JICA ジュニア専門員の募集始まる

JICA ジュニア専門員の募集始まる
国際協力機構(JICA)専門家をはじめ、
将来的に専門技術を生かして開発途上国に技術移転をしたり、
制度や組織の改善に貢献したりする人材を育成する
「ジュニア専門員制度」の 2017 年度募集が、
いよいよ 11 月初旬からスタートする。
国際協力の最前線で活躍したいと志す若者に
現場の業務を経験する機会を提供し、
夢の実現を後押しする同制度では、実際にどのような成長が得られるのか。
ジュニア専門員の OB や現役生たちが、
自身の経験について振り返る。
>>> ジュニア専門員OB・OGに聞く
<聞き手:JICA 国際協力人材部 高島 宏明部長>
実務を通じたキャリアアップ
現場経験とネットワークが財産に
募集は分野やテーマごとに絞って
得るにはジュニア専門員しかない
行っており、特に注力しているのが、
と思い、応募を決めました。
̶ 国際協力機構(JICA)を含む
教育や保健のほか、平和構築、ジェ
この分野に興味を抱いたきっか
開発業界では、現在、優秀な若手人
ンダーなど、ニーズがありながら人
けは、セネガルでの協力隊活動で
材の確保がこれまで以上に重要とな
材の層が少ない分野です。また、フ
す。現地の人々が、たくましく生
っています。国際協力人材部は、ま
ランス語圏やスペイン語圏に強い人
活を営む一方、経済的なぜい弱さ
さにそうした人材の育成と確保に取
材も少ないため、こうした人材も育
から社会環境などのネガティブな
り組んでいるわけですが、その一つ
てていきたいと考えています。
変化に影響を受けやすいことを感
として「ジュニア専門員制度」があ
その点で見ると、お二人ともアフ
じ、以来、「開発途上国の発展に
ります。
リカのフランス語圏で青年海外協力
は、経済活動の活性化が必要」だ
この制度は、途上国開発に貢献で
隊として活動した後、ジュニア専門
と考えるようになりました。
きる一定水準の専門性と職務経験を
員に応募なさっていますね。何がき
そのために具体的に何をすべき
持つ若手人材にJICAの業務を体験し
っかけだったのですか。
てもらうことによって、実践的な能
阿部:私は、もともと開発途上国
か考え始めたころ、世間ではちょ
力を向上させ、JICA専門家や将来的
の森林破壊の問題に興味があった
に国際協力専門員などへとキャリア
ので、大学で林学を専攻した後、
アップしてもらうことを目的として
協力隊としてニジェールで植林活
います。従来は国内外で3年間の実
動に従事しました。帰国後、3年
務研修を行っていましたが、2012年
ほど社会経験を積んでから、今度
から始まった新制度では、JICA本部
はシニア隊員としてセネガルで村
を中心に最長1年6カ月の実務研修
落開発分野の活動に従事しました。 そこで3年ほど勤務しましたが、
スタートは協力隊
の後に、長期専門家や企画調査員と
その時に、当時のセネガル事務所
して海外派遣を行っています。
長からジュニア専門員を勧められ
国際協力機構(JICA) 国際協力人材部長 高島 宏明氏
たのが応募のきっかけです。
開発業界でキャリアを形成する
ためには、留学という選択肢もあ
りますが、ジュニア専門員は若い
うど、社会的起業家や民間企業が
開発途上国で社会的な価値を生み
出す取り組みに関心が高まりつつ
ありました。そこで、自分も民間
セクターから自分の問題意識に取
り組みたいと考え、日本へ帰国後、
自動車関連の商社に就職しました。
民間セクターを支援する行政の役
割に対する関心が大きくなり、そ
れに取り組むにはどうするか調べ
た結果、この制度を見つけたとい
うわけです。
うちに専門家として海外へ行く機
JICAならではの人脈を形成
会を得られる点が魅力的でした。
̶ジュニア専門員として着任後は
周囲との競争に勝ち上がり、キャ
どのような業務を担当されたのです
リアを積んでいくためにも、ジュ
か。
ニア専門員を通じて現場経験を積
阿部:私は、地球環境部の森林グ
み、自信をつけたいと思いました。 ループに配属され、職員の方と同
金子:私の場合は、開発途上国の
民間セクター振興に携わる機会を
じようにいくつかの案件の進捗管
理を担当しました。中でも、当時、
ドミニカで新たに立ち上げられた
流域管理プロジェクトでは、プロ
ジェクトの枠組みを作る事前調査
(有)アイエムジー アナリスト/
2010∼13年 JICAジュニア専門員
金子 万里子氏
JICA 地球環境部 森林・自然環境グループ
自然環境第二チーム 特別嘱託/
2005∼07年 JICAジュニア専門員
阿部 真士氏
にも同行し、案件の形成から実施
に至る一連のプロセスに関わり、
多くのことを学ぶことができまし
た。
当時のジュニア専門員制度は、
まだ現行の新制度に改編される前
だったため、地球環境部で1年間
業務に携わった後、海外研修の位
置付けでケニアに赴任しました。
現地の行政官らを相手に仕事をす
る専門家の方々を目の当たりにし、 ら特別嘱託として再びJICA地球
ちに身に付けておくといいと思い
村の人々と活動していた協力隊の
環境部で働いています。
ます。また、私は日本の大学で林
ころとは仕事の内容や進め方が全
金子:私は、コートジボワールで
学を、英国留学中に農村開発を学
く異なるのだと実感しました。
自分が立ち上げた案件に引き続き
びました。複数の専門性を持つこ
金子:私の配属先は、産業開発公
携わるために、その案件を実施し
とも、大きな強みになります。
共政策部でした。ナイジェリアの
ている現在のコンサルティング企
金子:私は、「開発途上国におけ
一村一品プロジェクトなど、民間
業に就職しました。ジュニア専門
る民間セクターの振興と経済の活
セクター振興に関わりました。当
員時代にJICA独自の仕事の進め
性化」を軸に、その時々に自分が
時の上司は、ジュニア専門員の成
方やモノの見方などを学んだこと
持つ問題意識に関する経験を積め
長を常に考え、私たちの疑問にも
も、今、JICA事業を進める上で
る進路を選んできました。そうし
細やかに答えて下さったほか、一
大いに役立っています。
た決断が今にどうつながっている
人での現地出張や部内での自主勉
̶最近は開発コンサルティング会
かを自分の中で整理しておけば、
強会開催など、多くの成長の機会
社がプロジェクトの実施を担う案件
ジュニア専門員に応募する際も説
をいただきました。
も増えていますし、途上国開発にお
得力が出てくるはずです。
現地経験としては、ルワンダで
ける民間セクターの重要性はますま
また、阿部さんの言う通り、語
一村一品プロジェクトに専門家と
す高まっています。そうした中、金
学力は大切です。現地政府の役人
して派遣された後、企画調査員と
子さんのように民間の立場から国際
など、意思決定のキーマンと議論
してコートジボワールに赴任し、
協力に関わり続けてくれる人の存在
をする際、双方の主張を無事に着
案件の立ち上げにも参画しました。 は嬉しいですね。
地点に落ち着かせられるかどうか
各分野のスペシャリストたちと出
は語学力がカギを握るからです。
会うなど、JICAにいるからこそ
自分の歩みを整理しておく
私はジュニア専門員時代に職員向
築けた人脈は、今の自分の大切な
̶これからジュニア専門員を目指
けの語学研修に参加し、語学力を
財産となっています。
す人に、
アドバイスをお願いします。
磨きました。
̶現在はどのようなお仕事をされ
阿部:私は、協力隊の研修でフラ
̶ありがとうございました。お二
ているのですか。
ンス語を習得したことが強みとな
人には今後もさまざまな現場で活躍
阿部:ケニアから帰国後、英国へ
っていますが、逆に、英語圏の現
していただき、ぜひジュニア専門員
留学し、その後は企画調査員や専
場では苦労もあります。できるこ
を目指す人の良いモデルになってい
門家として海外で勤務し、昨年か
となら、必要な語学力は学生のう
ただきたいと思います。
>>> 現 役 生 の 声
平和構築分野の専門家を目指して
初めてJICAの国際協力事業を
盤・平和構築部 平和構築・復興
目にしたのは、大学卒業後に在ボ
支援室でジュニア専門員として働
スニア・ヘルツェゴビナ日本大使
いています。現在は、主にウガン
館で派遣員として勤務していた時
ダ北部にある紛争影響地域や南ス
のことです。もともと政府開発援
ーダン難民の受け入れ地域で、地
助(ODA)や平和構築には関心
方行政官の能力強化プロジェクト
ったりすることもあり、これら業
を持っていたのですが、JICA専
に関わっています。
務を通じてJICAの平和構築に携
門家の方々が紛争の影響を受けた
同プロジェクトでは、地域住民
わる職員や専門家、コンサルタン
コミュニティーの復興や民族間の
のさまざまなニーズを行政サービ
トの方々とネットワークを築きつ
融和に向けて汗を流す姿を間近に
スに反映するため、JICA専門
つ、彼らの知見・経験を学んでい
見たのを機に、「JICAの平和構
家、現地の行政官、JICA本部の
ます。
築事業の現場に携わりたい」とい
関係者らと協議を重ねています。
将来は、さまざまな国・地域で
う目標をはっきりと意識するよう
また、プロジェクトの進捗管理に
平和構築プロジェクトの一端を担
になりました。
も携わっており、日々、JICAプ
える人材となり、JICAの平和構
その後、ボスニアやクロアチア
ロジェクトの運営・実施に関する
築支援に長く関わっていきたいと
で大使館が実施するODA事業に
実務を学んでいるところです。
考えています。そのためにも、ジ
携わりながら実務経験を積んだ
さらに、JICA本部で平和構築
ュニア専門員として日々の業務か
後、米国の大学院への留学を経
に関する会議に参加したり、セミ
ら多くを吸収し、専門家としての
て、昨年8月よりJICA社会基
ナーの開催準備や研修業務に携わ
第一歩を踏み出したいです。
JICAジュニア専門員 木村
みさきさん(中央)
国際協力機構
(JICA)ジュニア専門員 2017年度第1回募集要項
■ 募集ポスト
募集要項をご確認ください。
(11月初旬に掲載予定)
■ 募集人数
10人程度
■ 主な応募資格
・応募分野の専門性と、4年以上の実務経験を有すること
(ただし5年以上が望ましい)
・国連ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)、
開発コンサルタント、NGO職員、青年海外協力隊員などで
1年以上、海外での開発援助に関する業務経験を有すること
・大学卒業またはこれと同等以上の学力を有すること
・外国語能力(英語、フランス語、スペイン語のいずれか)を
有すること
・大学卒業後15年未満が望ましい
※詳細は募集要項をご確認ください。
■ 応募方法
JICAホームページで募集要項をご確認ください。
https://www.jica.go.jp/recruit/jrsenmonin/information.html
■ 募集期間
2016年11月初旬∼12月1日(木) 正午必着(日本時間)
■ 研修期間
2017年4月1日∼2018年9月30日
■ 募集担当部署
独立行政法人国際協力機構 国際協力人材部
人材養成課 ジュニア専門員係
TEL 03-5226-6794/FAX 03-5226-6316
E-mail [email protected]
※お問い合わせは、
ホームページ情報をご確認の後にお願いします。