米大統領選挙でのトランプ氏の勝利と 新興国への影響

楽読
(ラクヨミ)
2016年11月10日
Vol.
1,163
米大統領選挙でのトランプ氏の勝利と
新興国への影響
11月8日の米大統領選挙で、共和党のドナルド・トランプ氏が大方の予想に反して勝利しました。トランプ氏
優勢との途中経過が伝わった9日のアジアでは、同氏の政策の中でも過激なものが注目され、米政治・経済
の先行き不透明感などから、市場が大きく動揺しました。しかし、結果確定後の米国では、大規模財政支出
など、景気押し上げにつながる政策の方が注目を集め、関連セクターを牽引役に株式相場が続伸しました。
保護主義的なトランプ氏の姿勢を踏まえると、メキシコや中国、韓国など、貿易面で米国とのつながりが強
い新興国には、マイナスの影響が及ぶ可能性があります。中でもメキシコについては、米国への不法移民の
流入などを問題視して、トランプ氏が批判的な発言を繰り返してきたことから、特に大きな影響が懸念されて
います。このため、通貨ペソは9日に対米ドルで大幅下落となりました。ただし、トランプ氏のあまりに極端な
政策については、大統領選挙と同時に行なわれた議会選挙において、共和党が上下両院の過半数を維持
したといえども、議会の同意を得られる可能性は低いとみられます。こうしたこともあり、9日は、メキシコや、
選挙の途中経過で市場心理が大きく揺さぶられたアジアを除くと、新興国市場の動揺は限定的でした。
また、従来の米政権は、地域紛争などへの関与をきっかけに、ロシアとの関係が悪化していましたが、トラ
ンプ氏が「米国第一主義」を掲げ、内向き志向であることを考えると、新政権はむしろ、ロシアと実務的な関
係を築く可能性があります。さらに、資源分野では、トランプ氏の掲げるインフラ投資が注目されたことなどか
ら、9日に鉄鉱石の価格が上昇しました。一方、トランプ氏の規制緩和方針が米シェール・オイルの生産拡大
につながる可能性があることなどから、原油価格は9日に一時、大きく下落したものの、その後、米株価の上
昇を受けて投資家のリスク回避姿勢が和らぐと、下げを埋め、小反発で引けました。
なお、米新政権の誕生に伴なう先行き不透明感などから、今後、市場に動揺が走る場合、新興国の中央
銀行が利下げを見送るなど、政策姿勢をより慎重にするなどの対応が想定されます。特にメキシコの場合、
利上げの可能性が既に示唆されています。一方、米新政権がインフラ投資を中心とした大規模な財政支出
を実現させる場合には、米国や世界の景気押し上げにつながり、新興国にも恩恵が及ぶと期待されます。
主要新興国・地域の通貨(対円)騰落率
主要新興国・地域の株価騰落率
(2016年11月9日、ニューヨーク市場、前日比)
-8
(%)
-6
-4
-2
0
2
4
エジプト・ポンド
インド・ルピー
台湾ドル
(2016年11月9日、前日比)
-4
(%)
-2
0
2
4
ロシア
ご参考:
円は対米ドルで
0.46%下落
エジプト
南アフリカ
アルゼンチン・ペソ
タイ
タイ・バーツ
中国
トルコ・リラ
香港
コロンビア・ペソ
メキシコ
ブラジル・レアル
韓国
南アフリカ・ランド
フィリピン
メキシコ・ペソ
台湾
信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
※上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。
ご参考:
日本株は5%超
の下落
ロシアは米ドル・ベース、
他は現地通貨ベース
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