タンクに入れた水量と ペットボトルロケットの飛距離の関係

31605
タンクに入れた水量と
ペットボトルロケットの飛距離の関係
3606 大野 哲史 3505 梅村 一槙 3537 山田 あゆみ 3540 渡邉 雅也
要旨
ペットボトルロケットの飛距離を伸ばすためのタンクに入れる水の最適量を調べるため、水量以外の
条件は変えずにペットボトルロケットを飛ばした。タンク水量 500ml のときに最も飛距離が伸び、その
原因を探るため、加速度計を取り付けて測定を行った。500ml の場合、最高加速度、平均加速度が 300ml
より小さくても、噴出時間が 300ml よりも長かったため、加速し続けることができたと考えた。しかし
750ml では、長時間の噴射と、質量が大きく、加速されなかったことが原因で飛距離が伸びなかったと
考えた。これらの考察から、500ml が最適な水量であると考えた。
1.目的
ペットボトルロケットのタンクに入れる水量とロケットの飛距離の相関関係を調べ、最もよく飛ぶ
水量を調べる。
2.使用した器具・装置
・ペットボトルロケット(既製部品を一部使用)
・発射台(コネクタ付き)
・ろうと
・圧力計付き空気入れ
・水平器
・巻尺
・加速度計


ペットボトルロケット
炭酸飲料の 1.5L ペットボトル5本で製作した。先端部には、ポリエチレントップ(既製品)
を取り付けた。下部には水を入れるタンクを設置し、キャップをつけるところには、コネク
タへの接続部品(既製品)を取り付けた。
(図1)
コネクタ(接続部)
、発射台
ペットボトルロケットに取り付けた接続部品に、コネクタを接続し、発射時にレバーを引
いて取り外されるようにした。
(図1)
図1コネクタ(接続部)
図2 発射台
発射台には棒を取り付け、十分に加速するまでロケットを支え、45 度で発射できるようにした。
(図2)
05-1
3. 手順
本体の発射角度が水平面に対して 45 度となるように発射台を設置し、
ペットボトルのタンク内部に、
目的の水の量を入れる。タンク内部に 5.0kgf/cm2(≒4903hPa)で一定の空気圧をかけ、ペットボトルロ
ケットを飛ばした。タンク内に任意の量の水を入れ、ペットボトルロケットの飛距離を各水量で 3 回
ずつ計測し、それらの平均の値を結果とした。実験2では、実測値を求めるため、ロケットに加速度
計を搭載した。
4.結果
【実験1】
表1(【実験1】結果 )
タンク内水量(ml)
300
350
400
450
500
550
600
650
700
750
飛
距
離
1回目
39.12
43.40
46.62
45.50
45.19
42.65
46.33
43.70
42.82
42.19
2回目
41.65
42.25
47.24
45.11
48.56
46.34
43.16
39.30
44.40
42.21
(
3回目
43.68
45.59
41.79
45.30
49.40
49.61
47.34
44.91
40.84
40.83
平均
41.48
43.75
45.22
45.30
47.72
46.20
45.61
42.64
42.69
41.74
m
)
49
48
47
46
45
44
43
42
41
40
39
38
飛
距
離
(
m
)
300
350
400
450
500
550
600
650
700
750
タンク内水量 (ml)
図3(タンク内水量と飛距離の関係)
【実験2】
表2(【実験2】結果 )
タンク内水量(ml)
実験回数
300
1
2
500
3
平均
1
2
750
3
平均
1
2
3
平均
高度
m
16.00 14.00 14.00 14.67 15.00 15.00 13.00 14.33 15.00 12.00
最高速度
m/s
25.00 21.00 27.00 24.33 22.00 21.00 22.00 21.67 23.00 20.00 17.00 20.00
噴出時間
sec
0.46
0.44
0.46
0.45
0.63
0.51
0.60
0.58
1.24
1.00
0.92
1.05
最高加速度
m/s^2
8.70
7.40 11.30
9.13
5.40
5.70
5.30
5.47
3.60
4.60
4.10
4.10
平均加速度
m/s^2
5.50
5.00
6.10
5.53
3.70
4.30
3.80
3.93
1.90
2.00
1.90
1.93
0.60
0.60
1.50
0.90
1.30
1.40
1.40
1.37 -0.10 -0.10
0.20
0.00
最高点到達時間 sec
05-2
9.00 12.00
10.00
9.00
8.00
7.00
6.00
5.00
4.00
3.00
2.00
1.00
0.00
最高加速度
平均加速度
300
500
タンク内水量(ml)
750
図4(最高加速度と平均加速度)
(m/s)
30
(sec)
1.20
25
1.00
20
0.80
最
高 15
速
度 10
噴
出 0.60
時
間
5
0.20
0
0.00
0.40
300
500
750
300
タンク内水量(ml)
750
タンク内水量(ml)
図5(タンク内水量と最高速度の関係)





500
図6(タンク内水量と噴出時間の関係)
最高高度は 500ml のときが一番高い。
最高速度は 350ml のときが一番速い。
噴出時間はタンク内水量が多いほど長くなる。
最高加速度、平均加速度はタンク内水量が少ないほど大きくなる。
飛行時間は 500ml のときが一番長い。
5.考察
【実験1】
結果より 500ml が最もよく飛ぶ水量であると考えられる。500ml まで徐々に飛距離が伸びた理由とし
て、運動量保存の法則が関係していると考えた。運動量保存の法則は次のような式で表される。
05-3
𝑚1 𝑣1 + 𝑚2 𝑣2 = 𝑚1 𝑣 ′1 + 𝑚2 𝑣 ′ 2
これは、2つの物体の運動量の和が、ある動作の前後で変わらないことを示している。この式を今回の
実験に応用すると、質量𝑀の機体と質量𝑚の水がともに速度 ⃗⃗⃗⃗
𝑣0 で運動していて、機体から質量𝑚の水を相
対速度𝑢
⃗ で後方に噴射するものとし、噴射後の機体の速度を𝑣とすれば、水の実際の速度は𝑣-𝑢
⃗ なので式を
変形すると、
𝑀𝑣 + 𝑚(𝑣 − 𝑢
⃗ ) = (𝑀 + 𝑚)𝑣
⃗⃗⃗⃗0
上記の式のように変形できる。さらに、これを解くと
𝑣 = ⃗⃗⃗⃗
𝑣0 +
𝑚
𝑢
⃗
𝑀+𝑚
上記のような、全体の速度を表す式に変形できる。この式で、速度の増加分は、水の噴出速度が大きい
ほど、また全重量に占める水の質量が大きいほど大きいことが示される。しかし、この式では水の噴出
時間がどの水量においても等しく、瞬時にすべての水が噴出されたものとしている。
このことから、水の噴出に時間がかからないある程度の水量までは、ロケットの飛行速度は伸びるが、
ある程度の水量より多くなると、すべての水を噴出するのに時間がかかり、タンク内に水が残る時間が
長くなるため、飛行速度は小さくなる。したがって、タンク内水量 500ml が𝑣を最大にする水量である
と考えると、500ml が最適の水量であるといえる。
【実験2】
まず、タンク内水量 750ml について考察する。750ml は噴出時間が長いため、その長時間の噴出で、
ロケットの姿勢が維持されにくくなったと考えられる。また、加速度や平均速度からも、3つの水量の
中では一番小さかったため、飛距離が伸びなかった。これはロケット本体の質量が大きいため、ロケッ
トが加速されにくくなったと考えられる。これらのことから、飛距離が伸びなかった原因がいえる。
次に、タンク内水量 300ml について考察する。まず、最高加速度、平均加速度が最大であったことを
考察する。500ml と 750ml では、初めは 300ml と同じ 5kgf/cm2 の圧力がかかっているが、タンク水量
500ml と 750ml の水が噴出して、水の残りが 300ml になったときのタンク内を考えたとき、ボイル・シ
ャルルの法則
𝑝𝑉
𝑇
=一定 の式から、体積 V が大きくなると、圧力 p は小さくなる。このとき温度 T も
下がっているが、微少なため温度を一定とみなす。このことから、初めから 300ml 入れていたタンクの
圧力 p の変化が最も小さく、空気の圧力が高い状態に保たれる。このことから、最高加速度と平均加速
度が最も大きくなったと考えられる。しかし、タンク内の水が少ないため、水の噴出の継続時間が短く、
加速は短時間となる。また、進行方向と逆向きの加速度と質量は反比例するので、噴出が終わると空気
抵抗の影響を大きく受ける。したがって、タンク内水量が 300ml についての気体の体積の変化は、水量
が 750ml のものより小さいため、瞬間的に速度は速くなるが、すぐに空気抵抗により減速するため、飛
距離が伸びなかったと考えられる。
よって、500ml の場合、最高加速度、平均加速度が 300ml より小さくても、噴出時間が 300ml よりも
長かったため、加速し続けることができ、飛距離が伸びたと考えられる。
6.参考文献、引用文献
「ペットボトルロケットの作り方」http://www.pcaj-i.jp/make/pbr/
05-4