病原性大腸菌O-157とイクラの衛生管理について (PDF:174KB)

釧路水武 だよ り 第7
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号 (
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.3)
病原性大腸菌0-1-- と
阪 本
イ ク ラ の衛 生管 理 に ついて
加 工部
正 博
0 -157は はか の食中 毒 菌 と同様 に熱 に
ルな ど の消 毒剤 でも容易 に死威 し ます 。
弱く、加 熱 により死威 しま す 。ま た、 アル コー
1番 確 実 な のは 加 熱 です 。 0 -157 は
七 五℃、 1分 以上 の加熱 で死滅し ます.ただ
に充分 な加 熱 が 必要 です 。給食 セ ンターな ど
し 、食 品 の中 心部 も この温度 以上 にな るよう
では'加熱 調理をす る場 合 、食 品 の内部 が計
ば れ る強 い毒 素を産生 し て、血 便を とも な う
腸管内 で菌 の増殖にともな ってベ ロ毒素 と呼
ため 調 理後 に細 菌 が付着 す ると、 かえ って付
た、加熱 調 理し た食 品は細 菌 が いな- な った
て います が、 0 115 7は人 の腸管 に感 染 し 、 れ る温度 計 を使 用し て確 認を し て います 。 ま
す 。病 原性 大 腸菌 は、 さら に四 つに分 類 され
いう ) の食中毒事件は'私 共、水 産加工にた
るか、包装 な どを し て細 菌 の感染 を さ け る必
着 し た細 菌 が繁 殖L やす い ので、早め に食 べ
0 -15 7と
昨 年 の六月 に発生 し た醤 油漬 け イ ク ラ の病
ず さわ る者 にと って'大変 シ ョ ックを受 けた
激し い下痢 を起 こす 「
腸管出 血 性大 腸菌 」 の
原性 大 腸 菌 0 -1 5 7 (以下
出来 事 でし た。多 - の方 が感染 され た こと は
イク ラの衛 生管 理 はどうす る の?
要 がありま す 。
一種 です 。
に入らな いと食中毒 にはな ら な いのに比 べ'
菌 では'食 品 一g当 たり 百 万程 度 の菌 が休 内
腸炎 ビブ リ オやサ ル モネ ラな ど の食中 毒 細
もち ろん です が' これ ま で0 -1 5 7は ハン
食品でみられ るも
ので'今 ま で水 産 食 品 では発生 し た こと がな
バ ーグ、 レバ ーな ど の畜産
か ったか ら です 。
し かし ' イ ク ラな ど加 熱 し な い で食 べる非
加 熱食 品 は加 熱 以外 の方 法を 考 えな- ては い
0 -15 7はわず か数 百程度 の非常 に少 な い
図 1 にイ ク ラ の製造 工程 の概要 を示 しま し
菌数で感染す ると いわれ ています。菌 の増殖
た。イク ラ には塩 イ クラと醤 油漬 けイ ク ラが
病 原性 大 腸菌0-1-- ってな に?
ロ毒 素を産 生 す るため、感 染者 の抵 抗力 によ
あ ります 。漬 け込 み の工程 で塩 イ クラは飽和
け ま せん。 ここ では、 イ ク ラ に ついて、も う
り症 状 の差 が大きく 、小 児 や老人 が感染 し や
食 塩水を '醤油 漬 け イク ラは調味 液を 用 いま
少 し 詳し く 見 てみま し ょう。
0 -1 5 7は大腸菌 の 一種 です 。0-15
7と言われる のは'大腸菌 の細胞 壁 にあ る「
0
(オ I)抗 原 」と いう成 分 が 1七 三種類 見 つ
す いと いわ て います 。時 には、感染 者 が死 に
も適 温だ と 二〇分 程度 で二倍 に増 え ると言 わ
か っています が、 そ の中 の 1五七 番 目 のも の
至 る ことがあ ります 。
れ ています 。ま た、感 染後 体 内 で増 殖 し てベ
です 。普 通'大 腸 菌 は牛 や羊 な ど の家畜 や皆
と いう意 味 で'比 較的 最 近 見 つか った大 腸菌
す が、 それ 以外 は同様 の工程 で処 理され ます。
まず 、原魚 の段 階 です が'図 2 に漁 獲後 、
加 工場 に搬 入 され た秋 サ ケ (シ ロサケ) の魚
-
肉 、内蔵 な ど の菌数を 調 べたも のを示 しま し
さ ん のお腹 の中 (
腸内 ) に住 ん でいます 。 ほ
通常 の食中 毒対策 、衛生管 理 で可能 です 。
0 1-- はど のよう に予防 す れば よ い の で
し うか?
と んど の大 腸菌 は害 があ りま せ んが 、な か に
は'人 の腸管 に感 染 し て下痢 を 起 こす も のが
ょ
あり ます 。 これを 病 原性大 腸菌 と呼 ん で いま
13
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原
卵
分 離 書き
一 部、 卵 の み で購 入
l
洗
調 味
調味液漬 け
↓
(披 切 り)
I
包
装
液
浄
真水 または2
-3%食 塩 水
塩 水 溝 も
ナ
清 L
ナ
主 に 液 切 りタ イ プ
卵 重 畳 :調 味 液 量 - l
oo:1
6- 4 0
主 に 数時 間∼ 一 晩
調 味 料 :背 油 、 酒、 み り ん、
グ ル タ ミン 酸Naな ど
塩 水 頭目ナ
↓
液切 り
t
含気包装
包
ビン詰 め、 バ ック詰 め
他 に ビ ン詰 め、 バ ック詰 め
装
飽和食海水
卵 重 量 の 5-1
5倍 量
5- 1
4分 間
含気包装
主 に 木 箱 詰 め、
塩 イ ク ラ
醤 油 潰 L
ナイ ク ラ
図 1 替 油漬 けイ クラ と塩 イ クラの製造 工程 の概 要
ー1
4-
では細 菌 が付 着 し て いま し た が 、魚 肉 中 や卵
た。 原魚 の表 面、 胃 腸 (
内 容 物 も 含 む ) や鯉
ど か ら の汚染 や、魚 体 表 面 の付 着 菌 か ら の汚
は、腹 出 し の機 械 (カ ッタ ー マシ ン) の刃な
た ため '原 因 を 調 べてみ ると '使 用し て いた
和 食 塩 水 に漬 け 込 ん だ後 に細 菌 数 が高 - な っ
別 な 工場 では' 塩 イ ク ラ の製 造 工 程中 で、 飽
調査結 果 を 示 し て いま す 。 こ の工場 では腹 出
程 が 異 なり ま す が ' これ らを 通し て、 イ ク ラ
こ のよう に' 工場 により 菌 数 の増 加 す る 工
食 塩 水 の菌 数 が 高 か ったと の こと でし た。
染 が考 え られ ま す 。
し 後 は それ ほど汚 染 され て いま せ んが ' も み
図 4 には 、 別 の加 工場 にお け る塩 イ ク ラ の
巣 では検 出 さ れ ま せ ん でし た。 このよう に、
原魚 の段 階 では魚 肉 や 卵 巣 は細 菌 に汚染 され
て いな いと考 え ら れ ま す 。
次 に' 各 工場 の事 例 に つい て紹 介 し ま し ょ
問 題 点 を ま と め てみ ま し た。
も み後
生 イク ラ
洗 浄後
塩水 沸 け 後
水 切り後
製 造 におけ る、 一般 的 な衛 生 管 理 の注 意 点 、
2
0
は、 もむ 人 が 軍手 を使 用し てお り 、軍 手 の 一
3
0
後 に 一般 生 菌 数 が増加 し ま し た 。 この工場 で
4
0
15
百 万 / 一〇平 方 誓 ㍍
5
0
(B
J
)
東 海 胡尊 -
図 4 塩イクラ処理工程中の一般生菌数の変化 (B工場 )
図 3 には、 あ る加 工場 にお け る イ ク ラ加 工
)
(生 イ ク ラ
も み後
(生筋子 )
放出し後
化
と か なり 多 く の菌 が検 出 され ま した。 ま た 、
*菌数 :皮 部 は/1
0
C
ば、 それ以 外 は /g
*菌数 の 1
0
/ i :検出限界
般 生 菌数 を 測 定 す ると
0
図 2 原魚 における内部、皮部及び各器官の菌数
処 理中 の細 菌 数 の変 化 を 見 たも のです 。 細 菌
0
腸
垂
肉部 皮部及び各器官
、
変
1
0
皮
数 は腹 出 し 後 で増 加 し て いま し た。 こ の原 因
0
(
z
L
u。
0「BJ)
点 楓
程 中の菌数の
(A工場)
*菌数の /g:検出限界
ク ラ処理 工
イ
図3
部
卵
巣
精
巣
鯉
幽
門
肝
臓
胃
腹
須
肉
背
肉
生
賎
子 洗
浄
後
放
出
し
後
う0
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∼十 二時 間 以内 に処 理します 。 さ ら に、 原魚
「 原料 は漁 獲 後 直 ち に海水氷 で冷却 し 、六
点 と は?
イク ラ製 造 におけ る衛生管 理 の注意点 、 問 題
剤 な ど でよ- 汚れを 落 とした後 '塩素系 の消
手 '軍手 を使 用し ます ので、 これ ら は中性洗
五.手 洗 いはまめ に行 います 。実 際 にはゴ ム
は 工場内 の洗 浄 殺菌 に有効 と考 え られます。
ウムを添 加し た水 や' オゾ ン水 、電 解水 など
です 。ま たへ殺 菌力 のあ る次 亜塩素 酸 ナトリ
毒 剤 や熱 湯 で消 毒 をし 、乾燥後 '使 用し て下
は低 下し 、 イ ク ラ への付着 菌 も 少 な-な ると
考 え られ ます 。ま たへ 工場 の製 造能力 を越 え
ター マシ ンな ど簡 単 に分解 できな い機械 は、
スポ ンジ な ど も 同 様 に行 って下 さ い。 カ ッ
洗浄 殺 菌 が難 しく 、 こま め に洗浄 殺 菌をす る
さ い。包 丁、まな 板 、魚 箱、 ザ ル、 たわし、
手作 業 で行 う ため 細菌 の汚染 を 促進 しま す。
し か方法 がありま せ ん。衛生管 理し やす い機
る処 理は避 け る べき です 。
作業 員 は衛 生 的 な 手袋を 着 用し 'ま た、 使 用
械 の開発 が望 ま れ ると ころ です 。
二. 生筋 子 か ら生 イク ラ にす るも み 工程 は'
が 必要 です 。
う に考 え がち です が ' 必ず しも そう でな い場
六 . 飽和 食塩 水 や調味 液 は'細 菌 が いな いよ
器 具 '特 に網 (
分 離 綱 ) の充分 な洗浄 ・殺 菌
(
ゼ ロ) にす る ことは不可能 です。 そ こで、
どを 行 って下 さ い。
合 があ ります ので、安 全 のため に加 熱処 理な
≡. イク ラは非加 熱食 品 であり '殺 菌数 をo
ます 。理想 的 には'す べて の工程を 一〇℃ 以
付 着 し た細 菌 を増 やさな い ことが重要 になり
細菌 は ほと んど増 殖 しま せ ん。 工場内 の使 用
こと です 。し かし ' こ のこと が食 品加 工 にた
こと は'経費 、人 、時 間を 必要 とし 、大変 な
実 際 に' この食 中毒 対策 '衛 生管 理を行 う
下 で'数 時 間 以内 に終 了す るよう に行えば 、
調を 入れ たり '液切 り の時 間を 短 -す るな ど
ず さ わ る方 にと って、今 一番求 め られ て いる
水 を 冷却 水 にし たり'液切 りをす る部 屋 に空
の改 善 は'細 菌 の増 殖を 抑 えます 。特 に、醤
こと です 。
(
さ かも とま さ ひろ ・加 工部 )
油漬 け イク ラは調味 液 に漬 け込む ため水 分 が
工程 など にお け る細菌 の増 殖 が速 いと考 え ら
多 く '細 菌 にと って栄養分 が豊富 で、液切 り
れま す。
四. 水産 加 工 では'多 量 の水 を使 用し ます 。
そ のため '水 の殺 菌 を充 分 に行 う ことが大切
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段階 で の洗浄 殺 菌 を行 う と、魚体 表 面 の菌数
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