所を早急に決定することが必
要です。建設場所の選定については、ホールのコンセプトに応じた様々な創造活動、
文化事業が実施可能な施設の規模・機能の要件を満たすことのできる場所であるこ
とはもちろん、徳島市の中心市街地のまちづくりの視点での検討も必要です。
また、ホールは子供から高齢者まで幅広い世代の人々や障害を持つ人も気軽に来
館し、芸術文化に親しむことのできる施設であることから、交通アクセスや周辺環
境は重要な要件となります。特に、中心市街地の中でも、公共交通機関が利用可能
であり、さらに、最寄りの駅等から徒歩による来館が可能な場所であることが望ま
しいと考えます。
3
施設の規模・機能
新たなホールの規模・機能については、これまでの基本方針、施設構成の考え方
を継承することが望ましいと考えます。しかしながら、今後、決定する建設場所の
状況にあわせて、以下の意見を踏まえつつ、詳細な規模や機能を調整する市民参加
の場を設定し、迅速に方針を定める必要があります。
【基本的方向に関する意見】
◆劇場法の趣旨等を踏まえ、徳島市の文化を創造し、発信するための社会的拠点
施設にすること。
◆これまでの基本方針を踏まえ、大ホールに加えて、小ホール、リハーサル室、
活動室等を備え、市民の創造、交流拠点として日常的な活動ができる施設とし
て整備すること。
◆障害を持つ人も持たない人も共に交流できる市民のためのホールにすること。
◆舞台芸術だけでなく、美術など他の文化でも活用できるようにすること。
◆専門的な人材を配置し、自主企画事業等を実施することにより、人材を育成で
きるホールにすること。
◆以上の趣旨を踏まえ、
「音楽芸術ホール」の呼称についても見直しを検討するこ
と。
【ホールに関する意見】
◆大ホールは多目的に利用できるものとなるが、音楽や芸術公演における音響に
充分配慮すること。
◆客席規模に関してはこれまでの市民会議等での議論を踏まえつつ、以下の指摘
についても考慮すること。
- 2 -
・一線級の芸術鑑賞機会の提供や、県都にふさわしい規模として1,800~
2,000席程度が考えられる。
・一方、市民活動の発表の場としては、1,000~1,500席程度の規模
が使いやすいとの意見がある。
・小ホールについては、他施設で多い200~300席規模ではなく、採算性
が高いとされる500席規模のホールについても検討すること。
◆多様な利用ニーズに対応できるような利用形態、貸し出し形態を工夫できるよ
うな構造についても検討すること。
◆客席規模の選定にあたっては、利用者のニーズと需要の調査、建設場所の諸条
件、建設費、維持管理経費を確認して、市民参加のもとで総合的に決定するこ
と。
- 3 -
4
整備手法とスケジュール
ホール整備の手法については、徳島市が直接発注を行う「直営方式」、民間の資金
や経営能力・技術力(ノウハウ)を活かし、公共施設の設計・建設・改修・更新や
維持管理・運営を行う「PFI方式」、民間の資金により施設を整備する「PPP方
式」が考えられます。
有識者会議において、市から示された一般的な整備スケジュールは、従来型の「直
営方式」によるもので、建設候補地の選定から基本構想、基本計画の策定に2年か
ら3年を要し、さらに、設計、建設工事に約6年の期間が必要となっています。
一方、他都市の取組事例で示された「PFI方式」や「PPP方式」のプロセス
については、「直営方式」よりも迅速な対応が図られる可能性があります。
現在、早期のホール開館を目指すことが、重要な課題であること、さらに、国が
進めている公共施設等の整備への民間活力の優先的な検討の考え方などを考慮する
と、
「PFI方式」や「PPP方式」を視野に入れた検討を進めることが必要です。
また、これまで長年にわたり検討を行い、まとめられたホールの基本理念及び基
本方針等を継承し、策定された基本構想、整備計画を必要な修正のみとすれば、整
備期間を短縮することが可能となります。
【ホール整備のプロセス案】
・PFI方式等を導入し、民間の資金・経営能力・技術力を活用するとともに、
設計・工事期間を短縮する。
・これまでの基本方針等を継承し、基本構想、整備計画は、必要な見直しを行
うことにより、期間の短縮が可能となる。
平成 29 年度
平成 30 年度
・民間活力導
・建設候補
入可能性の
地の選定
調査
・基本構想、
整備計画の ・実施方針の
策定等
見直し
平成 31 年度
平成 32 年度
事業者の
選定
平成 33 年度
平成 34 年度
設計・建設工事
(提案募集・審
査・契約締結
等)
平成 35 年度
開
館
管理運営計画の策定・条例の制定・開館準備等
- 4 -
新たなホール完成までの方策について
これまで市民の文化活動の拠点であった文化センターの利用中止、さらに、新ホ
ール整備の計画見直しにより、徳島市内に1,000席規模の公共ホールがない現
在の状況は、私たち市民にとって、特に、子供たちにとって、多大な社会的損失で
あり、早急な対応が必要であることは有識者会議委員全員の共通認識として、この
課題について、検討・議論を行いました。
1
文化センターの耐震リニューアル
文化センターについては、冒頭でも述べたとおり、芸術文化ホールとして建設さ
れた施設ではないことから、舞台の奥行の狭さ、側舞台の問題、大型機材搬入口の
不便さなど、数多くの問題点が指摘されてきました。例え、改修を行い、耐震性が
確保されたとしても、建設後相当経過しているコンクリート自体の劣化も想定され、
ホールとしての機能が充分とは言えないものとなることが明らかであり、耐震リニ
ューアルは必要な経費を考慮すると、効率的な方策とはならないと考えます。
2
代替ホールの整備
文化センターの耐震リニューアルに代わる方策として、代替ホールの整備につい
て、札幌市民ホール(わくわくホリデーホール)のリース方式による事例をもとに、
徳島市での整備の可能性について、様々な課題等を含め、検証を行いました。
代替ホールについては、文化ホールとしてではなく、阿波おどりの練習場など多
目的なコミュニティホールとして整備し、新たなホール完成後の活用方法を明確化
し、計画的に利用すれば、徳島市にとって無駄な投資にはならないのではないかと
いう意見も出されました。
阿波おどりは、徳島市が世界に誇る伝統芸能であり、阿波おどり期間中のホール
公演や日常的な練習の場所の確保などの課題に対応できるというメリットも考えら
れます。
しかしながら、代替ホールの整備にも相当の経費(札幌市で約20億円)がかか
ること、また、約2年から3年程度の整備期間が必要であること、札幌市と徳島市
では、新たなホール整備の計画状況や需要面での相違があることなどから、代替ホ
ールの費用は新たなホール整備にかけるべきであり、空白期間を代替するホールに
ついては整備する必要はないとの意見が多くを占めました。
- 5 -
このようなことから、代替ホール整備の必要性については、徳島市が取り組む新
たなホールの完成時期等に深く関わるものと考えられることから、まずは、新たな
ホール整備に向けて、早期に着手し、具体的な検討を進めていくことが妥当と考え
ます。
3
その他の方策
現在、徳島市内に1,000席以上のホールのない状況を踏まえ、新たなホール
完成までの方策を検討する上で重要なことは、これまで文化センターを拠点として
活動してきた多くの文化団体、そして、イベント事業者等のニーズを把握し、効果
的な支援策を実施することです。
さらに、ホールのある県内の市町全体で協調していくこと、また、徳島市内や近
傍の他施設の現状把握や利用者のニーズを確認し、文化センターの舞台備品の貸し
出しや改修方法の検討など、徳島市として可能な対応策を検討していくことが考え
られます。
また、新たなホールの完成までの間、徳島市が中心となり、公共・民間ホールへ
の連携・協力を求め、文化団体等に対する支援策を実施することも必要不可欠です。
- 6 -
おわりに
私たち徳島市音楽・芸術ホール整備推進有識者会議は、徳島市が進める新たなホー
ル整備について、また、完成までの方策について、限られた時間ではありましたが、
多くの議論を経て、提言書としてまとめることができました。
議論の中で、市民への「音楽芸術ホール」への必要性や理解が得られていないこと
から、
「市民ホール」、
「文化ホール」という名称についても考慮すべきとの意見もあり、
本提言書では、あえて、「新たなホール」という表現で統一させていただきました。
今後、徳島市において新たなホール整備への具体的な検討が進められる過程におい
ては、多くの市民に対して理解が得られるよう積極的な情報提供を行っていく必要が
あると考えます。
また、新たなホールは、徳島市民のためのホールであり、かつ、県都徳島市のホー
ルでもあることから、整備にあたっては、県市連携、協調の可能性についても十分検
討するよう要望します。
最後に、徳島市民にとって、文化活動や鑑賞の場であり、さらに、文化を通じて人
と人が交流し、地域社会の絆づくりの場となる「新たなホール」の早期開館を目指し
た迅速な取組みを期待します。
- 7 -
参考資料
徳島市音楽・芸術ホール整備推進有識者会議開催概要
開 催 日
議
題
等
第1回
本市におけるホール整備の現状と課題
平成 28 年 10 月 11 日(火) ・これまでの新ホール整備の取組み
午後 1 時 30 分から
・音楽・芸術ホール整備の検討に向けて
午後 3 時 15 分まで
・文化センターについて
・文化センター耐震リニューアル結果
第2回
新たなホール整備検討に向けての考え方
平成 28 年 10 月 25 日(火)
新たなホール完成までの方策について
午後 5 時 30 分から
・新たなホール整備の検討について
午後 7 時 15 分まで
・他都市の公共ホール整備の状況
第3回
平成 28 年 11 月 2 日(水)
午後 3 時 30 分から
午後 5 時まで
第4回
平成 28 年 11 月 11 日(金)
午前 10 時から
有識者会議からの提言について
正午まで
新たなホール完成までの方策について
・代替ホールの整備について
・その他の方策案について
有識者会議からの提言内容について
徳島市音楽・芸術ホール整備推進有識者会議設置要綱
(設置)
第1条 徳島市中心市街地活性化推進本部(以下「推進本部」という。)設置要綱第5
条の規定に基づき、徳島市音楽・芸術ホール整備推進有識者会議(以下「有識者会
議」という。)を設置する。
(所掌事務)
第2条 有識者会議は、音楽・芸術ホール整備の推進方策について専門的見地から検
討し、推進本部に提言を行う。
(組織)
第3条 有識者会議は、別表に定める委員をもって構成する。
(任期)
第4条 委員の任期は、本要綱の施行日から推進本部を解散する日までとする。
(委員長等)
第5条 有識者会議に委員長を置き、委員の互選により選出する。
2 副委員長は、委員の内から委員長が指名する。
3 委員長は、会務を総理し、有識者会議を代表する。
4 副委員長は、委員長を補佐し、委員長に事故があるとき又は委員長が欠けたとき
は、その職務を代理する。
(会議)
第6条 会議は、委員長が招集し、その議長となる。
2 委員長は、必要があると認めるときは、推進本部長と協議の上、委員以外の者を
会議に出席させることができる。
(守秘義務)
第7条 委員は、その職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後
も同様とする。
(庶務)
第8条 有識者会議の運営に関する事務は、市民環境部において処理する。
(その他)
第9条 この要綱に定めるもののほか、有識者会議の運営等に関し必要な事項は、委
員長が別に定める。
附 則
この要綱は、平成28年9月30日から施行する。
別表
(敬称略、50音順)
氏
名
所
属
等
浅香
寿穂
生駒
元
徳島交響楽団 専務理事
大谷
博
公益財団法人徳島経済研究所
田村
典子
四国大学生活科学部 教授
林
茂樹
徳島市都市デザイン委員会
会長
檜
千尋
一般社団法人現代舞踊協会
四国支部長
細束 真由美
徳島県演劇協会 顧問
上席研究員
特定非営利活動法人阿波グローカルネット
村崎
正人
徳島文理大学 理事長
森
惠子
公益財団法人阿波人形浄瑠璃振興会
山中
英生
徳島大学理工学部
吉森
章夫
徳島県音楽協会 会長
教授
会長
副代表理事兼事務局長
徳島市音楽・芸術ホール整備推進有識者会議委員名簿
(敬称略、50音順)
氏
名
所属・職名
浅香
寿穂
生駒
元
徳島交響楽団
大谷
博
公益財団法人徳島経済研究所
田村
典子
四国大学生活科学部
林
茂樹
徳島市都市デザイン委員会
会長
檜
千尋
一般社団法人現代舞踊協会
四国支部長
細束 真由美
徳島県演劇協会
備 考
顧問
専務理事
上席研究員
教授
特定非営利活動法人阿波グローカルネット
副代表理事兼事務局長
村崎
正人
徳島文理大学
理事長
森
惠子
公益財団法人阿波人形浄瑠璃振興会
山中
英生
徳島大学理工学部
吉森
章夫
徳島県音楽協会
教授
会長
会長
副委員長
委員長